204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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[視線を下ろした先。肩口の布。 指で強く引いて傷口を晒した。
糸で規則正しく縫われた赤い線。周囲の肉はうっすらと腫れているよう。ぺろりと舐めた。この下はもっと美味しいことを覚えている。
鍋で焼いた腕肉よりも、もっと美味しい場所があるのを知っている。トレイルには無用になった所。
肩肉ではなく、その場所を目の前で喰らったら――…分かってくれるだろうか。彼よりも――君が。]
(380) 2014/11/23(Sun) 21時半頃
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……
[思考と欲は、後ろからの声に遮られた。>>372
振り向かずとも誰かは分かる。 不自然に風の鳴る音が、聞こえやしなかったか。>>365
何も言わず、ゆっくりと顔だけ振り返る。徐々に体を開いて、トレイルを背に隠すように。]
(381) 2014/11/23(Sun) 21時半頃
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――…そうだね。
欲情してるよ。衝動は、僕の中に確かにあるから。
[逃げるから追い掛ける。 ニコルの考えた通りの、不幸に至る道を。
背の後ろから伸びた手は、ノックスではなくフィリップを求め。
トレイルへと差し出される手を避けるように動いても>>382、手と手はノックスを挟んで繋がる。
愛し子の表情は分からない。 けれど、見たくないと――思ってしまった。
蘇るのは、ニコラとディーンの。]
(388) 2014/11/23(Sun) 22時頃
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その手を、離してくれ、 フィリップ!
[これは悪い手だから。 もう一方の手に握られたナイフを見て、苦み走った表情を浮かべた。
悪い場所を選んでしまったと思う。]
(391) 2014/11/23(Sun) 22時頃
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[握りあう手を強引に解くように、手の甲で払う。 フィリップの微笑み、優しい声は猫を撫でるよう。
よく知る表情は、まるで鏡のよう。]
……何のつもりかい? フィリップ。
トレイルを殴った手で、首を絞めた手で! 今更のように気遣って。
[初めて聞く冷えた声。]
……君に、言われる謂れは ない。
(401) 2014/11/23(Sun) 22時半頃
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[悪い声だ。
トレイルを何処かへ誘おうとする。
だから。]
トレイル!
[行くなと声をあげ、羽ばたく鳥の、赤羽根に。 目を奪われないよう、フィリップの両肩を掴むように腕を伸ばした。
1歩、踏み出す。]
(406) 2014/11/23(Sun) 22時半頃
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……トレイルの話じゃないよ。
フィリップ。―――君が、何をするかという話だ。
[払う手をずらされた。栗色の髪に触れて。 ナイフを持って。背に落ちる汗の一筋。>>404
こんな笑い方をする子だったか。こんな喋り方をする子だったか。>>407]
もう一度だけ言うよ、フィリップ。
[背に庇っていたトレイルは、今は彼の傍。]
(409) 2014/11/23(Sun) 22時半頃
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僕から、トレイルを拐おうと するな!
[掴めたと思ったのに、服の裾すら逃げていく。 おどけた声とは反対に、ぐっと唇を噛む。]
フィリップ、君がそのナイフを突き付けたいのは、僕だろう!!
[己の胸に手を当てる。ラルフのナイフが至ったところ。>>410 さわるな、ふれるなと睨み、1歩、また寄る。]
(413) 2014/11/23(Sun) 23時頃
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……トレイルを唆しているのは、フィリップ。君だ。
[ラルフの好意は心地好かったのに。 それを利用した。
彼を犠牲にしても、トレイルの願いを叶えてあげた。 それでも彼は――…。
居間の方から響く音に、びくと肩を震わせる。>>416]
………何を、考えてる?
……フィリップ。君はシメオンを――…どうした? あの子はニコラの友達 だった。
[まだ切っ先は愛し子に向けられているから。]
(420) 2014/11/23(Sun) 23時半頃
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ぐ、
[ノックスの足が1度止まった。 選んでない――…。
栗色の髪。見えないシノワズリ。 唇が見えないから、透明な声も――聴こえない。]
……とれ、いる?
[恐る恐る、声で窺う。]
(427) 2014/11/23(Sun) 23時半頃
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[トレイルの名を呼ぶ度、ニコラの表情が曇った。 遠い昔。
不貞腐れる様が可愛くて。可愛くて。仕方がなかった。]
……ニコラにナイフを向けてる者は、居ないよ。 フィリップは、君一人。
[それに、居間にはバーナバスが居る。プリシラに危害が及ばない限り、余程の事がなければ助けてくれるはず。]
(433) 2014/11/24(Mon) 00時頃
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[本当の気持ちと、ホントウの気持ち。建前の気持ち。
わからなぁいと言うニコルの髪を、あの時撫でた。>>374]
嘘。
[ニコラはもう知っている。*]
(435) 2014/11/24(Mon) 00時頃
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[止まった足を動かし始めた。
1歩ずつ、近付いては離れ。 ノックスは護りのような首飾りを握った。]
……ドナルド?
[彼の否定する声が、耳に残っていた。>>355]
僕が行ったら、トレイルを 殺すのだろう? 僕を……生かす? は。報復のつもり?
(439) 2014/11/24(Mon) 00時頃
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[先祖返りの、遠吠えのあるのを知らないノックスは、ハッタリだと断じた。]
仮にそうだとして、……フランシスが、それを見逃すとでも?
ニコラを害したドナルドを、フランシスがよくやったと、いい子だと褒めるとでも?
……ホレーショーも、だ。 彼は、君にそんなことを……許す男、だったのかい?
(444) 2014/11/24(Mon) 00時頃
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事故? それこそ何を言うんだい。 僕がラルフを殺したのは――…事故じゃあない。
……綺麗事? 違うよ、これは事実でしょう?
[ゆるゆると、ノックスの表情に笑みが生まれる。 口端を持ち上げて。]
そう、君は、僕と『同じ』になるんだよ。 反吐が出る程の、僕とね。
ラルフが『同じ』ことをしてと、君に頼んだかい? そんな子には見えなかった。
[そうだろう?と首を傾げ。
ぐっと引きちぎった首飾りを、フィリップ目掛けて――彼の頭上目掛けて投げつけた。
黒曜石の、折角バーナバスが選んでくれたのに。]
(450) 2014/11/24(Mon) 00時半頃
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[今が>>451 好機とばかりに、フィリップに駆け寄ろうとした足が途中で止まった。]
……ドナ。
[はばたいた鳥が向かった先は、バリトンの。>>448]
……悲しませるのは、厭わない と?
(464) 2014/11/24(Mon) 01時頃
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[フィリップの荒げた声。 あぁ、そちらの方が君らしい。 からからと回るからくり時計のような、君よりも。
同じになっても良いと言う。
ふと、視界の端に幼少のラルフが見えた気がした。 珍しく悲しげな憂いた表情。それをそのまま、告げただけ。]
同じ悲しみだと、―――本当に思っているのかい?
[あの、彩のない世界。けれど、悲しみなんて浅い深いなど関係がない。悲しい。たった一粒の想いが、全てだ。]
(480) 2014/11/24(Mon) 01時半頃
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[首をゆっくりと傾けた。 そうして位置を確かめる。ドナルドと、フィリップと。]
……ニコラが、話したのは、 きっと恋しがっているせいだ。
[ニコラの傍から、離れたから。>>452 僕だけが特別だと告げる声も、拾ったばかりのトレイルの髪を引っ張る手も、綺麗だと眼球に入れた指も。求めるものは、実に簡単な、1つの。]
その理屈が通るなら、僕がフィリップを殺すのに問題がないことになる。
何を。あの時、僕も含めて居間にいた皆が、見逃したじゃないか。 寧ろ可哀想だと、憐れに思われるべき だ。
フランシスは……叱るだろうね。心配をさせたって。 君が居なくならなくて良かったって、言うかも知れない。
[すれ違いざま。彼にかけた言葉を思い出した。 だれでも、我が子が可愛いのだ。]
(482) 2014/11/24(Mon) 01時半頃
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トレイル!?
[暴れるトレイルに、まだ手は届かない。目前に立つドナルドに向けた表情は、焦りを乗せ。>>459>>468]
遊んでいる暇は、 ないんだけどなぁ…? ドナ。
[ぶつける音を聞いた。階段から落ちた音を聞いた。 ノックスと――…呼ぶ声を、聞いた。]
(485) 2014/11/24(Mon) 01時半頃
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ノックスは、ドナルドの傍により、トレイルが無事か確かめたいと訴えた。
2014/11/24(Mon) 01時半頃
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[知らなかったとはいえ、君も同罪だと――言及した言葉に反応は薄い。 あの日、あの時、あの場所で。>>489
開こうとした口を一度閉じた。]
保護者がどんな反応をするか、その先を想像するのに意味はあると思うけどな。 僕の想像と、ドナの想像と―――…
(498) 2014/11/24(Mon) 02時頃
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っ、暇だろう? ほら、早くど……!
[もうすぐ 何だって?>>492]
トレイル!
[階段の上から見えた光景は。倒れたトレイルと、何やら血で綴られたもの。 喉から出たのは悲鳴。
前に乗り出した身は、ドナルドの腕に止められた。>>495]
此処からじゃ、見えない。
………分かった。ドナ。君は僕の首に手をかければいい。 そうすれば、僕が何をしても 止めらえるだろう?
[両手を広げ。さぁ、と促す。]
(500) 2014/11/24(Mon) 02時頃
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……僕は、ただ。ニコラが殺されるのが許されるものだと、言われたくなかっただけだ。
これ以上 フランシスを悲しませる事を、 君にさせたくない だけだ。
[そう思うことも、想像だと笑うかい?>>499
白布の首輪を付けさせられたノックスは、階段を足早に降りる。>>508
包帯とも革とも鉄枷とも違う感触。 弓を番えたフィリップをちらと見てから、トレイルの傍にしゃがみこんだ。]
トレイル…… しっかり。
(513) 2014/11/24(Mon) 02時半頃
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……な んだい。やめて くれ。そんな まるで…
[最期の ような。 肩から足から。新たな血を流していた。痛ましい。 それでも床に書き付けられていく文字。必死に伝えようとしているものがある。
止めようとして……ノックスは、上げた手をトレイルの背に 置いた。 ここは寒い。 そうして、トレイルの側から体を寄せて、目を寄せて 一文字漏らさず読んでいく。]
(524) 2014/11/24(Mon) 02時半頃
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[僕がラルフの名を出したら怒るだろう? と眉を下げ。布が巻かれていく様を見ていた。 一重、二重…… あぁ、早く。>>519
服がトレイルの血に染まる。 芳しく、舐めたくなる衝動も今はなりを潜めていた。]
……そう、か。僕のせい か。困った な。
可哀想って、 トレイル まで言うんだな。
[こんな形で失ってしまうのは。君の血が、こんな風に流れていくのは。 ただあやす様に背を撫でていた手を、止めた。>>520
チャンスを。我儘なお願いを。]
(532) 2014/11/24(Mon) 03時頃
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―――…トレ イル
[永遠に、この四つの音を。]
(535) 2014/11/24(Mon) 03時頃
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[『いつか僕もノックスを……』>>523
そこから先は、読めなかった。 だから、トレイルの身を抱え起こし、動こうとする唇を見た。
ズキンとした眼の痛みに、強く両目を瞑る。>>507
開いた時にはトレイルの顔からは血の色が引けていて。両頬を包んで温めようと。
首輪は緩んでいるのに、息が苦しかった。>>528]
(540) 2014/11/24(Mon) 03時頃
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……―――っ
[額を合わせ、ノックスは声を上げて泣いた。 ぽたと雫がトレイルに落ちる。 フィリップとドナルドが去っていく。足音が 遠ざかったから ノックスの傍にはトレイル だけになった。>>536]
……トレイル。
[あぁ、君が生きているうちに。 この音だけは許して欲しい。]
(547) 2014/11/24(Mon) 03時半頃
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―――…愛している よ。トレイル。
(548) 2014/11/24(Mon) 03時半頃
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[顔を寄せて、唇を塞ぐと舌を絡める。 もう声を鳴らさぬものならば。 口内に導いた舌のその根元、やんわりと牙を立ててシノワズリを開かせようと瞼を押し上げ―――噛み切った。
何の為か、まだ分かるかい?
窒息させてしまわないようにと気遣いながら、 こりとした感触と共に 命の欠片を飲み込んだ。**]
(549) 2014/11/24(Mon) 03時半頃
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『きっとかみさまが、こえをなおして、くれるよ』
[雫を指の腹で拭い。 ゆっくりの掌に文字を綴った。
こうしてトレイルに語りかけられないのは、不便だとも思った。]
(559) 2014/11/24(Mon) 04時半頃
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