270 食人村忌譚
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 01時半頃
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― 自宅 ―
あぁうん悪いね、頼むよ。
[>>1筋肉の少ない痩躯は、成人男性にしてはおそらくだいぶ軽いはずだ。 進に礼を言い、身を任せ、布団の上に身を横たわらせてもらう。 たいして広くない家だ、寝転がったままでも台所まで十分声は通るだろう。]
梅干しの壺、分かるかな。 漬物とか足りなかったら、床下に糠漬けがあるからー。
[ゆるく自分で足をもみながら、声をかける。]
(36) 2017/11/23(Thu) 13時頃
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……ん? あれ、僕のぶんまで作ってくれたんだ、ありがとう。
[>>2進が拵えてくれた握り飯は、少し不格好だった。 けれど自分は、この不格好な握りすらままならない。 ありがたくいただこうと、受け取って、一口目を頬張って]
……んぐ……。
[そこに、兄の戻る気配>>34を感じ、急いで租借し、呑み込んだ。]
お帰り兄さん。 うん、畦道で難儀してるところを助けてもらってね、お礼にご飯でもって思ったんだけど、逆に僕が握り飯を作ってもらっちゃったよ。
[兄は、さっそく台所へ向かったようだ。 進と話し、味噌汁を作っているような気配を感じながら、もくもくと握り飯を食し、少し薄い茶で流し込む。]
(37) 2017/11/23(Thu) 13時頃
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そうだね、いつでも来てくれて構わないよ。 兄さんが忙しい時でも、誰かいてくれれば僕も助かるし、進くんも食事ができるし丁度いいんじゃないかな。
[>>35兄の打算には気付かぬままに、相槌を打つ。 脚が病み始めた若い時分は、兄以外の人間に頼るなど、みっともないし申し訳ないと思い、散々兄に苦労をかけたし、自身も必要以上に苦心した。 だが年が経つにつれ、誰かを頼るという要領も得てきた気がする。
……しかし、そうして、常に施しを受ける身としては、同時に、それらをいかにして返そうかということも、考えてしまう。 いま自分ができる仕事といえば、兄の書物の整理や修繕、手伝い、あとは縄を綯うなど、家でできることが大抵だ。 女性になら、子種をという選択もあるかもしれないが、女自ら腰を振ってくれなくては碌に事を進められない、しかも病人の胤など、好きこのんで欲しがる者は、あまり多くないのではないだろうか。]
(38) 2017/11/23(Thu) 13時半頃
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[握り飯に、味噌汁も加わった食事は、質素ながら腹を満たすには十分だった。 兄以外と話しながらというのも久しぶりで、つい、飯をおかわりなどしてしまった。]
じゃあ、今日はほんと世話になったね。 また何かあったら、頼むよ。
[そして食事が済み、進を見送れば、またいつものように兄と二人の時間となる。 兄の、後片付けをする音を聞きながら、自身は薬を飲んでこうして横たわっていることくらいしかできない。]
薬、そろそろ減ってきたし。 明日あたりミナカタさんに頼みに行かないとなぁ。
(39) 2017/11/23(Thu) 14時頃
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………………。
[そして、ふと]
あのさぁ。 兄さん……。
……今夜は、いっしょに寝ても……いいかなぁ……。
[兄の背に、小声でそう呟いたのは。 昼間、進と話したことのせいか。 ただいつも以上に、どこか、兄は己のものなのだという欲求が強まっていた。
その肉も、血も**]
(40) 2017/11/23(Thu) 14時頃
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 14時頃
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[>>59不自由な身で這い寄って、兄の服の袖を引く。]
うん……。 今夜は冷える、から……。
[そんな言い訳などしなくとも、兄が拒まないでくれることくらい、知っている。 兄は、いつだって優しい。 慈しむような眼差しの奥に、何が潜んでいるのかなんて、知らなくていい。]
………………。
[熱が溜まっているのかと問われれば、俯き加減のままに、こくりと頷く。 脚と一緒に、こちらも使い物にならなくなっていれば、いっそ気も楽だったかもしれない……いや、きっとそれでも、求めてしまう慾は変わらなかったろう。]
(67) 2017/11/23(Thu) 21時半頃
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仕事で疲れてるのに……ごめん。
[詫びながら、けれど縋るように、兄の肌に両手で触れる。 女と交わることが嫌いなわけでもないし、胤を注ぎたいという欲もある。 ただ兄との行為は、また別なもの。 ときに注がれ、ときに注ぐ精は、けして子を成すことはない。 ただ代りに、強い充足感を与えてくれて、独占欲を満たしてくれる。]
(69) 2017/11/23(Thu) 21時半頃
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[夜闇に溶ける艶声は、女のものより、幾分低い。
けれど時折、高く そして切なげに、掠れる。*]
(72) 2017/11/23(Thu) 21時半頃
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― 翌朝 ―
[兄と情を交わした翌朝は、昼近くまで、横たわったままのことが多い。 今朝もまた、そうだ。 兄の姿は……探すだけ、無駄だろうか。]
あぁ、しまった。 今日はリツのところに、車椅子の調子をみてもらいに行こうと思ってたのに。
[ずる、ずると布団から這い出て、卓袱台に手をつき、半身を起こす。 昨日の味噌汁の残りは、まだあったろうか。 冷たいままでいい、とにかく腹に何か流し込んで、家を出るとしなくては。]
(76) 2017/11/23(Thu) 22時頃
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あぁ、そういえば……。 ミナカタさんのところにも、行かなくちゃならないんだった。
[>>86兄が出がけにそう言った。 うつらうつらしながら頷いたまでは、記憶にある。]
先にミナカタさんに……。 いや、リツのところへ行って、直してもらってからのほうがいいかな。
[まぁ出てから決めよう。 どうせ途中までは同じ道だ。]
(89) 2017/11/23(Thu) 22時半頃
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 23時頃
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[がた、ぎしぎし。 古びた車椅子の動きは、悪い。 そのうえ車輪が噛んだ枯れ草が、余計に動きを悪くしている。]
あぁ、もう。 まいったな……!
[愚痴ったところで、どうにもならないのは承知だが。 声に出さなければやっていられない時もある。
そうして、普通の人の倍以上の時間をかけて、ようやっとリツの家の前までたどり着いた。]
(124) 2017/11/23(Thu) 23時半頃
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― リツの家の前 ―
おぉい、リツ! リツー!
[呼ぶ声は、だいぶ離れたところから。]
椅子の調子が悪くてさー! ちょっと、みてもらえないかなー!
[声は彼のもとまで届いてくれたろうか。*]
(126) 2017/11/23(Thu) 23時半頃
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[>>134リツが駆け寄ってくれるならば、そこでおとなしく待つとする。 尤もそれを期待して、大きな声で呼んだのだが。]
やぁこっちこそ、忙しいところすまないね。 そうなんだよ、車輪が軋んで、これでは腕が疲れてしまう。 錆取りの油をさすくらいならできるんだけどさ、そんなもんじゃ追いつかないみたいで……。
[椅子を押してもらいながらあれこれ話して聞かせ、ついでに縁側に運んでもらう。]
この後さ、ミナカタさんのところに薬を取りに行かなくちゃなんないんだけど。 ガタが来た車椅子のままじゃ、日が暮れちゃうからね。
[そんな、本気交じりな冗談など言いながら、ひとまずは彼の作業を見守るとしよう。]
(145) 2017/11/24(Fri) 00時頃
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ところでリツ。 車椅子修理の礼に、僕は、何をすればいいかなぁ。
[他人を頼ることは多い。 けれど頼るばかりではなく、出来ることは返さなくてはならない。 ろくに動けない、何もできない役立たずとなれば、あとはせいぜい儀式に使ってもらうしかない身なのだ。おそらく今でさえ、兄がいなければ危ういのだから。
ただそうなれば、兄にこの身を食べてもらえる。 血肉として、ずっと共にいられる。 それも悪くはないと、思うことはあるのだけれど。]
まぁ、大したことはできないんだけど、、さ……
…………。
[縁側にかけたまま、ぽつぽつと話して。 やがて、まだ疲れが残っていたのか、うとうとと舟を漕ぎだした**]
(152) 2017/11/24(Fri) 00時半頃
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 00時半頃
抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 22時頃
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─ リツの家の縁側 ─
そんなことでいいなら、いつでも。 僕は年中、彼に世話になってるからね。
[>>167それにしても、面白い呼び方をするな。 リツがミナカタを「医者先生」と呼ぶたび、思っていた。
そうして。 カタカタ、カンカンと響く鉄の音を聞いているうちに。 いつのまにか、浅い眠りにおちていて……]
(217) 2017/11/24(Fri) 22時半頃
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…………はっ!
[ようやく意識が戻ったのは、リツが腹を鳴らすちょっと前。]
あ、あぁ、ごめん! 陽気がいいもんだから、つい。
[目元を軽く擦りながら、傍らのリツに照れ笑いなどしてみせる。 車椅子は、とうに修理が終わっていたようだ。]
えぇと……今何時くらいだろう。 助かったよ、これでミナカタさんのところへ行くにも不自由しなくて済むや。 ありがとう。
で、ついでにもうひとつ、悪いんだけど……。
[礼を言い、ついでに直ったばかりの車椅子に乗せてくれと、手を伸ばした。*]
(227) 2017/11/24(Fri) 22時半頃
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─ 道中 ─
[修理してもらったばかりの車椅子は、先程までとは比べ物にならないほど、車輪が滑らかに動いてくれた。 リツに改めて礼を言い、カラカラと、軽い音を立てて、彼の家を離れよう。]
医者先生、いてくれるといいんだけどなぁ。
[なんとなく、リツと同じ言い回しなど。 なにせミナカタは、運が悪いと、やれ往診だやれ薬草採取だで、入れ違いになったりするのだ。]
(230) 2017/11/24(Fri) 22時半頃
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[からからと進む道中、どこからか、出鱈目な歌>>#2>>#3が聞こえてきた。 愛理だろうか、変な歌だなと思いはしたが、そちらへそれ以上の意識を向けることはなく。 ミナカタの家へと、急いでいたが]
あ。
[>>239どうやら今日は、運の良い日のようだ。]
ちょうど良かったミナカタさん。 これから、薬を貰いに行こうと……
んん? 兄さんが? あぁ兄さんなら今日も学校なはずだけど、なんか言ってた?
[ミナカタと兄、そして源蔵が、道中で何を話していたかなどは知らないから。 何だろうと、きょとりと。]
(245) 2017/11/24(Fri) 23時半頃
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いやそろそろ薬が心許なくなってきたんでね。 切らさないうちに、もらっとこうと思って。 それと時間あるようなら、治療もお願いしたいんだけど。
[>>241これから向かうところだったと伝え]
それから、リツから伝言を預かってるんだ。 「医者先生、ご無沙汰してます」だそうだよ。 僕と違って、彼はあんまりミナカタさんの世話になることはないからねぇ。
そうそう、車椅子をみてもらったんだよ、リツに。 この間までひどく動きが悪かったんだけど、おかげでずいぶん軽くなったよ。
[そしてちょっと嬉しげに、車輪を撫でた。]
(248) 2017/11/24(Fri) 23時半頃
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 23時半頃
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なんだ、聞いてたのか。 それにしても兄さんは心配症だなぁ。
[>>257言伝などなくとも、ちゃんと貰いに行くのに、と。 しかしすれ違わないで済んだのは、ありがたい。]
寒くなってくると、特に膝がひどく痛みだすことが多くって。 昨日も、道中だいぶ病んだし……
たしかに。 僕が行ったときも、リツは元気そうだったし、とても丁寧に修理してくれたよ。 兄さんからも、また色んなことを教わりたがってたし。 進もだけど、リツも勤勉だよねぇ。
[学びに関してあまり積極的でない青年には、ふたりは、少し眩しくも思えた。]
(264) 2017/11/25(Sat) 00時頃
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最近の気になるところ……かぁ。
さっきも言ったけど、冷えてきたせいか、特に関節が痛むことが多いかな。 あと、つま先の感覚が、少し薄い。
ほかは、尻と背中に、少し床擦れができかけてるみたいなんで、軟膏とかあったら助かるなぁ。
[車椅子の背後をミナカタに預け、現在の症状をぽつぽつと話していこうか。*]
(270) 2017/11/25(Sat) 00時頃
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ハハッ、そんな大袈裟な。 けど、僕が死んだときは、まず兄さんに、満足するまで食べて欲しいと思ってる。 兄さんが死んだら、僕が……本当は、すべて食べてしまいたいけど、それは無理だろうからね。
[>>272軽口に乗せはするが、あながち、嘘ではない。 兄は、自分だけのものなのだ。 強い執着心は、周囲には、冗談交じりで零すことが多いけれど、兄と二人のときには隠すことはない。]
膝掛けをかけたり、火に当たったり、なるべく冷やさないようにとは思っているんだけどね。 あぁ、腐ってしまったら大変だ。 兄さんに食べてもらえなくなってしまうよ。
[>>277気遣うように押される車椅子。 床擦れの原因、今思えば、あの軋む車椅子で無理やり動いていたせいもあるかもしれない。]
(285) 2017/11/25(Sat) 00時半頃
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─ ミナカタの家 ─
だいじょうぶ、寝返りくらいなら自力でもできる。 兄さんには毎朝早くからの仕事があるんだし、あまり無理はさせられないよ。
指も……ん、わかった。
[>>278薬が処方されるのを待つ間、言われたとおり、足の指先を擦るのだが。 やはり、以前よりだいぶ感覚が薄い。 色も少し黒ずんできているし、なにより、皮膚が硬いのだ。]
いやぁ、僕なんかに役に立てることがあるのかね。 まぁでも、こうやって、人より多く施しを受けているのだし、できることはなるべくやろうとは思っているけどね。
[>>279忠告には笑って頷き、暫し、薬をすり潰す音に耳を傾ける。]
(289) 2017/11/25(Sat) 01時頃
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最近の面白い話かぁ。 面白いかどうかは分からないけど、昨日、畦で難儀していたところを、進くんに助けてもらってね。 そのときに話したんだけど、進くんはまだ脳髄を食べたことがないらしいね。 あぁあと、櫻子がまた孕んでたって、僕初耳だったなぁ。
[ごろんと寝転んだままで話すのは、昨日のこと。 それと……]
そういえばミナカタさんも聞いたかな。 愛理が、また変な歌を歌いながら歩いてたねぇ。
[あの歌は何なのだろうと、ぼんやりと**]
(292) 2017/11/25(Sat) 01時頃
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/25(Sat) 01時頃
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