238 聖痕の空〜Knockin' on heaven's door〜
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…天の門を封印する事には賛成だが、 テメエが全部背負いこむのは、納得いかねえな。
[羽舞う世界の中。対峙する声は、低く響く。 白を睨みつける瞳の奥で、轟々と炎を燃やして。
矛盾した事を言っている事も、やるなら必ず何かを失う事ぐらい分かっている。 しかしその柱を、自分は選ぶ事が出来ない。
俺が行く。 俺も付き合う。 そう言ってやりたいのは山々だったが、それでも、自分には日向が居たから。 その道を己が選べぬ限り、コイツと再び別つ道は、今この場所で。]
お前の頼みは聞いてやれねえ。 やるなら、
(4) mzsn 2015/09/22(Tue) 00時半頃
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俺を殴ってでも説得しろよ、一ノ白。
[お前を止められない事を知って居ても、止めずには居られないのだから。]
(5) mzsn 2015/09/22(Tue) 00時半頃
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[輝く白色を己の血で汚す事を嫌だと思ったにもかかわらず、胸ぐらをつかむ黒の手は火傷と血まみれで、 彼の纏う白に鮮やかな血色を刻んだ事に気付いても、手を緩める事は無かっただろう。]
何が、上等だ。 こんな状態で全部背負いこもうなんて、 ふざけた事抜かしてんじゃねえよ!
くたばりぞこないが! 何か他の手段でも考えろ! それか、テメエの代わりに俺が――…!
………俺が、
(8) mzsn 2015/09/22(Tue) 01時半頃
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おれ、は、 おれには、その役目は、出来ん。
[緩める事は無かった。 途中までは。
次第に勢いをなくす声量に指は緩み、瞳に燃えていた炎は揺らめきを弱める。 彼の白い服に、血と皺を残して。 コイツの弱った拳なんて痛くも痒くもない。それでも強い意志が伝わってしまうのは、白と黒が深く繋がって居たから。 ああ、俺は、卑怯だ。 こんなコイツに、結局は全てを被せてしまう。 それでも、]
俺はテメエとやっと並べたってのに、 また置いて行くのか。
[どうしようもなくそれが悲しく悔しく、 頭を垂れ互いの足先を睨んでも、お前はどうせ、行ってしまうのだろうと。]
(9) mzsn 2015/09/22(Tue) 01時半頃
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ふざけんな、 お前の約束なんて信用できん。
………だが、
[それは、たっぷりと間をおいて]
(14) mzsn 2015/09/22(Tue) 02時半頃
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今回だけは、信じてやる。 帰ってこなかったら、ぶん殴るからな。
[それまでこの弾≪閃光弾≫はお預けだと、 たった一発残った、お前との喧嘩の為の弾を仕舞い込んで。
先の知れないいつかの約束を待つ生は、きっとつまらない物では無いのだろうな。 白と黒。どうしようもなく混ざらない二つの色に、今はどちらも笑みを浮かべて。それでも力の無い笑みで贈り出す事を、どうか、どうか許して欲しい。
力と言わず、望むのならなんだって貸してやろう。 ただ俺は、ここに残るから。 だから居場所だけは貸してはやれないのだけれど、それ以外なら好きに持っていけど、血まみれの手に炎を揺らして。 この炎が、俺の炎がお前の肌を焼く事は、無い。]
(15) mzsn 2015/09/22(Tue) 02時半頃
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[大空を舞う不死鳥>>19を、静かに見上げていた。 その眩しさに目を細めても網膜に焼きつく炎は輝いて、 そうして青の大空に浮かぶ赤は次第に小さくなり、あんなに光を放っていたと言うのに、呆気なく燃え尽きた。
途端、黒の男は崩れ落ち膝をつく。 崩れた聖堂の、ステンドグラスの破片散らばる床の中で、男はまだ天を見ている。 崩れ落ちたのは、負った怪我の重さから?違う。 遅れて来た幸々戸の式の反動?違う。 大きすぎる力に耐えきれなくなった?違う。 そのどれもが当てはまる。けれど、全てが違う!
燃え尽きた瞬間ふつり途切れてしまった彼の存在を あれほど強く流れていた彼≪一ノ白≫を感じないからだ。
互いの羽が無くなってしまっても、一ノ白がアンジェ・ロイスと名を変えてからも、それでもずっと感じていた細い繋がりはこの数時間で存在を強めて。 しかし、それも今はもう無い。 天の扉は全てを焼いてしまった。彼の存在と共に。]
(42) mzsn 2015/09/22(Tue) 16時半頃
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[それでも、置いて行かれたと子供のように泣きじゃくる事はしなかった。 還ってくると、確かに約束を交わしたからだ。 それに俺は、当主の中で一番大人だからな。護らなきゃならない存在も、在る。 次第に姿を戻していく崩れた街の中で、空っぽになった器の繋がりに胸を痛めても、それでも俺には、まだしなければならない事が沢山あるから。]
(43) mzsn 2015/09/22(Tue) 16時半頃
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一ノ白 神威、
[12柱の歴史から消されてしまったとしても、俺は覚えておいてやる。 結局、最後まで呼ぶ事の無かった彼の名を口にして、 何故なら俺は、お前を待ち続けるからだ。
神を凌駕する威力を持つ者、神威 ああ、お前は確かに、
――どうしようもない程、天使だよ。
今までも。 そして、これからも、な。 お前の白の翼は永久に此処に。 俺の黒と、共に在る。*]
(44) mzsn 2015/09/22(Tue) 16時半頃
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[暫く、そうしていただろうか。
天を見上げてもあの焔は無く、それでも、忘れる事の出来ない輝きは胸の奥に。 ふら付く身体を何とか立ち上がらせても足元はおぼつかない。 少し、頑張りすぎたか。
俺も歳かな。そう小さく笑っても、此方をからかいはしゃぐ白は、 居ない。]
…日向、幸々戸、
[そうだ、共に居た彼らはどうした? 瓦礫の中周囲を見回し、真っ先に飛び込んできたのは痣無しの金髪で。
あの真っ赤な上着は着て居なかったけれど、転がる色は確かに彼だ。>>41 走れぬ身体を揺らし近寄れば血色のいい顔が覗きはしたものの、それでも、触れた首筋に鼓動を感じる事は、結局、無かったのだけれども。]
(84) mzsn 2015/09/23(Wed) 23時半頃
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[何度、彼の名前を呼んだか。 幸々戸、痣無し、式使い、長男、 …理岐、
問いかけと共に身体を揺さぶっても返事は無く、 年相応に重い抜け殻を背負ったまま、悲痛な顔で探すのは、やっと知った自分の娘。*]
(85) mzsn 2015/09/23(Wed) 23時半頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
mzsn 2015/09/23(Wed) 23時半頃
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[そうして崩れた聖堂の中を見回す刹那、舞う光の粒>>29を視界にとらえる。
…何だ?
それは、先ほど見た不死鳥の聖なる輝きにも似ていた。が、それでいてどこか違う、しかしどこかで見た事のあるその輝き。 祭壇へと向かう光の粒子が形作るのは、一つの小さなシルエット。 横たわるそれは次第に形を取り戻し、呻き、起き上り、虚空に手を伸ばし、 温もりある皮膚の上に長い髪を揺らすのは――、]
(98) mzsn 2015/09/24(Thu) 01時頃
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…――仰九羅 璃紗…ッ!?
[先ほどまで対峙していた、倒した筈の女の顔を見るや否や、鋭い言葉と共に再び炎を身に纏う。 それでも疲労や負傷からか纏う炎は大人しく、燃えては静まり、静まってはまた燃やしてと力の出力にムラが見えるのは致し方なし。
たとえ女の目に涙が浮かんでいたとしても、刻まれた聖痕が光の中に消えたとしても、 熱風と火の粉を散らしながら、睨みつけた視線は殺気を孕む。 背負った幸々戸を焼かぬよう、消えかけの炎を揺らして。]
(99) mzsn 2015/09/24(Thu) 01時頃
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――ッ!
おい!仰九羅 璃紗! てめえ何でまだ生きてやがる!
おい!!
[何度その背に呼び掛けても返事は無く、天を仰ぐ女>>100は此方に見向きすらしない。 無視された事に激怒し火球を放ってもよかったが、そんな力は残念ながら残っておらず。
あちらの殺意の有無など知った事か。 あれだけやりあった相手をそのままにしておくなど、誰が出来よう。 何のつもりか。一体何をたくらんでいるのか。 どのようにして復活したのか。これから一体何をしようと言うのか。 浮かぶ疑問は数あれど、そのどれもが、今の自分に抑えきれる保証は無い。 二度ある事は三度あるってか?しぶとい奴め。
それでも傍らの存在>>101に服の裾を引かれれば、上がった熱も冷めると言う物。]
(107) mzsn 2015/09/24(Thu) 02時頃
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そうは言っても…!
[言われてみれば確かに、妙か。 日向の指摘に荒げていた声を抑え、耳を澄ませば女が口にするのは神威の名。 何だ?何に、祈って居る? 祈りか呪いか。判断のつかぬ物に僅かな動揺を揺らしながら、それでも確かめぬまでは油断はできない。
だが、一先ずは纏う炎を消そうか。 どの道これ以上は燃料切れだと、散らした火の粉を全て消して。 それでも何かあってはたまらぬと幸々戸の身体をその場に横たえ、黒銃を片手に下げると、 砕けたガラスを踏みしめながら祭壇へと近付いて行く。]
(108) mzsn 2015/09/24(Thu) 02時頃
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[祭壇にて祈る女は、本物の聖女の様だった。
その場に纏う空気は聖を孕み、聖堂の窓に僅か残った色硝子が場を照らし出せば、色素の薄い髪が何処までも美しく輝いていただろう。 天からの光は神の降誕を唄う星の光にもよく似ていて、それに照らし出される一幕は、良く出来た宗教画の一枚の様に。
それでも黒い男は臆する事も無く、祈り捧げる光の中に、その汚れた手を伸ばすのだ。]
おい、 聞いてんのか、仰九羅
[どう言うつもりか知らないが、その化けの皮引っぺがしてやる。 力任せに細い肩を掴み、無理やり此方を向かせ、
しかし、 その顔は、]
………麗亞…?
[毒気の無い女の姿に拍子抜けして、見つめあったまま数秒間。 ぽかんと開けたままの口からやっと絞り出した言葉は初代当主の名では無く、「現当主」たる少女の、入れ物であった彼女の名前。]
(109) mzsn 2015/09/24(Thu) 02時頃
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りさ、の方じゃ、…ない?
[名を呼び返し此方を見つめる目も、日向を呼ぶ声もその横顔も、確かにそれは己が良く知る以前の「麗亞」>>112>>113 性懲りもなくまた猫でもかぶって居るのかと疑ってみても、表情や雰囲気から読み取れる物はたった一つ。 仰九羅璃紗ではない、と。それだけで。
肩を掴んでいた手を、離す。 彼女の細い肩を、乾き切らぬ男の赤が僅か汚していた。]
あー…、 れいあ?
なんだ、その
大丈夫か、
[かける言葉に迷った末、口にしたのは不器用なそれ。 クソ女が抜け出て、入れ物になって居た彼女が戻ってきたと。そう言う事だろうか。 突然の事に動揺を隠しきれぬまま、それでも戦う必要が無いのなら、きちんと黒銃を収めただろう。]
(119) mzsn 2015/09/24(Thu) 03時頃
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[…と、気が抜けた為か、男は目の前の異常事態にやっと気付く。
そう、 うら若き乙女の裸である。
既にばっちり全部見た後であったもののバツが悪そうに目を逸らし、暫しの思考の後血と埃に汚れた煙くさい己のコートを投げ寄越しただろう。]
着ろ。
[頼むから、着てくれ。 視線を逸らしたまま、眉間に特大の皺を刻んで。]
(120) mzsn 2015/09/24(Thu) 03時頃
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…確かにお前の家がしでかした事だが、 アレは璃紗がやった事であってだなぁ、
[気まずそうに目を逸らしたままぽつぽつと呟き、コートは多分日向が着せてやるだろうと、彼女の方は一切見ない。]
だから、償いとかは別にいいだろ。 済んだ事だ。
[やったのは仰代…仰九羅の家では無く、初代当主である璃紗だ。 その周囲に他の裏切り者が居たとはいえ、麗亞本人は一切関係が無く。むしろ被害者の側であろうと、男が彼女を責める事は無かっただろう。]
(128) mzsn 2015/09/24(Thu) 03時頃
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…はぁ?
[見ないように見ないように。そう努めてはいたものの、此処から離れるつもりが無い>>129と言われればそうはいかない。 さて彼女はコートをしっかり着たか。 どのタイミングであれ再び彼女の顔を見て、しかし合わせた視線は心底訳が分からないと言う様な物。]
お、まえなあ、 アイツは、茶を飲みに行った訳じゃねーんだよ。
[何時間?何日?何週間か何カ月か、下手をすれば年とかかる程の長い遠出。 帰って来るからとは約束を交わし、それを疑う事は無い物の帰宅の日程までは己は知らず。
むしろ天との理を曲げる様な契約に、今すぐの帰還という希望は果てしなく薄い物で。]
駄々こねるなよ。 あいつは絶対帰ってくる。だが、ここで待ち続けられはせん。
[直ぐ帰ってくるくらいならむしろ俺がここで待っていたいぐらいだと、そんな言葉を飲みこんで、 再び細い肩をコート越し揺らした。]
(130) mzsn 2015/09/24(Thu) 03時半頃
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…だ、そうだ。
難しい処理は俺ァ興味ないがな、 お前が何と言おうと、三黒は百洲の肩を持たせて貰う。
[百洲と仰代の血の繋がりの深さや権限に関しては三黒の知らぬ所であるし、手の届かぬ場所ではある。 だが没落しかけの家といえど12の内の1柱に代わりは無く、その権限もやはり強い物。 それに、すっかり当主の数が減った今、これ以上家を減らしてしまう訳にも行かず。 そんな理由で幾らでも日向の言葉は強引に進行できるだろう。恐らく、は。
よく口の回る少女に大人が口を出す暇は殆ど無く、黒い男は黙ったまま。子供らしくない言葉の数々に目をいくつか瞬かせても、そう言えばこの子も立派な当主だったと、今更ながらに思い出して。
まあ家がつぶれようとつぶれまいと今更痛くもかゆくもなし。>>139 一ノ白の聖痕が消えた今、数が欠けちゃもう二度と門が開く事もなし。 聖痕の守護に力を注ぐ必要も無く、12の家は唯の家、だ。]
(141) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時頃
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さあな、 そう言う奴も居るかもしれんが――、
ふざけた事抜かす奴は三黒当主が直々に潰す。 そう言うアホは、12の守りの中には要らん。 血が濁る。 当主であっても、当主で無くとも、性根の腐った奴は不要だろう。
[気に食わんやつは全員殺すと言わんばかりに。 というか実際そのつもりで、主に目障りな各家の長老共を始末するいい口実だとホルスターの中の黒銃を撫でていたか。
確かに、彼女の言う事>>142も一理ある。 だが生憎、子供のわがままに付き合ってやる気は更々ない。]
(148) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時半頃
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――あーあ、 お前、強引だな。
[まあ彼女がして居なくても、自分もきっと同じ手段を取って居た。 命じられれば、そのままに。 気を失った仰代をどっこいしょとデリカシーなく小脇に抱えて、随分軽いなと要らぬ心配をしていただろう。
見下ろす視線の先、幼くも懐かしい人の面影に、微か目を細めながら。]
(149) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時半頃
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…仰代麗亞の中身が何時から璃紗だったかは、 俺は知らん。
だが、お前が生まれた時から俺はお前を見ていたし、 仰代の新当主の誕生を、喜びもした。
俺はお前が誰であれ、 何時からお前で無くなったとはいえ、 その存在を大切で好ましいと、そう思ってるよ。 麗亞。
[だから生きていて欲しいし大切にしたくもあるのだと、気を失った麗亞に静かに語りかけて。 そかしそれは、死んでしまった若き当主皆に言える事でもある。 既に力を失った12の家の中、もう血や責務や聖痕に縛られる事は無いのだと。責任なんて取る必要も、取らせる理由もない。
転がる幸々戸の身体を拾い上げ抱え直す男は、恐らく父親の顔をしていた。]
(151) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時半頃
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…要らん事に気を回さなくてもいい。
[内緒話>>150にたっぷりと深い深いため息をついて、行先>>152についてはきっと全て彼女に任せてしまう。 温かいままの少女と徐々に冷えて行く青年を両脇に抱えて、時折瓦礫の道に躓きながらも、二人を落とす事は決して無かった。]
別に、いい。 今更だろう。
俺は何でも手伝ってやるし、 キャラメルタルトも、奢ってやる。
[彼女の頼みを断る理由など、生憎自分には一つもない。 その理由は彼女には話さぬまま、それでも気付いてしまった真実に、対する態度がブレる訳でも無し。この子の父親が誰であれアレの忘れ形見には変わりなく、愛しく大切な存在であるのだと、 なにせとうの昔から、自分はこの子を父親の目で見ていたのだから。
そして、それは其々の若い当主達に対しても同じ事。 日向を守りたいとそう言った。しかしそれ以外を取りこぼして、何が嬉しいと言うのだろう。
これ以上失いたくは無いと、温もりを伝える少女を抱え直して。 これっきりにして欲しいと、冷えた青年を抱く腕に力を込めた。**]
(154) mzsn 2015/09/24(Thu) 05時頃
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― 後日:移動クレープ屋 【ねこのくしゃみ】 ―
[一体何処からどうやって現れたのか。 ぼんやりと街中で紫煙を揺らす男の前に、現れたのは何時ぞやのクレープ屋。>>@4 それは最初から其処に止まっていたかのようにそこにあり、しかし先ほどまで無かった事を、黒い男はよく知っている。]
別に、それなりに普通で、 …それなりに何時も通り忙しい。
[仰代と百洲の件や、幸々戸の長男、その他の家の事や、開かぬ門。無用の聖痕。降り落ちる奇跡のバーゲンセール等々エトセトラ。 その全てに頭を痛めて吐いた物のそれを部外者に漏らす理由も無く。 結果答えはぼちぼちと、肺に吸い込んだ煙を甘さ漂う空気に混ぜ込んだ。 勿論この路上は、喫煙禁止。]
代金って、 …あー、そんな事も言ったっけか。
[あれはたしか、幸々戸の長男の長男に言った奴、か。 目覚めぬ痣無しを思い出し僅か眉間に皺を寄せるも、まあ、彼との戯れなら叶えてやらん事もない。 懐の財布からヨレた千円札を取り出して、これで足りるかと問うより先、]
(162) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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いちま…っ?!!
[いちまん、はっせん?そもそも、12柱全員と、は?! クレープってそんな高い…っけ? 一つ一つがオプション乗せまくりの値段に、思わず咥えた煙草をポロリと落として。何の冗談かと店主の顔を見つめても、カウンターの向こうには邪悪な笑みしか浮かんで居ない。
キャンセルなんて言ったら、どうなるか。 この店主は戦って勝てる相手ではあるだろう。が、そもそも戦う気が一切起きない。 こんな事もあるのかと冷や汗を垂らしてみても三日月の様な笑みは消えぬまま。
結局言われた値段そのままを払い、物のついでに自分の分のクレープも購入した。 注文内容は、新メニューの惣菜クレープの物の中から。*]
(163) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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― 数ヵ月後 ―
…は、ぁ、?
[人並みの中眉をひそめ、しかし対峙する女に見覚えは無い。 そもそも何でこんな、俺は罵られてんだ。>>94 新手のキャッチかなと思ってみても、女が店の宣伝を謳う事は決して無く、むしろ、]
なん、で
[何で、知ってる。 ほざいた内容までは知らないが、不貞>>*0と言われれば顔をひきつらせるしか無いもので。
日向の母親との関係は自分と本人以外知る者は居らず、彼女が誰かに漏らしでもしない限り、ばれる事は決して無いと思っていた。 そもそも日向本人が知らぬ事、漏れた線も考え辛い。 ならばなぜ、この女は知っている?]
(164) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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…お前、誰だ。
[百洲の関係者か?こんな女居たかな。そんな事を考えてみても見覚えが無い事には変わりは無く。 麗亞の件で相当揉めた三黒に他の家がちょっかいを出しに来たかという線に気付いても、それにしてはどうも様子がおかしい。
睨む目>>95を殺気混じりに鋭く見下ろしていたものの、しかしあちらから反らされればそれは>>95怪訝なものへと変わっている。 いやそれより、門の向こう?一体、どう言う。こいつは何を知っている? 立ち去る女>>96の腕を待てと掴むより先、投げかけられた不死鳥の話>>97にあっけに取られて。 長い日数を過ごしても尚己の目に焼き付いて消えないあの鳥の事を、どうしてお前が知っているのか。 あの不死鳥の事は、限られた者しか知らない話だ。 ――それに俺は、何処かでお前を見た事が、]
…!! おい、待っ、
[一瞬、何かに気付きかけた気がした。 しかし言いたい放題言われその内訳の半分も分からぬ内に、 若い女は人混みに呑まれて消えただろう。**]
(165) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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―数年後 破壊の跡残らぬ街中で>>210―
[飛んできた折鶴に煙草の煙を吹きかけたりつまみ上げるまではしても、戯れに燃やしてしまう事はもう無く、 紙の翼>>213が擦れる音を耳元に聞きながら、不機嫌そうな青年は表情以外は当主である幸々戸の次男によく似て居て。]
お前は頭が元に戻ったな、長男。
[眩しく染めた金髪は長い時の中ですっかり黒髪に戻っており、ついでに言えば歳も取って大人になったなと、 しかし、後半の内容を口にする事は無かっただろう。
死体の様な青年を幸々戸の家に送り届けたのは、もう随分前の事。 …いや、様では無い。 それは確かに死体だった。 あの日、鼓動無き身体が徐々に冷えて行くのを己はどうしようもないほど感じていたし、 送り届けた玄関先で彼の血筋の者や当の次男が慌てふためくのを、己は確かに間近で見た。
次男による蘇生が施されるも、結局意識が戻らなかったのも、丁度あの日。]
(220) mzsn 2015/09/25(Fri) 01時半頃
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