25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[考える。 昨日のイアンの姿。センターの人間だというならば可能性はある。 それからセシルの事。ロビンの願いが一つかなったというのであれば]
…邪魔だな。
[呟く。あの研師は何より先に潰さなくてはならない。 狼憑きとして、だけではなく───]
(20) 2010/08/08(Sun) 13時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/08(Sun) 13時頃
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……?
[琵琶の音が聞こえる。 そう遠くない音が。
騒ぎを聞くには、夜光が死に。 高嶺が己の手で花を散らしたと。 己が手を伸ばすことを辞めた花は気がふれて。
溜息を一つこぼす。 何故鷺草なのかと、聞かれた別れ際を思い出す。 ただ欲しかっただけと告げた。
あれから、あの男とも会っていない]
(34) 2010/08/08(Sun) 14時半頃
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[己の身の潔白を記す所を託された白鷺は その願いを届けることはできず その無念から咲いたのが鷺草だったという。
白鷺は白い鳥。その鳥が群れるように咲く。 番いの仲が良く、片方が死ねば後を追うとすらの伝説もある。 自分にしては、随分と感傷じみた願いだとも思った。 そんな鳥の花。その白い姿を忘れないために。
夢でも想う。 それが鷺草の持つ意味だとは、男は少なくとも知らなかったが]
(37) 2010/08/08(Sun) 14時半頃
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−居室→本邸廊下−
…遅い。
[物思いに耽っていたから解らなかったが 時は随分過ぎているように思えた。
侍従も一昨日昨日、そして今日とあれば 怯えて歩くのも嫌なのだろう。 仕方ないので、己から食堂へと向かうことにする。
部屋の扉を閉じれば、男が行き過ぎる後には 蓮の彼の名残]
(42) 2010/08/08(Sun) 15時頃
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本屋 ベネットは、何処かから伝え聞こえた声に「すまない」と小さく口の中で呟いた。
2010/08/08(Sun) 15時頃
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−本邸廊下−
……?
[色硝子が万華鏡のような光を床に落とす、その遠い向こう側で 何かが割れるような音がした。 それから、弱い悲鳴と]
(───血の匂い?)
[まだ、伝え聞いた目的地へと辿り着くまでには距離があるはずだ。 だとすれば誰が。いったい何故、と唇だけが紡ぐ。
赤い匂い、血の匂い。 如何程抗いたくとも、餓えた獣には叶わぬこと。 其れを得るだけが目的ではなく、何が起きているかを見定めるも理由と 己にそんな言葉を押しつけて、音のしたほうへと急ぐ]
(45) 2010/08/08(Sun) 15時頃
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[血の匂いが濃くなる方向へと辿りつく。 迷う筈などあるわけがない。
血の匂いに混じって微かに茶の香気がある。 つまりそれは己が指示したものが 何らかの理由によりそのような状況になったということ]
────っ
[辿り着いた時、息をのんだ。 割れた陶器。崩れた菓子。 そんな事はどうでもいい。
ただ、そこにあるのは獣の捕食のあとではなく、明らかに人が殺したと解る何か。 まだそこに狂った花の姿はあったのだろうか]
(49) 2010/08/08(Sun) 15時頃
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[お前、と。 言葉は上手く紡げたかもわからない。 よりによって何故こんなことになっているのだろう]
…何をしている。 お前の仕事は、人狼病罹患者の捕獲と処理ではなかったのか。
[名は名乗らない。 名乗ったところで気がふれた花には何の意味があるのだろう。 問いかける声は、ただ酷く掠れていた]
(51) 2010/08/08(Sun) 15時半頃
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殲滅───それが、人のやり方なのか!
[声を荒げないわけにはいかない。 人であるのなら。己たちとは違う、人ならば。 そう思ってもいたのに。いや、人だからこそ。 恐れ、憎しみ、我を忘れるというのか。 小さく息を吐き出すことしかできなかった。 きっと、包帯を巻かれたあの両の指も傷だらけなのだろう。 己が最後に見たときよりも数が増えている]
あおい。
[酔芙蓉の美しく咲いた日に生まれたので、花の科からあおいとつけられた。 芙蓉とは、蓮の美しい様を指す]
────本郷 碧。
[本郷に咲く蓮のようにまっすぐ空を目指せるように。 父が告げた言葉を思い出しながら、短剣の鞘をはらう]
(56) 2010/08/08(Sun) 16時頃
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───獣とて、心は持つ。心持たぬが獣と思うな。 …狼は、人とは違う。お前とは違う。 このような意味もない殺害など、狼は選ばない!
[それはもう、自分が狼憑きと言っているのと同じだった。 だが、後悔はない。己が狼であることに、変わりはないのだから]
憾みなら、あるだろう。 お前を殺さず、狂わせた狼だ。 その手で、主の敵を獲るのが望みだろう。
───我が首欲しくば、死を賭して参れ。
[上段とは火の位。何よりも燃え盛るもの。それは彼の心の底かもしれない。 短い諸刃には高さもない。強いて下段と添わせるなら水の位。 視界の甘い切り込みにそう簡単に斬り殺されるほど弱くはない。 逆手に構えたバセラードで太刀を受けとめれば刃同士のかちあう音。 痺れがあっても、耐えるしかない]
(60) 2010/08/08(Sun) 16時半頃
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[後方に跳躍し胴を回避するともう一つ後ろに跳んで姿勢を低くする。 振りかぶりからの胴を払う様は、戦慣れをしていないのだと十分解った。 舞の動きは所詮舞の動き。それは実戦ではない。 己の太刀はここにはなく。短剣では懐へ飛び込むしかない。 相手が視界を覆っているなら、それは確かに有利でもあるが]
…お前。
[聞こえた声は、まるで慟哭に聞こえた。 それでも柄を握る手を緩めることはない]
視界を覆うというのは死を賭す人間のすることではない。
[上着を落とし開いた手に持つ。 どうせならば紗ではなくて羊毛の上着だったら都合がよかったとも思ったが そんな事今更である。 一歩、また一歩とわざと音を立てて近づく。ゆっくり。 それは男の手が作りだしていた剪定の刻みに似る]
(62) 2010/08/08(Sun) 16時半頃
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そのように、視界を覆い人の死から目を逸らすような弱いものに 死を賭すなどと口にする資格はない。
[口にする。 主のいない世界を見たくないと言っていた花を 鉄色は真正面に見据えながら]
…約束を。叶えてやる。
[ほんの少し前に告げた約束。 己がお前を殺すのだと]
(63) 2010/08/08(Sun) 16時半頃
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[白布の下から覗く紅色に、鉄色は呟く]
…ああ。やはりその色は、美しいな。
[燃えるような紅色に、鉄色の瞳の男は呟く。 血の色とも、炎の色のとも違う。
足は歩みを止めない。 中段で構えられた剣に臆する気配もない。 ただ黒い上着を絡めた手と、黒い漆のバセラードを握る手と それらは剣に対することなく、ゆっくりと近づく]
…狼は、殺すと。そう言ったな。
[確認するように尋ねる。 手の中の柄の握りを確かめながら]
(65) 2010/08/08(Sun) 17時頃
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何だ。 言いたいことがあるなら言ってしまえ。 どうせこの耳には、そのうちお前の声も届かなくなる。
[黒い上着を絡めた手を持ち上げると、 その太刀を握る。
刃というのは握っただけでは切れることはない。 押す、引く。その摩擦によって刃物というものは切れる。 一歩、二歩そのまま進む。 黒い布による緩和はあれど、手が切れるのは時間の問題。 勿論、彼が刃を引けばもっと早く黒から赤が滲む]
ならば───殺せ。 こんな仰々しいもの、要らないだろう。 裏庭で私がお前にしてやったように。
この首を絞めれば、すぐに死ぬ。
(67) 2010/08/08(Sun) 17時半頃
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[手に痛みがある。 色硝子が光を落とす美しい床に、赤がまた散った。 イアンが手を離せば、残るのは重み。 己が手を離せば、床に酷い音ともに金属が落ちる。 殺されるを望むものなどあるはずがなく、 けれどそれは己が今まで食らった者も同じこと。
その色、という言葉が何の色を指すのかは分からなくて]
…そうか。
[ただ小さく笑った。己の目の色のことだなんておもわないまま、 喉に絡む手に抗うことはない。 ふと、思い出したように思い出した]
……お前、一つだけ頼まれてくれないか。
(70) 2010/08/08(Sun) 18時半頃
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[包帯越しに感じる血の匂いに、頭がくらくらする。 結局、ここに来てから人を喰らうことはなかったのだと思い出せば それもまた唇に笑みを作る要素になった]
もし、お前がこの邸を出たら
[ゆっくりとかかる力に目を閉じながら続ける]
貰ってくれないか。私の邸を。 ……私の子は、育たなかったから。
[枯れゆく花の名残と願った種は 生まれたその日に死んでいった。 それ以来どちらとも上手く保てなかった体]
舞殿が朽ちていくのだけは、哀しい。
[誰も舞わなくなってしまった蓮の舞殿(うてな)を あのままなくしてしまうことだけは、辛いと思った。 目の前の花になら託せると、そう、思う]
(74) 2010/08/08(Sun) 19時頃
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[聞こえた言葉に、肩の力が抜けた。 もうこれで、本当に花主を辞めることができる。 そう思うと、それは安堵に変わった。 己の言葉がなくとも、紋の入った短剣の揃えがあれば 其れなりの効力はきっと発揮できるだろう]
頼む。 十分だ…これで、きっといつでもお前の舞姿を空から見られる。
[髪を撫でる手がくすぐったかった。 けれど、それも喉にかかる圧力にすぐにそんなものは 解らなくなってしまった]
……これで、心、置きなく…あれのもとに、ゆける。
[浅い息の中呟く。 喉が濁った音を立てているのが解る]
(76) 2010/08/08(Sun) 19時頃
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…泣く、な。
[声は酷く歪んで、空気ではなく骨を通して伝わるだろう。 衣が落ちて血濡れの解る掌は、首を絞める手を引きはがすのではなく ただ、慰めるかのようにそっと触れた。 裏庭で背を撫でた時と同じようにぎこちなく撫でる。
泣いているのを見るのは、苦しかった。 其の涙も、苦しさも全部一緒に自分が奪って行けたらいいのにと 花が、狂うのではなく花らしく在れるようにとの願いがそうさせる]
生き 、て。
[掻き消えそうな声は呟いて]
(80) 2010/08/08(Sun) 19時半頃
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[それから花が散るように 撫でる手は重力に逆らわずに零れ落ちた。
赤い花弁を色硝子が夕焼けに滲む床の上に散らして───**]
(81) 2010/08/08(Sun) 19時半頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/08(Sun) 20時頃
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/08(Sun) 20時頃
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/08(Sun) 20時頃
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−本邸廊下−
[それは幻のようであった。 赤い花弁の名残から、まるで狼煙が立ち上がるかのよう。
す、っと蓮の香りが風に流れて、そこにいるのは 花主でも、狼憑きでもなく文字通りの狼だった。 黒に青の混じる瞳の黒い狼は辺りを見回して わふ、と小さく欠伸のようなものをした。
けれどそれに足音はなく。 けれどそれには肉がない。
生きているものには映らず 死んでいるものには関わることもできず。
関わることができるといえば、その狭間にいるものか]
(92) 2010/08/08(Sun) 21時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/08(Sun) 21時頃
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[狼は色硝子の光の下、尾をゆらゆらと揺らしながら歩く。 軽快な足取り。迷いはない。 時々足を止めて色硝子越しに月を見上げる。 それから、辺りを見回すようにしてから、匂いのあるほうへと足を進める。
足音があれば、てちてちと、そんな音が響くだろう。 ここの床は、足の裏を支える肉球には少し優しくない。 尤も、獣は肉体を持っていなかったものだから そんな音もなければ床の材質なんて気にする事はなかった]
(99) 2010/08/08(Sun) 21時半頃
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本屋 ベネットは、明乃進の袖の端を噛んで引いた。
2010/08/08(Sun) 21時半頃
本屋 ベネットは、記者 イアンが自分のいる辺りを見た様子に、小さく吠えた。音も姿も、きっと届かないだろうけれど。
2010/08/08(Sun) 21時半頃
本屋 ベネットは、明乃進を見上げながらゆらゆらと尾を揺らした。それからイアンのほうを見る。
2010/08/08(Sun) 21時半頃
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[自分についてくる足音。 それをからかうかのように黒い尾はゆら手ゆらゆら、廊下を進む。
明乃進がおびえる様子に黒い狼は首を捻ったが 其の鉄色の瞳を細く細く、月の形に描いてからゆらりと尾を揺らした。 イアンから見えていないのだということは、その言葉でわかる。
抱えられた自分の体。 其れを抱えた花の姿。 狼は、それから視線をそらすことはない]
(112) 2010/08/08(Sun) 22時頃
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[明乃進の振り返る視線を受けて首を捻る。 そのあと、耳が引くりと動いて音を確かめてから虎鉄の視線に気づく。
狼はしばしたっぷりの余裕を持ってから 欠伸の要領で虎鉄の足を噛んだ。
もっとも、じゃれる程度の弱い噛み心地ではあるけれど]
(116) 2010/08/08(Sun) 22時頃
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[明乃進の撫でる手に、鉄色は弧を描く。 己からすり寄りすらした。
何やら大きく反応した虎鉄の反撃に狼は反応することはない。 だからどうしたとばかりに欠伸のような動作すらある。
イアンの言動を聞きながら、狼は尾を揺らした。 たとえ虎鉄に掴まれていたとしても、 それはするりとその手の中から逃げるようにして揺れた。 元気がないことだけは揺れる尾の高さで解るだろう。
結局己は彼には見えないのだから仕方のないことであるが]
(123) 2010/08/08(Sun) 22時半頃
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[イアンと明乃進の会話がかみ合わない理由は分かっている。 虎鉄に背を撫でられると、黒い尾が少しだけふわりと揺れた]
───。
[狼は所詮狼である。 想うことは出来ても、話すことはできない。 明乃進の袖を軽く咥えて引くと、狼はゆらゆらと首を横に振った。 それからイアンを見る。正常さを保てていないのだと、示すかのように]
(127) 2010/08/08(Sun) 23時頃
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本屋 ベネットは、明乃進の言葉を肯定するように鉄色の瞳が細く細くなる。
2010/08/08(Sun) 23時頃
本屋 ベネットは、懐刀 朧が己の名を口にするのを聞いて、耳を欹てて声のほうを見る。
2010/08/08(Sun) 23時頃
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[明乃進の唇から紡がれた歌に 狼はゆらりと尾を揺らし、その後ろ姿を見送る。 蓮の台、それは古い本郷の主が追い求めたものと誰が知るだろう。
狼は吼えない。 吼えたところで音にもならない。 それが今の獣に与えられた理の束縛である]
(136) 2010/08/08(Sun) 23時半頃
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[視線を合わせてくる虎鉄を鉄色はじっと眺め、 それからくるりと後ろを向いた。 要するに、黒い尾が虎鉄の頬を横殴りにする形になる。
其れを済ませると狼は一つ欠伸のような事をして 庭が見える窓の傍に坐り込んだ。 ふさりと尻尾が時折揺れる。
鉄色の視線は、庭の光景を眺めていた]
(145) 2010/08/09(Mon) 00時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/09(Mon) 00時頃
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[くぁ、と大きく口を開き狼は虎鉄の文句など聞きもしない。 ご丁寧に、耳まで伏せられていた]
───。
[隣に腰かけた虎鉄をちらりと鉄色は眺めやり、 それから自分の体を抱いた花はどうするのだろうとじっと見ていた]
(151) 2010/08/09(Mon) 00時半頃
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…。
[狼の前足は、傍らの足を踏む。 ふに、と、触感があるならそれは酷く柔らかいだろう。 慰める、という行為にしては優しさの欠片もないのだが。
言葉を言えぬ狼だからこそ助かっていることは一つある。 自害した彼の主の死肉を食らった事を 狼はただ口にせずにいた。 尤も、それ自体狼憑きであった男は忘れていたし、 彼の主だとは知らないままであったから 言うにも言えない状況ではあるのだけれど。
扇、と高嶺が口にしていたので 恐らくは自分が息絶えたあの場所に戻るのだろう。 狼は虎鉄と共にそのあとをついていく。 イアンには己の姿など見えず、ただ虎鉄の姿が見えるに違いない]
(160) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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−本邸廊下−
[虎鉄はイアンの視線にそのあとどうしたか。 狼はというと、ただ見上げて、あとは好きにしろとばかり 尻尾をゆらりと振っただけなのだが。
扇にも短剣の鞘にも、施されているのは螺鈿の蓮。 黒き塗りの中にあって蓮の花の色を思い起こすに似た色の丁寧な作り。 それを自分の手ではない手が持っているのは少しだけ不思議だった。
黒い狼の鉄色は、じっとその姿を眺める。 気付けば足元は既に空気に透けていた。 この生が本当に終わろうとしているのが解る。 それでも、狼は彼の行く末をただじっと眺めていた]
(166) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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[狼の鉄色の瞳は、自分を部屋へと運んでゆくその後ろ姿を 色硝子の光の落ちる廊下でただじっと見ていた。
もう、自分の時間は追いかけているだけの余裕はない。 逝かねばならないと己の姿が伝えている。
狼の姿は揺らめいて、人の姿へと変わる。 もしも紅色の花がその姿を月瀬の向こうに認めることができたなら
きっと穏やかな表情で何かを口にして 幻は色硝子の光の中でするりと───消えた**]
(179) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/08/09(Mon) 01時半頃
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