25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[着物の隙間から肌に直接触れる手指。
唇には己がそれで触れてゆっくりと開かせていく。
薄灰を取り去ることはせず。
花の様子を一つ一つ確かめながら、こころ を抱いていく。
身などない体を。
月明かりの下、聞こえる吐息も魅せる貌も。
寄り一際美しく感じられて。
此度は優しくあろうと、花を乱すのも開かせるのも時間をかけて。
夜が明ける頃には、疲れないはずの体を壁に凭れさせて、花の体を誰にも渡さぬよう、腕に*抱いていた*]
[緋色に咲いた蝶、血濡れの朧月。
赤は欠け続ける
月に照らされ鮮やかで、
対であり
高嶺の花である
白い鳥は
ただただ、常世に在りて
見届ける。
つきり
と
胸奥と貫かれた傷が痛む]
[薄灰乱れても、床に落ちることは無く
有るはずの無い身体が受ける愛撫に、暴かれていく。
花は恥じらい、冬は躊躇いを相貌に映す。
吐息乱しながら、ゆるりと深く重なるくちづけ
巧みに誘われ、応える術を直ぐに会得し自らもと
袖に縋りついていた両腕を背へ回し、主の官能を呼び覚ましていく。
想う先は此処に、案ずる先は向こうに
獣は人と変わらぬ情を持ち、哀愁をうたった。
心暴く指先が優しければ優しいほど
降る雨は細く長く
其れはまるで秋雨のように。
一晩中囀った身は、くたりと疲れ果てた様子をみせて
主の腕の中で乱れた着物を整えながら、昨夜のふたりが
狭間へ浮かぶのをぼんやりと見ていた]
[冬もその主も
隔たりとおく。]
――――、 …
[唇が紡ぐ名前、
まだ音にならず。
狭間に遊ぶ蝶を探すように
白い指先を空に彷徨わせる。]
[鈴の音が聴こえる。
高嶺の
花は二つ 落ちた
しかし魔を払われた身に
暗い悦びは芽生えず]
……
[複雑な顔をして、瞳伏せる]
人間は嫌い
壊れてしまえば良い
そう……思ってたのに**
…―――
[にんげんはきらい。
過去形での小さな呟きが聞こえた気がした。
紫苑色の眸がゆっくり、瞬き伏せられた*]
…―――
…ひとも、ひとを、殺すのに
|
[揺蕩う夢は、遠き夢。
二人繋いだ小さな手、切りそろえられた黒い髪。 花咲く月夜の小さな庭で、砂の山を二人で積んで競って。
わたしのがくずれてしまったから、そなたもそれをわざとくずして。
されど、飾ろうとした蒲公英一輪は、わたしが奪って返さなかった。]
(10) 2010/08/08(Sun) 12時半頃
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…おは、よう……? [簾から漏れる昼の日差しと、それにきらめく蒲公英色の金糸の髪と。 寝ぼけ眼で、それへと白い手を伸ばし、淡くわらった。]
(11) 2010/08/08(Sun) 12時半頃
|
|
[人としての情、獣としての欲。 ふたつの心は互いに違う方を向き。
どちらも欲しいと思うのは、己の罪深き浅ましさ。]
(12) 2010/08/08(Sun) 12時半頃
|
獣の方が、情は深いのやも
……しれません。
[背を撫ぜる手、正面から首に腕を回して
主の膝の上、ぎゅうと抱きついた。
閉じた瞳の裏に、現世が映る]
私のこころは此処に
それから、向こうにも
どちらも大事
二つこころが
身を切り裂いて
やがてあちらにも、私は産まれる
けれど主さまが求める限りは
此処にも確かに有る故に
|
構わぬ。 …手元に戻らぬのも、きっと巡り合わせ。 時満ちれば、戻るでしょう。
[済まなそうに言う顔に笑って。]
かりょう、琵琶を。
(25) 2010/08/08(Sun) 13時半頃
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[受け取った琵琶を手にして、撥を取り。 奏でるは、かつての舞の勇壮な。
彼奴以外には討たれてなどやらぬ。 かつて競いし旧友(とも)以外には。
人の噂に流れて聞くは、 彼はとうとう気が狂れた。 視えぬ亡者と笑っていると。
猛る音色は風に乗り、 黄泉比良坂、千里を越えて、 彼奴の元へと届けと響く。
こちらを向いてくれるなら、 修羅と化していようと構わぬ。 それでも黄泉に囚われたままなら、 すべてを食らいつくし、滅ぼすまで。]
(32) 2010/08/08(Sun) 14時頃
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そうなるような、気はしていた。 双ッ花は、共に咲くべしと。
[二輪を手折ったと聞いた時から、 そんな予感はしていたから。
羨む気持ちがなかったとは、言えぬ 。]
(33) 2010/08/08(Sun) 14時半頃
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[――――入り乱れ
縺れ絡んだ蜘蛛の糸。
狼も人もがんじがらめな]
…朧さま……
[―――りん、と鈴の音。
掬うように重ねた手には
檳榔子染の髪結い紐が幻のように浮かび上がる。。
一度結んだきりのそれを
きつく握りしめた。]
|
届くものなら全て欲しいと、願うわたしが浅ましいだけ…
わたしの中では、イアンは今でも強敵(とも)だから…。
[恋しい者、愛しい者、共に高みを目指したき者。 思いの形は様々だから、どれか一つを選ぶことは出来ぬ。]
こんなわたしで、すまない。 [琵琶を脇に置き、華奢な体を胸元へと抱き寄せた。]
(40) 2010/08/08(Sun) 14時半頃
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…かりょう……
[焦がれ、染まって、変わりゆく。 そんな一つ一つの変化すらも、愛しい。 華奢な体が縋りつく。その腕に込められた淡い力が愛しい。]
(43) 2010/08/08(Sun) 15時頃
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[主の腕の中、薄らと艶帯びて笑む
花は哂いながら詠う]
――狂うたのは
人なりや
獣なりや
[哀切混じる声音]
人のなんとおぞましい
獣のなんと浅ましい
人間は、嫌い
けれど
でも
[歌は呟きにかわり、薄れ]
|
[いじらしく見上げる姿に目を細め、そっと耳元に顔を埋めて囁く。]
…かりょう、わたしの愛しい子……
[どうか、どうか…この子が立派に育つまで、引き裂き喰らわずに済みますように。]
(46) 2010/08/08(Sun) 15時頃
|
[握る手に口づけそして開く。
檳榔子染の結い紐と
いつか飾られた紫の蝶。]
…――――鳥は…
最期、あいに、なく
[愛に、哀に、会いに、
相に、――――
ロビンの歌うような声が聞こえた。]
……でも…?
[かききえた続きを
促すような呟きがある。
現世との狭間、
血塗れの獣がわらっていた。]
――――ひとと狼は
恐れあいながら
その癖何処か、似ているのか。
けもののようなひとも、
ひとのようなけものも、
狭間でゆらめくものも、
[―――眉を寄せた。
法泉に、頑固だなどと思われているなど知らず。]
――――己を殺したのはにんげんで、
――――切っ掛けを作ったのは獣の病の罹患者だ
獣はひとのように悼み
ひとが獣のように屠る
…何を憎めばいい
[衣をきつく握る。
常世へ落ちて後、いまだ鵠は膝を折ったまま動けない。]
己は、何を
[ぶつける場所に惑い、
痛みは堂々巡りで渦を巻く。
責めは何もできず散った自分自身へ向きもする]
――――…は…、
[俯いた。
―――りん、と小さく鈴が鳴った。]
|
…いや、今暫く。 [ここで騒ぎを起こすのはマズい。そう思うて、怯える子を腕の中へ。]
(55) 2010/08/08(Sun) 16時頃
|
恨む必要も嫌う是非もない。
人も獣もただ生きて死すのみ。
誰が大事であるのか。
必要なものは何か。
それだけわかっておればよいように思います。
[静かに口にして。花に身を寄せた]
けれど
でも
いとしいと
思う先もまた
人間
[促され、囁き返す]
……似ていたのかどうかは知らぬけれど
己に無いものを欲しいと
寂しくて
淋しくて
手に入らぬなら、壊してしまえと
狂ったのは、どちら
誰が駒鳥 殺したか
それは 噂
真実は誇張され
嘘が混じる
けれど
憎みたいなら
……主さま?
[傍で囁いていれば、静かな主の言葉。
見上げ、一度目を丸くして
頷いた]
――…けど、其れを
見つけるのは中々難しいんですよ。
ボクみたいに、隅に隠れて逃げていては。
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