88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[テーブルクロスは炎に炙られても動く気配はなく、あの喀血の様を見れば、レオナルドは自爆を最後の反撃として息絶えたのだろうと判断した。 ほどなく炎がすべてを焼き尽くすはずだ。
ラルフのエストックを拾い、墓標代わりに突き刺さんと盛り上がった部分へ投げる。
それから炎を迂回して大広間の端からバリケードを乗り越えて北へ向かった。 爆ぜ焼け落ちる木材の音と黒煙に紛れて、ジェフが階段を転がり落ちたのには気づかずにいる。
ジェフが呼び止めるならば踵を返して向かってくるだろうが、高座と柱の裏を横切って厨房へと向かうヒューの姿は、果たしてジェフの視界に*入ったろうか。*]
(56) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 11時半頃
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―厨房―
ハアッ、ハアッ ……
[壁に寄りかかり、崩れ落ちそうな身体をようやっと支えて立ち上がる。 階上から討伐隊の誰かが降りてきたらしきを好機と、テーブルの下を這ってバリケードを抜け、どうにかここまで来た。 邪魔になるからと背嚢をテーブルクロスごと捨ててきてしまったのは痛恨だが致し方ない。 止めを刺されること、人質になることだけは避けねばと言う判断が、正解だったかどうかは分からない。 ヒューの注意がこちらから逸れたのだけは分かったが、何より完全に回復するまでの時間が欲しかった。
とにかく今は急ぎ身を隠さねばならない。 ヒューは必ず止めを刺すために自分を探し出そうとするに違いない。 討伐隊のメンバーたちなら、運がよければ見つけてくれるだろう。 救援者が必ず勝つという楽観視はしていなかった。]
(57) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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[血まみれで焼け痕のあるローブとレンズにひびの入った眼鏡という凄まじい姿だったが、治療薬の効果で火傷や打撲傷は治っていた。 脱臼した左肩はそのままだが、今肩を入れている余裕はない。
壁伝いに進み、曲がり角を越えたあたりに扉を見つけた。 壁に寄りかかりながらノブを回す。鍵は掛かっていないようだ。 滑り込もうと僅か開いた時に、妙な感触を受け、隙間から中を覗く。 開けた瞬間に木箱が倒れるようになっていた。 普通に扉を開けて入ろうとしたら、倒れ掛かる木箱にぶち当たって怪我をしたかも知れない。 慎重に手で箱を押し戻してから、中に入った。]
(58) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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[念の為、木箱はそのままにして、更に簡単な障害となるよう樽のひとつを足で扉の前に押し出す。 そこでようやく幾分か安心感を得たのか、錬金術師の身体は糸が切れたように床に頽れた。
五体全てが不協和音を奏でていた。 生命力を活性化させる薬は怪我を治癒するが、同時に体内に巣食った病も進行させる。 苦痛を取り除き、支障なく身体を動かす為に、錬金術師は既に大量の薬を自分に投与していた。]
時間が、ない……
[血に汚れた頬を樽に押し付け、レオナルドは呟いた。**]
(59) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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―― 城主専用バスルーム(24) ――
[警戒していた影の魔物はいないようで、何事もなく3階へと辿りついた。 寝室の扉を開け、そのままバスルームへと移動する。
蛇口を捻り水を手の平で受けて飲み干す。 少しだけ気分が浮上したような気がして、ほっと息を洩らした。
本当なら火傷は冷やすのが一番いい。 頭から水を被ってしまおうかと考えるが、その後の事を考えると面倒だ。]
…飲んだら楽になりそうですが。
[レオナルドから渡された薬はまだ残っているし、ラルフから譲り受けた物もある。 立て続けに飲むと、体力のある者でも暫くは起き上がれなくなると聞いている。 元より体力の少ない自分だとどれくらい動けなくなるのか。 今は敵影もないが、動けない時に敵が来たら、そう思うと飲むは躊躇う。 幸いまだ動く事は出来る。 薬をもう一度飲むのは城を出る事が出来たらにしよう。 そう決めると薬をそっと革袋にしまった**]
(60) 2012/05/01(Tue) 14時頃
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病人 エリアスは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 14時頃
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― 大広間 ―
[ようやく顔を上げてみたものは、全く様相が変わってしまった大広間の姿。 中央に集められたテーブルからは、勢い良く炎が吹き上がり テーブルから滑り落ちたクロスの端も燃えていた。 クロスの盛り上がった場所には、ラルフのエストック>.56が突き刺さっている]
ラルフ!
[嫌な予感が襲って名前を呼びながら、クロスをめくると、 エストックが突き刺さっていたのはレオナルドの背嚢>>57だった]
……レオナルド?どこだ?
……ムパムピス。消火を――。 それからラルフとレオナルドを探すんだ。
[行方のしれないエリアスは諦めるとしても、 彼らの所有物があるということはこの近くにいるかもしれない。 そう思うと、彼らを放り出したまま扉のほうに向かう気には*なれない*]
(61) 2012/05/01(Tue) 14時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 15時頃
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── 厨房 → 中庭 ──
[手当をしないままの左脇の傷からは、さほど多くはないものの赤い血が流れて床に痕跡を残していた。 ラルフとの戦いで傷を負った階段下の戦場から、テーブルを乗り越えて厨房へと。
レオナルドが身を隠しているとは知らず、ヒューは食料庫の傍らを通り過ぎて厨房北側の扉を開く。 右手には剣を握ったまま。]
(62) 2012/05/01(Tue) 16時半頃
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― 物見塔 ―
――― にしても、最初に感じたあれは、なんだ?
[未だ土と岩の下、形無くたゆたっていた時に感じた気配(>>0:129) その正体が未だ掴めず、首をひねる。]
ガストン・ワイルダーが帰ってきたのかと思ったが 違うらしいしな……
[どれほど年月が経っていようと、見間違うはずがない。 一度はその血を口にした相手だ。 ほんのひと口だったとはいえ。]
(63) 2012/05/01(Tue) 16時半頃
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[考えに耽りながら、歩くのに飽いた身体がずるりと崩れ 闇となって塔の窓より流れ出す。
塔の壁面を伝って滴り落ちた闇は 柔らかい草の上に溜まって、ゆるゆるとひとの姿に凝った。]
→ 中庭 ―
(64) 2012/05/01(Tue) 16時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 16時半頃
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[暗さに目が慣れていなかったのだろうか。 闇がわだかまっているとばかり思っていた場所に、人間がいた。
あるいは、犬が消えたのと逆の魔法か。 魔法と割り切ってしまえばさもあらんと思う。 それよりも──]
(65) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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[草の上に立つ偉丈夫の姿は、よく見覚えのあるものだった。 それでいて、会ったことがある気はしない。
どこで──と悩みかけ、答えに思い当たって、わずかに瞳孔が開かれる。]
先代──…
[城主の部屋に南接する画廊に掛けられた肖像画。 そこに描かれた先代城主の姿が今、目の前にある。]
(66) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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― 中庭 ―
[犬のように首を振るい、髪に残った闇の残滓を払い落として 塔の影から歩み出る。
抜き身の剣を下げたまま現れた騎士を一瞥して、 可笑しそうに唇を上げた。]
どうした? 幽霊でも見たという顔をしているぞ?
[実際、幽霊とはさほど遠くないのだが、 冗談のように言って、歩み寄る。]
(67) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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膝をつけ。
本来の城主の帰還だ。
[剣の間合いへ無造作に踏み込みながら 命じるのに慣れた声で、鷹揚に服従を求めた。]
(68) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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おれが忠誠を誓ったのは、先代にではありません。
[そう言い返しながらも、中庭へと進んで背後の扉を閉めると、剣を左手に持ち替えて地面に拳をつき、その傍らに左膝を並べた。 かつて城主の座を占めていたと主張する者への礼を尽くして。]
(69) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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幽霊、とご自身で申されたが、 先代は…、生きてはおられぬのだろう?
[ふと口にしたのは、先代が肖像画の姿のまま齢をとらずにいることの奇異に気づいてのもの。 死してなお、霊魂がその地に留まり、守護あるいは呪いをもたらすという話はいくらもある。 それならば、城主クラリッサが殺されたこのタイミングで祖霊もまた復讐のために現われたのだろうと受け入れるのは、ヒューにとって難しいことではなかった。]
(70) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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[先代城主とクラリッサの具体的な関係は知らない。 クラリッサは町で育ったそうだ。 それはつまり、彼女が妾腹の姫だという事情なのだろうと憶測して、ヒューは領主の血筋については立ち入ったことは一切聞かずにきたのだった。 出生がどうであれ、クラリッサは至誠を捧げるに相応しい主君だと。
ただ、肖像画を前にした時のクラリッサの横顔は、悲しげにも甘やかにも見えたことを覚えている。]
(71) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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―貯蔵庫― [がくりと前のめりに床に倒れ込みそうになって、慌てて姿勢を戻す。 どうやら樽にもたれて座り込んだまま意識を失っていたようだ。
ふと改めて明かりのない室内を見回す。 闇に慣れてきた目に、吊るされた塩漬けの腿肉や、酒樽や木箱の輪郭がぼんやりと映る。 小さい樽に山と盛られた丸いものは果実か野菜の類いだろうか。 ここは食料を貯蔵する倉庫に違いない。 少なくとも当分食料にだけは困らないだろう。]
(72) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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― 中庭 ―
あれに忠誠を誓ったのなら その主であるオレに従うのは、当然のことだろう?
[普遍の理であるかのように説き、 望み通り膝をついた男の前に立って、見下ろす。 昏い炎を灯す瞳を覗き込んで]
―――良い目だ。
[犬に言わせた言葉を、もう一度告げた。]
(73) 2012/05/01(Tue) 18時頃
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ああ。死んだ。 だが蘇った。
[騎士の疑問へは、端的に答えた。 相手がなにか思い違いをしているだろうことは読みとれたが、 特に訂正はしない。]
―――あれの血が、オレを目覚めさせたのさ。
[そこに、さしたる違いはない。]
(74) 2012/05/01(Tue) 18時頃
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だから、次はオレがあれを呼び戻す。
[付け加えたのは、自信に支えられた意志。 餌を投げ、反応を窺う。]
(75) 2012/05/01(Tue) 18時頃
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[先代は死んでまた甦ったという。 そんな深淵の魔法の使い手がどれほどいるかは知らぬ。
だが、黒犬はこの男と同じ声で喋り、影に消えた。 クラリッサもまた魔法の巧みな使い手だった。
こうして実物を前にしてみれば、男とクラリッサの容貌はまったく似ていないにも関わらず、どこか不可分なものを感じさせる。 それが「血の縁」であるとは思い至らぬままに、ヒューは硬質な光を宿す双眸で先代を見上げた。]
(76) 2012/05/01(Tue) 18時頃
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姫を彼岸から連れ戻す方法があるのなら──
おれはどんなことでもしよう。
(77) 2012/05/01(Tue) 18時頃
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いいだろう。
[望み通りの言葉を引き出したことに満足して、 騎士の前に手を突き出す。]
オレに忠誠を誓え。 そして、貴様の命をオレに寄越せ。
[ひらりと動かした手は、剣を差し出せという無言の催促。]
(78) 2012/05/01(Tue) 18時半頃
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今の貴様に、似合いの力をくれてやる。
[闇への誘いは、ごく直截に告げられた**]
(79) 2012/05/01(Tue) 18時半頃
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[脱臼した左肩を整復するのは面倒な作業だった。 まずポーチの中に残った装備品から、灯器の封を解いて明かりを点し、肉をぶら下げるためのフックと自分のベルトで簡単な牽引装置を作った。 青みがかった熱のない明かりの下で、何度か試行錯誤した末、何とか関節を元の位置に戻した。
荒療治とあって違和感は感じるものの、左腕は問題なく動く。 軟骨や筋肉が損傷している可能性もあるし、また外れるかも知れないが――どのみち、錬金術師に残された時間はそう長くはない。**]
(80) 2012/05/01(Tue) 18時半頃
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[二君に仕えるは騎士の恥だ。 だが、私情に走った魂はすでに堕ちている。 そんな自分の命で、クラリッサが呼び戻せるのなら──
ヒューは剣の刃の部分を掴んで、頭の位置より高く掲げた。]
クラリッサ = アール・オブ・アヴァロンの騎士ヒュー・ガルデンは、貴君に忠誠を誓う。 身命、惜しむことなし。
(81) 2012/05/01(Tue) 19時頃
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ヒューは、ヘクターへと宣誓する。**
2012/05/01(Tue) 19時頃
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─二階への螺旋階段─
[──酷く寒かった。 自分を抱く様にぎゅっと片腕を掴む。
とん、と手すりを蹴り。 音を立てずに、二階へと降りる。]
……。
[浴室から、客室へ。 戦闘があった付近は、静まり返っていた。 辺りは薄暗い闇に包まれていたが、 男の隻眼にはまるで昼の様にはっきりと隅々までが見える]
(82) 2012/05/01(Tue) 19時頃
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…坊っさんは、どうしたんだ…? それに、…──ラルフ。
[最後に見た光は、聖術のものだろう。 ならばムパムピスは恐らく生きているだろうと、僅かに安堵する]
……。 あんま、意味ねえか。
[苦笑して首を傾げる。
──『出会った者は殺さなければならない』。 ──『騎士ヒュー・ガルデン以外の全員を』。
主命という種は己の中でゆっくりと芽吹き。 ……好意や感情とは裏腹の、 絶対の行動の指針として根付いていた]
(83) 2012/05/01(Tue) 19時頃
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[ラルフはどうしたのだろう、と思いをめぐらせ。 もしものことがあればと頼りなげに笑った顔を思い出す。] ──悪いな、…ラルフ。 立場、逆になっちまった。
[あの時はこうなるとは思いもしなかったのだと、 ──既に彼の命が失われている事は知らず、そう眼差しを伏せた]
(84) 2012/05/01(Tue) 19時半頃
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─二階 客室─
……あったか。
[暫く辺りを探し、転がっていた愛用のボウガンを拾い上げる。 主軸が僅かに曲がっていたが、 慣れた手つきでレバーを引けば、 然程支障なく使えるようだった] ……ッ、… [杭を袋から引き出そうとして 激しい痛みに眉を寄せ、慌てて振り落とす。 がつん、と音を立てて転がった其れを驚いて眺める]
(85) 2012/05/01(Tue) 19時半頃
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