198 かるらさんのうなじ争奪村
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―櫓近く―
[振り払おうとした。けれど、出来なかった。 陸から離してくれれば、楽なのに。>>144]
……いつだって、陸は 避けてたじゃない。 もぅ昔のこと、だけど。
[それに。知ってる。 振り返れぬまま、彼が口籠っているから、曽井は口を開く。>>145]
違う、よね。 人を間違えてる、よね……。
陸が、手を掴んでおきたいのは――
[別の、ひと。]
(148) k_karura 2014/10/15(Wed) 01時半頃
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―警察テント―
来ていたよ。どうしてか、行かないと――いけないって、思ってね。 ……あぁ、はいはい。おいで?
[女の子に袖をくいくいと引っ張られる。 目線を合わせて膝を曲げ、求められるまま抱き締めてあげた。]
……そうか、勝丸。 うん。お久しぶり。
[娘とかじゃないよ、と少し笑って見せた。]
(153) k_karura 2014/10/15(Wed) 02時頃
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―櫓の―
な……
[それは思いがけぬ言葉だった。>>151 一人にしていたと、気付く時が来るなんて、思ってもいなかった。
強いままの手。痛みを感じても、何も言えない。 間違ってなど居ないとすら、思ってしまう。 言葉通りに。]
(154) k_karura 2014/10/15(Wed) 02時頃
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僕、に?
だって、逢えるかなんて――分からない、でしょう?
[分からないはずだ。けれど。 夢の中で、確かに祭りで出逢っていた。
櫓の近く、陸は誰かと――そぅ、誰かと。 抱き合って。]
………っ、嫌い じゃ
[声に滲む苦味に、曽井は振り返る。]
(155) k_karura 2014/10/15(Wed) 02時頃
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陸。
……なんてこと、きくの。
[どうして、悲しいのだろう。 陸が誰と親しくしていても、自分には関係ないのに。 誰と、抱き合っていても。
――なのに。それを嫌だと――思ってしまう。]
まるで、僕が 君のことを、
(156) k_karura 2014/10/15(Wed) 02時頃
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――好き
みたい、じゃ
[――ないか。]
(157) k_karura 2014/10/15(Wed) 02時頃
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君が、言うから。
天才だって、孤独な、ものだって……
[ずっと、一人だと感じていた。 そのことを陸の口から明かされる。>>158
曽井の思っていたことを。]
……君は、何年経っても君らしい。 少しの可能性に賭けて、いつだって……
[きゅと唇を結んだ。]
(161) k_karura 2014/10/15(Wed) 02時半頃
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[暖かな腕の中、耳元に落ちる謝罪の言葉。]
………ん。 も、いい。陸が分かって、くれたなら… それで、いい。
[寂しかったのだと、腕はそっと陸の背に回る。 どきどきが止まらない。 額を肩に当てて俯いていたが、問う言葉にするりと、素直な感情が口から出た。]
(162) k_karura 2014/10/15(Wed) 03時頃
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………ちがわ、ない。
[視線を交わす。]
……好き。
[じわりと胸に広がる想い。 他の誰でもない、目の前の彼が―――…好き。]
好き、だよ。好き……、好き……んっ、
[指に力を籠め、首を伸ばす。 掠めた唇は震え、留まらぬ言葉の先を伝えようと。]
(163) k_karura 2014/10/15(Wed) 03時頃
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[伏せた瞼の裏。 甦る記憶は、涙と共に。
灯籠の灯り。色が濃くなる。 視線の先、陸の腕の中に居るのは金糸の男。
他の誰でもない、曽井自身。
ただの夢、なのだろうか。 それとも願望なのだろうか。
今と同じ状況であることに、そうあるべきだとすら錯覚してしまいそうになる。]
(164) k_karura 2014/10/15(Wed) 03時頃
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―櫓の―
[陸に対して抱いていた孤独感が、和らいでいく。>>165
僕が? 覚えてない?]
僕は何も……教えて、なんか。
[先生という立場で、寧ろ気付かなくてはならない方。けれど、子供の頃を振り返り、言葉の裏にあるものに思い到ることはなかった。
子供心にそのままを受け止めていた。]
(177) k_karura 2014/10/15(Wed) 10時半頃
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目を向ければ周囲に、身近に在ると分かることなのに、案外気付かないものだよね。
陸も、僕も……僕達、も。
[耳に届く言葉のひとつひとつ、聞き漏らさない様に。 大丈夫、伝わってるよ。
指先にその意を込める。]
(178) k_karura 2014/10/15(Wed) 10時半頃
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[指の間を通っていく髪にすら、神経が通っているように感じる。>>166 触れられる喜び。
髪に、頬に、瞼に降る応えが優しくて、暖かくて。]
……うん。
[そうだよ、好きなんだ。]
……うん。
[そうだよ、君の傍に――居るから。居たいから。>>166]
……う、ん。 ひとりに、 しないで……。
[言えずに居た、再奥に沈めたままの言葉だった。]
(179) k_karura 2014/10/15(Wed) 10時半頃
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ずっと、思って たんだ。 誰よりも、陸に 寂しさを。
嫌……なら、陸は、どうするの?
[何か出来るのは、陸だけ。 望むのはひとつだけ。
叶えて欲しい。 好きになって、欲しい。
僕の恋心は君への想いで花開いていた。だから――] ……ん、
[額に落ちる唇。 これで終わりか、それとも続きをくれる?]
(180) k_karura 2014/10/15(Wed) 10時半頃
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どういう……
[よごすなんて、こと。>>167 清濁の葛藤までは窺い知れず。
ただ、鼓膜震わす音に耳が熱くなった。]
り、く。
[持ち上げられる顎。嘘ではない、よね。期待とときめきと、僅かな不安に瞳が潤む。
優しい口付け。触れた唇から想いが伝わるようで。満たされていく。]
(181) k_karura 2014/10/15(Wed) 10時半頃
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……陸。
[額を合わせたまま唇が離れ。 離れがたさに躊躇う。
胸の鼓動はまだ収まりそうにない。]
僕はまた、君に 恋をしている。
[男同士だけれど、仕方ない。 はにかみ、陸の様子を伺う。
瞳に映る金の色が見えて、一層落ち着かない。]
…………な、んだか 照れる。
(184) k_karura 2014/10/15(Wed) 10時半頃
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[朝方胸を焦がした恋慕の情。 まるで金魚のようにゆらゆらと揺蕩う。]
陸の心の中に、僕がちゃんと居るって……そんな、風に思えるよ。
[嘘つきだと涙した記憶は、白花と共に渡してしまった。
僕の心の中にも君が居るから。 そう伝えたくて。 ――唇を寄せる。
啄むよう、試すように軽く触れ。 そぅと重ね合わせた。]
(186) k_karura 2014/10/15(Wed) 11時頃
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[陸の表情を伺いながら、頭を2度3度と撫でる。 記憶の中の陸は、どうしてか――笑おうとして、笑っているようにも見えたから。
りん、と音が聞こえたのは空耳か。 ポケットの中、守り袋の内の白花が――香った。]
……お祭り、遊びにいこっか? 僕、金魚すくいがしてみたい。
それに、懐かしい人達も来てる、し。
[甲斐、勝丸、翔、玲、そして――友。 陸も彼等に逢いたいのではないかと、名を挙げた。*]
(190) k_karura 2014/10/15(Wed) 11時頃
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―警備テント―
勝丸には、聴こえない?
[急き立てる物があるとすれば。 灯籠揺れる向こうから、白花の記憶。>>168]
こんにちわ、初めまして。 お兄さんの、ね。小学生の時の――…
[間が開いたのは、呼んで良いのか憚られたから。 屋台の前の賑わい、ラムネを開封する音、誰かの背を押した――…]
…――ともだち、だよ。
[勝丸の妹達に自己紹介。]
(198) k_karura 2014/10/15(Wed) 13時半頃
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[友達、だったんだ。 仕事中の甲斐をちらりと見やった。
否定されないと嬉しいけれど。]
勝丸? ……どうかした?
[テントの外、背に声をかける。>>169>>170*]
(199) k_karura 2014/10/15(Wed) 13時半頃
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―櫓の―
[陸の心の中に自分が在る。それは、小学生の頃に望んで、果たされないと思ったことだった。
恋をして、恋を失って、恋をして、――恋心を、忘れて。
いつから――…だなんて、分からなくて良い。いつの間にか、ということだから。>>195]
っ!
[薄く開いた唇から、入り込むのが何か。気付いた時には遅かった。 息も身も心も溶かされるような、甘やかな痺れと熱。初めて知った情欲に耐え、眉を寄せた束の間。]
(211) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時頃
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[研究対象を前にした時や、実験の結果に興奮した時とも、楽しげな話をしている時とも、どんな記憶の中とも違う、15年経って初めて見る――笑顔。>>196]
初めてなら、たくさん回らないと、ね。 知ってる? 屋台にもローカルルールがあるんだって。
例えば――…
?
(212) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時半頃
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なぁ、
[に? 子供の頃の様に繋いだ手。 一度離れて両頬に。]
………っ、 な、あ、
り、陸っ!
[15年前は、ただ驚きに呆けていた。 15年経った今では?>>197
首まで顔を赤くし、肩を竦ませて睨め上げる。
喜ばないはずはない。 けれど、それ以上に恥ずかしい。]
(213) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時半頃
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お、おめでとう……。 成功だ、よ。
僕は、とてもとても……嬉しい、から。
[はぐれないようにと繋ぐ手は、子供の頃とは違う。 指を絡め。雑踏の中で目立たないからとそのままに。
4匹の金魚が泳ぐ水袋を手首から提げていても、変わらぬままに。>>207*]
(214) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時半頃
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―後日―
[カーテンから差し込む朝陽の眩しさに目が醒めて、曽井は目を擦りながら横を向いた。]
おは………ん?
[布団を叩いても平ら。 不在を知る。]
(215) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時半頃
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[珍しく早起きをしたのか。 けれど、シーツの皺はひとり分。
また徹夜か……と、曽井は溜め息をつく。
暗闇の中で寝るのはまだ怖い。 ベッドライトの灯りを消して、着替えに取り掛かった。]
(216) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時半頃
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[探し人はすぐに見付かった。 ソファに横になっている。 胸元と床には資料らしきプリントが散っており、どうにも作業中のようにしか見えなかった。
拾い上げてテーブルの上に置いてやる。]
おはよー?
[鼻を摘まんでも、起きる気配はない。仕方なく毛布を1枚かけてやった。]
(217) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時半頃
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[トーストとベーコンの焼けた芳しき香り。 濃いめに入れた珈琲の香り。]
朝御飯の支度、出来たよー?
[ソファに腰をかけ、寝ている恋人の顔を覗き込んだ。
頬に手を添え、身を屈める。 小さな音を立ててキスをした。]
おはよう、陸。僕の好きな人。 そろそろ起きて?
[返ってくるのは寝息ばかり。 暫く見下ろしていると、あまりの無防備振りに、じわりと沸き出すのは情欲。]
(218) k_karura 2014/10/15(Wed) 22時半頃
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……知らない。起きない陸の、せいなんだから。
[かけたままの眼鏡を外す。 くしゃりと握られ、癖のついた前髪を整えると、髪に、額に、瞼に、鼻先にと唇を押し付けた。]
……ん、 り、くの、匂い。
[首筋に鼻を押し付け、甘えるようにうなじを甘く噛んだ。片方の手は体のラインをなぞって下へと進む。]
(219) k_karura 2014/10/15(Wed) 23時頃
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好き。すーき。スキ。 大好き。
……昨日は、寂しかったんだから、な。
[いつかの検証ではないけれど。 好きと繰返し、濡れた唇を押し当てた。*]
(220) k_karura 2014/10/15(Wed) 23時頃
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