204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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―ラズベリー/翌朝、3階個室―
[穏やかな眠りの夜を過ごせるわけもなく。>>2:72 断続的な眠りを繰り返す。
今は1人になってしまった腕の中。 口の中に残る愛しい子の血が、唾液に薄まり消えてしまう。肉が、胃液に溶けて消えてしまう。 壊れてしまったのかと思う程穏やかに微笑むトレイルを、縋るように抱き締めた。
温もりと、すぐ傍で香り立つ甘露と。目を閉じても鮮明に蘇る、『食べて』と抱きついた姿と。
――喰われて死んだ、シメオンの姿。]
(6) 2014/11/19(Wed) 12時頃
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[あの、喪失感を知っているのに。
自分が、食べたいと思ってしまう。白と赤とで穢しても。まだ、愛らしい瞳を向けてくれるだろうか。
夢想と現実が混じりあう。 保護者としての表と、卑欲に満ちた裏と。]
………ん。
[下肢の昂りに、目を開けた。熱い吐息を飲み込む。
近くにプラチナブロンドは見えなかった。もう起きてしまったのか。 指はマロンを探す。]
(11) 2014/11/19(Wed) 12時半頃
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ノックスは、トレイルの頬に触れて、微笑み。毎朝のようにおはようのキスを送る。
2014/11/19(Wed) 13時頃
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……傷。痛むかい? 熱は?
[そう。いつもの朝とは違うものの、ひとつ。 肩口の生成り色。
少しずつ昨晩の事を思い出す。 縫合しきれなかった傷。 ベッドサイドには短い蝋燭。
解熱の薬を飲ませて寝かせたけれど。]
(19) 2014/11/19(Wed) 13時頃
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[なら良かったと、ノックスは固い枕に頭を戻す。 暫く、頬に首筋にと手を添わせていたが。]
何か食べるものを探しにいこうか。
[このまま閉じ籠って居た方が、安全なのに。]
(24) 2014/11/19(Wed) 13時半頃
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―ラズベリーレッド/3階廊下―
[トレイルの笑みの違和を口にしなかった。>>25 何が彼を変えたのか、原因の全てが自分にあると思わなかったから。
扉を開いて閉じる音は廊下に響く。
見えたプラチナブロンドに、声をかけた。>>21]
ニコラ!
(28) 2014/11/19(Wed) 13時半頃
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[ただ、居ないだけではなかった。 血に染まった身。 一番汚れているのは――…。]
ニコラっ
[二度目の呼び掛けは悲痛な叫び。 駆け寄って、正面から抱き締めた。]
……だい、じょうぶ。 どうしたら良いのか、一緒に考えよう?
(36) 2014/11/19(Wed) 14時頃
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……ニコラ。 これで、もうわかっただろう?
[ごめんなさいを受け入れる頷き。 そうだ。引き留めようと掴んだ手を、離してしまった。 首輪のないうちに本能に溺れる事を、許してしまった。
生きて腕の中に在る喜びと、血臭の不快さが混ざる。]
……そう、か。 こっち側にも、あっち側にも、何もなかったんだね。
[絡まる糸を解くように、言葉をそのまま返していく。 こちら側に、何がないのか。痛みを感じて眉を寄せた。]
……見せて?
[腐るのは何か。きっとあの男の残りだ。嫌悪で吐き気がした。取り上げて、踏み潰したら―――。
ニコルは、ノックスを嫌うのだろうか。]
(47) 2014/11/19(Wed) 15時頃
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[足音は続かない。>>44 別の個室から話し声が聞こえた気がして。 ノックスは2人を階下に促した。
卵を示したトレイルにも手を差し出す。]
……そうだね。新しい魔法が、必要だ。
[宝石箱には魔法が付き物。]
(48) 2014/11/19(Wed) 15時頃
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―バーミリオン/2階、居間―
[トレイルとニコラと。愛し子を伴い、居間に降りる。 誰も居なくて良かった。
昨日を思い出すから、ソファを動かして位置を変えた。 元より座り心地の悪い椅子。 アレに勝るものはなく、今はノックスが愛し子達の椅子になる。
ペチカに残った灰を掻き出して、手折る細い枝をくべた。部屋はまだ寒い。湯を沸かす準備をトレイルに頼み、水で濡らしたタオルでニコラの顔を、拭ってやる。]
そういえば、……ニコラは? 誰かになりたいと思うことはあるのかい?
[先の話の続きを問う。>>52 トレイルにも聞こえるように。]
………
(57) 2014/11/19(Wed) 15時半頃
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[手の上には藍鉄の。黒とも鉄とも角度で色を変えて。 ニコラの指が抉り出したのかと思うと、眼底が疼いた。]
そぅ、欲しかったのか。綺麗なものを何でも欲しがるから。君は。
ダメと、……言ったのに。
[困った子。それでも、 愛しい子。]
(59) 2014/11/19(Wed) 16時頃
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[いつまでも立たせておけないから。 ニコラの汚れた服を脱がせ、自らの膝に乗せた。 分けて貰ったぬるま湯で、髪も指先も目蓋も耳の裏も拭い。最後には足の裏まで。>>60]
あぁ、トレイルにはおかしな質問に聴こえただろう。
分かってる。けれど、君の声は――… 戻らなかったね。
[最後まで食べてしまうつもりで居た。 指で広げられた傷を、舌で、牙で広げた。
それでも、夢の中のように。鳴いてはくれなかった。声を取り戻してはくれなかった。 完全に再現していれば――…>>62]
(66) 2014/11/19(Wed) 16時半頃
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[首を振る様子に安堵し、それでも不安は拭いきれないと知る。>>64]
……お茶を用意したら、箱を持ってくるよ。 それを入れておかなきゃ。
君の「好き」の、結晶だから。
[腐ってきえて、しまうもの。]
(69) 2014/11/19(Wed) 16時半頃
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[部屋の壁に設えてあった棚に、毛布を見つけた。 まだまだニコラを抱いていたかったけれど。 降ろし、手に取った毛布をトレイルとニコラに放って投げた。]
……ニコラ。 あの男が何処にいるのか……という話だけど、ね。
[色のついた湯をマグカップによそい、2人に同時に差し出しながら。 一度は飲み込んだ言葉を。]
(71) 2014/11/19(Wed) 17時頃
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ノックスは、トレイルの仕草に炊事場の鍋の蓋を開け回った。ポトフ発見!
2014/11/19(Wed) 17時頃
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[たった1日手離していただけで、擽ったさに身を捻る様がとても愛らしい。首筋に歯を立ててしまいたくなる衝動が過ぎるのを待つ。>>72
見つけたポトフ入の鍋をペチカの上に移した。 ぶつぎりの卯肉は――…あぁ、まだ平気だ。 湯と共に肉を加え。温まるのを待つ間に、3階に行ってしまおう。]
……
[毛布にくるまる二人の様子を眺めやってから。]
シメオンと同じところでは、ないかな。
[言葉少なく彼の死を告げ。 すぐに戻ると声をかけて3階に向かう。]
(77) 2014/11/19(Wed) 17時半頃
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―ミモザ/3階―
[売り物の中で一番小さな宝石箱を選び、ニコラの着替えで包む。 他に用意するものを思い付いたら、また戻ってくればよい。
傷薬は要らなかった。 ニコラの体に牙のあとは見付からなかった。 あぁ、けれど。トレイルには。 爪でつけるには不自然な――…。 まるで始めからあったような。]
………あ、の、ガキ。
[髪を掴んで、乱し。けれど。 気を失った様を思い出せば、少しは――…。少しは。]
(80) 2014/11/19(Wed) 18時頃
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……バーニィ?
[叩いた部屋の、扉の向こう。 そこに誰が寝ているのか、或いは無人なのか。分からぬままに。
相談をしたかった。 ノックスの知らないことを、彼なら知っていると思った。
『食べたい』のではなく『食べられたい』と思うことは――…良くあることなのか、と。]
(86) 2014/11/19(Wed) 18時半頃
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……いや、出直すよ。
[ニコラの着替えが先だ。 中からの返事に扉を開けぬまま、離れた。
廊下と階段に残る足跡。 少年達に見せるには、きっと衝撃が強い。
拭くために持ってきたタオルでごしと拭っていく。 その分、戻りが遅くなる。>>85]
(87) 2014/11/19(Wed) 18時半頃
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―ローアンバー/3階廊下―
[拭き仕事の最中、背中に乗り込もうとする愛し子の重みがあったのは、昔のこと。
フランシスの呼び掛けに、顔をあげた。>>103 扉からラルフの顔を見えて。>>105 困ったように笑って見せた。]
ニコラがね、歩いて汚してしまったから。 単にそれだけだよ。
[ニコラは生きている。つまり。 俯き、また拭き掃除に向かう。]
(108) 2014/11/19(Wed) 20時半頃
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[怪我をさせてしまった側だけれど。 そうとは言わず。
階段にかかる足。顔を上げても視線は低くなる。]
あぁ、心配ないよ。いたって無事だからね。 君も怪我はないかい?
[包帯巻いた手を上げた。>>110]
(112) 2014/11/19(Wed) 20時半頃
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……充分気を付けるんだよ。ラルフ。 彼にだろう?
でないと、フランシスが一番悲しむ。
[誰に負わされた傷か、見当ならつく。 掃除の続きをかってでてくれるフランシスに視線を向け、後は頼むと告げた。]
………
[誰にも――そぅ、誰にも譲りたくない。渡したくない。あげたくなんて――…ないのに。
淡雪の幸福を、選べない。
足は2階の床に着く。 これぐらいで良いだろう。
早く、タオルを棄てて。 手を洗って。二人を抱き締めたい。]
(120) 2014/11/19(Wed) 21時頃
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―ローアンバー/2階居間―
[そういえば。顔を合わせないと言ったのに、ラルフと会ってしまった。もう収まったのだろうかとゆるり考え。]
待たせてしまったかい? ……ただいま。
[毛布の繭2つ。炊事場の水でタオルを濯ぎ、棄てる。 念入りに手を洗い流してから、毛布ごと二人を抱き締めた。]
………
[目を閉じる。愛しい香り。 鍋の音に邪魔される。]
(123) 2014/11/19(Wed) 21時頃
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ん? ぎゃああぁっ!
[みっともない悲鳴が出た。>>129]
ニコラ、これ!
[卵形の宝石箱と、着替えを押し付けてから立ち上がる。 鍋から煙。焦げているかもと蓋に手を伸ばし。]
熱っ!
[ノックスの手から離れた蓋が、床の上に落ちた。]
(133) 2014/11/19(Wed) 21時半頃
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[熱い熱いと手を振っていたが、視界の端で転がっていく鍋の蓋。
その先は――…>>134>>139]
っ!
[手を伸ばすよりも脚を伸ばす方が早いからと、滑りこむ。 ――が、蓋はニコラに掴まれて止まる。]
(145) 2014/11/19(Wed) 21時半頃
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いたた……
[ラルフが見たのは、スライディング失敗のノックスの姿。
おかえりと言ってくれたニコラの手に火傷を負わせてしまった、ノックスの。]
ニコラ、トレイルっ!!
[じゅっと音が続き、焦燥に身を起こした]
(149) 2014/11/19(Wed) 22時頃
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火傷…… やけど!?
[騒音の原因主は、ラルフの声にはっとする。>>148>>150
慌てふためくノックスの視線の先、トレイルは無事だと微笑む。>>152 ニコラは大丈夫だと言うけれど。>>156>>155]
ラルフ! あぁ、雪を!
[ニコラの手首を掴みながら、声は悲鳴のよう。]
(159) 2014/11/19(Wed) 22時頃
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[転んだ拍子に腰を打ったけれど、大丈夫だと頷く。>>156
じんと掌が痛みを訴えても、優先させるは愛し子たちの安否。]
ニコラ、ニコラ……
[居間の外から鳥の鳴き声。 毛布を被るトレイルの、丸まった背を撫でるしかなかった。]
[赤くなった指]
(170) 2014/11/19(Wed) 22時頃
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うん…… うん……
[鍋の蓋如きが、ニコラを怪我させて。 あぁ、きっと自分の頬は冷たいのではなかろうか。
唇を寄せて――はっと我にかえり、頬にくっつけてみた。 慌て過ぎて、行動もおかしい。]
……あぁ、駄目だ。困った。
ユニーク? ……ぷ、ははっ
[ニコラの言い方が、選んだ言葉がツボに入り、笑い出す。余計な力が抜けて、少しだけ冷静になれた。]
(183) 2014/11/19(Wed) 22時半頃
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[少女について書かれた文章には続きがある。
禁断の赤い果実――欲望の実を食べた少女は、
街を追われることになる。
実を食べたものは皆魔物になってしまうと信じられていたからだ。
友人達にも、両親にも責め立てられ、しかし愛しい人がいる街から離れたくなかった少女は、街の中を逃げまどう。
逃げ切れなくてもいい、せめて最後に愛しい少年に会えたら
――少女の願いが通じたのか、少女の前に少年が現れた。
「僕はずっと君を見ていた」
少年は、少女にそう告げる。
少女が少年を見ていたように少年もまた、少女を見ていたのだ。
「だからせめて君が魔物になってしまう前に、
綺麗なままで終わらせてあげたいんだ」
少年は手にしていた槍で少女の腹を刺し貫く。
少女は、最後に少女に会えた喜びと、想いが通じていたことの嬉しさの中で息絶える。
それが、少女の結末。]
[少女は幸せな最期を迎えた。
――では、自分はどうなのだろう?]
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……ラルフもすぐに戻るだろうから、 そうしたらご飯を食べて上に上がろう?
[蓑虫のような姿。 全てを拒絶する様。
優しく、やさしく撫でて、 心を落ち着かせる。
トレイル。君には僕の手が必要なんだよと、諭すかのように。]
おや、亀の子みたいだよ。
[にこと笑って額を合わせた。ニコラとトレイルと。 大丈夫、笑えている。]
(190) 2014/11/19(Wed) 22時半頃
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