22 共犯者
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―森の中:昼から夕方へ―
[しばらく呆然としたまま森を歩くイアンの視界に、泉の縁に座るオスカーの姿が見えた。イアンは彼の横に座り、何も言わずにただじっと泉を見つめて居た。沈黙が心地良くもあり、また悲しくもあった。
そしていくばくかの時間が過ぎた頃、意を決してオスカーに声を掛ける。]
……お辛いですか?オスカーさん。 昨晩は、とてつもなく重い責を背負った貴方に、「貴方は村役なのだから」と鞭打つようなことを言ってしまって、申し訳ありませんでした。
[それから再び、暫くの沈黙を味わうと、イアンはオスカーよりも先に広場の方へと向かうことにした。
夕焼けが背に当たる。 それはひどく熱く、ひどく甘い心地がした**]
(186) 2010/08/05(Thu) 12時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 12時半頃
――決心はついたか。
[ 昨日、ラトルの娘――マーゴを生贄に捧げることに躊躇いを見せた同胞に、彼は一日の猶予を認めた。
その決意が出来たか、と同胞に問うているのだ。]
お前がどうしても殺せぬと言うのならば、俺がやってもよい。
だが、もう待てぬ。
[ 声の底に冷たい刃を秘めて、同胞に選択を迫った。]
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―夕方:教会にて―
[青年記者は、ひとりで書物を読んでいた。 教会にある書庫から借りた、月の暦に関する本を。 取材ノートの横には、この村の伝承に関する本が置いてある。もう既にメモを取り終えたのか、その本の上には愛用の万年筆が置いてあった。]
……そう、か。
[何かを咀嚼するような口調で呟き、本を閉じる。 教会を去る頃、老司祭に礼をすると、]
「もし多くの資料が欲しければ、此処よりもアレクサンデル家に頼むといいだろう。あそこの家は、代々村長の遠縁だ。村の歴史に関する資料もあるだろう。」
はい……ありがとうございます。 ちょうど今日からアレクサンデル家にお世話になる予定でしたし、家主さんにお願いして、資料をお借りするつもりです。
それでは……また生きてお会いできましたら。
[小さく一礼すると、青年記者は広場へと向かった。]
(202) 2010/08/05(Thu) 18時半頃
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「森を歩くのは十二人 祠へ行くのは十一人 帰ってくるのは十人 次の夜には十人 柱を廻って九人 帰ってくる八人 又の夜に八人 泉を汲む七人 帰るのは六人 寂しい夜は六人で出かけ 門をくぐる五人の中から 帰っていく四人を選んだ 最後の夜は四人 満月近づく三人 終しまいは二人 二人はお別れを言い 一人は長い永い旅に 夜明けは誰もいない」
(203) 2010/08/05(Thu) 18時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 18時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 19時頃
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―夕刻の広場―
……ふう。
[久しぶりに紫煙を肺に入れる。 肺から心臓、そして血管を廻り、紫煙はゆるやかに身体中を走り回る。]
今宵は8人……柊の葉が戻れば、祭は終わる……
生贄は12人…… されど……巡礼者は……
[ブルーノから貰ったパンを配るトニーの様子と、パンを手にする「生贄」の様子を観察している。]
(216) 2010/08/05(Thu) 20時頃
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―夕刻:広場にて―
そうだったのですか、トニー。
[少しだけ申し訳なさそうな表情をして、トニー>>217の顔を見た。]
……いえ。 先ほど教会に行きまして、司祭様から資料をお借りしたのです。この村の伝承にまつわる本と、「月の暦」の本を。
司祭様に資料を出していただいたんです。 もしかしたら、司祭様に少々ご無理をお願いしたかもしれません。
残念ながら、この祭の伝承の発祥については、よく分かりませんでした。その代わり、この祭で亡くなった――…いえ、この村の言葉で言うならば「森に還った」方のお名前や職業などを拝見することができました。
(219) 2010/08/05(Thu) 20時半頃
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―巡礼二夜目・夜の森―
[憤りをホリーにぶつけるかの如く。
彼女が血族かどうかは彼にはわからない。
刺青と古傷に塗れた彼の背中は
繊細でしなやかな同胞のそれとは対照的だったかもしれない。
行為を終えると、鮮血で濡れた口を拭い、
同胞の方へ改めて寄る。
彼の力、彼の英知、彼の肉体、彼の香り。
彼の胸に付いた血液を舐めとり、彼に乞う。]
俺はアンタを護りたい―――。
[再び出会えた大切な同胞。
それ以上に。
彼は「神」で有り続けなければならない。]
………。
[やがて、一つの決意を固め、
同胞に向けて、問いへの答えを口にする。]
ラトルを―――生贄に。
ただ、俺に、やらせて欲しい。
[ 血を舐め取る同胞の舌が胸に触れる。
まだ狂熱の余韻に酔う彼は、僅かに開いた唇から艶を含んだ喘ぎを洩らした。
「護りたい」と言う言葉が同胞の口から零れた時に、その月色の瞳が少しだけ揺れた。
その揺らぎは瞬時に押し込められ、淡雪のように消える。
続く「ラトルの娘は自分がやる」と言う言葉も想定のうちではあったけれど。]
――そうか。
分かった。
[ 彼はただ、短く答え、
そして、もう一度祝福を与えるように同胞の額に口接けた。]
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―夕刻:広場にて―
――…少し気になったのは。
「森に還った」方々の中には、所謂「無職」というか……あまり社会になじめない方も何人かいらっしゃったようでして。
他の資料を読まないと詳しくは分からないのですが、どうも自ら立候補したり、くじを引いたわけではない――予め村の長によって強制的に参加することが決まっていた方もいたようなのです。
そして、もう一点。 これは以前、村長夫人からお聞きしたことなのですが、「祭」の参加者は決して12人というわけではなかったようです。
その年によっては、1人多い「13人」で構成されている年もあったのです。
祭の生贄達の列をうたった歌があったでしょう?>>2:493 歌詞の中で「六人」と「四人」と「数え直し」が垣間見られることから、12人では足りなかった可能性も示唆されます。
参加者が13人だった年は、村長夫人のお話と資料から、太陰暦でうるう月があった年だと言われています。
そして――…今年は、その「うるう月」の年にあたります。
(224) 2010/08/05(Thu) 21時頃
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―夕刻:広場にて―
現在では、うるう月を換算する方がおらず、「12人」が必ず祭に出るようにと決められています。そして、今年の祭は「12人」が集められた。
だから「うるう月のある年に歩く巡礼者」のルールが、今年の祭に適用されるかどうかは、私には分かりません。
……不思議ですよね。 私がこうして祭に惹き付けられて、「生贄」の皆さんと共に歩いているという事実が、まるで「13人目の生贄」が私であるような心地がするのです。
[森の闇に落ちる夕焼けの色を頬に受けながら、イアンは困ったように微笑んだ**]
(228) 2010/08/05(Thu) 21時頃
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>>260 えっ? 襟……ですか?
[ヴェスパタインが手を伸ばすのを、不思議そうに受け入れる。]
(263) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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―それより以前のこと/夕刻:広場にて―
[ミッシェルの呟き>>235に、首を傾げた。]
そうですね。その人数を御使い様が決めたのならば……ですけれども。
もしかしたら、村人の方が決めたことなのかもしれません。いずれにせよ、これ以上のことは、別の資料を見ないことには……。
12は「余分な程に完全」と言われる数であり、一方の13は不吉な数とされていますから、様々な文化と融合しているうちに、「12人」で固定されてしまったのではないでしょうかね。
[とそこで、>>233ヴェスパタインの言葉に頷く。]
ええ。亡き村長がこの村の伝承について記したものです。そちらを詳しく見ても、何かが分かるかもしれませんね。先日、流し読みをしただけなので、詳しくは覚えていないのですが。
後で読んだら皆さんにお伝えしますね。
(271) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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―それより以前のこと/夕刻:広場にて―
[マーゴの困ったような顔に、つられて苦笑する>>237]
……そう、ですね。 私が死んだら哀しむ人はいます。
ですが、この村の祭を取材することが私の「仕事」である以上、その様子を外側で眺めるだけというのは赦されません。
命を喪うのは怖いです。 けれど……何故か逃げてはいけないような、そんな気がするんです。
もちろんあなた方の事を悪く書くつもりはありません。それだけはどうか知って戴きたい。
[俯き、虚空に放った溜息の音は、鳴り響く鐘の音の下敷きとなって、消えた。]
(272) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 22時半頃
[ 同胞の後姿を注意深く観察する視線。]
無理はするな。
[ ぽつりと一言だけを送る。]
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>>265 え……?
[ぱくりと口を開いて、小さく息を吐く。]
あ、ありがとうございます。
(285) 2010/08/05(Thu) 23時頃
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[なるべく音を立てないように、森の中を進む。森の中はおろか、田舎道を歩くことすら少ないイアンのことであるから、音を隠すことはできていないかもしれないが。]
「生贄」は12人――しかし「巡礼者」は13人。
「生贄」は誰に捧げられるものでしょう? 「生贄」は「御使い様」に捧げられるものです。
では、「巡礼者」は何に対して巡礼を行うのでしょう? 「森の中」を廻るから? 「柊の葉」を摘んでくるから?
[誰に聞かせることなく、ぽつぽつと呟く。]
何故「ハジャアールトゥー」……同じ言葉の中に、「贖罪の巡礼者」と「生贄」と「浄化」という言葉が付加されたのでしょうか? それは異なる機能を持ち合わせている故に、異なる言葉として分類されてもおかしくない。
「生贄」が「浄化」されるべき存在? 「贖罪」とは、何か原罪的な要素も含んでいるような気がする。
この村の祭は、誰の為に、何の為に、行われるものなのでしょう……?
(294) 2010/08/05(Thu) 23時半頃
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[ヴェスパタインから額に祝福を受けたその時、
不意に以前彼から出された「宿題」が浮かぶ。]
なあ、アンタ…。
もしかして
ヒトを すべて 屠る 気 なのか?
あ…いや。
さっきのは、なんでもねえ。
まだ、早ええよな。
[今は覚悟を決める時。
彼女は耳を傾けてくれたが…。
彼女が居る限り、彼を危険に晒し続ける事になる。
その時同胞の体から、
異国の人間の香りを一瞬感じたような気がしたが、
敢えて気が付かない振りをした。
巡礼者の数はどんどん減っている。
今は、彼を護る事を第一に考えねば。]
広場で、ミッシェルがテッドに
何か嫌な感じがする物を渡すのを見た。
まさか、彼女が「護る者」―――?
いや、だとしても、
ラトル…を放っておけないだろう?
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[森の中、武器を手にして走る人々の音を、そして気配を聞く。初めて森で迷った時と比べて、少しだけ感覚が鋭敏になってきた気がした。
片手にはランタン。 もう片一方の手には、2枚の柊の葉。]
ああ……今宵も「生贄」達による殺戮が始まるのですね。 「柊の葉が減らなければ巡礼は終わる」。 されど、今宵も祭が終わることはないでしょう。
[遠くに、森の中を警戒して歩くヘクターの姿を見た。>>295]
(296) 2010/08/05(Thu) 23時半頃
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[ 彼はその時、問い掛けて自ら打ち消した同胞を物問いたげに見詰めただけだった。]
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[唇だけを動かして、微かに囁く。 それはまるで、森の支配者に聞かせるような響きに似ていた。]
(ああ、この森に棲む「あなた」。 私は未だ「生贄」になれずとも、 私は「巡礼者」になったのです。
「あなた」は私の「神像」であり、その教義に触れたくて、 私は「あなた」を求め、森の中を彷徨い歩くのです。
愚かな人間だとお思いでしょう。
しかし――…それこそが、私の答えなのです。)
(300) 2010/08/05(Thu) 23時半頃
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さあ……分からん。
だが、何か口実をつけて始末してしまいたいものだ。
[ きっぱりとした冷たい呟き。]
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[近くの樹に身を寄せるオスカー>>298の姿を、音で捉えた。
彼は何かをしたいのだろうか。 その姿を認めても、ランタンの火で照らすことはせずにいた。]
(303) 2010/08/05(Thu) 23時半頃
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>>305 >>307 [昏い森の中で、仄明かりが灯る。 その白い世界で、ヴェスパタインとオスカーの2人の輪郭が見えた。
2人の語らいを、遠くからじっと見つめる。 オスカーが自分に気づくかどうかは分からないが、ヴェスパタインはおそらく自分の姿に気づくことだろう。
――…何故なら、「かれ」は「ヒト」ではないから。 それの証拠は無いものの、確信めいた何かをイアンは感じていた。
イアンは闇の向こうにある光景を見逃すまいと、目を凝らしてじっと見つめて居る。]
(310) 2010/08/06(Fri) 00時頃
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