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[ゆる、と目を開ける。
娘の姿は宵の間と変わらぬままある。
ヘクターの姿
夥しい血が流れ命が消えた己の躯]
――…そう。
私は『生贄』となってしまったのね。
あなたを告発する気なんて無かったのに。
[ヘクターの目許を濡らす其れに気づけば
困ったような笑みを浮かべて]
莫迦、ね。
[ぽつ、と呟いて小さな吐息を零した]
![]() | 【人】 靴磨き トニー[森の奥の柊の木。 (12) 2010/08/06(Fri) 01時頃 |
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![]() | 【人】 靴磨き トニーニール……。 (19) 2010/08/06(Fri) 01時半頃 |
――…結局、何も伝わらなかったのかな。
[変えていけると思ったのに。
打ち砕かれた希望に静かに目を伏せる。
ズキズキと胸が痛む。
何も出来なかったことが悲しい。
何も伝わってなかったのだと思えば哀しくて
気づけば透明な涙がぽろぽろと止め処なく零れていた]
――……っ、ぅ。
[声は掠れて頼りなく響く]
![]() | 【人】 靴磨き トニーそんな……嘘だ。 (22) 2010/08/06(Fri) 01時半頃 |
![]() | 【人】 靴磨き トニー[どのくらい茫然と立っていただろう。] (23) 2010/08/06(Fri) 01時半頃 |
墓荒らし へクターとイアンの声が何処か遠く聞こえた**
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[娘には己の殺されたその時の記憶がない。
すっぽりと抜け落ちた記憶。
それは幸か不幸かわからない。
ただ、無いのだという事実しか知らない。
泣き疲れた娘ははぁと吐息を零した。
遠く聞こえたイアンとヘクターの話し声。
その内容は聞こえていても反応を示すことはなかった**]
― 回想・夜の森 ―
[ニールとヘクターが言葉をかわしている頃。
娘はニールの手に触れた自らの手をじっと見詰めていた。
触れられれば水という媒体は必要としない。
口腔で紡がれるは家に伝わるまじないの一節]
――…また、異質が……。
[ポツと呟くけれど話をした所だから
如何こうしようという気にはならない]
もう一度話してみよう。
ニールにはあの事もちゃんと話して……
[あの場では言えなかったヘクターの血に混じる異質。
ニールからも感じた異質だが
其れを知っても矢張り話してみる事が第一のようだった。
けれど、娘が生きている時に其れを話す機会は無かった**]
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[広場の大樹――。
娘は芝生にぺたんと座り込みぼんやりと村の景色を眺めている。
繋がりを失った自らの身体にはあまり興味がないようで
それからどうなったのかなど知らない]
――…私が死んでも何も変わらない。
[娘の死が村に伝わっているのかさえ怪しいけれど
変わりなく見える景色に小さく息を吐く。
ふと脳裏に過るのは祖母の姿。
祖母の事が心配だけれど娘は動けない。
祖母の哀しむ姿を見るのが怖かった]
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![]() | 【人】 靴磨き トニー─ 翌日午後・礼拝堂 ─ (86) 2010/08/06(Fri) 23時半頃 |
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優しい曲聞こえたら もうすぐお終い
深い所からこそ 音楽は響いて
岩を削る波音が 囁く言葉何
耳を澄ます事より 語りかえす言葉を
闇夜に散る宝石は 一つ二つと重なり
全てを抱く女神の手が 今日は凄く優しい
手を取り合い語りましょう
暁が 世界を 包み込むまで
[私の時は、流れない
動かぬ赤い月が、満ちに満ち
夜の太陽に、なりはてるまで
私の時は、とまったまま
ただ歌を歌う、機械のように]
[ミッシェルとテッドの姿が広場にあった。
遠くて何を話しているのかまでは分からない。
けれど、テッド
柳眉が顰められ娘のくちびるが開く]
――…森はこわいよ、テッド。
[老人たちが良く言う戒めの為の言葉を紡いだ。
案じるような音色だが怖がっている様子はなく
そろと立ち上がり意味も無くスカートを払う仕草。
魂だけの存在なのだから土埃などつかないのに。
自嘲的な思いにゆると首を振り
残るミッシェル
娘はテッドの後を追って森に入る]
![]() | 【人】 靴磨き トニー─回想?前夜の森─ (95) 2010/08/07(Sat) 00時頃 |
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[テッドを追い森を駆ける娘は昔読んだ本を思い出す。
ウサギを追いかける少女のお話。
娘が別の世界に迷い込むことはないけれど
何故かそんな一場面が過って微かに目を細める。
或る木の前で立ち止まるテッド
――……。
[困ったような表情が娘の貌に浮かぶ。
触れる手。
落ちる私だったものの頭]
……触れたら、汚れちゃうよ。
テッド、もう、……私は……、
[何を伝えたいのか自分でも分からないけれど
幼友達の憤り
――…如何してだろうね。
![]() | 【人】 靴磨き トニー[前方に人影が見えた。 (103) 2010/08/07(Sat) 00時頃 |
[娘は理由を知らない。
娘は最期の感情を覚えていない。
だから、自分の浮かべた最期の表情さえ
何を思ってのものかなど理解出来なかった。
テッドの呟き
ごめんね、テッド。
[哀しませた事に対してか。
苦しませた事に対してか。
秘密を打ち明けずにいた事を悔いてか。
謝罪の言葉をポツと紡いだ]
[テッドの背へと触れようとした娘の手に
触れる感触はないまま身体を擦りぬけてしまう。
残念そうに眉尻を下げた娘は行き場の無い自らの腕を抱いて]
――…“私”を見つけて呉れてありがとう。
[首を抱き上げ村へと戻る幼友達の背を見詰める。
娘は漸く自らの死を実感しはじめた。
触れられないことがさびしい。
言葉がかわせないことがかなしい。
話したかったことはたくさんあるのに
もうそれを伝える術は失われてしまった]
![]() | 【人】 靴磨き トニー[倒れているニールの横に座り込む。 (114) 2010/08/07(Sat) 00時半頃 |
[一人取り残されたようにある娘の耳にとまる歌声
聞き覚えのある旋律の主を探してきょろきょろと
あたりを見回して、彷徨い歩く。
歌声を辿ればとある樹の許に辿りついた。
声は聞こえるのに姿が見えなくて
探すのを諦めかけたその時、風に誘われるように空を仰いだ]
――…あ。
[樹の上で歌うピッパが見えて思わず声が漏れる。
邪魔してはいけないと慌てて口を塞ぎ
ゆっくり聞く事が出来なかった彼女の歌に耳を傾ける]
[ひゅるり、風が吹く
風は感じるのに、髪が浮く事もなく
私の肌は、風を感じるのに
風が触った時の、くすぐったさは感じない
ああ、私はただ空を仰ぎ
口から出る音楽にのみ、魂が乗る
ああ、私の瞳は赤い月を映すのみ
音を聞く耳はあるのに、音が皆死んだように静か]
あ――――…
[さぁ、私は気がつくだろうか
もし何かの音が、私の耳に届いたなら
私は彼女に気がつくのだろう]
[歌が止んで、ピッパのくちびるから声が漏れる
………ピッパ!
[娘は堪らず名を呼んだ]
ん…――――
[私の名を、呼ぶ声がする
深く深く、地の底から…――――
いや、地の底じゃぁない 私が高い所にいるんだ
ああ、そうだ この声は、あの子の声だ]
なんだい、マーゴ
[ふわり、そこから飛び降りる
飛び降りたら、死ぬような高さなのに
今は、まったく怖くなかった気がする]
[高い樹の上から飛び降りるのが見えれば
娘は慌ててピッパ
死んだ実感がわいたといっても
条件反射のような行動だったから
気づけば動いていたというのが正しい。
ふわり、と舞うピッパに目を丸くした。
危なくないのだと知れば安堵の息を漏らし]
逢いたかった。
[微かな笑みを浮かべてみせる]
ピッパは歌が上手なのね。
やっと、ちゃんと聴けたわ。
[素敵だったと素直な感想を彼女に伝えた]
逢いたかった…――― ?
そうか、随分逢わなかった気がするな
[伸びた彼女の手に、きょとり
なんだろう、なんだかおかしい
何がおかしいのか、わからないのに
何かおかしいのは、よくわかるんだ]
歌? ああ、歌か…―――
そういや、ちゃんと歌った事なかったな
[彼女の感想に、少し気恥ずかしさを感じ
だんだんと、私が元に戻る
ぼーっとした頭のまま、彼女に手を伸ばすんだ
朧な感情の中にある、寂しさが埋まるよう]
[優しくてあたたかな人。
失いたくなかった存在。
疑問符付きの返しにこくっと大きく頷く]
たった一日のはずなのに
逢えなかった時間がとても長く感じる。
寂しかったよ。
[あの時の喪失感は心寄せていた故のもの。
それを寂しさと表現して]
……うん。
だから、聴けて嬉しかった。
ピッパの声、私は好きよ。
[耳に心地好い歌声を思い出すようにゆるく目を細める。
伸ばされた手に返す仕草は抱擁の其れ。
生者には触れられなかったけれど同じなら触れられるだろうか]
一日…――――
そっか、一日逢わなかったか
[一日も、たったのか
月は今もそこにあり、昨日もそこにあったのに
私の赤い月は今もほら、空高く輝いたままなのに]
寂しい想いさせたな、悪かった
[何が悪かったのか、私にはわからない
記憶に霞がかかり、思い出す事が出来ない
わかるのは、彼女が暖かかった事]
ん、そっか
聞きたかったら、いつだって歌うよ
[魂同士ならば、きっと触れられる事だろう
抱擁に、感触があるかはわからない
ただ、魂が記憶した人肌の温かさくらいは、感じるはず]
![]() | 【人】 靴磨き トニー─ 礼拝堂 ─ (141) 2010/08/07(Sat) 01時半頃 |
![]() | 【人】 靴磨き トニー聞いてくれるの?ありがとう。 (146) 2010/08/07(Sat) 02時頃 |
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