208 【突発誰歓】ーClan de Sangー【R18薔薇】
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ー自室ー
まだいたのか……
[吸血鬼の部屋を妖精が訪ねてきた。 ライジから真相を聞いただろうに今更何の用があるというのか。文句でも言いに来たのだろうか。]
どうしたんだ、ジリヤ?
[まるで我が子にでもするように、常のように優しく穏やかな声で問いかける。]
(1) mikenek 2014/12/30(Tue) 09時頃
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薬……どうして? 君は自分は吸血鬼でないともう知っただろう?
[彼が何故薬を要求するのか分からなくて尋ねる。]
私は吸血鬼で……だから、皆、 出て行ってしまうのだと……
[吸血鬼の頭の中には「彼が生きたいが為だけに薬を要求しているのではないか」と勘繰る脳はない。 取り敢えず言われるがままに彼に錠剤を渡そうと机の引き出しを開け、小瓶を取り出し、蓋を開けて錠剤を取り出そうとしたところで、]
あっ。
[バラバラと錠剤を零してしまった。 机の上と、ジリヤの足元とに散らばる。 椅子から立ち上がり慌ただしく拾い始める。]
(9) mikenek 2014/12/30(Tue) 19時半頃
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ー自室ー
[三度目のノックが吸血鬼の部屋に響く。 一時に皆で来れば良いのにと思ったのか、それとも未だにクランに人の残っていることを不可解に感じたのかは定かではないが、吸血鬼は僅かに眉を顰めた。]
入れ。
[吸血鬼は椅子に座ったまま、入室を許可した。自らドアを開けようという気は毛頭無いようだ。]
(43) mikenek 2015/01/01(Thu) 14時半頃
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そんな囀りを齎す為だけにここまで羽ばたいて きたのかい、美しいカナリアよ。
[戸を開けて入ってきたニコラスの髪が流れる様を追い。]
さあ。 ただ、独りの日々を思うととても寂しくなるから、 これが楽しいという事だったのだろう。
[静かに瞬きをする。
永遠を望むことの何が悪かったというのだろう。 悲しいこと、寂しいことは嫌だよ。
ただ……少しばかり疲れた、と吸血鬼は思った。 永遠に完璧な世界を保ち続けることに。]
(45) mikenek 2015/01/01(Thu) 15時頃
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私を喜ばせるため?
[吸血鬼はただ我が子に死なれるのが悲しいから薬を与えただけだ。それが自分のためになるのかと吸血鬼は初めて自覚した。]
さあ?君にとっての正解など私は知らないな。
ただ選択肢を私に委ねるようでは、 それこそ君は人形扱いしかされないであろう。
[吸血鬼はそう言い放ってから、ニコラスの薄い色の瞳を見つめて躊躇いがちに尋ねた。]
我が子達は、 私と一緒にいても幸せではなかったのかな……?
[今まで聞いてみようとも思わなかったその質問を尋ねる気になったのは、吸血鬼の内でも何らかの変化が起こったのか。]
(53) mikenek 2015/01/01(Thu) 16時頃
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そうか。
[ニコラスの答えを全て聞いて、吸血鬼は静かに。]
私と同じように永く生きれば…… 私の気持ちを分かってくれる者が増えると 思っていた。
[吸血鬼が口を開くたびに白い牙が照り返す光がちらつく。とても悲しそうな口調なのに、吸血鬼は無表情を保っている。]
人間の真似をして、 ただ一緒にいれば家族なのだと思っていた。
[吸血鬼は椅子をぎしりと軋ませると、立ち上がる。]
おいで、ニコラス。
[吸血鬼は小さく名を呼んでニコラスを近くに来させる。彼が近づいて来たのなら、差し伸ばした手を彼の頬に添える。]
(58) mikenek 2015/01/01(Thu) 21時頃
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私は我が子の血を吸ったことはないし、 人間を死なせるまで吸血したこともない。
[だから、彼を苦しませないようにするならこの部屋を汚すことになるだろう。彼のシャツの首元のボタンを解いて邪魔をするものがないようにする。]
おかしいな、君さえいてくれれば私は孤独ではないのに。 私はどうしてこのような事をしているのだろうね。
[吸血鬼は自嘲するように呟くが微笑みすらその顔にはない。 吸血鬼の長い爪がニコラスの白い喉元に当てられる。]
すぐに終わるから、目を瞑っていなさい。
[吸血鬼の爪は、何よりも鋭い刃物となって、 美しい金髪の我が子の首を真っ二つに──
──裂いた。
──紅い華が咲く。]
(59) mikenek 2015/01/01(Thu) 21時頃
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[吸血鬼はもう鳴かないカナリアの血に塗れながら、彼が息をしなくなるその瞬間までその身体を掻き抱いていた。*]
(60) mikenek 2015/01/01(Thu) 21時頃
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済まない……。
[ニコラスの最期の礼に、 吸血鬼は彼の首を掻き切った後で答えた。
吸血鬼は悲しそうな顔も 微笑みも浮かべていなかったが。
涙がその頬を伝っていた。]
(63) mikenek 2015/01/01(Thu) 21時半頃
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ー中庭ー
[吸血鬼は今では血だけではなく泥に塗れていた。 ハワードの申し出を断り、代わりに新しい服を用意させに走らせて、墓穴は一人で掘っていた。]
ニコラス……安らかに。
[人間を弔う方法など吸血鬼は知らないが、吸血鬼なりの弔いの気持ちを込めて墓穴に寝かせたニコラスの死体に囁いた。]
(66) mikenek 2015/01/01(Thu) 22時頃
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[白い月だけが吸血鬼と喪われた吸血鬼の子の二人を見ていた。*]
(67) mikenek 2015/01/01(Thu) 22時頃
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ー中庭ー
ニコラスを埋めていた。
[吸血鬼の顔も血と泥で汚れているが、平素のような穏やかな微笑みを浮かべている。]
彼が死なせて欲しいと言ったから。
[そう言って吸血鬼は穴に土を被せていく。ハワードに持たされたスコップが土を掬って一回、二回とニコラスを埋めて行く。]
子を喪うというのは悲しいものだな。
[そこで、吸血鬼は手を少し止めてライジを真っ直ぐ見つめた。]
(78) mikenek 2015/01/02(Fri) 11時頃
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ー中庭ー
[ライジの表情に浮かぶ感情はなんだろうと吸血鬼は首を傾げる。
吸血鬼はそのまま、ライジの振り上げた拳を顔にまともに受けた。そうすれば彼の気持ちが分かるのではないかと思って。]
ぐ…っ!
[唇が切れて紅い一筋が伝う。]
怒っているのかライジ……?
[頬の痛みと、声を荒げる彼の様子からそう推測する。彼が何故怒るのかは分からなかったけれど。]
君たちは私の我が子だ。 だから、……
[言葉が継げなくなる。 ニコラスの言った事を思い出した。 家族とは。一緒にいるだけの存在ではないのか。]
(98) mikenek 2015/01/02(Fri) 23時半頃
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愛………?
[吸血鬼はライジの低く呟いた言葉を繰り返した。そんな言葉は初めて聞いたという風に。]
それが、私に足りなかったものなのか?
[ニコラスが"次"に望んだものなのか?]
(99) mikenek 2015/01/02(Fri) 23時半頃
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君は私を愛していなかったのか、そうか……。
[ライジの告げた事実を噛み締める。 吸血鬼は何だか寂しさが胸に空いた穴を駆け抜けて行ったような痛みを感じた。
もしかして自分が長年求めていたもの……求めていた事にすらたった今の今まで吸血鬼が気づいていなかったもの、それは彼の言う愛というものだったのではないだろうか。
暗闇の中から窺い見る人間の生活には、 それが溢れているように感じられた。]
さよなら、ライジ。
[彼の口付けを受ける。 人間ならこの行為に温かみ以外のものを見出せるのだろうか。 それを理解できない吸血鬼にはただ彼の背を見送るしか出来なかった。*]
(105) mikenek 2015/01/03(Sat) 00時半頃
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ー自室ー
[朝。吸血鬼はライジを見送った後泥のように眠り、今ちょうど部屋に備え付けのシャワーで昨晩の血と土の汚れとを落としたところだった。 つまりバスタオル一枚でヒューの前に姿を現した。]
おや、ヒュー。 ライジから何も聞かなかったのか?
[部屋はハワードが掃除したのでもう血の汚れはないが、いつも床に敷いていたカーペットが消えていた。]
何と言うかな、家出だ。
[ぎゅうと長い髪が吸った水分をタオルで拭きながら説明する。]
みんな、私の元から去っていってしまった。 君たちもか?
[吸血鬼の表情に変化はないが、辛い報告があるなら早くしてくれとばかりにヒューの話を促す。]
(119) mikenek 2015/01/03(Sat) 21時半頃
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そうか、知らないのか。
[ヒューの傍らのクアトロの様子から二人は知らないのだなと吸血鬼は見当を付ける。
それはそれで困った。 昨日のニコラスの言葉を思い出す。 いっそのことライジから聞いてくれていれば、彼らに真実を話してしまうか否か悩まなくて済んだものを。
吸血鬼の髪は長く、髪が乾くまでにはまだ時間がかかる。]
(122) mikenek 2015/01/03(Sat) 23時頃
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チョウスケとジェレミーと、ライジに………… ニコラスが出て行った。
[ニコラスの名を出す時には躊躇いがちに。 家出とはどういうことかという問いに、 ただいなくなってしまった者たちの名を並べる。
彼の見た夢。真相を突く問い。 吸血鬼はそれに確りと頷く。]
ああ、そうだ。私のしたことだ。 私の喜びのためにな。
[吸血鬼の辞書には罪という概念はなかったが。 吸血鬼が今したことは自分のした罪を認めるという行為に似たものだった。
吸血鬼の肯定を呑み込んだヒューが何の結論だろうか、礼を言うのを吸血鬼は瞬いて静かに見つめる。 彼が何故礼をしたのか理解していないから、また理解しようとしているからだった。]
(128) mikenek 2015/01/04(Sun) 00時頃
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[もう大丈夫、乗り越えられる。 その言葉に吸血鬼の胸の内によく分からない感情が満ちる。 それは子の成長を喜ぶ親のような感情であったが、何百年と我が子とクランの彼らを呼んでおきながら今初めて感じたのだ。]
『旅行』に? では、私の元に帰ってきてくれるのか? いずれ?
[クランから出て行くというのに、また戻ってくるというのか。信じられない思いで彼らを見つめる。 二人は頷きを返してくれただろうか。
頭を下げるヒューを見て、吸血鬼は机の引き出しを開けた。そこから瓶を取り出す。 紅い錠剤が入っているのだ。]
それなら、帰ってくる場所を忘れられても敵わない。 これなら記憶が朧げになることはないから。
[吸血鬼は引き出しから次々と瓶を取り出す。 どうやらそこに何本も保管してあったようだ。]
(129) mikenek 2015/01/04(Sun) 00時頃
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やる。
[それらをずいと二人に差し出す。]
(130) mikenek 2015/01/04(Sun) 00時頃
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……勝手に何処へでも行け。
[ヒューに合わせて頭を下げるクアトロの言葉に、そっと横を向いて吐き捨てる。
何故だろう、彼らがいずれは帰ってきてくれることを内心喜んでいるということを悟られるのがもの凄く癪だ。 これが恥という概念かと、過去に参休だったかチョウスケだったかが説明してくれたような語句を思い出す。
そういえばそろそろ髪も乾いたしいいかと、椅子の背に掛けておいた衣服をゆっくりと纏い始めた。]
(132) mikenek 2015/01/04(Sun) 00時頃
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……いってらっしゃい。
[背を向けながら、吸血鬼は言葉を返した。
吸血鬼がこれから識るのは、 帰りを待つ淋しさと待つ人がいる喜び。*]
(135) mikenek 2015/01/04(Sun) 01時頃
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ー中庭ー
……そうか。
[参休の言葉を聞いて、彼もまた緩やかな死に向かって行くつもりなのだと吸血鬼は感じた。 彼に残された時間には限りがある。今ならそれが分かる。 そうして、吸血鬼は己のすべきことを考えた。]
参休。私には家族というものが分からない。 教えてくれとは言わない。
ただ、私と一緒に探してくれないか。 君の残った時間で。
[そう言って、あの日あの時或る日のように手を差し伸ばす。 彼と再び家族になるために。
いや、初めて家族になるために。*]
(151) mikenek 2015/01/04(Sun) 02時頃
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