276 ─五月、薔薇の木の下で。
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―廊下、医務室付近―
[マークは悠人の後を懸命に追った。 駆け足は自責の念>>4:99故であり、悠人が「守りたい」という相手を案じる速さについてきたが故でもあり。 酸素が足りなくなってきた頃に、「なんとかなったっぽい」の一言>>94が耳に届き、脚を止めた。]
――そっか、大丈夫、そう、か。 それなら、良かった、けど。
[何が悠人にささやきかけて、オスカーへの懸念を言わせたのか>>4:83はマークには判らない。そして今聞こえた「おやすみ」の訳も。 判らないながらもその言葉をすんなり受け入れたのは、余裕のなさ故でもあったけれど、それ以上に花そのもののような悠人と向き合い、直に触れた>>4:104からだったのだろう。]
(25) sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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[息切れで痛む胸を押えながら、廊下の壁に背を凭れさせた。 その場には姿見えないオスカーの姿を、閉じた目の裏に思い描く。
何が彼に死を思わせたのか――そもそもその懸念が正しかったのか――までは未だ知れない。それでも今度会えたら、あの時>>3:196曖昧にしたままだった答えを伝えねばと思う。 薔薇に捕らわれておらずとも>>4:37、ひとりの人としての苦悩を抱えていただろうその人に*]
(26) sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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―明け方の近い、医務室―
[廊下の壁の側にみえた、連ねられた名札。 マークは呼吸と心が幾らか落ち着いた頃に、その部屋――医務室のドアをついに開けた。 努めて足音と声を殺したのは単純に、眠ったり休んだり、或いは弱ったりしているかもしれない先輩たちへの気遣いだ。
未だ夜が明けぬ頃、白い部屋のベッドのひとつで見つけたフェルゼの顔色を見下ろす。表情の色は定かには推し量れないが、風邪の熱っぽさ>>3:273はあるようにみえた。 少し前にマークが零した悪態が、彼に吐息を零させていた>>4:+24とまでは知らぬまま、未だ眠れる>>21その人のベッドの側に佇む。 側に寄れば風邪をうつされるかも、なんて懸念もこの時は薄く]
(27) sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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(起きたら、どんな顔するかな)
[一度、二度、逃げるように離れていったひと。 マーク自身も素直に触れることのできなかったひと。 そんなフェルゼが目覚めた時、自分が心に決めたことを上手く伝えられるだろうか。そんな形のない微かな不安がふっと過る中]
(なんだか、立場が逆みたいだ)
[そんな可笑しさも湧いてきて、声を殺した笑みが目許に現れた。 そしてふいに、これまでフェルゼにされてきたように、彼の銀色の髪に右手を伸ばして――触れずに止めた。]
(28) sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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(……汚れてる)
[右手の指に微かについた土の色。それは、滑らかというよりがさついた悠人の手>>4:104からのもの。 悠人自身が汚れている、なんてマークは思ってはいなかったが、単純に土を相手につけることが厭われた故に、今フェルゼに触れることをやめた。]
(ああ、あの時のだ。 そうだ、僕はあの人のことを知りたかった。
あの人は本当に、花なんだろうか。 どんな「色」が、するんだろう)
[右手を自分の鼻先に近づけ、そのまま触れた。]
(29) sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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[見えない「色」が、脳裏に映る。
それは朽ちかけた木の枝のように暗く――黒く、 黒の中でひとつ、ふたつと咲き続ける花も 血のような赤から、また黒へと変じていく。
それはまるで、明けない夜のように。 覗き見たものの姿を映し閉じ込める射干玉のように。 視界を、意識を、染め上げて――]
(30) sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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[――黒は弾け、青をまとうあかるい茜がひろがった。
「東雲」なんて言葉はマークは知らなかったけれど、意識に捉えた「色」は紛れもなく東雲のそれ>>*2だった。 そしてそれは、絵葉書の中でだけ見たことのある、東洋の空の景色を想わせた。
ああ、これを教えたのは誰だったのだろう。 無知を恥じたマークが、図書館で漁った本の話だったか。それとも花を育てる手の持ち主から直接聞いた話だったか。 それは「東洋をふるさととする、薔薇の原種」という言い伝え。]
(やっぱり、あの人は花だったんだ)
(――…似合ってる)
[幻視の中の「夜明け」から意識をふっと戻せば、 そこには、現実の夜明けの光が射している**]
(31) sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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花売り メアリーは、メモを貼った。
sakanoka 2018/05/24(Thu) 14時頃
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[射干玉から東雲へと移り変わる幻視>>31は、束の間の眠りを無意識に引き起こしていたのかもしれない。 気が付いた時には先程と変わらぬ姿勢のまま、フェルゼを見下ろしていた。]
(110) sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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[夜明けの空気を微かなシーツの音と吐息が揺らす>>41。 寝起きの瞼が開く――こんな光景を、フェルゼはいつも見てきたのだろうと思う。]
あ、起きた。
[「明けたよ」の返事や「おはよう」の挨拶ですらない間抜けな呟きが、マークの唇からぽつりと零れた。 明け方の光が注ぐ、まるで笑んだような口許>>42。けれどそれは安堵の笑みというより、観念した者の顔の苦笑にも見えてしまった。おまけにこちらから視線を外された>>43。 だから今度こそは、とばかりに息を吸い込んで――そのタイミングで丁度、暢気な挨拶をされてしまった>>44。]
……あ、うん、おはよう、フェルゼ。
[間抜けな声を再び洩らし。]
(111) sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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[勢いをつけて言おうとした言葉も頭の中から飛んでいってしまって、暫く言葉が出なかった。 そんな時に、紡がれた問い>>45。]
花? ああ、花は――…
[瞼の裏で未だに覚えている射干玉と東雲。 その色をみせた「花」たる人との答え合わせ>>4:69>>4:80を思う。]
花は散ったよ。 そんな景色が、僕には見えた。
[なんて言ってから、多分これはきちんと説明しないと理解し難いものかと軽く唸った。とはいえフェルゼが特に訊かないようなら、これで大丈夫かな、と思って]
(112) sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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[花は確かに散って、 そしてその先に、残るものがあって――]
(113) sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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うん。 朝陽、綺麗だ。
[顔を上げたフェルゼにそう言いながらも、マークの目は窓では無くフェルゼの方に向いていた。 穏やかな朝の訪れが機を逃がして、また決意を空振りにさせてしまいそうだ。そう気づいたから、もう一度深呼吸して、言葉を出そうとした。 けれど未だに、素直さを妨げる反発みたいなものが胸の内でつかえていた。声にならない吐息ばかり、何度も零して――]
(114) sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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[言葉よりも、身体の方が先に動いた。 長身を折り曲げて、ベッドに手をついて、フェルゼの顔を真正面から捉えた。
自分でもこの衝動的な行為に戸惑った。けれどだからこそ、勢いで告げることができた。]
フェルゼ。 僕は、あんたじゃなきゃ、嫌だ。
[は、と荒い呼吸をひとつ挟んで]
僕はもう、欲しくないなんて言わない。 逃げたりなんかしない、から。
[今ここに居る誰に見られていても、誰に聞かれていても構わない、そんな秘めない想い。 ああ、この言葉は、おやすみすら告げぬままにいるあの人>>38へも伝えようと意思したもの。]
(115) sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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[それから、フェルゼを見詰めていう。 堂々として素直すぎた幼い頃から、いまでも変わらない瞳で。*]
だから、あんたも逃げないで聞かせて。 あんたの、想いを。
(116) sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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花売り メアリーは、メモを貼った。
sakanoka 2018/05/25(Fri) 21時頃
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[「俺も知らない綺麗な花」>>124。その「綺麗な花」が落とした花弁こそがきっと、痛く甘く、狂おしく紅いものだったろう。 目の前の人はあれから>>1:235もその紅に刺されなかったのだろうと、「知らない」の言葉からなんとなく思えた。]
うん、大丈夫。 黒ずんだまま折られたりなんてしてないよ。 綺麗に散って、ちゃんと明日を迎えてる。
[つもる話は、後。 あの夜のことを忘れてなんていないけれど、それこそ話せば一夜では足りないかも、なんて思いもした。]
(143) sakanoka 2018/05/26(Sat) 00時頃
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[そして今のマークは、紅い荊のかけらに駆り立てられてもいないのに、こんな大胆な行動に出ていた。
本当にまるで、今まで自分がされてきたことを、彼に返しているようだと自覚したのは、フェルゼが視線移ろわす様がみえた時。はじめて自分が悪戯に気づいた時>>0:62も丁度、これが現実なのかと疑ったものだった。 そんなおかしさも、けれど未だ現実と認めないような、或いはただ熱に浮かされているだけのような言葉の前に、ささやかな苛立ちに変わってしまい]
……ばか。 本気で夢だって思ってるんなら、その頬抓ってやろうか。
[「都合の良い」――この言葉が既に、問うまでもない答えを示しているようでもあった、けれど]
(145) sakanoka 2018/05/26(Sat) 00時頃
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……え?
[微かにしか形掴めない小さな声>>127は、けれど確かに「つまらない」を紡いでいた。まるであの時の自分が言った通りの、遠回しな――。 それに続いた答えは遠回しではなく、今度こそはっきりと想いを示すものだった。]
そっか、やっぱり、そうだったん、だ。 ……なんて言ったら、自惚れ過ぎ、かな。
[やっぱりと言っておきながら、視線を斜め下に落とした。頬がかっと熱くなるのを感じた。自分から堂々と問い質しておいてこれなのだから、どうしてもきまりが悪い。]
許すも何も、僕は、……僕だって、 あんたに触られるの、嬉しい、し。 ずっと、見てて、くれたのも…―――っ、
(146) sakanoka 2018/05/26(Sat) 00時頃
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[しどろもどろの返答に落ちかけたところで、中途半端に伸ばされて下がっていたフェルゼの腕に手を伸ばした。指先に土がついたままだったことも、今はもう気にも留めていない。 まるで海の月のように柔い、伏した瞼のしたの目をきちんと見据えて、笑う。]
いいよ。 あんただけの僕になる。 だからこれからも、僕を見て。望んで。
[本当に永遠なんてものがなくて、「ずっと」なんて未来も有り得ないとしても。 そんな理由でこの一瞬を捨てたくはなかったし、「これから」を諦めたくもなかった。]
(147) sakanoka 2018/05/26(Sat) 00時頃
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すきだよ、フェルゼ。
[泣き笑い――ああ、彼の前でこんなに素直に笑ったのは初めてだったかもしれない。 そしてこの想いは、あの月夜と薔薇があって初めて得たものではなくて。 目覚めの瞳にフェルゼだけを映してきた、そんな一瞬を積み重ねる中で得たものだったのだと、今なら判る。**]
(148) sakanoka 2018/05/26(Sat) 00時頃
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花売り メアリーは、メモを貼った。
sakanoka 2018/05/26(Sat) 00時半頃
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[自惚れじゃないと告げる声は震えていた>>194。 視線を下に逸らしたままでも、フェルゼが名前を呼ぶ声からはどことなく、頬の朱さを思わせる熱が感じられた>>195。 途切れ途切れになった言葉の代わりに彼の腕に触れたのは、風邪ではない熱っぽさに中てられた所為もあった。
誰よりも綺麗だ、の言葉に瞳が揺れる。 泣いた顔も怒った顔も、直接は向けなかった笑顔も、それこそあんな惨めな憔悴だって目にしていただろう>>3:84と思えば、「きらきらして」の意味は決して淡くない筈で。 寄せられる身体から伝わる体温。その温もりを自然に求めて、ベッドに膝を載せ、身を乗り出していた。]
(208) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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[あの時とおなじように、フェルゼに触れられた>>197。 ひりついた目尻に、くすぐったくて熱い顎、少しだけ痛んだ濡れた耳殻。 ただ違うのは、促されるまま触れ合ったのが額どうしだったことと]
ばか……。 あんたまで泣いてんじゃないよ。
[そんな雫の煌めきを彼の目許に見たこと。 重なった額は熱く、間近にかかる吐息もまた温かい。 さらりと髪を梳かれることの、安堵にも似た快さ。 潤む眼はただ、目の前のひとだけを映して――]
(209) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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[その目の前のひとの距離が、引き寄せられてさらに縮んで]
……―――え?
[>>198>>199答えるより前に、唇が柔い感触を得る。 間近に映るのは、ほんのりと淡いあか。 数秒の後、自分がなにに触れているかを覚った――覚ってからも、暫くの間、その触れ合いを静寂のまま保った。]
(210) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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(キスって、こんなに、 ……ほっとするんだ)
[揺れて移ろう灯りのような、薄く淡いくらげのような、三日月の蒼にも似た白>>2:68。そこから感じた「包み込まれる快さ」を、今度は避けることなく受け入れた。]
(211) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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[暫くして、マークのほうから顔を離した。それでも、鼻先どうしは触れそうな程に未だ近い。]
……永遠を、なんて。 まるでプロポーズみたいだろ。
[小さな声で漸く紡ぐ悪態。思い返せば照れるようで、けれど不思議な驚きもあった。 永遠なんてないと言い切っていた筈のフェルゼが、そんなことを言ったのだから]
うん、あんたの傍にいるよ。 花が枯れて散っても、実を付ける限り、 僕が消えてなくなる訳じゃないからさ。
[怖れることなく、涙痕を残したまま笑って、言い切った。]
だからフェルゼも、僕の傍に、…――
(212) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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[この熱さは本当に、互いの想いからのものだけなのだろうか。 吐息の熱さが、妙なところでの心配を呼び起した。]
……ところでさ、大丈夫なのか。 いや、その、フェルゼ、風邪、みたいな感じだから。
[これまでの温もりを一気に台無しにした自覚はあったから、視線が横に逸れた――といっても、寝ていた筈の他の誰か>>67>>149>>163の顔だとか、見舞いに来ていた誰か>>142の様子だとかは、伺えなかった。微かに聞こえてきた寝息>>118は、未だ眠りを示すようではあったけれど。 風邪をうつされるからという訳では無く(あれだけ身を寄せたなら、とっくにうつっていて可笑しくない)、寝起きの病人の負担を案じて、身体を離した。]
(213) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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[そして自分は兎も角、フェルゼにこの場であまり恥ずかしい思いをさせても、と大人の部分で案じた。 だから続く言葉は、彼だけにしか聞こえない小声のささやきで。]
もし、体調大丈夫そうだったら。 その……、夜、一緒に寝てくれ、ないかな。 っと、今は僕の部屋、僕しかいないから。
[と言ってからまだモリスから毛布を返して貰っていないことを思い出したが、一先ずそれはそれで]
なんとなくだけど、フェルゼが傍に居てくれたら、 花の匂いがなくても、よく眠れる気がしたから。
(214) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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[告げた理由は真実だったが、これが別の意味に受け取られるという自覚が無かった訳でも無い。 いつか変な妄想>>0:197>>0:205してたな、と思い出されれば酷く恥ずかしくもあり、伏し目がちに問うた。
フェルゼが名前を呼んだ時、彼の内側にどれだけの波が立っていたか>>-714、想像もしていないまま**]
(215) sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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花売り メアリーは、メモを貼った。
sakanoka 2018/05/26(Sat) 19時頃
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[フェルゼの涙の訳>>224がまさかあの時の自分>>3:52と同じだったなんて察せた訳では無かったが、それを自分の所為にされたことは、けれど、苛立つよりも何処か誇らしくすらあった。
離した唇に残る、小さく食まれ、食み合った余韻。 まさか自分に、弾けたあかを感じさせる何かがあったとまでは思わないものの。安堵の中のふわりとした高揚が、身体中に沁みていた。]
……うん。
[フェルゼの長い指が、薬指に絡まり、つながる。その手をそっと握りしめ返す。プロポーズとまでは結局いかない、けれども誓いの指輪にも似た小さな独占が、うれしい。 夢見るような現実の瞬間に、愛おしむ言葉は途切れることなく続いた――筈だった。]
(237) sakanoka 2018/05/26(Sat) 23時頃
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[夢見る瞬間を自ら打ち切ってしまったマークは、一先ず落ち着いた心算で居て――結局、落ち着けなかった。]
え。 ま、まって。その、不味かった――…?
[きらいだとか、ずるいだとか>>229。その言葉に率直に動揺した。 フェルゼの表情もまともに見られず目を伏していたところで、ふいに、頬に柔らかな感触。 きょとりとして――顔を赤らめた。はにかんだような顔を前にしながら、暫く、訳も判らずにぱちぱちと瞬きを繰り返し。]
(238) sakanoka 2018/05/26(Sat) 23時頃
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[「冗談だよ」>>230と続けられたことに、漸く、気が抜けたように長く細い息が洩れた。]
な、なんだよ。そうならそうと、早く言え、って。 ……でも、良かった。ありがと。
[泣きそうな訳では無かったが、かなりひやりとしていた、というのが正直なところ。だから、一度部屋に戻って用意すると聞いて頷いた時にも、大分安堵の滲んだ情けない顔をしていた。 「そこもすき」だなんて言われたことへの照れは、多分、上手く顔には出せていなかった。]
(239) sakanoka 2018/05/26(Sat) 23時頃
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