182 【身内】白粉花の村
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[妙に疲れた気持ちのまま、診察室の扉を開く。 てっきり無人だと思っていたその場所に、まさか先客>>141がいるとは思ってもいなかったけれど。]
…参ったな、今日は良く、会う。 あまり勝手に荒らすなよ。
[机に突っ伏す弟のその背中は、よく見覚えがある。 それこそついさっき、自分の前から逃げるように立ち去るのを見たばかりだ。 それでも、会ってしまったものは仕方がないと、今度はどんな顰め面をされるだろうかと。 そんな思考は、彼から好意を向けられることはとっくに諦めている。 怪我の事もあるし、自分はけして、彼と会いたくない訳ではなかったのだけれど。]
……、おい、何してる…!
[そこまで考えたところで、机に広がる血溜まりに気が付けば、顔色を変えてすぐに駆け寄った。 彼の眠気ゆえの投げやりな自傷は今に始まった事ではないけれど、ここまで酷い光景を自分が目にするのは、初めてかもしれない。 彼がこちらに気付いても気付かなくとも、その肩を引いて、血塗れの手首を取り上げるだろう。]
(224) 2014/06/27(Fri) 02時半頃
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[のろのろと上げられた顔>>229の中、空虚な瞳と目が合う。 めいっぱいの敵意を込めて睨み付けてくる、そんな常の感情は見当たらない。まだ自分と弟とがうまくいっていた頃――幼少期の面影が、ぼんやりと過った。]
何、やってるんだよ。
[机と、掴んだ手と、上がった額と。 散らばる赤には憤りすら感じながら、先の言葉をもう一度繰り返す。 覇気のない訴えには小さく謝って、とりあえずと腕からは手を離して。代わりに両肩を掴んで引き上げる。]
……っ、…どこを、怪我してる。
[口をついて出掛けた文句は飲み込む。今伝えたところで、きっと意味はない。 赤く濡れた額に手を伸ばして、無理やり掌で拭って傷のないことを確かめて。 机の上に転がる血塗れのペンを横目に捉えれば、小さく舌打ちをした。]
…破傷風にでもなったら。どうするんだ。
[本当に聞きたいのは、そんな事ではないのだけれど。 手首の傷に気付けば、そしてまだ血が止まっていないのなら、机の上から掴み上げたガーゼを押し付けて止血しようとする。 明らかにおかしい弟の様子は、不安を煽ることしかしない。それならば、いつものように反発してくれた方がずっと良い。]
(230) 2014/06/27(Fri) 05時半頃
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[持ち上がってよろめいた身体>>231の、あまりの従順さに眉を顰めた。 要領を得ないその発言は、まるで夢の中にでもいるようだ、と思う。
頼りないその様子に、目を細めて。 揺らぐ身体を抱えるようにして、デメテルを寝かせたのと同じベッドへ引きずっていく。 大した抵抗がなければ、無理やり腰掛けさせて顔を上げさせるだろう。]
……変なもん、…幻覚か。 安定剤は飲んでるのか。
[返された言葉に、ようやく合点がいく。自分が遭遇するのは初めてだったろうか。 傷口はさっさと水でもかけて無理やり洗ってやりたかったけれど、今の弟から目を離すのは危うい気がして。後回しにしつつ、嫌に平坦な声に耳を貸す。]
(233) 2014/06/27(Fri) 08時頃
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…ばあちゃん、って。…無茶言うなよ。 家にも、そのうち帰れる、…から。
[ずいぶんと年相応な、だからこそ不釣り合いに思える我儘には、困惑して眉を下げた。 祖母はまだ健在だったろうか。病院の外で、待っていてくれたろうか。 どのみちそれは、今の弟にはとうてい無理な願いだ。とってつけたような励ましを重ねながら、]
(…僕だって、肉親なのに、)
[心を過ったその思考が、何に由来するものかは分からないけれど。]
……とにかく、"コレ"はなんとかしろ。 そのうち腕が使い物にならなくなる。
[何にせよまず、弟が覇気を取り戻してくれなければ、どうしても落ち着かない、と。 間違いなく痕の残りそうなぐちゃぐちゃの傷を示しながら、幾度となく繰り返した説教を、彼につられてかやや潜めた声で落とした。]
(234) 2014/06/27(Fri) 08時頃
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