103 善と悪の果実
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怖くは…ないわ
[強がって、それでも嬉しそうに笑顔を作る。
欲しいものは、ひとつ。
それがまだ近くにあるのならば
甘い声と仕草で擦り寄って、少しずつ、毒を流し込めばいいのだ。
甘い林檎は誰かの手の中に。
奪い取った烏の、その温もりを忘れた手のひらは
今、蛇の冷たさを知った]
モノ好き…?
[耳に届いた言葉に傾げたのは
その言葉を発した者への驚きよりも、意味を問う単純な、純粋な疑問の為]
…白いままだなんて おかしいわ
[かけられたシーツは同じく赤に染まるだろうに、
視線を逸らした少女は、それを認めることはしなかった]
お強いのですね。ご立派です。
[まぶしがるように、囁く言葉]
可愛い、可愛い、ポーチュラカ。
[呪文のように、繰り返す]
俺じゃない俺じゃない俺じゃない………!!!
[廊下を走りながら、幻聴>>+11に両耳を塞ぐ。
招かれざる客から転げ落ちていく滑稽な男の耳に
ぬちゃり、と塞いだ耳が。少年の赤い血で、汚れた。]
[果実の秘密は未だ。
男の、ポケットの中に
ビスケットよりも甘く、烏の血に濡れて。]
五月蝿い、五月蝿い、歌うな!
[咥内で低く、幻聴に似て、耳元で囁く歌に悪態を吐く。
大きく怒鳴り散らしてやりたいのに
実行してしまえば、それこそ狂気の沙汰だから。
―――それも、出来ず。
ただ纏わり付く歌に首を振る。俺じゃない、俺は悪くない、と。青褪めた顔が。]
畜生、その目で、俺を見るな!
その声で、その声で―――…!
[囀る烏に返す声だけは、どこまでも、悲痛に。]
赤いかしら…
[闇の中、血に濡れ、そして拭われ
赤く染まった手はまだ見ていない]
赤く…なるのかしら
[部屋に置いてきた蝶を恋しく思う。
今頃、薄紅の褥で心地よい眠りについているだろう。
起こすのは、しのびなかった。
少女の手には今、何もない]
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