人狼議事


124 Acta est fabula.

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[終わりにしたい、と口にするミルフィに、
同調している己がいると自覚していた。

疑い、失い、奪うことに精神をすり減らす日々からの逃避。
この村に未練がないように、この世にもまた残す未練は少なく。


ただ、自ら命を絶つほどの気概もなければ、
他の者の手を汚させるほどの人間でもない。
流れるまま、残される限り生き長らえていくだけで。

だからこそミルフィの言葉は羨ましく。
同時にそこまで追い詰められている彼女を傷ましく見つめた。]


[伏せた眸に映るのは血の色。
幼馴染の流した血が己を赤く染める。
シビルやミッシェルの気配も其処に感じてはいるが
泣き濡れた顔を見せられず顔を上げることは出来なかった。]

 ―――……。

[チール―に名を呼ばれ、小さく肩が揺れる。
懐に入れた男の手が短剣を持つのが
涙にぼやけたその双眸にぼんやりと映った。

ああ、これで終わる。
そんな安堵が壊れた心に過る。]


[背に伝う熱とも痛みとも言えぬものは一瞬。
衝撃を感じると同時に刃の冷たさが心臓に触れた。
とく、と痙攣するように一度脈打ち、鼓動は止む。]

 ――――。

[くちびるが名を紡ごうとするけれど
それはカタチにも音にもならぬまま。
抱き留めるチール―の腕のぬくもりを最期に感じ、事切れる**]


[チールーの持つ短剣がミルフィの背に吸い込まれる様を、
顔を歪めるでも止めるでもなく、ただ見ていた。
目を背けるような初心さはとうに失っている。
それはその場にいた者はみな同じ。



ベネットとミルフィを弔うのはミッシェルとチールーに任せ、
ブローリンの手伝いでもしていたか。
その間の言葉は少なく、
わずかに緩み始めていた表情は元の無へと戻っていた。

出来上がった食事は勧められたが
ブローリンと同じ理由を添えて断った。]


[部屋に戻れば机上の布が否応なしに目に留まる。]


……また、無理になりそうだね。

[それを手に取ることなく、雨を眺めて一日を過ごした。]


[床についても、眠気は浅く、頻繁に目覚める。
数日前までの生活が再び訪れたかと。

前触れもなく部屋に来訪があった時も、
そんな風に意識が浮上した時だった。]


………ああ。あんただったのかい。

[闇の中、かざされた爪に己の先を悟った。]


ーー で、 よかった 。

[避けることはしなかった。
寝台の上、どちらにせよ逃げることは叶わなかっただろう。
裂ける喉から落ちた言葉はブローリンには届いていたか。

首元が熱くなり、そこから命が抜けていく。
未完成のままとなる作品のことが脳裏を過ったが。


それもまた、闇に飲まれ。]


[心の弱さがまた犠牲をうむ。
知りながらも人狼を探そうとはしなかった。
己が人間であることを知りながら
人狼と思い込むことで他の者を危険に晒す。
逃避の為に手を汚させた。

数えきれぬ罪。

善きひとであったサイラスと同じ場所にはいけない。
それがかなしくてまた心が沈む**]


[彼の髪と似た色であると、闇の中で人の目では判別できない。
事切れる直前、その手に絡んだものを掴んだのは、
死を受け入れたはずでも、体が無意識に足掻いたからか。

その結果、彼が正体と結び付けられるのか、どうか。
命を落とした己に知る術はない。


ただ、もし知ったとしたら。
……残された者のことを思わないのであれば、
望みを叶えてくれた彼には申し訳なく思ったかもしれない。]


[まどろみから目覚めるように意識が浮上する。
眠りではなく死からの目覚めというのも妙な話。
伏せていた眸がはたりと瞬き世界を映す。]

 ――――。

[死んだら終わり。
そう思っていたのに己の存在を未だに感じる。
在る、と思う自分さえも思い込みの産物だろうか。
わからないまま背を撫でる。
刃が貫いた跡はない。
生前と変わらぬ姿のまま――]

 ああ。

[けれど物に触れられない。
これまでとの違いの一つを理解して納得する。]


[雨の中、埋葬する生存者たち。
濡れてしまった彼女彼らを見詰め困ったように笑う。]

 風邪、ひいちゃうよ。

[ベネットは無実ではあるが。
自分に其処までする必要はないと思う、けれど――]

 ありがと。
 形だけでもサイラスの傍にあれるのは
 ……うれしいよ。

[平和で穏やかで幸せだった日々。
三人並んであったあの頃を思い出し
素直な感謝の言葉が漏れた。]


[雨は等しく降り注いでいる。
けれどミルフィは雨に濡れない。
死者は触れられない。]

 はやく。

     雨、止めばいいのに。

[一緒に村を出るはずだった幼馴染が
村を出てから何処に行くつもりだったか。
何処で何をしようと考えていたのか。
それさえも聞いていなかった。
聞けぬまま、ベネットは命を奪われてしまった。
サイラスは最期何を思っていたのだろう。
知りたいと思う事は、今となっては知れぬ事ばかり。]


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