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―遊廓の客人―
[足下の白濁の池に、透明な汁が滴る。
それが上の口から出た物欲しげな涎か、下の蕾から出た興奮の先走りなのか、最早自分では判別が出来ない。
言葉を重ねられるたび、ぽたりぽたりと雫は量を増して]
ん…ぁ……
[やがて、ようよう縄が解かれれば、名残惜しげな声をひとつ溢す。
辛い体勢を強いられることに明らかな悦を覚えていた身体が浅ましくて堪らず、眉を歪めた。
そんな常識を重んじるつまらぬ理性を吹き飛ばして欲しくて、白濁で汚れた孔はひくつく]
もったいない、御言葉でございます……
ン、
[脚を開かされ、落とされた言葉に小さな声で応える。
重ねられる唇、唾液の交わりが食道から全身を犯すような錯覚を覚えて。
どろりと溶かされる僅かな理性を押し止めるのも、もう億劫だった]
は、ふ……
[支配を求めて、自ら舌を絡ませ交わりを深くする。
はしたない下肢は、牝猫らしく腰を揺らして、尻尾を上げて、誘う]
− 給餌
[粥を食べさせんとする花留の所作はよく躾けられたものと思われた。
ほのかに温もる粥は、男と交わるときに使うふのりを連想させ、今は昔、初穂を捧げんと引き合わされた色子に、これは真珠を削って溶かしたものだと他愛ない嘘をついたことが不意に思い出される。
桜貝色の唇から、ちらと覗いたその子の八重歯こそ真珠に似ていた。]
なにかな?
[回想に耽ってぼうっとしていたろうか。
おずおずとした問いの声に見えない目を向けた。]
― 生まれたままの╰⋃╯
…
[衣服を握る指には冷ややかな視線と、優し気な指が絡まる]
…ああ そうだ、ケイ
繋がりたい 欲しいと、 お前も申せ
[入り口へ押し当てたまま腰を揺らし、言葉を求める
許す、 欲しい、 抱かれたいと。
喉に絡まり出て来ないそれらを待った辛抱強さの終わり。
言えたのならそれまで。言えずとも、今は良いと]
[吊り上げられた下肢を抱え、肉付きの薄い若木のような身体を一気に貫き通した。
指二本を受け入れていたとはいえ、質量も圧力も大きく異なる陽物を深々と埋め込み、慣らす暇も与えず揺動する]
……くっ
ケイ お前は破瓜の痛みを知り、肉の悦びを知り
そして求めよ。お前の愛するものを
[激しく収縮する内奥を引き裂き、結合を深めては抉り、突いて。
毒の快楽と痛みを同時に植え付けながら 耳元に甘くその名を呼ぶ。
牢を絵師が訪なえば、横目を向け。
前に回した指で雁首を擦り、茎を扱く。
強引に追い上げて果てさせればまた楔を後庭へ打ち付け、密書を抱き守り抜いた揺籃を穢し犯した]
― お昼餉幸福タイム
あ、熱くは…ございませんでしたか?
[その唇に見蕩れていたのだと、視線を見られない稚児は口にしない。
仄かに上気した頬も、とろりと緩んで八重歯の覗く口許も、咎められる恐れはない]
次は煮物を…
[箸で芋を挟んで、また口許へ。
食事を口に含み咀嚼するだけの所作に滲む端正さを間近に。
あれこれと箸を渡し、匙を運び。
熱中するあまり、食事の終わり頃にはナオエに寄り添う花留の姿勢はしなだれかからんばかりになっていた]
― 生まれたままでたいへんなことに
[冷ややかな視線は、見えなくて。
優しげな指の感触だけが残って。]
…… 触れて
くだ さるの、 か……?
で、すが、…………っ
[決定的な言葉を怖れ、避けながら
確実に、少しずつ、沼に沈んでいく。
今はよいと、見逃されるのも甘く感じていては。]
ぎ、――っ あ、あ゛…!
[みち、と隘路の裂ける痛み。
蕩けた入り口とはいえ、馴らされていなければ
受け入れるのは、苦しく。
狂わされた五感さえ――悲鳴を上げた。]
いぁ、 あ、痛、ぅ …っ
や、…っひあ
[服を握り締める指は震え蒼白。
反った咽喉に、額に、汗が浮かぶ。
やがて行為から快楽を拾い上げはじめ、耳元の囁きに唇を震わせた。
絵師に記されているとわかっても止められず―――]
……っ、ふあ、ぁ、そこ、…っ やめて、くだ さ……
なお、え さま ……ぁっ
[揺さぶられ、堕ちる――堕ちる。]
− 比翼連理
これに喜び狂うお前ゆえ、
お前にしか見えぬ、見せられぬものがある。
[言葉は銀の糸を引いて伝い落ちるかのよう。
婉然と虚ろな笑みを湛えて蕩けた顔を見下ろしながら、先程とは逆の角度で敵娼の疼きを貫いてゆく。
支配を求める身体に、暴虐的に君臨した。
誘うごとく上げられた尾を指の間に挟んで逆撫でにこき下ろし、己が尾は鞭としならせて床を打つ。
小さな風ですら肌を嬲るよう。
その道の達人たる相手に手淫も尺八もさせはしない。
ただ一方的に犯し、上り詰めさせる。
ふたつの体温は溶け合って温い。]
[やがて精も狂気も摩滅すれば、空が白むまでのほんの一時、拘束するごとく守るごとく、腕の中に閉じ込めて添い臥した。
朝になれば、国を背負う勤めに戻らねばならぬ。
再会の約束ひとつなく、身体に烙した被虐の痕と一枚の絵のみを逢瀬の証しに。*]
― まあ、なんということでしょう
[若者の腸へ植え付けた毒の種は、陵辱者の身にも相応の負担を強いた。
香に慣れた身も、
犯す肉茎から直に成分を摂取すれば五感を惑わす霧となる。
幻が――]
…ぬ、ぅ
[なおえさま、と呼ばった口を、己が口で噛み付くように塞ぐ。
歯列を割り舌を絡めとってそこへ牙を立てた。
喉を鳴らすように低く嗤い、腰を揺する。健気にも苦痛の沼に快楽を探し、自らを堕としていく様に溜飲を下げようと。
黒猫を犯す熱塊が形を変えた。
暴力的な、猫種嗜虐の陰茎へ。
ギチ、とはまった襞へ 鋭利な棘を刺す]
やめろは聞かぬ。ケイ
もっとくださいと申せ
[結合を深めれば貫かれる痛み、
腰を引き抜けば逆向きの棘に裂かれる痛み、
その何れにも疼きを埋める悦びを与え。
両下肢を縛られ身動ぎすらままならぬ黒猫を組み敷き、悲鳴を漏らす箇所ばかりを執拗に責め抜いた。
深い口吻はその悲鳴すらも奪おうと*]
− 偏食のススメ
花留に任せていれば心配なかろう。
[心安く名を呼んで信頼を示し、己は指一本動かさずに、花留に口を養わせることに恐縮の素振りもない。
花留が説明する料理に軽く相づちを打ちつつ、精進された味を堪能した。
花留の身体も次第に近く寄り、ついにはどちらが臥所の主かわからぬほど。
華奢な重みが撓垂れ掛かってきても、ナオエはむしろ迎え入れるように身体を向けた。]
息を弾ませているね。
疲れたかな。 熱がある?
[額を触れさせて体温を調べんと近づける。]
─ えろいからこそのAOKNですよ ─
えっ、なぃが……って、いひゃいいひゃい!
[
思わずちょっと口が離れる。]
どーなんだろうねぇ。
猫の、好みも……んちゅ……ッ、それぞれ、だからぁ?
[適当にはぐらかしつつ口淫の再開。
その間、軽い下準備とばかりに、自身の孔を尾で少々弄ってみたりもしたか。
そしていよいよといったところで顔を上げ、ケイの瞳を覗き込めば、二色に欲情滲んでいるのが見えて、にぃ〜と湿った唇を吊り上げた。]
ふ……ひゃっ。
嬉しいなぁ〜こんなビンビンに勃ててくれてぇ〜……
[
頬を包んでくれる手に擦り寄って、ケイの身体がずれるのに合わせるように、自分の身を跨るように近付けて]
じゃ……いただきまぁ、す……♪
[引き寄せに逆らうことなく、誘われるまま、片手は壁に、もう片手はケイの肩を緩く掴む。
尾と指先で手繰り寄せた、湿った猛りに、後孔を宛てがい]
……ん、ッ……
ぅ、な……ァ〜〜ん♪
[躊躇なく腰を沈め、ひといきに深く呑み込んでゆく。]
ぁ、ァ……ッ、すご、たまんな、ィ……ッ
[みっちりと孔を埋めた逸物に、高く、歓喜の声を漏らし、もっと強く感じようと、絞めつけるよう身を震わせた。]
……っ、
……ケ、ィ…… ッ、ぁ……ふゥッ
[もっと奥、好い所を探り、ゆるゆると腰を揺らす。]
― 健康精進食お食べやす
[しまった、と口もとを抑え、離れようとした咄嗟の動きは
近付いて来るナオエの顔に硬直した]
ぁ……
[畏れ多くも頂いた労りの言葉へ、言葉を返せず。
そのまま額が触れるまで息を止めて]
[頬も耳も熱くなるのを感じた。鼓動が跳ね上がる音すら届いてしまうのではないか。
彼の吐息がかかる。
頭が真っ白になった稚児は一朝一夕で身に着けた礼儀を忘れ、押し退けようというようにナオエの胸へ手を当てた。
熱がある、と指摘されたならば]
お、おお、お慕い申す、申し上げておりますものですからっ!
[混乱のあまりそう宣った]
―恨めしき曙の―
アッ、アアッ、ひ、ぁっ、んんっ、
[痛みを訴える秘所を惜しげもなくさらけ出す尾は、彼の指の間に挟まれ扱かれる。
付け根を強く扱かれるたび、孔は大喜びで食らい付き、至福の快楽を吸い上げる。
だが、足りない。
足りない。もっと。
腕を必死に伸ばして、支配者に媚を売るように首筋に抱き付く]
もっとぉ…ッ、なおえさま…!ぁッ、
んんっ、……ぁっ、なおえしゃ、ま……、もっと……ッ !!
[もっと。もっと。
犯して、打って、抉って、絞めて、縛って
壊して欲しい
虚ろな笑みを浮かべた彼から、一方的な狂乱を従順に受け取りながら。
呂律の回らぬ舌で、欲望のままに奪われたいと望む。
暴力的な支配を与えてくれる、一夜の主人に甘え声を出し。
強欲にねだり、狂乱の笑みを浮かべてすり寄った]
――もっと……
[明日も明後日も、此の夜のままがいい。
願うことはけして叶わないことを知らぬほど、幼い仔猫ではないけども。
何度でも、願うのだ]
[やがて、夜明けの別れの刻。
白んだ空を眺めながら、煙管を深く吸う。
独り残された床の冷たさに尻尾を揺らしながら、白煙を吐き出した。
商売道具の身体に残された、赤い痣。
そのうち紫色に変じ、醜い色を当分は晒すであろう。
それだけが、あの横暴な客人の痕跡]
――身請けする気もないくせに、こんなに貴方を求めさせて。
[煙を食う合間、呟くのは独り言。
嘆くような台詞でありながら、その声は嘆きの欠片もない平淡で
――そうして、隠しきれない苛立ちが籠っていた]
酷い男だよ。まったく。
[高い音を立てて、煙管の頭を小箪笥に打ち付ける。
詰まった灰が派手に散って、畳に斑の焦げを残した。
隠しきれないほど、深く、汚れた……黒い穴を*]
─ 元ボスとの邂逅 ─
うなっふにゃ〜ぅにゃ〜♪
……は〜ぅ、さすがにちょっと疲れたねぇ〜……ん。
[活きのいい天然ミネラルを、前から後ろからたっぷりと補給して、お腹もお尻もタプタプ満足。]
ていうか、結局あいつら何だったんだ……?
[遊びに夢中になるあまり、あの猫達の本来の目的を聞くのを、すっかり忘れていた。
とりあえず、このへんでは見かけない野良だということと、なんか宜しくない企みをしてたっぽいことは分かるのだが]
……ま、いいか♪
[正体が何であれ、結果的に愉しませてくれたので良しとした。]
[さて。
フニャッふな〜と、またいつもの道に戻ってくれば、行く先に、何か襤褸雑巾のようなものが落ちているのが見えた。]
……なにゃ。
[のたのたと近付いてゆくと、なんだか、ちょっと美味しそうな匂いと……血の臭い。
これは只事ではなさそうと、ピンと耳を立てて襤褸雑巾に駆け寄ってみれば、それは、白と黒の猫だった。]
ぬなっ?!
おいおまいどうした、すごい怪我してるぞ!?
[何かしら反応はあったかなかったか。
しかしとりあえす、まだ息があるらしいことは分かり、ほっと胸を撫で下ろしもしたのだが。
よく見れば、引き摺られたような血痕まである。
しかも、地面を濡らしているものは、血液だけではない。]
……なぁ……どした、大丈夫か……?
[耳元で、心配げに問いかける。
閉じたままになっている左眼が、あまりにも痛々しい。]
―匠の技みたいなやつ
ぁ、ふ――っ…ん、く――
[ちゅ、ちゅく、と噛み付くように塞がれた口から
淫靡な水音が響き、聴覚まで犯される。
歯を立てられ、傷がつけば鉄錆の味もしようか。
うっとりと、眼を細め、幻に沈みそうになる――その、ときに]
……ぎ、ぐ ッ ぁ―― っ
[内側に、棘が脳髄まで貫くような痛みを与えられ、
悲鳴を上げた。つ、と赤い赤い、血が滴る。
まるでおんなが、裂かれる様に]
あ、ぁあ…!!
痛、…っ…… ぁ あ
[快楽と痛みがない交ぜで。
ぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
指先が組み敷く男の纏う布を掻き、爪を立てる。
痛みに、流すまいとしていた涙が眼の端から堕ちた。]
ひ、ぁ ぃや、……ぁ、…あ!
…っ、―― っ
[引き裂かれる痛みと、
快楽を呼び起こすしこりを一度に責められて、
幻に溺れながら、涙を一杯に溜めて―――]
も、……っと、 くださ、ぁ、…あ…
─ ある飼い猫との邂逅 ─
[襤褸布のように扱われ、捨てられた。
ひどい甚振りに気を失っていたが、地面に投げ出された時に打った痛みで、意識が一瞬戻ってきた。
けれどこの怪我だ、もう助かりはしないだろう。
縄張りも、ボスの座も、雄のプライドも、何もかも失った。
生き恥を晒すくらいなら、このまま死を待つか。
投げやりな気分になり、実際ほぼ動けずに衰弱死していく……
ものだと、思っていた。
………ぅ。
[しかし、どこかのんびりとした響きの慌てた声が上から振ってきて、右目をそろそろと開ける。左目は傷を負ったままで、うまく開けられなかった。]
……ひっ。
[ぼやける視界に映る影。それが、雄猫だと分かれば、一瞬怯えた表情を見せた。奴らの仲間かと思ったのだ。散々雄猫たちに嬲られたせいで、恐怖心を抱いた。
しかし、敵意もなく、ただ心配をしているだけなのだと知れれば、腕の間に顔を埋めて。]
……ほっといてくれ。
俺なんて、生きてたって……仕方ない……
[か細く、呻くような言葉。絶望に塗れ、現状を把握すれば狭くなった視界が滲んだ。*]
─ AOKN つよい
むぅ
[引っ張らないとイクかと、なんて
情けなくて謂えないだろう。]
……っ、ふ、そりゃ、そう、だろう…な
[手触りの佳いホレーショーの髪を撫でるながら、奥を探るらしい尾の動きに器用なヤツ、と呟いた]
っ、そりゃ、…なるよ、ったく……
いちいち謂う、なって
[額をくりくりと押してやって。
跨る姿にこくりとつばを飲む。]
……っ
[僅かに眼を眇め、息を吐く。
そ、と腰に手を添えて。
熱く熟れた孔に――飲みこまれていく感覚にぞくりと背筋が震えた]
ぁ、…ふ――っ、
[絡み付いて、貪欲で、快楽に正直な裡。
ホレーショーのそこは、蕩けるような。]
ホレ 、ショ、……く、…っ
[揺れる腰に合わせて、自身も彼の奥を、突こうとした。]
あっつ、……ぁ、あ
― そんな匠を人は、黒猫の魔術師と呼ぶ
次には、抱いて下さいと言えるな?
[蓙の上に横たわり動かない黒猫へ、"ナオエ"の声は告げる。
そして低く押し潰した声で手の者へ命を発した]
これに縄を打ち、責めにかけよ
香を切らさず また損わぬよう
― 仙内城 ―
[国の要達に話を通し、各方面を迅速に、精密に動かして行く。
実際にナオエからの密書に沿い、呼応する手筈を調えるのにかかった日数は14日ほど。
国の主に書を奏上し許可を得る必要はなかった。男こそが"陸奥守"であり、それは知らしめるべきことではない]
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