103 善と悪の果実
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[見られていることにも、聞かれていることにも気づかぬまま]
そうだわ
[人影のない、廊下の途中で手を合わせた]
早く…あの子をつけたいわ
[黒い蝶もいつか羽ばたくのだろうか。
それとも蛇に呑まれてしまうか。
軽やかに少女が廊下を進む頃、
薄紅の褥に眠る蝶は、乾いた血で黒蝶に*成った*]
[左手が凶器に沿う。
ふつふつと湧き上がるこの感情が何なのか、分からない。
不明瞭で、だからこそ、消してしまいたい。
僕は怯えているのだろうか。
あの、おどおどとした彼のように。]
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[>>91空の台座に気を取られつつの返答に、 トニーが笑ったようだった。
……私は今、どんな表情をしているのだろうか。
落ち着いた様子の少年を見て、 幼い筈の子どもが何故こうも 冷静でいられるのかと不思議に思う。
初めて会った時から年不相応な感覚を抱いていたが、 その印象は、更に募っていく。]
(132) 2012/09/27(Thu) 20時頃
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―グロリアの居室―
[>>75ニヤニヤと笑う男を、不快感も顕に見据える。 昨晩、壇上で口上を述べていた姿を見たばかりなのに たった一晩の内に変わり果てた栄光の姿を前にしても 尚楽しげな様子の男。 この場に居て欲しくないと感じても仕方が無いだろう。]
………………
[男の姿が見えなくなるまで、 おどけたように肩を竦める背中を睨み付けたまま動かなかった。]
(133) 2012/09/27(Thu) 20時頃
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―グロリアの居室―
[>>89”姉様”を見詰めていたポーチュラカは、しばらく動けないでいるようだった。 おそらくショックだったのだろう。無理もない、と思う。 斯く言う私も、自分の震えを抑えるだけで手一杯なのだから。
この時、ポーチュラカが本当はどんな表情をしていたかなんて 考えもしなかった。
気持ちを落ち着かせるためだろうか、 目を閉じ、開いて、やっと彼女からの返事が返ってきた。
―やはり、酷い顔をしているようだ……]
そう、ですわね……戻りましょう。
(134) 2012/09/27(Thu) 20時半頃
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[刺青の男が去った後、 裾を引く少女に視線を戻して、繋ぐように伸ばされた手を取る。 その手は小さく、暖かく感じられた。
見えないようにとの計らいで、 紅に侵蝕される白いシーツによって 栄光の表情は隠されたが…
日常から大きくかけ離れた光景は、 明らかに異質な雰囲気を纏っている。]
(135) 2012/09/27(Thu) 20時半頃
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一度、部屋に戻って…少しだけ休ませてもらおうと思います… 皆さん、大広間にいらっしゃるのかしら。 すぐにそちらへ行くようにしますから…
[共に歩き、自室の前まで付いて来てくれた彼女に また後で、と言って、繋いでいた手を離す。]
(136) 2012/09/27(Thu) 21時頃
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[ポーチュラカと別れる直前。
今ここで訊くのは憚られるが、しかし、 どうしても気になったことを問うた。]
あの、失礼な事を訊くかも知れませんけど… グロリア様は、ミス・ポーチュラカにとって どういった方なのでしょうか…?
[栄光と私の事を、姉様、と呼ぶ少女。 グロリアとの関係が分からず、 どういう言葉を掛けたら良いのかも分からなかったから。
彼女は何と答えただろうか。
その後、部屋に入って扉を閉め、そのまま扉に凭れ掛かった。]
(137) 2012/09/27(Thu) 21時頃
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―自室―
[栄光の部屋で見た紅い色が、頭にこびり付いて離れない。 胸の奥がざわつく不吉な色。 頭が疼くような感覚も伴っている。
栄光は殺された。 おそらく、黄金の果実を隠した人物によってだろうと想像する。
この日に偶然、果実の消失とグロリアの殺害が重なるなんて 考えられなかった。
朝、慌てて飛び出したために ベッド脇に置きっぱなしにしていたバッグへと手を伸ばす。 触れると、すぐに固い感触が見つけられた。]
……………
[溜息が零れた。]
(138) 2012/09/27(Thu) 21時頃
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―自室の前>>139―
……未来?
[グロリアのようになりたかった、という事だろうか。 彼女がグロリアに憧れていたのだろうという事は 何となく分かった。 実際、それに足るだけの人物だったと思う。]
そう… ありがとう。 ごめんなさい、変な事を訊いてしまって。
[部屋に入ってすぐ、凭れ掛かっていた扉の向こうから ポーチュラカの声が届いた。 大好きな、姉と慕う人物の死を目の当たりにした 少女の気持ちは如何程か…]
(143) 2012/09/27(Thu) 21時半頃
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―自室―
善と悪の果実は、何処に行ってしまったのでしょうね……
――……グロリア様……
[呟きに答える者など、いるはずもないのに。
あまり疲れた表情で皆に合流する訳にもいかないだろうと 椅子に腰掛けて、しばし無理矢理目を閉じた。]
(145) 2012/09/27(Thu) 21時半頃
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[警官が去った後に大広間へ辿り着いた蛇には、
烏の落とした推理を直接拾う機会はなかったが。
けれどざわめく人々の言葉端より、
彼が話していたことは伝わるだろう。
…あの夜、まさに林檎へてをかけた、
他ならぬ彼の言葉を]
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―回想>>122>>123―
[こちらの掛けた声に気付いたらしく、 我に返ったかのように言葉を返す草臥れたスーツの男。 喉は渇いていたようなので 使用人に声を掛け、檸檬水を受け取って それを男に渡した。
彼はジョセフと言う名前らしい。]
私はコリーンと申します。 宜しくお願い致しますね。
ええ。 グロリア様には、以前お仕事の関係でお世話になった事がありまして。
[少しは落ち着いた様子の彼と他愛も無い会話をした後、 もう一度林檎の元へと足を運んだのだった。]
(150) 2012/09/27(Thu) 22時頃
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――――――…栄光(グロリア様)へ、永遠のお別れを。
[見開かれた瞳は、やがて力を失った]
………姉様、とても柔らかかった
あたたかかった
…今は きっと 冷たくなってしまったのね
[諦めたように呟いた後、
意思を確認しようと顔を見たがる。
少女は蛇の意図を知らず、それでもまだ、無防備なままだった]
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―大広間―
これは…
[大広間に着いた時、諍いを発端とする騒動のために 夕闇伯と刺青の男から一定以上離れた周囲の人間は 誰も彼もがその争いを見ていた。
一人、近付いた使用人が、勇敢にも 刃物を持った夕闇伯へと制止を促して、 最悪の事態は回避できたようだが…
刺青の男は頬に一筋の赤い線を、 夕闇伯は肩に傷を負ったようだった。
不穏な空気は消えない。]
楽園の禁忌を破れば、もう元には戻れない、のでしょうね…
(166) 2012/09/27(Thu) 23時頃
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[>>173を聞いて]
……目的。
[やはり、果実を探し出さなければならない。 禁忌を犯した者があれを持ち続けるなど、 許されるはずが無いのだから。]
(176) 2012/09/27(Thu) 23時半頃
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[>>180去り際の言葉を聞いて]
何を、得たんでしょうね… 知識か、富か、虚栄か、ただの我侭か…
後悔など、もし、していたとしても同情できません。 手を出してはいけないものに、その手をかけたんですから――
[こんな状況でも、飄々と空気に馴染んでいるように見える彼は、どこか底が知れない部分がある。 好奇心に満ちた表情は、どこまで真実を映しているのだろうか。]
(193) 2012/09/28(Fri) 01時頃
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[>>181彼から、落ち着いて、という言葉が出たことが 皮肉に思える程、その声は震えていた。 内容は真っ当なものだが、果たしてそれだけのために 臆病そうな彼が口出しできるものだろうか、と考える。]
[ポーチュラカと、黒い蝶を従えた彼女は 和やかに会話と、食事を続けている。
刃傷沙汰よりは余程平和な光景であるはずなのに 秘宝と主が失われた楽園で執り行われるその晩餐は 微かな歪さを感じずにはいられないものだった。]
(198) 2012/09/28(Fri) 01時頃
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[赤い意思。
殺戮の匂い。
突き付けるのは、異端者を見る眸。
重ねるのは。
重ねるのは。
僕を知った人の眸。
僕を造った人の眸。]
…貴女様が望んでくださるのならば、
私は兄にでもなりましょう。
このような、下賤な浅黒い肌でも許されるのならば。
…貴女様が望んでくださるのならば、
私は。
―――――…御守りしましょう。
レディ・ポーチュラカ。
兄様………?
[手の中の蝶は、同じ血を吸うことはない。
震える手は、震える唇は]
[小さな呟きは、鈍く光る銀色の運命を絶つ。
赤の殺意をもってして。
どちらかの命をもってして。
濡れた烏の、
塗り潰された黒の、
重ねた血の、
背負う罪の、
眸を開ける頃、世界は“楽園”に変わっているだろうか―――……**]
……ええ
[守られることになれた少女は、花のように笑う。
家族を失い壊れた少女は
けして取り戻せない欠片の幻影にすがる他ないのだ――**]
[本質は、望まれるままに]
[共にも]
[男にも]
[女にも]
[兄にですら]
[脱皮を繰り返す蛇は、己というものがまるでないように]
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