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視点: 人 狼 墓 少 霊 全
[手紙を置いて院長室に返って来たところで、ポケットの中の携帯が震えた。扉を閉めつつ誰からだろうと確認して、一瞬、それを取り落としそうになる。――まさか本当に電話してくれるなんて。正直、あまり期待はしていなかったのだけれど]はい、もしもし?[喜びを隠しもせずに、弾んだ口調で電話に出た。ああ、これじゃあお預けをくらっていた犬みたいじゃないか。そんな事を考えて、言い得て妙だと苦笑する]……調子はどうだい?[確か投薬の後の筈だ。白々しいと思いつつも問いを投げかけた]
[言葉の中から彼の強がりを悟りはしたけれど、それを追及することは出来なかった。もし素直に弱音を吐かれたとして、自分にそれを慰める資格なんて無い。彼の苦痛は自分がもたらしているも同然なのだから]……もう少し耐えておくれ。そのうち――慣れるはずだから。[それがいつになるか、自分にも分からないくせに。そんな風に上辺だけの言葉しか返すことは出来ない。これまでは出来ていたのに、今は彼の傍らでそれを支えることすら出来ず、そんな自分が恨めしかった。かといって、今此処にいる患者たちを見捨てるなんて、出来るわけがない]ああ、また二人、そちらに行くよ。貴方は話した事があったかな……。朝顔くんと、ディーンくんと言うのだけど。[彼の犠牲の上に成り立つ治癒だと、彼女らは知らない。それを伝えることは、患者たちの心を揺さぶってしまいそうで、簡単に出来ることではなかったから]――ありがとう、カリュクス。[小さな礼の言葉を彼に。もしかしたらもっと相応しい言葉は、いくらでもあったのかもしれないけれど。礼を言うだけなんて、自己満足かもしれないけれど。……それでも、滑り落ちる言葉を堪えることは出来なかった]
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