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[酒場の屋根から声がする]
Amazing Grace, how sweet the sound
That saved a wretch like me…
[アメイジンググレイスを口ずさむ
透き通る声が、月夜に沁みた**]
[幸せな腕の中、温かい口づけを受けた気がした
気のせいだと、思いたかった
優しさに甘えてしまった、それだけが後悔
あの酒を飲んだはずなのにまだ思考があることに驚いて
そうして聞こえてくる歌声に惹かれるまま
上の方へとその意識は上がる**]
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─ 回想 ─
[時間にしてどれほどか。
現し世を離れた女には時間の感覚が薄い。
戦地に行かせまいと決めていたのに、村の為に戦地へ往くと言い切ったセレストの表情を見て、どうしてもと引き止める事が出来なかった。
説得ならいくらでも出来ただろうに、なぜ──と。
セレストの涙を見て抱くのは、結局、独り黄泉路に向かわせてしまったという悔恨の念と、彼女が負ったであろう痛みの幻覚。]
────…ッ
[セレストが味わった恐怖。
衝撃。痛み。
全てを己が身にも──と。
強い思い(願い)は魂に直接影響を与えて、女は全身がバラバラに引き裂かれたような痛みに声を殺し身動ぎもせず耐えた。]
───…、大丈夫、大丈夫。
もう、怖くない。
村に帰って来たんだよ。
おかえり、セリィ──。
[腕の中の愛しい子に決して気付かれぬようにと、そろりと息を吐き出し、いつからか呼ぶ事を控えていた、幼い頃の愛称を呼んだ。
そして、セレストが泣き止むまで、ただひたすらに、穏やかに語り掛け、髪を撫でていた。]
[>>3:-28暫くして立ち上がったセレストに促され、村の中へと。]
[村の中で、増える気配をいくつも感じていた。
その度に、傍のセレストの手に手を伸ばす。
自然と、言葉もなく。
ぬくもり求めて。]
───…皆ここに戻って来る。
私が愛した村。
皆に愛された村。
ここで皆を待つ事が出来て、私は幸せだな──…。
ダーラ──…、
最期、看取ってくれてありがとう。
辛い事をさせてしまった。
でも、お前と、セリィ。
二人に見守られて、本当に幸せだったよ。
まさか、お前まで来るとは思わなかったが──…、
それでも、お前と共にここに在れて、それも嬉しい。
もう、離れずに済むな。
ずっと一緒に、村の──…、
皆の行く末を見守ろう──?
[眠るダーラに語り掛ける。
声も眼差しも、穏やかに。**]
―回想―
[セリィと呼ばれて、さらに縋りつく。
何かを感じるのだろうか、ヨーランダが苦しげに呻くのを感じた…が、必死に隠そうとするのも同時に感じて気づかないことにして。
ありがとう、ただいま、ヨーラ
[ヨーランダが一番望んでいるであろう…笑顔で応えた]
―回想―
[私は幸せだというヨーランダに
…私のほうが幸せだよ?
ここに戻ってこれたのは、ヨーラのおかげだもの。
[伸ばしてきた手をしっかり握り返して。
本当ならば、死ななくてもよかったのかもしれない。
それでも、一緒に来てくれた。
途中一人で待たせることを知っていたのに、一人は嫌だと我儘を言ったセレストを許容してくれた。
ヨーランダの優しさに、愛の深さに…いまはただ、感謝しかできない。]
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『ヤニクさん、これからどうされますの?』
[小首を傾げるメアリーは愛らしく。
涙脆いが、とても強い……それは故郷を持つ故か。
多分、きっとクラリッサもそうなのだろう。
彼女は優しく清らかなだけでなく……偉大な獣。
そこに自分は惹かれた。
多分、あの金髪の軍人ブローリンも。
すでに彼女は故郷を得ているだろうけど。
せめて、その行く末だけでも見届けたいと。
それは……自分が故郷を探すための。
新たな旅に出るには必要なことのような気がした。]
俺……あの村に戻ります。
[村が終るか戦が終るか。
果てまた、彼女が終わりを迎えるか。
そのどれかを見たら、新たなな旅に出よう。
もう、逃げない。]
『ヤニクさん、いってらっしゃい。』
[送り出すメアリーは、在りし日の姉のような。
遠い昔、記憶もおぼろげな母のような。
暖かな光に満ちた温室に相応しい……ドナルドが愛した故郷。]
いってきます。
[穏やかな気持ちで。メアリーに別れを告げた。**]
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― 死後 ―
[体は失くなったというのに意識はある。
なにより不思議なのは、意識が戻ったときに居たのが戦場ではなく、自室だということ。
身に着けていたからこそ、ともに爆発にさらされたはずの絵と薬莢もなぜか手元にある]
――死んだっていうのに、随分と都合のいい……
[天国でも地獄でもなく、村に戻っているところが大分往生際が悪いな、と小さく苦笑をこぼした]
[どうやら死んだのは早朝というにも早いほどの時間のようだ。
ということは、前線に即いたのは深夜……そしてそれからすぐに行動だったのだろう。
家の中にいる母と姉の姿をみて、昨日の間に召集令状が来た様子も無く、ほっとしたようにため息をついた]
ー村の広場ー
[メアリーと過ごしたのは、思ったよりも短い時間らしい。
エリアスの行った晩、ミッシェルがダーラを制止し。
ダーラが自ら命を経ったのは見た。
郵便配達のウェーズリーも死地に赴き。
今日はブローリン。
彼を想うクラリッサは……もしかしたら。
そんな悲しい予感が風景を暗く見せる。**]
[戦場に向かった自分を心配してくれている母親の様子に、もうすでに死んだなどとは言えず。
いつかは届く死の知らせが、少しでも遅くなればいいと希う。
そして村の中へと]
――ウェーズリーさんが、今朝でた、って?
[村人の噂話に耳を傾ける。
そして、同じく村に居るセレストやヨーランダ、ヤニクやダーラと、顔を合わせるかもしれない]
[いつもの時間に、いつもの場所に立たず、本屋や雑貨屋に出入りするブローリンを見つけ。
その格好を見て、悲しげに瞳を伏せる]
……ブローリンが呼ばれる前に、終ればよかったのに。
[ウェーズリーだって、出征する必要はなかった。
あんな、酷い所になど……]
どうか、彼らが前線にたどり着く前に、戦争が終ればいい……
[前線にたどり着く前なら、きっとまだ、助かるはずだ]
[村を回るブローリンを見かける。
死地に赴く覚悟の出来た軍人は。
それでも、何処か名残り惜しいようで。
最後にクラリッサの元に訪れる姿が。
やはり、血の通う人間なのだと。
自分のように魂となって戻ってきたエリアスの。
彼を思うあまりに憤る姿を無言で見つめた。]
……ダーラさんが、死んだのか……
[どうして、死んだのかはわからぬまま。
村長に頼まれたことを頷くクラリッサをみつめ]
クラリッサは、幸せになって欲しいな……
[幼馴染の最後の一人。
その幸せを願い。
ふと、人の気配を感じて視線を向ければ。
旅立ったはずのヤニクの姿が見えた]
――ヤニク、さん?
[見間違いかと幾度か瞬きを繰り返し。
けれど生者ではありえない、死したものだとわかるその姿に、悲しげな色が瞳に浮かんだ]
[死は望む者にも望まざる者にも。
必ず平等に訪れる、別れであり眠り。
唯一違うのは、強く望む者のみ、その時を選べるだけ。
望まぬ者への訪れは……神のみぞ知る。
死神の振るう鎌は気まぐれで容赦なく。
命の実る穂を刈りとっていく。
果たして、ブローリンはどちらなのだろうか。
それを知るのは、彼自身と神のみ。]
[エリアスのつぶやきが聞こえる。]
……彼女は多分、何があっても。
幸せを得られる気がするな。
いや、選べるが正しいかな。
[それが自らの死であっても。
望んだ結果、選んだものであるならば。
彼女は幸せに違いない。
あるいは、彼の故郷として。
生き続けることを望むかも知れない。
その幸せを知るのも、彼女自身と神のみ。**]
――それも、そうかもしれないね……
[生きてて欲しいと思うのはきっと我が儘なのだろう。
聞こえるヤニクの言葉に小さく頷き。
クラリッサとブローリンのやり取りを見つめ。
その切なさに、そっと瞳をとじた*]
[ダーラとは言葉を交わしただろうか?ウェーズリーが出立するのを見送り、村の中に入る]
エリアス……還ってきたのね…
[分かってはいたが、一瞬泣きそうな顔になるが]
……何はともあれ、還ってこれてよかった……
[まずは幼馴染との再会に安堵する]
[ふと見ると、ヤニクの姿があった]
ヤニクさん…
[想う人には会えたのだろうか?様々な疑問はあるが、
エリアスと言葉を交わしているのを見守る。]
[どこからともなくセレストの呼び声が。
近くにいるのだろうか。
顔をあげ、声のする方へ。
ふわっと微笑んだ。
彼女もこのもどかしい2人を。
見守りたいと思っているのだろうか。
だけど、しかし。
2人の間に通うものは深く根強い。
春がくれば花を咲かす蒲公英のように。
ささやかだが暖かい太陽の様なあの花のように。]
[死神の振るう鎌も気まぐれだが。
恋の天使の放つ矢もまた気まぐれ。
たまたま自分に刺さったのは。
片方がない……それだけのこと。
この2人には互いに引き合う同じ矢が。
刺さって結びつけたのだろう。
クラリッサが愛おしい。
けれど、それと同じくらい……2人ともが愛おしい。**]
[これも気まぐれな天使の矢がもたらす想いなのだろうか?]
[セレストの声
向けた視界の中、泣きそうな顔の幼馴染が見えて]
――うん、往生際悪いと思うけどね。
やっぱり、最後は村に居たかったから。
[ただいま、と小さく告げる。
また会えたのは嬉しいけれど、このような再会はしたくなかった。
やはりセレストも亡くなっていたことを実感して、薄水色の瞳が悲しげに微笑んだ]
[大切な人たちが心を交わしている。
どんなやり取りをしているのかは知らない。
そのやりとりを聞くほどに近くには居ないから。
ただ、その哀しくも優しく愛しい雰囲気をそっと見守っている。
幸せになって欲しいと願った人が居る。
それが叶うことを、ただ祈った**]
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[クラリッサとブローリンを見つめる。
クラリッサと同い年のセレストにとって、淡い恋心を抱く相手なく死んでしまった悔いが全くないといえば嘘になる。
しかしそれよりも、ブローリンに出撃命令が下ったほうが切なかった。]
…クラリッサ…。
[今、彼女は何を想うのだろう。それを測り知ることはできないが、なんとか、クラリッサには幸せにと願う。
エリアスの言葉が耳に入れば、
同意するように頷いた。]
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