88 吸血鬼の城 殲滅篇
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― 大広間 ―
[広間を横切り、焼け焦げたバリケードの前まで来たところで ふと足を止めた。 視線をかるく上に向け、片頬を吊り上げる。]
―――捨て置け。 後始末など、影に任せておけばいい。
……ああ。 そいつが気に入ったっていうんなら、 おまえの手で眷属に変えてやってもいいぞ?
[声と『声』とで、同時にドナルドへ答える。]
(3) 2012/05/02(Wed) 00時頃
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―――…?
[朗とした声で呼びかけられ、 半身をひねって、そちらに視線をくれてやる。]
オレを呼んだか? 人間。
[呼びかけの調子に敵意以外のものを感じて、 瞳に興味の色を乗せた。]
(4) 2012/05/02(Wed) 00時半頃
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オレをか? 闇の眷属を、か?
[個として求めて来たのか、種としてなのか。 問いかけはしたものの、さして答えに興味もない風で 問いを継ぐ。]
―――…なにが望みだ? ことによっては、聞いてやらんでもない。
なにしろオレは今、機嫌が良い。
(12) 2012/05/02(Wed) 00時半頃
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ほう?
[驚いた顔で成り行きを窺う人間共のことは、 今は意識から抜け落ちていた。
不遜な要求をした錬金術師へと、身体を向け直す。]
オレの血を得てどうするつもりだ?
眷属になるを望むか? それとも、人間の身で不死を得ようなどと、 過分な望みを抱くか?
(17) 2012/05/02(Wed) 01時頃
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[声を上げ、走り寄ってきた剣士に、ちらりと視線を投げる。 その首元から覗くペンダントに見覚えがある気がして、 小さく眉を上げた。
身体の中心を狙った横殴りの斬撃。 太刀筋に既視感を感じる。]
―――………甘い、な。
[剣は脇腹に深々と食い込み、 厚い筋肉の鎧に阻まれて、そこで止まった。]
(22) 2012/05/02(Wed) 01時半頃
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…痛いじゃねぇか。
[腹に食い込む刃を空いている手で握り、 牙を剥いて、剣士に笑ってみせる。 付与された浄化の力に触れて、掌から薄い煙が上がるが、 眉を顰めることもしなかった。]
オレはいま、面白い話をしてるんだ。 無粋な邪魔すんじゃねぇ。
[身体の中心から闇が爆発的に膨れあがり、 剣士を、その後ろにいる修道士をも巻きこむように弾ける。]
(23) 2012/05/02(Wed) 01時半頃
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[意図的に闇の爆発から外した錬金術師の方を向いて、 良いことを思いついた、というように笑みを浮かべる。]
貴様がどんな大層な研究をしていようと オレには関係ねぇ。 貴様にくれてやるような血はねぇよ。
―――…と言いたいところだが、 機会くらいはやってもいい。
(24) 2012/05/02(Wed) 01時半頃
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上に、オレの可愛い"子供"がいる。 そいつを殺すことができたら、そいつの血をやるよ。
半分ぐらいはオレの血だ。 不足はあるまい?
[可愛い"子供"と言う口は、皮肉な笑みに歪んでいる。]
(25) 2012/05/02(Wed) 01時半頃
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―――ああ。必ずタイマンでやれよ。
他の連中が邪魔するようなら、 オレが相手をしておいてやる。
[剣士と修道士に視線を投げ、 話は終わった、とばかりに身体の向きを変えた。]
(27) 2012/05/02(Wed) 01時半頃
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跪いて、 どうしてもあなたの血で無くては駄目なんです〜、 ―――なんて、泣いてねだれば、 くれてやったかもしれんがなぁ。
[脇腹に食い込んだ剣の柄を握り、引き抜く。 それだけでも掌から爛れが広がっていったが、 やはり、顧みることはしなかった。
脇腹の傷から血が流れ、 先に浴びたヒューのものと混ざり合って、点々と床を彩る。]
(35) 2012/05/02(Wed) 02時頃
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[レイピアを手にした錬金術師を眺め、 来るのか?と挑発的に剣先を上げたが、 相手が礼をとるのを見れば、薄く笑った。]
―――まあな。 あれを殺せたら、褒美にやってもいい。
まずは、その程度の価値はある人間だと 証明してもらわねぇとな。
(37) 2012/05/02(Wed) 02時頃
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んじゃ、オレはひとっ風呂浴びてくる。
――― 覗くなよ?
[壁際にいる人間共に向かって言って、 今度こそ、階段の方へと歩き始める。
その途中で、思い出したように振り向いて 長剣を放り投げた。]
(38) 2012/05/02(Wed) 02時頃
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―――相手を斬る時は 肉の薄い急所を狙えと教わらなかったか?坊主。
[金髪の剣士を見る目には、笑み。]
あいつなら、弟子にそう教え込むと思ったんだがなぁ。 さては、オレの買いかぶりだったか。
[嘯くのは、半ばはカマかけ。 たいして気にもしていないそぶりで、 改めて階段に向かった**]
(40) 2012/05/02(Wed) 02時半頃
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― 大広間 ―
[前方を塞いでいたバリケードの残骸は、 先程の黒き衝撃の余波で、あらかた吹き飛んでいた。
肩に担いだ騎士の身体を揺すって持ち直し、 二階へ続く階段へ足をかける。
追ってくる錬金術師に注意を払うそぶりは見せなかったが、 喀血の気配には、視線だけを向けて笑いをとばした。]
おいおい。戦るまえに死ぬんじゃねぇぞ。 死んだ獲物は、美味くないからなぁ。
(51) 2012/05/02(Wed) 10時頃
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― 大広間 ―
ん…。
[階段を上りかける途中、 肩の上で騎士が身動ぐのを感じた。]
起きたか?
[傷が癒えているのを確認し、 新たな眷属が目覚めつつあるのを知って、微笑する。]
(53) 2012/05/02(Wed) 10時半頃
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[背を叩かれ、騎士が完全に覚醒したと見て取ると、 その身体を肩から浮かせて、軽く放り投げる。 まるで、猫の子でも扱うように。]
ヒュー・ガルデン。 おまえの主はだれだ?
[やはり軽い口調のままの下問。]
(55) 2012/05/02(Wed) 11時頃
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良し。
[望んだ通りの言葉を口にした己の騎士に頷き、 浄化の光に灼かれたのとは逆の手を伸ばす。
掌からどろりと溢れた闇が剣の形を模し、 先程の儀式を再現して、騎士の首に刃が振り下ろされた。 しかし、先とは違って刃が肉を裂くことはなく]
これよりおまえの力と命はすべてオレのものだ。 オレの期待に応えるよう、励め。
[首筋に薄い傷を残して、剣は再び掌に戻った。]
(61) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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それじゃ、あとは任せた。
[機嫌良く手を振って階段をのぼりかけ、 やはり途中で足をとめて振り返る。]
そうだ、ヒュー・ガルデン そこの眼鏡の奴は通せ。別の約束がある。
あとの二人は好きにして良いぞ。
[申し伝えたあとは、もう振り返らなかった。]
(65) 2012/05/02(Wed) 12時半頃
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― 2F:宴会場 ―
よう、ドナルド。 良い子にしていたか?
[階段を登り切った先に、"子供"の顔を見つけて声を掛ける。 腕に巻かれた布に赤が滲んでいるのを見て、 舌先で、唇を舐めた。
自身はといえば、全身を赤く染めていたが ほとんどがヒューの血だ。
しかしながら、左手は浄化の力で焼け爛れ、 脇腹からは未だ血が点々と滴っている。]
(89) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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ちゃんと言いつけ通りできたようだな。 良くやった。
そら、褒美だぞ。 おまえのものだ。好きに喰え。
[言って、後ろから上がってくる錬金術師を示す。]
(90) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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おまえにとっては獲物。 そいつにとっては標的。
――― お互い、存分に愉しめよ。
[嗤いながら言って、自分はそのまま宴会場を通り過ぎた。]
(92) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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オレは上にいる。 どっちでもいいが、生き残った奴が上がってこい。
オレの血をくれてやる。
[餌を投げ、肩越しに手を振って客室へと向かう。]
(93) 2012/05/02(Wed) 21時半頃
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― 2F:宴会場 ―
[去りゆく背中で、 二人の間に静かな緊張が高まっていくのを感じる。 だがそれよりも、階下からの声が耳についた]
はん。 ……弱い奴ほど群れたがる、という奴か。
[修道士の言葉に、馬鹿にしたように吐き捨て、 それからふいに目を輝かせて口の端を上げた。
そのまま、機嫌の良い足取りで三階へと上がっていく。]
(106) 2012/05/02(Wed) 22時頃
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― 3F:城主の部屋 ―
[本来は己の、 いまは"娘"の部屋となっているその場所に足を踏み入れ、 まずは無造作にいくつかの引き出しを開ける。
しばらく探したのちに、液体の入った小瓶をつまみ出す。]
ああ。やはりあったか。
[蓋を開ければ、薔薇の香りが溢れ出した。 薔薇の花をいくつも煮詰めて取り出した 花の命のエッセンス。
クレアはこれが好きだった、と目を細める。]
(117) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[城に薔薇が咲き乱れているのは、 なにも城を飾る為だけではない。 取り出したエッセンスは傷を癒し、 ある程度ならば渇きを癒す力があった。
吸血鬼の間に、昔から伝わる命の水。 揺れる透明なそれを、ひといきに飲み干す。]
(118) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[効果は、目に見える形で現われた。 焼け爛れた左手の肌が再生し、 斬りつけられた脇腹の傷口に、肉が盛り上がる。]
―――ふむ。 完全とはいかないが、こんなものか。
[幾度か身体を捻り、手を握り開く。 動くのに支障はないと確認すれば、 今度はクローゼットを引き開けた。]
(119) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[年頃の娘らしい華やかな衣装が並ぶクローゼットの一隅に 男物の服が下がっている。]
やっぱりあったか。
[丁寧に手入れされていたそれらの中から、 金の刺繍で縁取られた黒いローブを手に取って 浴室へと向かう。]
(123) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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すっかりぼろぼろだからなぁ。
[今まで身につけていた服は、あちこちが破れ、すり切れ、 血が染みこんで酷い有り様になっていた。
もはや見る影もない服を脱ぎ捨て、 手に取ったローブを入り口に下げて、浴室に入る。 脱ぎ捨てた服は、音も無くやってきた影が片づけていった。]
(128) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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― 3F:浴室 ―
[鍛え上げられた壮年の身体を、湯の中に沈めていく。 溢れる湯が赤く染まり、それも流れて透明さを取り戻した。]
あぁー、生き返る。
[不死のものとしては甚だ不適切な言葉を発し、 頭まで湯に浸かって堪能する。]
(130) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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[そうして、湯の中で手足を広げている間にも、 階下で行われている戦闘には、意識のいくらかを割いていた。 闇をたぐり寄せ、影と感覚を繋ぎ、 戦いのさまを堪能する。
影が運んできたワインの香りを楽しみ、 口を付ける真似事までして、くつろいでいた。]
(131) 2012/05/02(Wed) 22時半頃
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― 3F:浴室 ―
――― やれやれ。
[湯船ですっかりくつろいでいた闇の領主は、 聞こえてきた『声』に肩を竦め、湯船から立ち上がる。
適当に拭った肌の上にローブを羽織り、 ベルトで留めて、歩き出した。]
(157) 2012/05/03(Thu) 00時頃
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"可愛い子"からの救援要請だからなぁ。
[浴室から出て、娘の部屋に歩み入る。 その身体がどろりと溶けだし、 粘性の闇となって流れ、床に染みこんでいく。]
『行ってやらないわけにはいくまいよ。』
[声だけが、どこかから響いて空気を震わせた。]
(162) 2012/05/03(Thu) 00時頃
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[闇は、城の壁の中を伝い、滴り落ち、這い寄っていく。 それは粘体が獲物を狙うのにも似て、 なお忍びやかに、猛々しい。
三階の床より落ちた闇は、 そのまま二階にある図書室の壁を伝い、 さらに染みこんで消えていく。]
(164) 2012/05/03(Thu) 00時頃
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