78 光環の戦溟 ― bloody searoar wars ―
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[生み出される光に、術を唱えようとすれど、風では光を防ぐ事は出来ぬと改めて思い出す。 迫り来る光の刃に気を取られ、背後を狙う別の刃には気付かぬまま… ]
ケヴィン様!?
[自分を守る為に受けた傷から血を流す彼の姿に声をあげた。 その姿に、動揺するばかりで、術を唱える事すら出来ぬまま。
男の顔が、苦痛に歪んでゆく。]
(22) 2012/02/05(Sun) 01時半頃
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『…何やってんの愚図。』
[恐ろしく不機嫌そうな声が、背後から聞こえた。]
(26) 2012/02/05(Sun) 01時半頃
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アリィ様――…!
[その声に身を竦めたのは一瞬で。 その後直ぐに浮かぶのは安堵であった。]
『怖がってないで少しは役に立ちなさいよ。 なっさけ無い。 何で他の巫女が生き残らなかったのかしら、ホント。』
…すみません。
[容赦の無い言葉。 けれど、今彼女を叱咤するには、強すぎるという事は無かった。
小さな何かの力によって、光と刃が一瞬、止まった。]
(39) 2012/02/05(Sun) 01時半頃
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[その隙を逃さず、流れる様に印を結ぶ。 彼女の両の手に、微かに緑の光が宿る。]
今、手当てを…
[静謐なる癒し《クリア・ヴィスタ》。 ふわりと、柔らかな風が頬を撫でたかも知れぬ。 傷が塞がり、止血を確認すれば、今度は違う印を素早く結んでゆく。]
大いなる祝福《グラン・ブリエ》! 時駆ける風《クロノ・レジデンス》!
[男の身体が光に包まれ、僅かに渦巻く風を纏う。 一時的に男の身体能力、速度を跳ね上げさせる術を施せば、改めて白の燕尾服の男に向き直る。]
護ってもらってばかりで、すみません。
[視線は、前を向いたままで。]
(47) 2012/02/05(Sun) 02時頃
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斬 ッ !!!
[皓《シロ》の堕天使の身へと吸い込まれてゆく大鋸刃 >>79。 その直前に、刹那、止まった動き、開かれた瞳 >>75 。
それらを、女は静かに見守っていた。]
―――…
[直後あがった、怨嗟の声、そして散りゆく身体に、僅かに俯き瞳を閉じた。]
(170) 2012/02/05(Sun) 22時頃
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[けれど、その瞳は直ぐに戻される事になる。 名を、呼ばれる >>153。 けれど、必要とされていたのは自分ではなく、宿す鳳凰の方らしかった。]
『…何よ。』
[不機嫌そうな声があがったのは、男が堕天使を背に乗せた頃だっただろうか。]
(176) 2012/02/05(Sun) 22時頃
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[男が自分の名を呼んだ理由は、何となくではあるが察せられた。]
『無駄よ、そんな事したって。』
[それきり、口は開かない。
既に、生の気配は殆ど感じられなかった。 実のところ、塵が舞わぬ様風を操ることは出来ただろうが、彼女は其れを良しとしなかったらしい。]
(186) 2012/02/05(Sun) 22時頃
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[そして、橙の小人の言葉 >>127 を耳にすれば、起こった疑念は男が問う >>156 に任せ、静かに返答を待った。]
『――――…。』
[鳳凰は、語らない。
太陽と鳳凰が、纏う焔を同一とする理由。 鳳凰が、太陽を生み出し、育む存在である事を。
円環を失った世界こそが、本来在ったこの世界の姿であると言う事を。
創世の時、太陽《サイモン》が外宇宙《そら》の監督者《エピスコポス》の言葉 >>1:876 の上で、この世界を円環にした《法則を捻じ曲げた》、その小さな、小さな理由を。]
(196) 2012/02/05(Sun) 22時半頃
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[宇宙《そら》の外、外宇宙《そら》のまた外かも知れぬ。 或いは、セカイの中心かも、果てかも知れぬし、頂きかも、底かも知れぬ。
何処か。
其々が、混沌《カオス》で隔てられたセカイ、其処にひとつだけ、星が浮かんでいる。]
(267) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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[名があるのかもわからぬその星。 地表には、大気も、水も、石の欠片すら見当たらぬ。
その星は、完全なる円環の世界であった。
その円環の世界に在るのは、たったのみっつ。
金の焔。 焔に根を張る巨木。 誰がつくったのかわからない、ひとつの炉。]
(269) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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[鳳凰と呼ばれた存在が生まれたのは、何時の事だろう。
誰に創られたのかすら、知らぬ。 そして、何故、そうするのかは其れ自身にもわからない。 焔に根を張る巨木、その太い枝にさがる卵から雛鳥が孵ると、其れは金の焔を喰らう。 そして、成獣となれば巨木の枝を折り、葉に金の焔を纏わせ、炉に焔を入れる。
炉の中に、太陽の核が生まれるまで。 其れは風を送り、その時が来るまで、ただひたすらに、待つ。]
(270) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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[そうして生まれた太陽と共に、その翼で混沌を、外宇宙を、宇宙を渡り、太陽が望む場にて、ただひたすらに太陽を見守る。
そして、太陽の存在が潰えると共に自らも潰え、生まれ変わる。
永遠を生きる者《ア・エテルニタス》
混沌の星、円環の世界の中、大樹には新たな卵がなり、新たな雛が生まれる。
ひとつの太陽に、ひとつの存在。
その記憶は潰えることなく、繋がれてゆく。]
(271) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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[鳳凰《アリィ》は、この世界に興味を持たない。 彼女の中に在るのは、太陽《サイモン》を育て、見守り、共に潰える、ただそれだけの事。
太陽《サイモン》に危険が迫れば、身を呈して守ったが、太陽《サイモン》が、この世界で何をしようと興味は無かった。
それだけの筈、だった。
けれど、現実には、太陽《サイモン》の画策 >>1:67 により、自分は一時的に生かせられている。]
(272) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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[彼女は、ひどく不機嫌だった。
幾つもの混沌を渡り、外宇宙を渡り、宇宙を渡り、辿り着いたのは一枚の板の様な不思議な形をした世界だった。 生命の生まれる気配等、まるで無かった。
小さく、哀れな世界。
捨ておけ、と鳳凰《アリィ》は言った。
けれど、太陽《サイモン》はこの世界を見捨てなかった。]
(273) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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[その世界が、徐々に円環となり始めた事に気付いたのは、どれ程の時が流れてからだったか。
法則を捻じ曲げる太陽《サイモン》に、鳳凰《アリィ》は理由を問うた。
太陽《サイモン》は言った。
あのままの世界では、自分の光が届きにくい場所が出来てしまう。 それが、可哀そうだからと。
故郷を真似たのだろうか、と思っていた彼女は、その言葉に面食らった。
思えば、あの時に止めていれば良かったのだろうかと。]
(274) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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[そして今、鳳凰《アリィ》は、自分の存在意義以上の事柄に、手を出そうとしている。
その理由は、単純に興味 >>2:334であったのだが。
その興味がいつ迄続くのかは、鳳凰《アリィ》自身にもわからない。
ただただ、不機嫌である。]
(275) 2012/02/06(Mon) 01時頃
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アリィ様…。
[夫の後ろをゆく、彼女の声は何処か伺う様な色を帯びる。]
浄化の焔《クレマツィオーネ》―――…を、ご存知でしょうか。
『知らない。』
[間髪いれずに返ってきた返答に、思わず彼女は「えっ」と声をあげた。 仮に、本当に鳳凰の焔が浄化の焔《クレマツィオーネ》だったとしても、鳳凰にとって呼ばれ方等どうでも良く興味も無かったのである。
ただ、今までの記憶から其れに近い様な力を持つ事だけは何となく鳳凰自身も知ってはいるのだが。
その様な呼ばれ方は知らない。
単に捻くれているのだ。]
(278) 2012/02/06(Mon) 01時半頃
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でも、オスカーくんがアリィ様の焔の事だと…
[話を聞いた限りでは、とても大事な事柄の様に受け止めていただけに、慌てた。 声が何処か、上ずっている。]
『へー。 じゃあ、そうなのかもね。』
―――…。
[この調子である。 半ば涙目になりながら、肩を落とした。]
(282) 2012/02/06(Mon) 01時半頃
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『アンタさぁ…、』
は、はい…。
[鳳凰の機嫌は、どんどん悪くなっているように思われた。 また、背中の紋がチリチリと熱を帯びて鈍く痛みだす。]
『今、何しなきゃいけないかわかってるわよね。』
え、えっと―――…、ケ、ケヴィン様…!
[前をゆく男に、声をかけた。 そう、今優先されるべきことは―――…
男の背に、散り、去った堕天使の姿が重なった。]
(283) 2012/02/06(Mon) 01時半頃
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『早く連れていきなさい。』
…あぅ。
[男が振り向いた頃だったか。 超絶不機嫌そうな声に、先を越され、呻いた。
背後から、舌うちが聞こえた様な気がしたが、幻聴であったかどうか。]
(285) 2012/02/06(Mon) 01時半頃
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