1 とある結社の手記:6
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[また独りぼっちになってしまった銀狼。
冬の空めがけて、*高く一つ遠吠えた*]
[――――…また、明日。そう言って別れて]
メリクリウスさん。誰を襲うか、決めましたか?
[もう随分と夜も更けてから、声を掛ける]
[投票結果は怖くて見にいけなかったから、知らなかった。
けれど、まさか、そんなこと。
…………彼からの声は、返って来ない]
メリクリウスさん……?
あの、悪い冗談や悪戯は、止めてください。
僕、怖がりなんですから。知っているでしょう?はは…。
[冗談めかして笑って見せるも、その声は消え入るほどに小さい。
いやな汗が背中を流れる。うそだ。うそだうそだ。そんな]
[気づけば音も無く、彼の部屋の前へ。
扉を開け放つ。ひゅうと頬を撫でる生温い風は、
少し前まで彼が其処にいたことを示すのだろうか]
あぁ。なんで。 …うそつき。うそつきっ!!
[だけど、今はもう、―――…いない。
揺らぐ視界。滲む涙を堪える。泣いては駄目だ。
助けてくれる人なんて、もう何処にもいない]
…………………っっっ。
さようなら。
[声が震えそうになるのを堪えて、彼に別れの挨拶を]
―深夜・フィリップの部屋前―
[やってきたのは、鳥飼いの青年の部屋の前。
相棒が処刑されたら、郵便屋を襲えといわれていた。けれど]
…せめて、貴方に彼の死を捧げましょう。
ウェーズリーさんと心中は、嫌なんでしょう?
[くすくすと悲しく笑う。届く筈のない声。
或いは彼が未だ生きていれば、聞く位はできたのか。
いずれにせよ、返事はかえってこない]
…………………。
[勿論、理由はそれだけでは無いけれど。
彼が大切に思っている人の顔。彼を大切に思っている人の顔。
頭の中で浮かんでは、消えていく。
別に悲しませたいわけではない。嘆かせたいだけではない。
ただ。
こわい。
彼らの無条件な絆は、とてもとても恐ろしかったから。
それだけ]
―深夜・フィリップの部屋―
[ゆらりと小さな影は、青年の元へ]
………フィリップさん。
キャサリンさんとの仲直り、出来ましたか?
[フィリップは、起きていただろうか。眠っていただろうか。
いずれにせよ、此方の真意に気づくほどの時間は、
与えられなかっただろう]
さようなら。
[ただ、にこりと微笑み、彼の命の焔を奪う]
[ばさばさと、部屋を舞う一羽の鸚鵡。
その鳥に心はあったのか。何か喋ったのか。
血だまりの中ぽつりと立ち尽くす銀狼には、
分らないけれど]
……アーチ。
[鍵の開いた窓から、大空へと飛び立つ極彩色。
白の中に溶け込むことなく、
月明かりを受けて鮮やかに映える]
ごめんね。
[くすくすと肩を揺らす。
足元には、頭を撫でてくれた青年の屍が]
[嬉しいのか。悲しいのか。
美味しかったのか。美味しくなかったのか。
――――……*もう、僕には、分らない*]
みーんな、悲しんでますよ。
嬉しいですか?
メリクリウスさん。ヤニクさん。
[ふふふ、とこぼれた笑みは乾いたもの]
僕は、……………
[言葉が、続かない]
……そうです、よ?
メリクリウスさんは、人狼です。間違いなく。
半端者なんかじゃ、ないんですから。
あぁ、なるほど…。
彼らから見れば、人狼が増えてたかどうかなんて、
分りませんものね。
キャサリンさんが、嘘を吐いている、と。
その方向へ持って行くことが出来なければ……。
まずい、ですね。
[郵便屋が本物の占い師だと、ばれてしまう]
………彼は、今日、誰を―――。
[まだその姿は見えない]
もし、僕を、調べる心算なら――――……。
…にげきれない。
[あぁ、それならば、何のために。
他の人を殺してまで、生き延びようとしたのか。
返ってくる声は無い。一人。ただ、一人の声が響くだけ]
[中空を見つめる瞳。
彼らが本当に其処にいるのかさえ、分らない]
いるの………。
いるん、ですか…?
あはは…。何にも、聞こえないや…。
―――――――……っ。
[郵便屋の呟く言葉
彼に向けられる少年の視線は、
信じられないほどに鋭く仄暗い]
…………死にたく、ない…。
……逃げ延びても、………ひとり。
でも、しにたく、ない。
いきていても、たぶん、これからも、ずっとひとり。
でも。………でも。
――――――……あぁ。
ヤニクさん、メリクリウスさん。
ごめんなさい。
やっぱり、無理みたいです。
メリクリウスさんが、生きているなら、
戦いましたけど。
……戦えましたけど。
……………な、何が、起こったのでしょうか。
[少年の声は、茫然としている。
どうしてこんなことになったのかも、理解が追いつかない]
………ヤニクさん。メリクリウスさん。
まだ、貴方達の魂は、ここにありますか?
僕、もう、呆れられちゃったかな…。
ただ、生きたかっただけなのに。
それだけのことが、どうしてこんなに、難しいんだろう。
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