82 謝肉祭の聖なる贄
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…来いよ、雨水の。
俺を力尽くで屈服させられりゃぁ、今日の贄は譲ってやらぁ。
[強い酒精と媚薬めいた薬酒が全身に回り、
足元も怪しいくらいだというのに、
そんな風に挑発するのは、彼なりの矜恃とかそういつものか。]
主が是が非でも欲しいと、我の前に頭を垂れるのであればな。
[くいと呷った唇は酒に濡れ、]
それに。
別に我はあれらを要らぬとは申しておらぬ。
[ふうと息吐く唇は嘲弄の笑みを刻む。]
速さでの勝負で、風に勝てる筈がないからな。
格好悪いと言われようと、それは事実。試すまでもない。
[東風からの挑発するような言葉に、肩を竦めてそう応じ。
けれど、すぐにその表情には挑発しかえすような笑みが浮かぶ]
もっとも……それ以外でならば、囲碁でも将棋でも詩でも剣でも閨でも、負ける気はせぬが。
銀灰の。
ならば、キミも交ざるか?
[娘の主となった同胞には、そう声をかけてから。
再び東風へと視線を向け]
ああ。
ではついでに、その「雨水」という呼び名も改めてもらおうか。
いちいち訂正するのは面倒だった故に放置していたが。私は雨水でもあるが、雨水そのものではないからな。
[少しの間、考え込む振りをしたが]
……いや。
止めておこう。
確かにあの褐色の贄は喰いたいが、
いやしきやからよ、強欲よと誹られるのも嫌なのでな。
[如何にも楽しそうに片頬を歪めた。]
そもそも主らはあれらのどちらが欲しいのだ。
それも決めておらぬのか?
俺は今のところ黒いのだが、奴ら次第さ。
崖っぷちの白いのが、どこまでやれるか興味があってな。
[悪く言えば、吾関せずな状態で
ある意味暢気に囁きに耳を立てながら寛いでいた、のだったが]
私は、どちらかというと白い方だな。
褐色のも中々に旨そうだが、白いのは痛め付け甲斐がある。
[同胞相手と違い、人間や贄相手に愛でるという発想はない]
[陶然と呟く。]
あれはうつくしいからな…
[それより何より、美しいのは、あの焦げ色の瞳の奥から覗く魂のいろなのだが。]
あのコのコワい目は………良いなって、思ってた。
[黒壇については、そんな感想を、
そのまなざしの先に居た娘の膝の感触を今思いながら、呟く。
少し間をおいて、白き長髪には、]
…………ああまでずっと、此処に居るの。
嫌いじゃない、けれど。
[「あの時は」そのまなざしの先に居た、ということ]
ああ、なるほど。
主はそういうのが好きだったな。
我は却って、今年もまた残されると知った時のあれの顔が見たいが……
[くく、と喉奥で嗤った。
今年残されればもう人の手で殺されて肥料とされると知っての上。]
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>>54
[白金の大神様の寂しげなつぶやきに。 ふと声をかけてみたくなるが。 気の利いた言葉も思いつかず。 額に手を当てて物憂げな顔を静かに見つめた。]
(67) 2012/03/17(Sat) 22時半頃
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あの黒いのは、来年まで放っておけばその方が今より熟して旨くなりそう、というのもある。
まあ、生きているか否かは、あの黒いのと他の贄次第だが。
[生きている可能性は低いかもしれないが、白い贄のような例もある]
…………だよねぇ、おじーさまは。
[痛め付け甲斐があるなどと聞こえて、ついこぼしていた。]
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[薄墨色までに色濃くなった大神様と茶色の大神様が。 不穏な空気を漂わせているのを感じたが。
銀灰色の主と白金の大神様の様子から。 贄ごときが気にしても意味がないと思ったのだが。]
(78) 2012/03/17(Sat) 23時頃
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>>77
[白金の大神様の問いに。素直に答える。]
たくさん喰べられて、お疲れだったのかと思いました。
[最初の贄は大神様全員で分けたとはいえ。 2日続けて喰べたのであれば。 どれ程消化がよく滋養のあるものでも。 胃腸は疲れてしまうのだろうと何となく。]
(80) 2012/03/17(Sat) 23時半頃
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[輩の血の匂い――その芳香にぞくりと身震いしそうになって]
[これほど酷く餓えに苛まれておらぬなら――あれが他の輩なら。
こんなことは無いのだが。]
[すっかり薬酒に呑まれていることを自覚しても、祭りの最中だと言うのに後の祭り。]
くっ、そ…
[滴り落ちる血の香は、妙なる薬草の風味を帯びて。
いつかの味を知るものならば、その甘い香を思い出すかもしれぬ。]
やれやれ……大丈夫かね?
[角は東風の肩に刺さったままで取り外したか。それとも、己の額についたままで抜き取ったか。
もし東風の肩に刺さったままなら、その角が栓となって必要以上の血が流れるのを抑えただろうが。
額についたままで抜き取っていれば、穿たれた傷からは風の精気に満ちた血がとくとくと流れ出しているだろう。
どちらにせよ、東風や他の同胞に妨げられなければ、その傷を癒すべく唇を寄せて舐めるだろうか]
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[ふと、顔を上げて見れば。 茶色の大神様は濃厚な血の香りを。 長髪の青年が薄墨色の大神様に蹴られ。 驚くばかり。]
(89) 2012/03/18(Sun) 00時頃
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[ここまでは大して、鼻をつくものに対して
いちいち具合を悪くしたりなどすることはなかったのだが。
思わぬところで、娘の答えに平常を崩されたおおかみは
血香に交じる芳しさに、追い打ちのようにまた、気を揺さぶられていた。]
[角抜かれた傷からは、だらだらと赤が零れ落ちる。
舐められれば屈辱と気恥ずかしさと、クスリで鋭敏になった感覚のせいで、
思わず呻き声が色めいて聞こえるのもきっと不可抗力。]
[駆け出さないのは、芳しさに近づかぬように意思したため。
そして、]
人間が、護ることなんてないくらい
僕らは ……弱くないのにね。
[贄たちには届かぬ呟きを、ひとり、零す。]
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>>85
[頬を染めて声を荒げる白金の大神様に。 首を傾げつつ、話を切り上げるしかなく。]
畏まりました。
[ただ、穏やかに。そう答えた。]
(94) 2012/03/18(Sun) 00時頃
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[傷を負った当の茶の輩すら意識の外。
尖らせた舌を傷口に近付ける――]
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>>90>>95
[茶色の大神様の血の香りに誘われ。 本能の赴くままに立ち上がり。 流れ出る血を飲まんとする銀灰の主を見つめる。
胸の奥から湧き起こるのは。 種火のような小さな炎。]
(103) 2012/03/18(Sun) 00時半頃
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>>101
[白金の大神様から膝枕を外されて。]
では、何かありましたら。お声を。
[大神様たちの誰かから、声がかかれば。 すぐにそちらへ向かうつもりで。]
(107) 2012/03/18(Sun) 00時半頃
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