22 共犯者
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『御使い』様は何を思っているのかしら。 何か守りたいものでもあるの、かな。
[ソフィアとノックスの命を奪った理由が分からない。 儀式だから――? 何十年も行われていなかった。 なのに突然、儀式が始まった、始めてしまった。 思案げに呟いてピッパへと視線を向ける]
――…武器を抜いてしまえる私は間違っているのかな。
[困ったように呟いて]
私も、変わらなきゃいけないんだと思う。
[共に変わろうと言葉を向けた男を一度見詰め それからピッパに緩く会釈して彼女から離れた>>5]
(8) 2010/08/04(Wed) 01時頃
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[ホリーを呼ぶオスカーの声>>4が聞こえた。 木霊する声にゆるく振り向く]
――…はぐれてしまったのかしら。
[娘の呟きはピッパの悲鳴により打ち消されて。 ぴくっと肩を震わせて彼女が居た方に目を向ける。 テッドの背の向こうに崩れ落ちるピッパが見えて]
………な、に?
[その光景が信じられずに声が漏れた]
テッド……? ピッパ……!!
[駆け寄るミッシェルの後からピッパの傍に行くと 目に留まるのは血の赤と彼女の蒼白な貌――]
(11) 2010/08/04(Wed) 01時頃
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[鉈を持つテッドの呟き>>12が耳を掠める]
――…私が、言わなかったから。 だから、ピッパが……
[うわ言のように呟いて横たわるピッパの脇でぺたりと膝をついた。 傷口から溢れ出すあたたかな赤が地を伝い娘のスカートを濡らす。 ピッパの身体へと手を伸ばせばぬるりとした感触が伝った]
……あ、…ぁ……。
[彼女の為なら戦えると言ったのに彼女を守る事が出来なかった。 自分の為に心を痛めて呉れる優しさを持つ彼女。 彼女が居て呉れたらこの村も優しく変わってゆけるのだと そう、思っていたのに]
………いかないで。
[縋るように紡いだ娘の頬は気づけば溢れた涙に濡れていた]
(13) 2010/08/04(Wed) 01時半頃
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[ピッパが御使い様ではないと伝えずにいた事を後悔する。 ピッパの傍から離れてしまった事を後悔して。 触れた箇所からぬくもりが失われてゆく事が哀しく淋しい。 娘は昨夜のささやかな会話でピッパに心を開いていたから 彼女を悼みぽろぽろと止め処なく涙が零れてしまう]
もう話せない……。 話したいこと、まだ、たくさんあったのに。 歌も、聴かせて呉れるって、言ったのに……。
[微かな旋律はこの森で聴いたのだけれど それでは足りないとゆるゆる首を振るう]
――……ぁ。
[ふわ、とピッパを覆う布地。 顔を上げれば滲む視界にミッシェルの姿がある。 歩み出す幼友達のその背をじ、と見詰め 娘は哀しげに柳眉を寄せた]
(16) 2010/08/04(Wed) 02時頃
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[テッドは幼友達で御使い様ではないと思う。 そう思っているはずなのに心が揺らぐ。 ミッシェルから声>>17が掛かりゆっくりと其方に視線を向ける。 慰めて呉れているのだと直ぐに分かって]
――…ん、ありがとう。
[こく、と頷いてみせるけれど。 胸の痛みは消えることなくあり続けた。 誘う声に、涙を袖で拭いそろと立ち上がる。 ミッシェルにもう一度頷いて娘は森の奥を見据えた**]
(18) 2010/08/04(Wed) 02時半頃
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[記者>>20が幼友達に話し掛けるのが見えた。 何を話しているかまでは明瞭に聞き取る事は出来ない]
…………
[見守る、と記者>>3:80は広場で娘に言った。 けれど見守る範疇を越えていることを 彼は気づいているのだろうか。
言葉を掛ける。 その些細な干渉さえ何かを変える可能性がある事を 記者は心得ているのだろうか。
記者ならば、そう文字で人々に訴えかける職の者なら 言葉の強さを理解していて当然だろう。
見守るといいながらその位置から逸脱する記者を 視界にいれた娘の眸には複雑な色合い――**]
(25) 2010/08/04(Wed) 11時頃
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…オスカー。
[自分の肉体だったモノに縋る片割れの背後に立ち、辛そうに顔をゆがめる]
…ゴメンね…オスカー…。
悲しませて…ゴメンね…。
[届かぬ言葉を紡ぎながら、その傍らに座り込んだ。
彼が落ち着くまで、何時までも]
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― 夜の森 ―
[泣いたのは何時ぶりだろう。 目許を拭っていればふと、遠い記憶が蘇る。
両親が用事で出掛けたあの日。 日暮れには帰ってくると言った二人を一人きりで待ち続けた。 よいこにしていれば直ぐに戻ってくるから、と そう言われたから寂しくても泣かずに待っていた。 日が暮れても二人は帰ってこない。 朝が来ても二人は帰ってこない。 三日三晩、幼い娘は小さな家で待ち続けた。 その間、口にしたのは林檎一つと水だけ。 三日目の晩に娘の意識は途切れてしまう。
幼い娘が目を覚ますと其処は小さな家ではなかった。 崖から落ちた二人を見たという旅人の知らせが祖母に届き 慌てて保護してくれたのだと娘は後で知った]
(39) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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[両親はもう帰ってこない。 分かっていて娘は心の何処かで帰ってくると信じていた。 よいこにしていればきっと戻ってきてくれる。 寂しくても泣かずにおばあさまのいうことをきいていれば。 そう思い、そうあろうとした時から娘の表情は薄れていった。 人形のようだ、と揶揄されてきたけれど 娘に感情がないわけでは無かった。
両親の亡骸を見ていれば娘はそれを受け入れられた。 けれど二人は見つからなかった。 転落を目撃した者は何人かいたのに 深い谷から二人を引き上げることは出来なかったそうだ。
――泣いたのは家族三人で暮らしていたあの時以来。
生気の失われたピッパの躯を網膜に焼き付ける。 生きて欲しいと願った者の為に娘は祈りを捧げる。
そうして娘はヘクターを促してミッシェルの後を追うように 柊の木がある奥へと向かい巡礼を済ませた**]
(40) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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オスカー…。
[胸が苦しい…涙がこみ上げてくる。
立ち上がり、イアンに詰め寄るオスカーを、悲痛な面持ちで見つめるしかできないのが悔しくて…。
自分が儀式に参加しなければ、彼の心は痛まなかっただろう。自分がしっかりオスカーの手を離さなければ…。
いくつもの後悔が頭に浮かび、消える。
彼を慰めるために抱擁しようと両の手を伸ばすも、当然、彼に触れることは叶わない。
わかってはいたけれど、ソレが悔しくて、歯がゆくて…]
…オスカー…。
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― 明け方 ―
[柊の葉を捧げた後、娘は広場にある井戸を訪れていた。 スカートに染み込んだ血はもう既に渇いてしまったけれど 手についた赤を落す為に水を汲み何度も擦る]
――…痛いよ。
[体は助かっても心は深く傷つく。 そういった彼女の言葉が思い起こされて柳眉を寄せた]
ねぇ、ピッパ…… 私に出来る事って何なのかな。
[ぽつ、と呟いて赤の消えた白い指先が桶の水面に波紋を描く]
(43) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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[両の手で掬い取る水。 娘はゆっくりと目を閉じて力を行使する。 テッドの事を思いながら辿り娘はそっと其れを閉じ込めた。 ――其の血筋に異質は感じ取れない]
テッドは『御使い』様じゃない。 ……それなら、『御使い』様は何処にいるの?
[役目を有するらしいミッシェルとトニー。 二人ともう一度ちゃんと話をする事が必要だろうか。 思案するように柳眉を寄せていれば森の方から 叫び声>>27が聞こえて ピクと肩を震わした娘の掌からは留めた水が零れ落ちた]
(45) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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長老の孫 マーゴは、双生児 オスカーの声がしたあたりへと意識を向ける。
2010/08/04(Wed) 13時半頃
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[娘が声のした場所に辿りつく頃には声の主はいなかった。 ミッシェルとヴェスパタインが話しているのが見える。 儀式が始まって以来何度か嗅いだ鉄錆に似た匂いがした。 ふ、と視線を落せば其処には――]
――……っ
[ホリー、と名を呼ぼうとしたのだけど それは声と鳴らず引き攣るような吸気が漏れた。 何かを恐れていたように見えた彼女。 無邪気に振舞う彼女。 挨拶に来た時の姿が思い出されて泣きそうな貌になる。 込み上げるものを堪えるように口許を手で覆った]
(52) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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長老の孫 マーゴは、飾り職 ミッシェルを見詰め、それからヴェスパタインを見遣る。
2010/08/04(Wed) 14時半頃
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[ヴェスパタインと視線がまじわる。 痛ましげな眼差しにふるりと首を振るうのは 条件反射のものだったかもしれない。 繰り返す浅い呼吸はこれ以上取り乱してはいけないと思ったから。 ミッシェルから掛けられた声に小さく頷く]
ホリーが『御使い』様に選ばれ、…て…。
[選ばれる事を娘は良しとはしていない。 目の前にあるのは無残に命を奪われた者の姿であり 『還る』という表現とは印象の重ならぬ状態のもの]
さっきの、……オスカーの声、が、聞こえて。
[オスカーとホリーの仲の良さは知っていたから その心中を思えばズキズキと胸が痛んだ]
(57) 2010/08/04(Wed) 15時頃
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――…ピッパだって参加したかった訳じゃない。
[ヴェスパタインの言葉にポツと零す]
気丈なふりをしていたけれど きっと怖かったはずで……
[彼女が巡礼者になったのは志願しての事ではないと 知っていたし彼女の言葉からは娘はそう感じ取っていた。 血の気の薄れた男をじ、と見詰め 娘は微かにではあるが首を傾げた]
この村に居られない……? 如何して、この村から自ら去るではなく、 居られなくなる、の……?
[話していたミッシェルならその理由を知っているだろうか。 一度彼女へと視線を向けた]
(59) 2010/08/04(Wed) 15時頃
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………え。
[ミッシェル>>60から告げられた其れに目を瞠る]
探しに行く、って…… もしかして、森に行ったの……?
[ゆる、と森の奥へと視線をめぐらせ]
私に手伝える事があるなら……。
[こくり、とミッシェルに頷いた]
ねぇ、ミッシェルは……
[ぽつ、と何か紡ごうとして躊躇う。 ホリーが襲われたのだからオスカーは違うのだろうか。 違うと信じるならばもう疑える相手はほとんど残っていなくて 思案げに柳眉を寄せてゆるゆると頭を振る]
(61) 2010/08/04(Wed) 15時半頃
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――…あなたはそんな風に思われる事を してしまったの?
[ヴェスパタインの言葉>>62に不思議そうな貌をした。 五年の年月を村で暮らしたランタン職人。 娘には余所者であるという印象は薄れていた。 彼にそう思わせる何かがあることを娘は知らない]
ごめんなさい……。 誰にでもいえない事はあるものね。 知られたくない事も――…
[つい、問うような言葉を続けてしまったけれど 其れを取り消すように言葉を重ねた]
(63) 2010/08/04(Wed) 15時半頃
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[ミッシェルの意思表示>>64に頷くように視線を一度伏せた]
昼間の森に『御使い』様は居るのかしら。 ――…夜よりも危険は少ないと思うけれど 遅くなるなら迎えに行った方が良いかもしれないわね。
[オスカーの身を案じるように呟いて]
ん……、私にももう分からなくなってきたけど…… 私も、ミッシェルの事は信じてる。
[守ろうとして呉れた彼女は疑えない。 何時も身につけていた大事なペンダントを貸してくれた彼女。 無意識に、との言葉が聞こえれば柳眉を寄せて]
無意識に、なら、哀しいね。 気付かないうちにもし、大事な人を手に掛けていたらと思うと 私は、とても、かなしい。 でも、ミッシェルはきっとそんな事してない。 きっと、出来ないよ。
(67) 2010/08/04(Wed) 16時頃
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[じ、とヴェスパタインを見詰めた。 祭の前日、準備の手伝いに行く前に 祖母に言われて迎えに行こうとしたのだけど。 娘が工房へと赴く頃には既に彼の姿は無かった。 だから、娘は彼が村に馴染めてきているのだと思っていた。 けれど、其れは違っていたのだろうか]
ヴェスパタインはこの村が、きらい?
[彼の言葉からはこの村に居たいのか それともこの村から出て行きたいのか 其れを断定できるだけの何かを見つけられず ゆる、と首を傾げて問う素振りを見せた]
(71) 2010/08/04(Wed) 16時半頃
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……うん。探しに行くならその時は私も行く。 オスカーにもちゃんと話しておかなきゃいけないから。
[こく、とミッシェル>>70に頷いて ありがとうの言葉にははにかむような笑みが浮かぶ]
……誰が望んでこんな事をしてるのかな。
[ぽつ、と零された言葉はみつけていないという事が ミッシェルには伝わるだろうか]
ノックスの時は知らないけれど ソフィアもホリーも見せ付けるみたいに こんな風に置き去りにされてる。 飼い猫なら獲物を主にみせることはあるけれど 野生の獣が誰かにみせるために、は考えられない。 私も、獣がしたのだとは思えないの。
[犯人と呼べる人物に心当たりがないけれど 探そうという意思はまだしっかりと心の中にあるらしい]
(73) 2010/08/04(Wed) 16時半頃
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――…そう。 私も、すきになって欲しかったけれど、 もう、それは望めないのかしら……。
[顔を覆うヴェスパタイン>>72にポツと呟く。 立ち去る彼を引き止めることは出来なかった。 ゆる、と一度哀しげに目を伏せて 思い出すのはピッパと話したこれからの村の事]
(75) 2010/08/04(Wed) 17時頃
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長老の孫 マーゴは、飾り職 ミッシェルにこくりと頷く。
2010/08/04(Wed) 17時頃
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それが良いと思う。 その前にオスカーが戻って来ると良いんだけどね。
[歩きなれぬ森を歩くのはそれなりに大変で それはミッシェル>>76も同じなのだろうけれど]
理由を聞く為には見つけるしかないのね。
[二人だけ、周りに気配がない事を確認し 娘はミッシェルに近づき声を潜めて話し出す]
テッドは私達と同じで『御使い』様ではなかった。 その前はヘクターに力を使ったのだけれど…… 彼には異質な血が混じっていたの。 私、彼と会って確かめてきたの。 そしたら、ヴァンルナール家が『御使い』様と何か…… 契約をしたのだと教えてくれた。 村に伝わる生贄の儀式とその契約が関わりあるのだと思う。
(81) 2010/08/04(Wed) 17時半頃
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[そこまでミッシェルに言うと少しだけ間を開けて]
あの、ね。 ヘクターにラトル家に伝わる力の事も話したの。 役目も、おしえて……。 もしヘクターが『御使い』様ならきっと私は此処にいなかった。 だから、ヘクターは、犯人ではないと思うの。 ヴァンルナール家に其の血が混じったのは昔の事。 それを信じようと、思うの。
[一人ではない可能性を示されれば柳眉を寄せる]
ミッシェルは信じてる。 トニーも役目がある事を教えて呉れたから信じたい。 力を使っていない相手、他は…… ニールとオスカー、それにヴェスパタイン。 あの記者は巡礼者ではないから……数に入れていないのだけど。
[密やかにそう紡いで彼女にのみ打ち明ける**]
(82) 2010/08/04(Wed) 17時半頃
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殺したくない、殺さない、が普通さ
人を殺して、生き残ろうとするなんざ
無様に過ぎるし、人として間違ってんだよ
「殺したく無かったんだ、仕方なくやったんだ!」
ってか? かっこ悪いだろう、そんな人間は
やっちまったからには、人のせいにすんな
[首を振るのは、黒髪の人形
その言葉は、なんとはなしに
私がここ最近、感じたことのない温度を持ち
耳から頭に、頭から胸に、胸から手足に
その温度が伝わるたび、くすぐったくなる
ああ、なんだろう
可愛い、と言うのとはまた違う
確かに可愛くはあるが、もっと純度の高い温かさ
そんな物を感じたのは、本当に久しぶり]
大事な物って何さ?
村を救いたい、勇者気取り?
そんな奴は、信用出来ないが
誰か一人を守りたいっつーなら、良いんじゃないか
私も友達になんかあったら、殴るくらいはするし
殺したりは、しないがよ
[彼女の瞳が、不安の色に揺れる度
私の胸の奥、心臓の隣にある物が
どくり、ゆらりと、揺れるから
彼女に罪があるならば…――――]
銃を止められるのならさ
それこそ、人間じゃないと思うがな
[そんな言い方しか出来ない自分を、恥じる心がある
なのに私は、こんな言葉しか知らず
手を伸ばし、頬に触るくらいしか…――――]
さぁ、何を思うんだろうな
守りたい物はあるだろう、生き物が生きる限り
[命を奪う事が悪い事
そいつは、人間の論理なんだ
動物は、縄張りを守るためになら戦うし
どんな生き物だろうと、殺すんだ
必要以上の、無駄な殺しはしないだけ
無駄な殺しをするのも、同属殺しが罪だと言うのも
皆、皆、人間の論理なんだ
だからこそ、人間を名乗ろうと思ったら
人を殺す事を、禁忌としなきゃならない
そして、禁忌を犯したら罰を受けなきゃならない]
人を殺した人間に、幸福はないんだよ
武器を抜くのは良い、戦うのも構わない
だが、殺すんじゃない
[そう、語った私の言葉は
彼女に届いたのだろうか
届かなかったのだろうな、彼女は離れたのだから
変わる、か…――――]
私には、無理そうだ
[女神の矢が、今日は半分よりも丸い
だんだん、こちらを向くようだ
美しくはあるが、恐ろしくもあった
こっちを向いた時が、終わりの時のような
そんな気が、したのに]
ん…――――
[何処にいたんだろう、こいつは
私の後ろから、声がした]
なんだ、テッド
[私の目に映った世界
さっきまで真っ白だった、月が
何かが飛んだと同時に、紅く染まり
私の目が、痛みを感じたと同時に
胸の辺りが、酷く熱い感覚に包まれた]
そっか…――――
[声になったのか、わからない小さな声
悲鳴なんか、死んだって上げるものか
私は、そんな可愛い子じゃないんだ
こうなるのは、わかっていた事だろうに
人は、裏切り、掌をかえすために存在する
ゴミのようなもんだ、世界の
そんな事、最初からわかっていたじゃないか
がっかりなんかしないよ
落胆もしないよ
信じる奴が、馬鹿なんだからさ]
[御使い様がどうたら、生贄がどうたら
そんなの、どうたって良いんだ
最初から、こいつら人間じゃないんだから
罪人じゃないのに、生贄になった自分は可哀想
だから、自分を守るのためなら何をしようと良い
そんな、屑野郎ばっかりなんだ、最初から
そんな奴等を、信用した私が悪い
そんな奴等に、同情した私が悪い
何を中途半端な事してんだよ?
殺すなら、さっさと殺さないと…―――]
ばぁーか
[私の心臓が、鼓動を止めた時
女神の矢の、指す先が私じゃなくて
御使い様だったんだな、と思った
月は、いまだに白かった…―――]
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