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【人】 さすらい人 ヤニク― 診療所近く ― (2) 2013/12/28(Sat) 01時頃 |
【人】 さすらい人 ヤニク[診療所から医者を連れて来たのは、もしかしたら (3) 2013/12/28(Sat) 01時半頃 |
[町長は、報告を済ました声で聞く]
ああ、痛めつけたのか。
それもよくない。
子どもを痛め付けるのはな。
やったやつはあとから罰しろ。
いいな、その子は人狼なんかではない。
[町長の笑みは、もちろん、その人狼であろう少女を、
上手に飼うためのものだ。
だから、子どもを虐待した自警団は、のちほど裏金とともに、町の外へ出るように言われるだろう]
7歳、そんな幼い子を人狼呼ばわりするようなやつがいるのは、はずかしいこととは思わないかい?
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【人】 さすらい人 ヤニク ……あんた。 おい、セレスト! (4) 2013/12/28(Sat) 01時半頃 |
その子には暖かい毛布と、
甘いココアを。
悴んだ手には薬を塗ってお上げ、
髪は綺麗に梳いてやるといい。
寂しがっているのなら、絵本を。
腹を空かしているのならば、
彼女の望むものを。
[町長は窓の外から、船を遠目に見つめながら**]
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― 牢屋 ―
[冷たい石と鉄に囲まれた部屋に乱暴に放り込まれ、少女は目を覚ましました。
女将さんや、雑貨屋のお爺さんと同じ部屋ではありません。
投獄という性質上、容疑者を同じ場所へ入れるわけにはいかないのでしょう。
もしくは、人狼容疑と人狼は一緒にできないとか。]
[少女はみずからのちいさな体を抱きしめて、震える眼であたりを見渡します。
ほそい腕に見合わぬ枷が手足に張り付き、少女の自由を奪っていました。
看守と思しき男が憎々しげに、少女の矮躯を見下ろします。
およそその目は、人間を、子どもを見る目ではありませんでした。
『いっちょう手足も奪っちまうか』
『そうすれば抵抗もされない』
『顎を外せ』
『腱を切ればいい』
『だるまにして吊ってしまえばいい』
聞こえてくるのはおそろしい言葉ばかり。
けれど少女は、小さく身を縮めることしか出来ません。]
【人】 さすらい人 ヤニク 服は洗や良い。替えだって利く。 (7) 2013/12/28(Sat) 02時頃 |
[暴力と憎しみに突き動かされた男たちが、ハナを害そうとするそのとき、別の男がやってきました。
上位とみられるその男はしばしのやりとりのあと、看守の男たちと入れ替わって少女の近くへと就きました。]
[先とは打って変わった猫なで声でハナをうかがうその姿は、先の男たちよりもよほど、そらおそろしいものに見えていたのです。**]
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【人】 さすらい人 ヤニク さぁな。 (9) 2013/12/28(Sat) 02時頃 |
【人】 さすらい人 ヤニク ……ま、とにかくだ。 (11) 2013/12/28(Sat) 02時頃 |
[ふつ、と、声が出なくなった。
喉を、熱い息がざらざら撫でていく。
それを最後に、息がきれ、上手く呼吸ができず、心臓が脈うつのへ違和感を覚えた。
「人狼め」「観念しろ」「化け物」
本来耳障りな筈のそういった大声が、遠くて聞こえ難い。]
……、……
[体の力が抜けた。
とうとう、体を起こしていることを諦め、雪のなかへ倒れ込んだ。
見えるか見えないか程度の随分悪くなった視界で、切り裂かれた手を見ていた。
これは、治るのだろうか?]
[ヒューが倒れ、セレストがそちらを振り向いた。
ヒューには、その表情は、よく見えなかった。
目を閉じる。]
[――なあ、それは…、
――あたしが聞いててもいい話かい?
――…話してくれるんならいいんだけどね。
――あんたらの知ってること…。]
[知りゃしねえよ。
どうすりゃいいのか、わからないで、一年経っただけなんだ。]
【人】 さすらい人 ヤニク 薄情者なんで。 (14) 2013/12/28(Sat) 02時半頃 |
[辺りには人が寄り、ヒューは診療所へと運ばれていく。
半分手放したような意識のなか、誰かに、頬を撫でられたのが、分かった。
いや、誰が頬をなでたのかも、何となく見当がついていた。]
――……
[――ごめんなさいね。
何故謝られているのだろうか。
それは、ヒューには分からなかった。
「どうして」と尋ねようとしたが、それは声には、ならなかった。]
【人】 さすらい人 ヤニク[人間を襲い、死に至らしめた者を前にして、 (15) 2013/12/28(Sat) 02時半頃 |
[さむいなあ。
最初の3音を、乾いた唇がなぞろうとする。
遠のく意識のなかで、慣れた診療所のにおいを嗅いで
*ああ、まただ、と、自分自身に呆れていた。*]
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【人】 さすらい人 ヤニク まぁ、頼まれたって、大して何か出来る訳じゃねぇけど…… (21) 2013/12/28(Sat) 03時頃 |
【人】 さすらい人 ヤニク いや、何となくな。 (23) 2013/12/28(Sat) 03時頃 |
【人】 さすらい人 ヤニク[ハナをその場で私刑にせずに連れて行ったと言う事は、 (24) 2013/12/28(Sat) 03時半頃 |
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人狼が捕まった?
[その報せは看守からぽろりと漏れた。
どうやら、痛め付けられた老人を気の毒に思う者だったらしい]
そうか、何人も人狼がいてもこまるというわけだな?
[町長の考えはまだ知らず]
[ただ老人は脚をやられていた。
なので、その場からは動けない。
人狼として処刑されるように企まれていたのだ。
顔も腫れ、見るも無残な様相を湛えていた。
もちろん、
その状態で、あまり無事なわけはない]
[しかも、その人狼が少女、
ハナだと知ると、目は見開かれ、ゆっくりと首を振る。
そんな子どもが、
皆の前で処刑されるなど、
なんということか]
――・・・・・・その子は確実に人狼なのかね?
わしは、その者が人狼なのか、否か、知ることができる。
本当は、ただの人間なのじゃないかね?
[そんなことを掠れた声で訴えた。
そう、ジェリーの弟のように、
処刑はさせたくないと思ったのだ]
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