88 吸血鬼の城 殲滅篇
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─物見塔 屋上─
ぅ…、……、──
[どさりと投げ出され、意識が僅かに覚醒する。 疲労し、内臓のあちこちが潰れかけ── 大量の血を流した身体はぴくりとも動かず
ただぼんやりと、この世で最も憎い筈の男の声を聞く]
(10) 2012/05/01(Tue) 00時半頃
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[――何故男が此処に己を連れて来たのかなど、 他には思い当たらない。 恐らくは苦しませて殺すためだろうと、ぼんやりと思う。 薄らと目を見開き、焦点の合わぬ目で声の主を探した。 ぐらぐらと揺れる視界の中、喉を搾り出す] ……っ、さと、…殺せ…ッ、…
[死ぬのは怖くなかった。 いつでもその覚悟は出来ていた。 ――だが其れを嘲笑うかのように 横たわった己の襟首を、無骨な腕が引きずり寄せる]
(15) 2012/05/01(Tue) 01時頃
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[息がかかる程の距離。 覗き込む紅き双眸を、睨みつける。]
(死、よりも?)
[その言葉に隻眼を見開き。
――その意味する所を知って、背筋が凍りついた]
(16) 2012/05/01(Tue) 01時頃
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[抗おうと僅かに藻掻き、 力の入らぬ手足を突っ張って、ずり上がろうとした] …や、…めッ
やめろ…っ…! 嫌だ! (――気持ち悪、い)
[まるで手篭めにされかけた生娘の様だと背筋に寒気が走る。 無論、相手にそんなつもりはないのだろう。 自分にもそんな趣味はない。 ただ―― 抗えない事がこんなにも嫌悪をそそる行為などとは、 今まで、一度も知らなかった]
(17) 2012/05/01(Tue) 01時頃
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ぅ、…あ、…っ、…――!
[逸らした首筋に食い込む、牙。
――食われる、と錯覚した。 喉笛を千切るかのような勢いで 歯が、舌が開いた傷口をなぞる。
体内を貪られているような感覚。 どろり、と何かが流れ出してゆく音。
首筋が酷く脈打つ。 石床に立てた指先が破れ、薄く血の痕を遺した]
(20) 2012/05/01(Tue) 01時頃
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[――反して襲う、酷い眩暈。 徐々に意識が薄れ ゆっくりと、甘い夢見るような感覚と共に ふつりと、……消えた ]
(21) 2012/05/01(Tue) 01時半頃
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[――息絶えた身体に降り注ぐ、暖かい血液。 熱を持った其れが傷口に呑み込まれる度に、
青黒い死体の色に染まった膚が 徐々に白さを取り戻していく] ……、……ぅ、…、…。
[跡形もなく傷口が癒え。 ひくりと、瞼が揺らぐ。]
(30) 2012/05/01(Tue) 02時頃
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――ぁ、……、…
[ゆっくりと――目を開ける。
漆黒の瞳が濡れた侭現れ、 瞬きをしたその刹那だけ、深く沈んだ紅に輝いた] ――ッ、…! つ、…っ
[反射的に起き上がろうとしたが、 胸の上に置かれた足に阻まれて、顔を上げた>>5]
(31) 2012/05/01(Tue) 02時頃
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何、す…ッ、… ――…、…ッ、…。
[一瞬、混乱してまじまじとその顔を眺めた。 自分の名前はわかる。 ――相手が何者であるかも、理解していた なのに]
ドナ、…『ドナルド・ジャンニ』、… ……ッ、……ん、で…、…ぅ、…
[気持ち悪さに、思わずえづく。
顔を見れば、変わらぬ憎悪に胸が煮えくり返りそうな気がする。 絶対的な恐怖に逃げ出したくなる。 変わらない。 ――胸を締め付ける様な慕わしさを、 突き上げる絶対の至誠を――除けば]
(33) 2012/05/01(Tue) 02時頃
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ドナルドは、嫌悪感に石床を掻き、呻いた。**
2012/05/01(Tue) 02時頃
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>>36 ぁ、…――
[褒められて、頬に血が上るのがわかる。 ありがとうございます、と口に上せそうになり、耐えて唇を噛んだ。 顔を逸らすように俯く。 酷く、惨めだった]
(39) 2012/05/01(Tue) 07時頃
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[胸の上から足が退かれ、ゆっくりと息を吐く。 もう何処にも痛みは無い。
>>37 男の命を黙って聞き―― 咄嗟に何か言いかけて、口を噤んだ。 ただぎこちなくこくりと首を振ると のろのろと身を起こす。 胸元に入れた紅玉がしゃらりと鳴る。 ――酷く、熱かった。
恐らくは己自身の瘴気に反応している事には、 未だ気づいていない]
(40) 2012/05/01(Tue) 07時頃
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[踵を返し、螺旋階段から下を覗き込む。 足元は明るく、転がり落ちた石までもくっきりと見える]
――…。 あれ、…俺、…。
[跳べるかも、と気づいて。 手すりに手をかけ、ゆっくりと身を躍らせる。
痩身が空に舞い、 三階部分へと危なげなく足をついて]
…… そっか。
[もう己はヒトではないのだと確かめる様に苦笑し、 頭を振る。]
(41) 2012/05/01(Tue) 07時頃
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[これからどうするかと、頭を巡らせる。 命は果たせねばならないと、 頭のどこかにロックが掛かる。
それに警鐘を鳴らすように、 嫌だ、と悲鳴を上げる感情がある。
だがどちらも、未だ遠い。 逃避するようにぼんやりと首を傾け]
…ボウガン、置いてきちまったな。 ああ、…もう要らねえのかも、だが。
[それでもあれは長年を共にした愛用の武器。 取りに戻るか――と、螺旋階段を探して歩き出した**]
(42) 2012/05/01(Tue) 07時頃
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─二階への螺旋階段─
[──酷く寒かった。 自分を抱く様にぎゅっと片腕を掴む。
とん、と手すりを蹴り。 音を立てずに、二階へと降りる。]
……。
[浴室から、客室へ。 戦闘があった付近は、静まり返っていた。 辺りは薄暗い闇に包まれていたが、 男の隻眼にはまるで昼の様にはっきりと隅々までが見える]
(82) 2012/05/01(Tue) 19時頃
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…坊っさんは、どうしたんだ…? それに、…──ラルフ。
[最後に見た光は、聖術のものだろう。 ならばムパムピスは恐らく生きているだろうと、僅かに安堵する]
……。 あんま、意味ねえか。
[苦笑して首を傾げる。
──『出会った者は殺さなければならない』。 ──『騎士ヒュー・ガルデン以外の全員を』。
主命という種は己の中でゆっくりと芽吹き。 ……好意や感情とは裏腹の、 絶対の行動の指針として根付いていた]
(83) 2012/05/01(Tue) 19時頃
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[ラルフはどうしたのだろう、と思いをめぐらせ。 もしものことがあればと頼りなげに笑った顔を思い出す。] ──悪いな、…ラルフ。 立場、逆になっちまった。
[あの時はこうなるとは思いもしなかったのだと、 ──既に彼の命が失われている事は知らず、そう眼差しを伏せた]
(84) 2012/05/01(Tue) 19時半頃
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─二階 客室─
……あったか。
[暫く辺りを探し、転がっていた愛用のボウガンを拾い上げる。 主軸が僅かに曲がっていたが、 慣れた手つきでレバーを引けば、 然程支障なく使えるようだった] ……ッ、… [杭を袋から引き出そうとして 激しい痛みに眉を寄せ、慌てて振り落とす。 がつん、と音を立てて転がった其れを驚いて眺める]
(85) 2012/05/01(Tue) 19時半頃
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そうか、坊っさんの…。
[指を見れば、火脹れしたように先が爛れていた。 ……聖別の効果が現れたのだと気づき、 懐に仕舞い込んだ刀子を慎重に引き抜く。]
──此れもダメ、か。
[刀子、ワイヤー。 聖別を施して貰った事は見事に仇となったらしい。 ため息をつき、左眼を覆う眼帯を外す。 糸を割き、中から予備のワイヤーを引き出した。]
(86) 2012/05/01(Tue) 19時半頃
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………。
[暫く考え、爛れた指先を噛み切る。 流れる葡萄色の血をコーティングされた鋼糸に振りかけた。 ゆっくりと銀は漆黒に曇り──
満足げに笑んで、男は武器を仕舞い込んだ**]
(87) 2012/05/01(Tue) 19時半頃
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―二階客室―
[暖炉の前に立ち、 ぱちぱちと、爆ぜる火を見守る。 布に包んだ何かの塊を放り投げると、 炎は大きく跳ね上がり、 その中に潜んでいるもの諸共に燃え上がった。] ――。…。
(94) 2012/05/01(Tue) 21時半頃
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[エリアスが扉を開けたとき、 炉は殆ど燃え尽きていた。 マントルピースには愛用のボウガンが傾けられ、 最後のひとつの布の塊が、 炉の上面に寄せ掛けられている。] ……よ、エリアス。 無事だったんだな。
[炎から目を離し、軽く手を上げて笑みを向けた]
(95) 2012/05/01(Tue) 21時半頃
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皆はどうした? はぐれたままか?
[彼が、ラルフと共に この部屋での戦闘の様子を耳にしていたことは、 隻眼の男は知らない]
(96) 2012/05/01(Tue) 21時半頃
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そっか…、良かった。 坊っさん… ムパもたぶん無事だぜ。 どっか痛いなら、あいつに言えば…
[いつも通りに笑いかけ、 エリアスの表情が強張っていることに気づく。 不思議そうに隻眼を見開くが]
……ああ。
[ドナルドさんは、という言葉に 何をしていたと聞かれたのかと誤解し、 苦笑して首をかしげる]
燃やしてたんだよ。 もう要らねーし、『アイツ』の邪魔になるだけだろうって思ってさ…。
(100) 2012/05/01(Tue) 22時頃
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>>97 ……俺は、大丈夫。 もう平気なんだ。
[別の苦痛を刻まれている事までは、 口にはしない]
(まあ言えねえだろ) (……気を使わせるかもしれねえしなぁ)
[そんな風に思いながら袖のカフスを捻り]
――へぇ。
(102) 2012/05/01(Tue) 22時頃
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あの時聞こえた声って、
……アンタのだったのか。
[漆黒のワイヤーを、 しゅるりと音を立てて引き出した]
(103) 2012/05/01(Tue) 22時頃
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[ゆっくりと足を進めながら、 矢継ぎ早の質問にひとつずつ答える。]
…こうなると思ってなかったからな。 愛用の武器、殆どだめにしちまってさ。
坊っさんはここから出る直前、聖術使ってるの見た。 …だから多分生きてる。
――ああ。で、アイツってのは、ソイツ。
………ヘクター。
[エリアスの唇からその名前が出た途端。 眼差しに切り裂くような苦痛と陶酔が浮かぶ。 唇に転がすように囁くと、肩をすくめ、 困ったように笑った]
ケッタクソ悪ィ嗜虐趣味のオッサンのことだよ。
(111) 2012/05/01(Tue) 22時半頃
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ドナルドは、ジェフに話の続きを促した。
2012/05/01(Tue) 22時半頃
ドナルドは、ムパムピスに話の続きを促した。
2012/05/01(Tue) 22時半頃
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で、最後の質問は――
[ワイヤーをエリアスめがけて鞭のように揮う。
しなやかな漆黒の鋼糸が―― 魔性の血の力を借り、蛇のように彼に襲い掛かった]
(114) 2012/05/01(Tue) 22時半頃
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…っ、とと、危ね…っ
[慌てて軽く飛び退る。 ヒトであればまともに食らっていたかも知れぬ刃は、 僅かに服の端と、腿を切り裂いただけで済んだ。
風の刃にワイヤーが翻り、目標が反れる。 首筋を狙ったそれはエリアスの肩付近へと]
(117) 2012/05/01(Tue) 22時半頃
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――…殺せとしか、言われてなくてな。
[ワイヤーを手繰り寄せながら苦笑する。
……酷く、渇いていた。 けれどそれは、主命ではない。
………あの水を飲めばもうひとではなくなるのだと、 ひとではない思考で、そうぼんやりと思う]
(130) 2012/05/01(Tue) 23時頃
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――っ、容赦ねえな、………
[背後にとんぼ返りし、風の刃の直撃を避ける。 刃は男の右腕を掠め、 抉る様な傷を遺して背後に直撃した。
とん、と。 着地すると同時に、ワイヤーをしならせる。
遠隔戦は不利。 彼の腕を絡めとり、引きずり寄せようと]
(131) 2012/05/01(Tue) 23時頃
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