231 獣ノ國 - under the ground -
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自分勝手じゃない未練なんて ないよ。
[ がらんとした部屋にこぼれるそれぞれの独白と 乾いた未練が、シーツの上に転がっている。
僕は気怠い体を肘で押して 見たこともないほどに 重そうな影を背負った背中へ 蒼玉の手をのばし、黒い絹糸に指を絡める。
彼をプリムラに絡め取って離さない 未練のように。 ―――でも。 唄う以外に価値という価値もない飛べない僕じゃぁ 彼の未練には 足りぬだろうか。
( へんなひと。)
指の間で踊る髪は 喪った彼女の代わりを探すように 獣がソトで死ぬことを恐れるように 鈍い光を反射していた。]
(177) 2015/07/11(Sat) 17時半頃
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……つれてきて つれてきて 兄さんを、
[ 僕の何が卑怯なのだと 零した彼>>160に、 僕は 鸚哥の言葉を反芻する。]
おいで、”兄さん”
[ 寝転がったまま 黒髪に指を絡める僕の傍にだって いつだって”兄さん”は 喚べば来てくれる。 ふるる、と尻尾を揺らした鸚哥は 黙って僕を見つめ
鸚哥は鸚哥で、兄ではないのに 僕は彼を兄と呼ぶのをやめられない。 僕が勝手にかぶせた兄の皮を脱がせない。
赤い鳥はこんなにも慈悲深く傍にいてくれるのに 僕は、彼を彼のままに視ていないんだ。]
――ごめんね。
(178) 2015/07/11(Sat) 17時半頃
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[ もう手に入らないだろう兄を諦めることも、 針鼠のように外へ手を伸ばすこともできず 未練ばかりを抱えて うたを唄っているだけ。
兄を見つけたいけれど、ソトは怖い。 外は綺麗だけれど、ヒトは怖い。
嗚呼、それならば。兄も此処へ来れば良いのにと 鸚哥が唄った僕の本心>>157は 他力本願に、兄を希うこころは
卑怯以外に 一体何と呼べば良いのだろう。]
連れてきて、連れてきて。 何にもせずに願っているだけだから、 ………僕は卑怯なんだ。
[ 亀に「鍵」をちらつかされても手を伸ばせず 目の前の背中に熱の篭った額を押し付けるだけの どうしようもない 子供。]
(179) 2015/07/11(Sat) 17時半頃
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『 ソト! イキタイ! イキタクナイ! アキラ! ミレンハ イツカハレル? アキラ! ミレンハ ココデハレル? 』
[ 覚束ぬ足で揺れるベッドを歩く鸚哥。
羽ばたきひとつ、 たてかけられた腕>>159へ丁度良いとばかりに留って くるりと首を傾けた。**]
(180) 2015/07/11(Sat) 17時半頃
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……あら、大変だわ。
[アマルテアの声は、あくまで落ち着いたものだった。 突如として苦しみ始めたクラリッサ>>173を、冷静に観察する。 薬への過剰な反応だ。効果が強すぎたのかもしれない。 とはいえ、想定の範囲内の反応ではある。 “実験”にはままあることだ]
クラリッサ、大丈夫かしら。 私の声が聞こえる?
[「大丈夫です>>173」と弱々しい声が返ってくれば。 とりあえず意識レベルはしっかりしているようだ。 医者として冷静に判断を下す。 クラリッサの手を、そっと握りしめた。“患者”を安心させるように。 ヒトのものではないそれは、ひどく歪なものに思えた]
(181) 2015/07/11(Sat) 17時半頃
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どこが痛むのかしら。
[苦しげに床を這うクラリッサに、穏やかな声をかけた。 “彼ら”はなんて弱い生き物なのだろう、と思う。 自分たちに管理されなければ生きられない存在。 ヒトにも動物にもなれない、中途半端なイキモノ。 だからこそ、自分が“なおして”あげなくてはならない]
痛みが治まらないようなら、いま鎮痛薬を―――。
[独善的な考えに身を委ねながら。 あくまで、女医として優しく振る舞う。 事実、ある種の嫌悪感と同時に愛おしささえ感じているのだ。 “彼ら”の存在に。 それは兄に抱いていた感情と同じであった**]
(182) 2015/07/11(Sat) 17時半頃
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――回想・第1棟廊下――
[ エゴ。 先ほど、十字架を胸にのせた男が零したそれを反芻しつつ。さり際落とされた>>135“そとのひかり”に白亜の視界を一間、細めた。彼すら行けないとおく。そこがそとのどこにあるのか、果たして知りもしなければ。
水槽のさかなもそとを、深くを歩けるなんて、そうしてそれを己にただ「与える」なんて、――成る程エゴじみて、残酷な“教え”だった。
そんなのどうしても――欲しくなってしまう。例えその報いが、2度と人工のひかりすら望めない事を意味するのだとしても。]
……、――
[ 渇望と、拗ねじみた思いこそあれ、男の、ひとの奥に潜む傲慢さを恨むこともなかった。 スータンの似合わない白壁の中で、「善」を信じるように十字架を身につける姿を思い返しては。 ――本当に救いをもとめているのは、果たしてこの地下で、誰なのだろう。
宿題、と。“センセイ”じみた言葉を思い返しては、正答できたらご褒美は昼食にしてもらおうと巡らせつつ。 定時どおりに食事をとっていなければ、服下でくうと腹が鳴る。]
(183) 2015/07/11(Sat) 18時頃
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“うみ”、
[ いずれ、>>135と投げられた最後に、ただ文字でしか知りえない場所を思いながら。
誘ったところで泳がない、といわれれば何をするつもりなのかと思いつつ。見かけたら声をかける、と1つ置き。「しおき」されてなければ大抵いる、とだけ返した。
――鱗の薄くのる掌に一間、のぞいた男の目を巡らせる。いずれ奇特な事だ、と衣服越しに頭を撫ぜた感触すら思い出しては。
きっと、けものとひととは相容れないのに。と、 幾度と擦らせ滲ませた、皮膚に垂れる液を思いかえし、喉を鳴らす。
いっそ生身の己と、”ホーム”とで、再度またああいった煽りじみた仕草を見せるようなら。
今度こそきちんと、それこそ“昼食”にしてしまおうかと、 喧噪に空腹に、ぐらと平衡を失う頭の隅、過らせた。*]
(184) 2015/07/11(Sat) 18時頃
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―― → 食堂 ――
……針山? ……あなたのそれは、「髪」ですよ。ジリヤさん。
[ 男は足を前に向けたまま、平生通り、低い声を落とした。 雫を零す彼女>>145に向けた視線には、まるで――そう、まるで教会で誰か彼かと接した頃のような、…まるで温い色を浮かばせながら。 後退りなど気にせずに、刺さらなかった方、無事な方で彼女の手を取っては廊下を歩み。
その体躯自体を今度は、針に及ばすとも硬直させてしまうのには、少しの笑みが零れた。 ]
(185) 2015/07/11(Sat) 19時頃
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私と同じ、長い髪。 ……また撫でましょうか。
[ 言いながら食堂へ着いたならば、人気の無いそこに視線を巡らせつつ。 先程同僚へやったように、扉を開け彼女を先に通したことだろう。
差中、彼女が何か立ち止まることなどがあれば、その仕草に合わせながら。 ―――じくじくと鈍痛を訴えるそこを、二三衣服に撫で擦る。 誰かの「昔話>>174」など詳しく知ることもなければ、男は未だ、彼女が泣く理由など解らずに。 ただ管理人として彼女が鎮まる方法を見つけ得て、先の事を見据えるのみ。
―――そう、ただ「誰か」に求められる事柄を、ひとつひとつ。忠実に拾って行く。 ]
……お腹は空きませんか。
[ はたりと、男は食堂に飾られた数多のたべものの文字を指差した。 ]**
(186) 2015/07/11(Sat) 19時頃
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ー→食堂ー
髪、だけど、よ、針山でも、あるだろ…!
[声は震える。否応無く。怖い。その暖かい色が。たまらなく恐ろしい。いやだ、その微笑みが。たまらなく。なんで、どうして、やっと、あきらめ]
何でだよ、こンど、こそ、無駄に怪我する、だけだ、ろうが…
[また撫でようか、なんて言われれば>>186、それだけで身を竦めて。まるで小動物のような…そう、ネズミのような。そんな印象を体躯の小ささとともに与える]
…減ってる
[正直、秘密棟の食事は量も質も十分とは言えない。いつも腹を空かせてると言って差し支えなかった]
(187) 2015/07/11(Sat) 19時半頃
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[ プール ]
……悪い子だなあ。
[ 僕は言った。 理性なんて覗けない、いやもしかしたら寸分、残っているかもしれないけれど――>>166本能に呑まれたくろを見据えながら、目を細めた。
『 食べたら、だめだよ 』――と。
遠い昔。施設で育って、また幼少の頃から知る彼に、今日とて変わらぬ姿で伝えたならば、その欲を止めることもできただろうか?
『 ここは海じゃないから、 』 『 ヒトで居たいなら、食べてはだめだよ。 』
雑音に染まって、ぼやけた脳裏に浮かぶ過去の窓が、……きばをのぞかせた彼を、映す。 ―――妄想じみて、…いやもしかしたら、妄想かもしれない。 だって僕は、むかしむかしなんて。 ]
(188) 2015/07/11(Sat) 20時頃
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ここは海じゃあ、ないから。
[ まるで無垢に、純粋に問われた声に、僕は恐怖なんて抱かない。 だって「仕方が無い」んだもの。 彼の本能は、食欲は。
―――僕が冬に、長いねむりに就くように。
乾きやすい僕の尻尾に手が触れかかるのを、横にずれて避けた。へたに千切られたりしたら、たまらない。 鮫に喰われる亀は海亀だけで十分だ。 亀は亀でも、僕は海亀じゃあない。
ぱさりと落とされたフードのした、ヒトのように、またその瞳と同じくろい髪には―――宙に似た感覚を思い起こさせながら。 ふるり、首を揺らした。 また、彼の「おねがい」にも、鼻を鳴らして背いた 。]
君の黒は、深海のそらだなあ。
[ ―――言いながら、僕は彼に手を伸ばした。
彼の持つそらに手を掠めさせながら、おねがいしてまで欲に従うその姿と、間抜けにも手間取る姿に腹が擽られる感覚を持ち。 ぱこんとそのマスクが外れた矢先、覗けたきばには感嘆さえ思いながら――― ]
(189) 2015/07/11(Sat) 20時頃
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[ ―――やがて、僕はその鼻先を、摘み引っ張った。 ]
食べられたら、死んじゃうだろ? 僕、しにたくないから。
[ そのまま前へ引っ張り倒して、逆に壁へと押し付ける。
―――ただ彼がひどく抵抗を起こせば、押し付けることは愚か、鼻先に触れることさえ難しかっただろうけれど。
記憶に貼り付いた、いつかの景色が。 僕の生存欲を掻き立てる 。 ]
(190) 2015/07/11(Sat) 20時頃
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[握りしめてくる手を握り返すことすら出来ない、その手を見ると。伸びていた爪は確かに、その存在感を薄めている。
薬、自体は正しい効能を発揮している。副作用など、その事実に比べればどうでもいいことだ]
い、え。大丈夫、です。
少し、あたま、が、痛んだだけ....なので。
[今尚続く痛みは理性で抑え込み、重なる視界からは意識を遠ざけて、立ち上がる。
初めて薬を投与された時から、このような症状はあって。そのたびにそれを理性で抑えつけてきたのだ。
錯覚かもしれないけれど、薬の失敗した先生は、ほんの少し残念そうな顔をするから]
爪、良くなりました。 ありがとう....ございます。
[これほどの症状が出たのは初めてだけれど。少しでも、軽く見せることが出来たのなら。
それ自体が、もう私の幸せだ]
(191) 2015/07/11(Sat) 20時頃
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[足を止めた理由は、彼自身わからなかった。 ただぼんやりと、薄暗い部屋の中浮く己の手足を見つめ 後ろで泣く獣人の息遣いを聞いている。]
そう……
[投げかけられた否定の言葉を小さな相槌で受け流す。 それ以上に、己の汚い面を露呈するのは憚られた。 すり、と衣擦れの音がする。 やがては背中に触れるものがある。 影を負った背はひくりと身じろぐものの、拒む事はなく ぬばたまの黒髪は未練のように指に絡まる。]
( ……おかしな仔だ )
[離れたかと思えば、 飼い主の顔を覗きこみにおいを嗅ぐ 子犬のような仕草をする奴だと思った。]
(192) 2015/07/11(Sat) 20時半頃
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[何が卑怯なのだと問えば、 また言葉>>178は繰り返される。 さりながら二度目の「兄さん」は少し違った響きで
彼は、振り向けないながらも僅かに、 首をベッドの方へ向ける。
――おいで、と呼び ――ごめんね、と謝る声が聞こえた。
あの鸚哥に謝っているのか。
己も相手も 自分の思いを押し付けて 真っ直ぐにそのままに 相手を見られていないならば ]
( ――……同じじゃないか )
[そう思う。 十は下の相手と同じというのも、 些か大人気ないと彼自身思うが。]
(193) 2015/07/11(Sat) 20時半頃
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[とん、と背中に何かが押し当てられる。>>179 衣服を通して、先程よりは控えめな熱が、 体温の低い体に滲む。
微かに心拍の音を聴いた。]
……なるほど。
[ここに「連れてきて」。 「探す」とはいわないから、立ち止まったままだから。 己は卑怯だと。――そういうことか。]
それはほんの少しだけ「卑怯」だね。
[私の卑劣ぶりと比べたなら、 きっと私の方が勝つだろうけどさ。
茶化すようにそう云って、笑ったところ、 とん、と鸚哥が腕に乗ってきたから、 その頭をもう片方の指先でとんとんと撫でた。]
(194) 2015/07/11(Sat) 20時半頃
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[先ほどからこの鸚哥は、ヒトよりよほど 誰かの心情を読み取るのが上手いと見える。 外に「行きたい」が「行きたくない」――。>>180]
はっはっは。 ……晴れずとも、いつかは切れる日がくるだろうさ。 いやあ、十年ばかり引きずってきたものだから、 わからないが……ね。
[滲む熱に息を吐く。額を預けられたままだったならば、 離れるように、よっとベッドの脇から背を起した。
腕に留まった鸚哥をフィリップのもとに返しながら、 数瞬、瑠璃色の瞳を見下ろす。
――湖の、もしくは、海の深淵に似たそれを見て 先ほどの意趣返しと、こつんと白い額に額を寄せた。 それは子の熱を測る大人のように。]
(195) 2015/07/11(Sat) 20時半頃
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[そうして、瞼を下ろせば 見えるのは、 ]
( ――……荒津の海潮干潮満ち時はあれど…… ) [内心で呪文めいた言葉を吐いて、 それから、何も言わずに額を離した。
ここに居ない誰かを想い哀しむ「孤悲(こい)」の道を、 いつか外れられたならば―――― 。
彼はゆるりと立ち上がる。]
「また」具合が悪くなったら言いなさい。
[そう云って 黒髪揺らし、 白に塗り潰された部屋を後にしようとする。*]
(196) 2015/07/11(Sat) 20時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/11(Sat) 20時半頃
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―― 食堂 ――
……はあ。では、あなたは「それ」を何と呼んで欲しいのです?
[ かたり、と。男に引かれた椅子が鳴いた。 自分は先程食べたばかりなのだ。―――と言えど、既に夕刻間近な頃までには、なっているだろうか? 時計など持っていない。 男は適当に生きている。 そして腹は空いていない。 男はカウンターから珈琲のみを受け取り、その縁に口付けた。
腹が空いている>>187と言った彼女もまた、何か食事を受け取ることもあっただろうか。 秘密棟の食事はあまりよろしく無いと聞く。聞くだけで、食事そのものを見たことは無いが。 ――兎も角、端の席に腰掛けて、男は彼女に問い掛けた。 ]
(197) 2015/07/11(Sat) 20時半頃
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私は貴女のそれを、髪だと云う。 貴女はこれは、針山でもあると云う。
―――貴女の本心は、どちらに?
[ 意地の悪い質問だったかもしれない。 男はソーサーにカップを置いて、苦味の残る喉を撫でた。 苦い。 少しだけ、甘くしようとミルクを垂らす。
然し質問の意図は特に無く、堂々巡りになる前に、と面倒臭さの手前、適当に言葉を投げたのみ。 ――また、彼女をちらと見遣り、その髪だか針山だかに、撫でた”痕”が残っていれば。ゆるりと手伸ばし、拭うこともしただろう。 …無論、先程再度撫でると言ったその時に、男よりちいさな体躯を更に縮めてしまったことを忘れたわけでは無かった。 ]**
(198) 2015/07/11(Sat) 20時半頃
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少し、痛んだ……?
[クラリッサの苦悶の表情からは。 とても“少し”の痛みとは思えなかった。 震える声で「ありがとうございます」という彼女を、 アマルテアはじっと見つめた]
大丈夫だったら、いいのだけれど。
[ふらふらと立ち上がるクラリッサの姿は。 健気で。必死で。ひどく愚かだ。 まるで飼い主に嫌われまいとする愛玩動物のようだ、とすら思う。 アマルテアは、やはり“彼ら”をヒトとしては見ていない]
(199) 2015/07/11(Sat) 21時頃
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よく我慢したわ、クラリッサ。
[まるでペットを可愛がるような手つきで、 クラリッサの頭をそっと撫でた。 先程のジリヤのように、“飼い主”の手を噛むような輩もいるが。 クラリッサのように従順な者には、アマルテアは優しく振る舞う]
落ち着くまで、ベッドに休んでいてもいいのよ。 無理にとは言わないけれど。
[その口調は、あくまで穏やかで。 爪の様子を観察して、薬が確かに効いていることを確認する。 カルテにその結果を細かに書き込むと、万年筆を机に置いた**]
(200) 2015/07/11(Sat) 21時頃
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―第一棟・自室→食堂へ―
[私の部屋は、物が少ない。もっとも、他の人の部屋がどんな風なのか、私は知らないのだけれど。 小さなクローゼット、姿見、そしてベッド。あるものといえばそれだけだ。 この部屋には寝に戻るだけで、私は一日の大半を第二図書室で過ごしているから、特に不便は感じていない。 不便は感じていないけれど、親しみも感じていない。10年経ってもどこかよそよそしい部屋の扉を閉めて、私は食堂へと向かう。 廊下に並ぶ各人の部屋の扉。その向こうで零された、誰かの涙も知らぬまま、私はゆっくりと食堂へと歩いていく]
…………ああ。
[思わず溜息が漏れた。 この時間なら人気がないと思ったのに、食堂には人影があったから>>197]
(201) 2015/07/11(Sat) 21時半頃
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………
[黙ってしまう。本心は針山だが、それは、口に出せない。作り置きしてあるサンドイッチを手に取ると、黙って食べ始める]
ぅ… [拭われると、身を縮こまらせながらも、おとなしくして。]
…なンだよ。怪我までしながら、アタシみたいな跳ねっ返り構って、なンの得があるんだよ…仕事、明らかに越えてンだろ…
[仕事なら鎮痛剤でもなんでも打って、独房に放り込めばいい。それなのに、こいつは自分と話そうとしている。なぜ、そんな事を]
(202) 2015/07/11(Sat) 21時半頃
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[引き返そうかと思った。 それでも結局、食堂へと足を踏み入れたのは、空腹に耐えられそうになかったことに加えて、とても珍しい光景が目に入ったからだ。 人間相手に、あのジリヤがしおらしくしている>>202。青天の霹靂とはこういう事象を指すんじゃないだろうか。私は青い空も雷も見たことはないけれど。
カウンターで食事を受け取り、二人から離れた席に腰掛けた。驚きはしたけれど、それは積極的に関わる理由にはならない。
やせぎすの私の食べる食事は、実は動物性たんぱく質が多い。私の中の梟がそれを求めるのかもしれない。 今日もハンバーグとサラダ、そしてパンと水を受け取った。梟だからといって、鼠を食べるわけじゃない。 ひっそりと食事をしながら、私は耳を傾ける。別に、盗み聞きするつもりはないけれど]
(203) 2015/07/11(Sat) 21時半頃
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[ この部屋で 自分と兄以外の存在を確かめるように 押し付けた額>>179から伝わる温度と鼓動は やっぱり影が差したままのように思う。 獣の中に彼女を見る彼と 鸚哥に兄を重ねる僕は
( …どこか、似ているのかもしれない。)
空気と 背中を伝ってきた笑うような声>>194は 高いトーンを保っているのに どこか……
( でもこのひとのほうが、大人なんだろう。)
卑怯だ卑劣だと、競うようなものではないものを 笑い飛ばしながら自分を卑下する声に これが彼の 見の守り方なのだろうかと。
背中の向こう側の腕に 兄が向かうのを見ていた。]
(204) 2015/07/11(Sat) 22時頃
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[ いつもなら、不躾な兄を途中で窘めるのだけれど 今日はそんな元気が僕に無い。 人の領分に土足で…いや 鳥脚で踏み込む兄にも 一笑して応えるだけの人>>195で良かった。
( 本気で怒らせちゃうこと、あるからなあ ) 自分の耳に痛いだけなら、良いのに。
僕は見下された夜の瞳に (ごめんなさい)と 済まなそうに眉尻を下げた。
僕が”兄さん”を大切にしているように 彼が未練を大切にしているようにも、思えたから。]
(205) 2015/07/11(Sat) 22時頃
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[ ゆら、 目の前の夜が揺れて 長い彼の前髪がその前を通り過ぎる。
白い部屋でひときわ艶めく黒が 僕の目の前を覆って ( こつり ) 額の中心に感じる「ひと」の温度 ]
………………。
[ 僕に母の記憶があったならよかったのに 伏せられた瞼を彩る睫毛が 波のように 揺れた、きがした。
僕は瑠璃を瞑ることもなく 寄せられる額 離れてゆく瞳を見送って その目が瑠璃から逸らされる前 ぼくは ]
(206) 2015/07/11(Sat) 22時頃
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