22 共犯者
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今は放っておけ。
そのうちに、な。
[ その対象が新聞記者であるのか、リンドクヴィスト家のことであるのか。
定かにはせぬまま、声は消えた。*]
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―― 井戸 ――
[からからと、滑車の回る音がする 回すのは私、水が飲みたかったから
いや、飲まないだろうな私は 頭から、水をかぶるんだと思う 意識を、はっきりさせなくちゃいけない 自分の身は、自分で守る必要がある
か弱い女の子なら、だれか正義感を振り翳す大人が守るだろう 明るい子なら、友人が守るだろう 私は、そういう存在とは対極にいる 少なくとも、そう振舞って来た だから、自分の事は自分でやらなきゃ
苦しい時にこそ、クールな女にならなきゃいけない じゃないと、必ず悲しい想いをする]
くそ…――――
(140) 2010/07/29(Thu) 21時半頃
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…ああ。そうだな。
彼女の魂と肉体も、我らの祝福された場所へ。
[鋭く氷を思わせるその声に少し圧倒されたか、それ以上は何も言わず、森全体が闇に包まれる時を待つ事にした。]
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[からり、からり 紐を引くと、滑車が回る いつもの事、あたりまえの事 こんな時は、そういういつも通りがありがたい物なんだ
ばしゃり、水をかぶる やっぱり今日も、水は冷めたい 服がびしょびしょで、気持ち悪いけどさ 今は、そのくらいが一番良いんだと思うの]
はぁ…――――
[深く息を吐いたら、嫌な気持ちも出ると言うけど 嘘だね、全く楽にならないや
ただ、頭は回るようになったよ 今なら、少しはまともな事が考えられる ただ、やっぱりわかんない]
ありゃ、なんだよ…――――
(167) 2010/07/29(Thu) 22時半頃
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[ヴァンルナール家の代々の家長は、古くから人狼を熱心に崇拝していたようだ。
(人狼と「契約」を交わしたのも、遡れば彼らの祖先に当たるのかもしれない。)
ヘクターは当然実子ではなく、「実子として」家に迎えられているに過ぎない。
対外的には、ヘクターの「祖父」が家長だが、実質的に実権を握っているのはヘクター自身であった。
――尤も、それについて知っているのは、ヴァンルナール家でもごく限られた者のみである。
ヘクターは彼らを「キツネ」と呼び、彼の命令は、対外的に「祖父が出したもの」として実行されていた。]
「約定」はやはり忘れ去られている、か。
[ 平静な声音。]
……それもそうか。
[ 小さく鼻を鳴らす。]
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[どうやったら、あんな風に出来るんだろう 人が生き物を殺す時は、武器を使うんだ それが、人間が猿とは違う所じゃないか
なのに、あの遺体は刃で裂いた物じゃない むしろ、喰い散らかしたと言う方が正しい 肉食の獣が食い散らかした物を、人が並べた そんな感じだ、あの遺体は
知能のある犬とかが、いない以上は だれかが、そんな子供じみた事をやったんだ だれがやった? そんな事は問題じゃない
少なくとも、今この村にいるんだ 喰い散らかされた遺体で遊ぶような奴が やっぱり、信用するべきじゃない 出来るだけ、人には近寄らないようにしないと]
よし、そういう事だな あとは、記憶から消去するだけだ
(174) 2010/07/29(Thu) 22時半頃
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お前の言った通りだ。
彼らは忘れてしまった。
[ 遠巻きにソフィアの死体を眺めながら騒ぐ人間たちを凝視し、同胞に語りかけた。]
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ん…――――
[黒い髪が、さらり揺れながら下がるのが見えた あの双子だ、死体の側にいなかった方の あまりツンツンするのも、クールじゃないから 何も感じてない、何も思わないと 自分に暗示をかけ、手を上げるの]
よ、どうした? 水か?
[やば、水浴びちゃったからなぁ 白いシャツだと、すけないかなぁ? 大丈夫かな、ちょっと心配]
(180) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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大丈夫だと、言っただろう 私は、他の奴とは作りが違うんだ
[何度も何度も、彼は水を飲む そんなに飲んだら、逆に気持ち悪くなりそう 大丈夫なのかな、この子は]
無理するな きついなら、無理に出歩く事はない
[私も似たようなものだから、気持ちがわからない事もない ただ、この子には家族があるんだから 辛い時は、家族に頼ったらいいのに 私には、出来ない事だが]
(191) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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何が情けないものか 男だから強くなきゃいかん、と言う道理などない 一人が落ち込んだら、一人が支えたら良い そういうものだろう、家族と言うのは
[彼は笑うのか、凄いな ただ、元気がないのがまるわかり ちょっと惜しいな]
君には家族がある だから、無理する必要はない 良い物だぞ、家族は
[座り込む青年を、じぃーっと見るの 隣に座るほど、気を許したんじゃないし 無視するほど、薄情じゃないから 私と村人の距離は、こんなもの]
(216) 2010/07/29(Thu) 23時半頃
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[金色と銀色の長い髪が、井戸の側に来る
私は、どの人とも同じ距離を取るの 私から近寄る気は、一切無い 寂しい想いは、人一倍強いから 自分からどこかに行く事もない
中途半端な距離、ここが私のリミットなんだ 伸びた手ならば取るだろうに、私から手を伸ばす事はない]
よぉ…――――
[軽く挨拶するだけさ]
(225) 2010/07/30(Fri) 00時頃
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君が泣き叫んでも、私は知らない顔をするがな 叫び声が出る分、マシだから
[気を失ったりしない限り、私がどうこうする事はないんだ 心配するほど、距離は近くないよ 近寄ろうとする人間しか、私との距離は縮まらないんだから]
救う気も、なぐさめる気もないからな
(230) 2010/07/30(Fri) 00時頃
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ああ、そうだな…。
[苦々しい思いで吐き捨てる。
――我らを思い出す者はおらぬか?思い出しても畏れから口に出さぬだけか?]
村の年寄り共もどれだけ使えるやら。
[ヘクターを補佐する立場にある「キツネ」も、人口が増え、近代化へと向かう村に対し絶対的な力までは持っておらず、祭の形骸化を食い止めるには限界があったようだ。]
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ミッシェル、私はいつも通りだ いや、いつも通りであろうと努力している
[こちらに向いた視線に、私はそう言うの 人を救うほど、私には余裕無いんだよ]
あんなの見た後に、人に優しくなんか出来るものか そんな事出来るような余裕がある人間は、異常だ
(235) 2010/07/30(Fri) 00時頃
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屯してたら安全、と言うわけじゃないだろう
孤立しようとしているんじゃないが 無理矢理つるむ気もないんだ、私は 私には、私の生き方がある
[仲良くしよう、なんて今更な事 私は、皆と等しく距離をとったまま生きて来た 両親が死んでから、ずっとだ 今更どうこう出来るものじゃないし、する気もない]
(246) 2010/07/30(Fri) 00時半頃
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心配する意味が、あまりないな 私は、ずっと一人だったが、村からは出なかったろう つまりは、そのくらいの距離が私の距離だ
何処かに一人で行くなど、出来はしないよ 私は、そんなに強い人間じゃないんだ
[心配だってさ、面白いね 人は、自分に都合が悪くなったら友人でもすてるのに そうじゃない時は、仲良しになりたがる
少なくとも、私はそう思う だから、私は自分から近寄らないと言うのに]
心配いらない 逃げたり、追い払ったりはしないよ
(257) 2010/07/30(Fri) 01時頃
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[やる事があるからと、何処かに行く金色を見送り 小さく振るう銀色と、苦しそうな漆黒を 私はただ見る じっと見る
私は、自分から何かをする気がないの 私との心の距離は、皆同じ 余所者だろうと村人だろうと、等しい距離
だから、だれかに肩入れしたりしない 皆等しく、じっと見るの]
ヴェス、あんまり気にするな 少なくとも、人死が起こるような村じゃなかったからさ 皆動揺して、わけわからん伝承のせいにするだけだ 怖い村だなんて、思わないでくれな
[少なくとも、真実を知る者などもう生きてはいないのだから そこらにある神話や、伝承となんら変わらない物 私は良く知らないが、そんな物なら何処の村にもあるよ]
(289) 2010/07/30(Fri) 10時頃
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漂白工 ピッパは、メモを貼った。
2010/07/30(Fri) 10時頃
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[さっきから、色々な人が言う 神様だの、御使いだの、頭の悪い事をずっと こうなると、村中の人間は異常者なんだろうかと言う気もするよ
もっとまともな頭をした人は、いないのかな 何かあったら、皆神様や悪魔のせいにしてさ 老人達が言うのだから本当だ、と勘違いしてる
やっぱり、こんな人達を信用するのは無理 若いのは年だけで、価値観は何百年前のままみたい]
まぁ、私にはどうでもいい事だ
[そういう勘違いしたオカルトな人達と、話をする気はない 早々に、井戸から立ち去る事にした 少なくとも、私はそんな馬鹿な話は信用しない 自分の目に映った物こそが、真実 見た事のない物を信用するほど、私は馬鹿じゃないの]
(301) 2010/07/30(Fri) 15時頃
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[何故忘れる・・・何故・・・
こんなにも人の子は愚かだったのか?
我等が慈しみ護ってきた者らよ
幾度の潮の満ち引きと共に、汝のその英知はいずこかへ消えてしまったのか]
[ 同胞の憤りがじわりと伝わってくる。
「声」は殆どの場合において、音声による言語以上にその感情を能弁に伝える。
彼は伝わる怒りの感情を、舌の上で転がすようにじっくりと吟味した。]
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[ジジババ連中も、若い奴等も、皆揃ってこそこそと 生贄がどうの、神様がどうの、馬鹿じゃないの
少なくとも、私が産まれてからはずっと 祭で人死なんか起こらなかった つまりは、村の人達が何をこそこそ言おうと 私からしたら絵空言
獣がソフィアを襲い、喰い残しにだれかが悪戯したんだ それ以外に何があると言うの 噂話する暇があったら、犯人探ししなさいよ
家に帰るのも怖いから、フラフラしてるけどさ 村人達の話を聞いてると、頭が痛くなる 伝説の化物よりも、殺人鬼の方が怖いじゃない]
もう、やだ…――――
(303) 2010/07/30(Fri) 19時半頃
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漂白工 ピッパは、メモを貼った。
2010/07/30(Fri) 19時半頃
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[ああ、本当に何処か遠くに行く事が出来たらいいのに 田舎は好きだが、こういう空気は大嫌いだ
なにかあったら、ジジババが古い価値観を振り翳し 陰に籠った小さな部屋の中、こそこそ密談し 話し合った事を、私達に押し付ける 学がないからと、若輩者の話など聞きもしない
ああ、私は物を知らないよ 村の中の事すら、あまり知らない だけど、秘密にするのはいつも大人じゃないか]
本当に、何処かに行こうかな
[女の身じゃ、流浪というのも難しい なかなか、心が決まらなかったけど 今度こそ、何処か遠くに…―――]
(305) 2010/07/30(Fri) 21時頃
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いくら気に入らないからって、いきなり出ていくのはまずい
[痛い頭を、コツコツと叩きながら 何処に向かおうか、思案しだした
森の方は無理、獣がまだいるかもだし 井戸の方は、おばさん達が集まる時間だし 広場の方は、多分葬式ムードだろうな やっぱり、いつもの所にいこうかな あそこなら、一人で横になっても大丈夫よね]
―― →いつものサボり場所 ――
(311) 2010/07/30(Fri) 21時半頃
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[聖なる樹、聖なる泉に捧げられし供物は、
再び人へと巡るだろう。
その肉体は人として大地に還そう。]
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―― いつもの場所 ――
[ここは、村の端の方 樵が、切った木を積み上げておくのに作った小さな空間 枕になる樹もあるし、影になる所も多いから涼しい 何よりも、この樹の香りが好き
だから、私がサボるのはいつもここ ごろんと横になり、雲が流れるのをぼぉーっと見ながら うとうとする瞬間が、私の至福の時]
(318) 2010/07/30(Fri) 22時頃
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[瞳を閉じたら、惨殺死体が目に浮かぶから いつもの場所で、いつもの自分になる事が一番良いと思うの 死者のために泣くのは、親しかった人の仕事 私は、村中のどの人ともそんなに親しくないから 泣いたり、狼狽したりする資格はないんだ]
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹…―――
[雲が、もこもこした羊みたいだったから そんな事を、言いながら]
羊が十匹、肉屋が儲かる…―――
[嫌な想像しちゃった]
(319) 2010/07/30(Fri) 22時頃
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あー、やめやめ 羊を捌く所想像しちゃったじゃないか 吐くぞ、この野郎
[手をぶんぶん、目の前で振った もっといい事を想像しよう 良い事・・・良い事・・・良い事・・・]
あー、何にも思い浮かばない
[面白い事なんか、ここ最近なかったもの いきなり思い出そうとしたって、難しいね]
(325) 2010/07/30(Fri) 22時頃
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ノックの音聞こえたら 今夜は舞踏会 紅のドレスにしようか 貴方が望むなら
風の記憶追いかけて 雲の様に舞い 森の鼓動聞きながら 川の様に歌うよ 夜空に散る水晶は 紅や蒼に輝き 張り付いた女神の矢が 今日はとても眩しい
手を取り合い歌いましょう 暁が 私を 迎えに来るまで
[歌を歌うと、母さんに会えるような気がする 母さんは、人当たりの良い人だったから こんな時はきっと、広場で忙しくしていたに違いないの 私も、母さんに似たら良かったな そしたら、こんな気分にはならなかったろうに]
(331) 2010/07/30(Fri) 23時頃
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[ひゅるり、ひゅるり、ひゅるり 風が色々な物にぶつかって、小さな隙間を通り音がする
大地の草花が風に揺られて、かさかさ 耳から、肌から、世界を感じる事が出来たなら 脳裏に焼きついた物も、砂上の楼閣の如く
さらさら、さらさらと音を立てていく気がする やっぱりいいな、こういう瞬間 私にはやっぱり、緩やかな時間が何よりも大事 言葉すら必要ない、至高の時
ソフィアの至高の時は、もうすぐそこだったのに 同じ女として、その時にたどり着けなかった彼女を不憫に想う]
彼女を食い殺した獣は、仕方がない 生きるために喰う、これは基本的な動物のルールだもの ただ遺体に悪戯した人間は、許せないね
(352) 2010/07/31(Sat) 00時頃
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