88 吸血鬼の城 殲滅篇
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/02(Wed) 00時半頃
負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/02(Wed) 01時頃
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── 大広間 ──
………、
[闇の底から持ち上げられるように意識を取り戻して、初めに感じたのは自分を支える堅牢な肉体。 混じり合う闇の気配。
接した肌を通して声が響く。]
(何を話している── 誰と話している──)
(49) 2012/05/02(Wed) 09時半頃
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[瞼を開けば燭の明かりは目映く、世界は紗幕の向うにあるごとく、それでいて指先で触れているように明瞭に知覚された。
血と炎の宴──
断ち砕かれた肉体が再生しているのも、魂がどこか深く冷たい鎖に繋ぎ止められていることも、まだ霞む深遠な歴史の宿りも自覚する。]
(52) 2012/05/02(Wed) 10時頃
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[自分の状態に気付けば、ゆるく握った拳でヘクターの逞しい背板を叩き、床に下ろせと合図した。]
(54) 2012/05/02(Wed) 10時半頃
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[安定の良すぎるほどに確保されていた躯が、不意に宙に投げ出される。 軍馬に振り落とされるにも似て。
遠心力を使って腰を捻ると、ヒューはそれこそ猫のように軽やかに足から着地した。 人であった頃よりはるかに高い身体能力。]
(56) 2012/05/02(Wed) 11時半頃
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[軽く腰を落としたままの姿勢からヘクターを振り仰ぐ。
自分がこの男に何を捧げ、何を奪われたか── 疼きにも似た感情が響むままに、今は剣すら失った拳を、肌と温度を同じくする大理石へと触れる。]
我が君──、 血盟騎士《ブラッドナイト》、ヒュー・ガルデンは御前にあり。
(57) 2012/05/02(Wed) 11時半頃
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[主の言葉ととにも首筋に走る熱。]
…御意。
[自分の足で立って振り向けば、そこは城の大広間と知れた。 燃えるバリケードに大きく突破口が開けられていることを除けば、状況にさほどの変化はない。 むしろ、変容を遂げたのは自分の方だった。]
(62) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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[視覚とは別の感覚が伝えてくる。 それぞれに大きさは違えど命の脈動をもつ討伐隊の3人の男。 レオナルドがまだ生きていたことを別段の感慨もなく把握した。
いずれも生かしては帰さぬと決めた相手。 今は、そこに別の必然も混じる。
その血が必要だ。 力を得るため、そして、クラリッサを甦らせるため。]
(63) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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[人間を見やる琥珀の双眸の奥に、獰猛な緋が潜む。]
(64) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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──委細承知。
[去り行くヘクターに応じるは、ただ一言。]
(66) 2012/05/02(Wed) 13時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/02(Wed) 13時頃
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── 大階段 ──
[レオナルドが暗い情熱をたたえた視線を投げて、ヘクターの後を追う。 まだ目覚める前だったから、ここでどんな交渉がなされたのかは知らない。 だが、手出しは無用と命じられた。]
……。
[階下へと振り返り、大広間に残るふたりを見やる。 金髪の剣士、修道士。
彼らを階上へは行かせない、と立ちふさがる。]
(79) 2012/05/02(Wed) 20時半頃
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[「私が必ず君を護ってみせる」と、傍らの修道士に約束する金髪の男の姿に、ふつふつと苛立ちを掻き立てられる。
それは、自分が果たせなかったこと。 側にいながら、むざむざとクラリッサを死なせてしまった。 その苦しみが狂おしいほどに満ちてくる。
ならば。
この男に与えるべき絶望は──定まった。]
(82) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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[心臓の位置まで裂けてぶら下がる鎧が邪魔だと、血に染まったシャツごと手で掴んで引き剥ぐ。 そのまま壁際に投げ捨てた。
外気に晒された肌は寒さを覚えることもなく、どこか鉱石めいて無機質に白い。 自分の躯ではないように感じたが、いずれ慣れるだろうと漠然と思った。]
(83) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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…剣を。
[呟きながら右の手首に指爪を添え、鋭利なそのエッジで細く脈を開いて血を導く。 先ほどヘクターがそうするのを見た、その模倣だが、使ったのは闇ではなく血。 ヒューの躯に注がれた、闇の力をふんだんに含んだヴァンパイア・ロードの血はヒューの意志のままに武器を形づくる。 ガーネットにも似た深紅の波刃剣が、しっくりと手に馴染んだ。
それを心地よいと感じたのは剣士としてか、魔としての性か。]
(84) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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[戦いの支度を整え、まずは小手調べとばかりに、「竜の牙」を握り込んで血を与え、大広間へとバラ蒔く。
地に触れるや生じるのは、レオナルドが警告したとおり骨の兵士たち。 だが、その色は風雨にさらされた骨の色ではなく──澱む紅をしている。 強く魔の気を帯びた血塗れの竜牙兵だった。
死者のレギオンは生ける者を弑さんと突進する。*]
(85) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/02(Wed) 21時頃
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またそれを言うか。
[いまだ自分が吸血鬼である自覚のないヒューは、ムパムピスの言葉(>>91)に暗い衝動を高める。 クラリッサを魔物と断罪し、今また神の名のもとに困難を退けんとするその信念。
どこか似た者同士であることは気づかぬまま。]
(103) 2012/05/02(Wed) 22時頃
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[死者を神の元へ帰す祈り(ターン・アンデッド)を唱えるムパムピスの声に、感情など死に絶えたはずの竜牙兵たちがおののく。
そして、弾けた光の束に捕まった竜牙兵たちが脆くも崩壊するのを見れば、ムパムピスの信仰の力は本物だと認めざるを得なかった。
いくら竜牙兵を呼び出したところで、ムパムピスに触れることすらできずに一掃されるだろう。]
(114) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[ならば、自分が斬るまでのことと、下段に剣を構えたヒューの行く手には金髪の剣士が立っている。
そのたたずまい、相当、場数を踏んでいると見た。]
(120) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[金髪の剣士と対峙しつつも、視界の端に、修道士の動きは捕えている。
彼がラルフに被せていた白布を引き剥がしたのは見ていたが、さして脅威とはみなしていなかった。
むしろ、床に溢れたラルフの血の匂いに惹かれる。]
(126) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[祈りに触れてすでに攻撃本能を失っていた竜牙兵が、浄化の炎に包まれる。 思わず左腕をかざして目を守ったのは、その光があまりに強く感じられたから。
言い知れぬ嫌悪感が募る。
瞬間、金髪の剣士の一撃が風を裂いて飛んで来た。 その刃は聖別されたものであったか?]
(135) 2012/05/02(Wed) 23時頃
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[初撃から首筋を狙ってくる相手。 充分な勢いの乗った攻撃だった。 身を引いても間に合わない。 とっさに判断すると、かざした左腕の篭手で剣を受け、流す。 が、予想外の白い痺れが腕を貫いた。]
──… っ ?!
(143) 2012/05/02(Wed) 23時頃
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[それでも、動きを止めるわけにはいかなかった。 斬られたくなければ。
そのまま、深く礼をするように上体を折ってもんどりを打つと、踵落としに男の肩を狙う。]
(144) 2012/05/02(Wed) 23時半頃
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[手応えはあった。
踵落としの大技から死に態となった身体を横に転がして素早く立ち上がり、距離をとる。 その左手は肘から先が禍々しい闇に染まり、痺れていた。]
…穢れ …だと
[自分の肉体から血を抜き取った後、傷を塞いだヘクターの力がなんであったのか、ようやく合点がいった。]
(151) 2012/05/02(Wed) 23時半頃
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ああ、 この城に、吸血鬼は──
確かに 居たんだな。
[薄く唇を引いて、笑む。]
(152) 2012/05/02(Wed) 23時半頃
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[金髪の男が投げた木片──聖属性のそれが、今は明らかに凶器に見える。
大きくステップを踏んで飛び退った。 そのまま、じりじりと距離を稼ぐ。
ただし、剣士が追撃を諦めるほどにではなく。
巧妙に、修道士と彼を引き離すべく誘う。]
(161) 2012/05/03(Thu) 00時頃
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