235 夏の終わりのプロローグ
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―学生寮・自室―
[鳴ったアラームを止めて、寝ぼけ眼を滑らせれば、携帯の画面には8月9日の表示。
重たい目蓋を開閉して、新鮮にすら思える文字を何度も辿った。]
……ここのか。
[窓の外は真っ青な夏の空。
初めて見る、"明日"の空の色。]
楽しかった、……、
うん、…楽しかった。
[何度も何度も繰り返したはずなのに、振り返って噛みしめるのはこれが初めて。
ぎしり。
軋むベッドの上で、そのまま身を起こす。
遅くまで続いたバーベキューの名残を残す身体は、それでも不思議と軽かった。]
[寮の改修工事に合わせて取り壊されてしまうと聞いた、裏庭の隅、古い貯水槽。
太い給水管と梯子のその下に、くしゃくしゃの毛並みを見つけたのは、工事の話を伝え聞いた7月のこと。
おそるおそる手を差し出せば、すぐに擦り寄ってきた白い子猫。
それがどこか寂しそうに見えて、不慣れな手付きでぐしゃぐしゃと撫でてやった。]
……寂しかったのは、僕の方だったのかな。
[柔らかな体温を思い出しては、空っぽの手をゆるゆると握る。
みんなの夏休みの話を聞くたびに、自分ばかりが寂しいように思えて、どんどん喉の奥へ飲み込まれていった言葉。
その気持ちがなくなった訳ではないけれど、今はもう、するりと舌に乗る感情。]
またね。
[去り際、小さく呟いたなら。
どこか遠くから、応えるような柔らかな鳴き声が聞こえた、はず。]
/*
〆ロール入れようと思ったけど時間切れ。
みなさん、参加ありがとうです。
また何処かでー!
(#0) 2015/08/17(Mon) 08時頃
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