213 舞鶴草の村
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[その昔、僕は鳶人足だった。
それまでに幾つかの仕事を経験したが一番長く続いたのが其れ。
――とは言っても最後にゃァ、勘当されて仕事を失ったんだが。
それからは賭場に通っては負ける日々。
最初はほんの出来心だった。
その日を生きる為の金を、
その日遊ぶための金を、
――酔っ払いの財布から盗んだ。
盗みは思ったよりも簡単で、
繰り返す内に慣れて手口も巧妙になって。
ある時、気付いたんだ。]
[“金以外のものを盗める”ことに。
ただの物品だけじゃない。時間や記憶、目に見えないものまでも。私には――そんな特異な才能があった。
気付いた時には驚いたが、それも束の間。
これは神様が僕に授けてくれた力なのだと考えた。
だからこそ、
この力を人の役に立てなくちゃいけない、と。
所謂義賊として生きていくことを決めたのさ。]
[そうすると邪魔なものがひとつ。
――“老い”だ。
年を取り、身体の衰えに気付いた僕は考えた。
どうすればそんなものに邪魔されずに使命を全う出来るかと。
辿りついた答えは、
――僕自身から“老い”を盗むことだった。
その日から老いを失った僕は尚更仕事を頑張ったのさ。
ただ、老いを盗んだことによって見た目と中身が徐々に若返ってしまうことが気掛かりではあったけれど。]
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