239 名探偵の館
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……さてと、ここまでは予定通りね。
館主のいないお屋敷で、ただ一人迎えに出た使用人。
いかにも怪しいこの私を、そのまんま事件の黒幕と考えるか、それとも古典的な撒き餌――ニシンの燻製と見るか。
はたまた、なーんにも気にしないのか。
まずはお手並み拝見といきましょう。
ね、館主さま?
招待客の一人にすぎない私が、こうしてホストとしての役割をおおせつかっているのは何故か。
それは、私の名探偵としての在り方に由来します。
私は使用人探偵。お仕えする屋敷で起こる数々の難事件を、たちどころに解決してまいりました。
……覗き見によって。
私は、事件の発生とともに、その真相を知ってしまうのです。
覗き見によって。
どういうわけか、私のいるところで事件が起きれば、私は必ず“犯人には決して気づかれない状況で、その一部始終を目撃してしまう”のです。
ですから、今まで私に解決できなかった事件はございません。当然ですね。
こんなものは、何の才能でも能力でもありません。
ただの宿命です。ですが同時に、名探偵としては究極のカタチだと申し上げてよろしいでしょう。
そんなワケですから、館主様が世界から名探偵を呼ぼうとした際に、私はどうあっても候補となりました。
ですが同時に、私がいるところでどんな事件を起こしたとしても、私の覗き見から逃れることはできません。
そこで館主様は発想を変えることにしたのです。
ゲストとして呼ぶことが不適切なのであれば、ホストにしてしまえばいい、と。
とまあ、これが私がここへやってきた経緯です。
あたし、誰に向かって喋ってたんだろう?
細かいことは、どーでもいっか。
あはは。
――私も、無性にお手洗いに行きたくなってしまいました。
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