167 あの、春の日
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-そうして、少し時間が流れ-
…え?
[ハルカがやって来たのはジリヤが仮眠を始めてから、どれくらい経った後のことだったろうか。 彼女の道場破りのような掛け声に目を丸くしつつも、エルゴットは扉を開ける。 足元では目覚めた小犬が尻尾を揺らしつつ、物欲しそうにハルカを見つめていたことだろう。]
ハルカさん…、 どうかされました――――、…え?
[自分の姿を認めれば、ハルカは良かったと真面目な顔で、何も言わずに愛を受け取れと言う。 エルゴットは訳が解らず目を白黒させつつ、差し出されたものに視線を向ける。]
(173) 2014/03/06(Thu) 14時半頃
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これが…? しま…?
[ジリヤの存在に下打つハルカにきょとりとしつつも、彼女がジリヤに告げる「僕はエルゴットへの愛しか持ち合わせていない」にエルゴットは激しく混乱するが、ハルカはそんなことはお構いなし、言うだけ言って嵐のように去っていってしまった。]
――…
[封筒を手にジリヤに視線を送る。]
………愛ってこれ、みたいです…
[困ったようにして。 ジリヤが拒まなければ、一緒に中を確認しようとしただろう。**]
(174) 2014/03/06(Thu) 14時半頃
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-校庭-
―――――…綺麗…
[さわさわと流れる風が髪を撫でる。 夕暮れの空。 黒髪を亜麻色に照らす青と朱のグラデーションをエルゴットは見上げる。
ハルカからの愛の詳細を確かめた後、彼女は小犬を連れてここに来たようだ。]
(175) 2014/03/06(Thu) 15時頃
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[絵が、好きだった。
幼少時、覚えなければならない沢山の中、部屋の窓から見えた空を描いたのが一番最初。 世話係は、そんなことをする暇があるのならと、画用紙に描かれた一面の青をその場で破り捨てた。
それでも止められなくて、隠れてノートに描いていた。 この学校に通わせて貰えることになって、初めて自由に絵が描けるようになった。 3年間の社会勉強という名の執行猶予。
怖かった。 他人が、視線が、光が、明るい声が。 失うものなんて何もなかったけれど。
ただ、絵を描いている時だけは、その時だけは前を向いていられた。 見たい景色を、見たかった景色を、素直に見ることが出来た。 他人も、視線も、光も、明るい声も、人の温かさも。]
(176) 2014/03/06(Thu) 15時頃
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[写真部のルーカスがエルゴットの絵を見せて欲しいと言ってきたのはいつだっただろうか。>>91
成績は優秀でもジリヤと違い存在感が薄く、他人と積極的に関ろうとしないエルゴットは彼のその申し出に心底驚いた。 声も出せずに頷いて、おずおずとその時描いていた夕焼けの空のグラデーションを見せる。 隣で自分の絵を眺めるルーカスをじっと見つめるエルゴット。 気の利いた言葉は紡げなくても、振り向いた彼の一言はきっと。 普段笑顔を見せない彼女を心から嬉しそうに微笑ませるには十分なものだっただろう。**]
(177) 2014/03/06(Thu) 15時頃
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― 談話室 ―
[ここに入ってどれくらい経ったろうか。 思い出していたのは部活のこと。 今年の始業式も終わってすぐのこと、一匹のうさぎが小屋から抜け出したため必死に探し回り、やっとのことで、とある後輩の女の子の足元に擦り寄ってるのを見つけたのだった。
しゃがみこんだ彼女はあまり元気そうに見えなかったが、逃げ出したうさぎの話をしたら、少しだけ笑顔になったことは覚えている。 ……まさか、それが端を発して揉め事が起きた>>159とは、男に知る由もなかったが]
(178) 2014/03/06(Thu) 16時頃
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[一通り部活の思い出を振り返った後、行儀悪くもソファの上に寝転がり、それから室内を見渡してみる。
一度改装されたこの場所>>166は、3年間の思い出がそっくりそのまま詰まっているというわけにはいかないようだが、それでもいつも他愛のない話をしながらみんなと過ごした場所。 思い入れは当然深いもので]
はるのひー そよーかぜー……
[ソファの上をごろんごろんした後、口ずさむのは某有名な作曲家の曲に歌詞をつけたもの。別れの時期にぴったりなこの曲は、さらに感傷的な気分にさせて]
(179) 2014/03/06(Thu) 16時頃
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あれ、そういえばこの歌、いつかも歌ったような……?
[全て歌い終わった後、昔の記憶を色々と掘り起こして、そしてやっと思い出した。 この談話室が改装される前、壁もきれいに塗り直すということで、こっそりと壁に一部の寮生に向けて一言メッセージのようなものを書いたのだった]
……たしか、もう読めない状態になってたはずだけど。
[どうせ塗料の下に隠れるのだからと、恥ずかしいことも書いた気がする。 気になって仕方がなくなって、体を起こすと記憶を頼りにその壁へと近づいて]
(180) 2014/03/06(Thu) 16時頃
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うん、やっぱり隠れてるよねー。
[確認すると、何を書いたのかも思い出していないにも関わらず、ほっと一息つく。 そして、その下に文字があるだろう場所に手を当てているそのとき、ゴロウから声がかかった>>166]
あ、うん、りょーかい! 鍋の準備ありがとね。
[振り向くときに、思わずびくっとなってしまったが、花の世話をしているゴロウに気づかれただろうか]
(181) 2014/03/06(Thu) 16時頃
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[それから、彼と何か話したならその後で、彼の手元に目をやると、部屋に飾られた花が見えて。 綺麗な花は、どことなく優しくも存在感のあるものに感じられ、作り手の性格がそのまま表れているように感じられた]
[その後、キャサリンとゴロウのやり取り>>171があったなら、遠くから見つめつつも無粋に聞き出すような真似はせず**]
(182) 2014/03/06(Thu) 16時頃
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―少し前・エルゴットとジリヤの部屋―
む?
[道場破りのような勢いで、愛という名の招待状を持ってきたハルカを出迎えたのは、エルゴットだけではなかった]
連れ込んだのか。
[異性を連れ込んだような人聞きの悪い言い方で、足元の犬を見下ろした。全然悪気はない。とがめるつもりもない。 しゃがみこむと、期待に満ちた目でこちらを見上げる犬をしばし見つめ]
おすわり。
[犬の前に片手を突き出し、厳かに言う。 犬がちょこんと座ったのを確認すると、ポケットからチーズ(ペット用)を取り出して与えた。 犬に対するハルカの対応は、大体いつもこんな感じであった**]
(183) 2014/03/06(Thu) 18時半頃
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ハルカのばかぁ…ハルカは写真の代金2倍ね…
[ 一連の流れ>>163>>164>>165に起こされ、 寝ぼけて漏らす言葉はハルカの耳に届いただろうか。
エル>>174には「 いいなぁ 」なんて、 まだ理解していないままちょっぴりむすっとして、 見せてくれるようなら一緒に見ようと、 眠い目を擦って身体を起こした。** ]
(184) 2014/03/06(Thu) 19時頃
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2014/03/06(Thu) 19時頃
お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2014/03/06(Thu) 19時頃
紐 ジェレミーは、メモを貼った。
2014/03/06(Thu) 19時半頃
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―― 自室 ――
[本来なら、食堂へ真っ先に駆けつけるべきだと思いました。 ですが貴女はまた自室に戻り、筆を手に取りました。
もう、追いコンまでの期日はありません。 それに、迫りくるのはその期日だけではないと、貴女は知っているのですから。 ですから、書こうと決めたのですね。]
……先輩には、和歌をお送りしました。 でもどれも……
[意味も知らず、離別の歌を書き連ねただけでした。 それではいけないと、貴女は知っています。自らの言葉できちんと、伝えるべき“だった”……と。]
(185) 2014/03/06(Thu) 20時頃
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-秘密の花園(女子寮)に向かう前・廊下>>163-
挙動不審……そ、そんなに?――痛いっ。
[>>1:154 そう言えば、先程も後輩に体調を心配されたけれども。つまりはそういう事なのだろうか。思春期男子にはなかなかに、響く言葉だ。眉尻を下げる。 ずんずん進む腐れ縁の少し後を付いて歩く。 歩幅は己の方が大きいはずなのに、何故か抜かされる。 左手に何か固いものが当たって落ちる。見下ろせば可愛いラッピングをしたキャンディ。]
んー…口寂しいのかもしれない。何か口にあると落ち着くんだよな……。 ぃ、いや…ハルカの手は…丁重にお断りします…
[口寂しさを紛らわせる為、己が煙草に手を出し始めるのは、もう少し後の話。結局悪癖は直らず、悪癖の上塗りになっただけに終わったのだが。 口内にハッカの爽やかな香りが広がった頃、>>157ライムイエローの髪が見える。]
あー……フィリップせんぱーい……
[招待状を取り出して、半ば急ぎ足で駆けつけようとする。追い付けただろうか。もし追いつけたならば、相変わらずの挙動不審ぷりを発揮しながらも、手渡すだろう。]
(186) 2014/03/06(Thu) 20時頃
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[エンベロープから取り出したのは、4枚のメッセージカード。 封筒と同じく、瑠璃色を選びました。]
(187) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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[先ず始めに、エルゴット先輩へ。 彼女とは交わした言葉は他の先輩より少なかったかもしれませんが、彼女が描く絵の世界を黒眼は見つめていましたね。]
別れてふ ことは色にも あらなくに 心にしみて わびしかるらむ……
[過去にエルゴット先輩へ書いた手紙には、そう記しましたね。 ですが、今の貴女は自分の言葉を便箋に綴ります――]
(188) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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エルゴット先輩
卒業おめでとうございます。
先輩の未来がどうか、キャンバスの上の色彩と共に明るくありますように。
――――― 檀
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[次に、ジリヤ先輩へ。 美しいかの先輩の生徒会での活躍は、貴女も良く知るところです。]
今日別れ 明日はあふみと 思へども 夜やふけぬらむ 袖の露けき……
[過去にジリヤ先輩へ書いた手紙には、そう記しました。 歌の意味も美しいですけれど、拙い言葉を綴っていきます――]
(189) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ジリヤ先輩
卒業おめでとうございます。
生徒会の凛々しい先輩も好きでしたが、寮で一緒に過ごした先輩がもっと好きでした。
――――― 檀
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[次に、フィリップ先輩へ。 彼のまとうお日様のような雰囲気に、貴女は癒されていましたね。]
音羽山 こだかく鳴きて 郭公 君が別れを 惜しむべらなり。
[過去にフィリップ先輩へ書いた手紙には、そう記しました。 これは少しまずいものを選んでいたなと、慌てて手紙を綴ります――]
(190) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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フィリップ先輩
卒業おめでとうございます。
これから先も、皆にも動物にも優しい先輩でいてください。
――――― 檀
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[そして、ゴロウ先輩へ。 彼が言葉を紡ぐ、その瞬間を黒眼はいつも捉えていましたね。]
……、……。
[記したそれは、口に出すことはできませんでした。 暫し考えた後、筆はゆっくりと動き始めます。
遠い未来を、見つめるような眼差しを注ぎながら――]
(191) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ゴロウ先輩
卒業おめでとうございます。
先輩の育てられた花、これからも大切にいたします。
――――― 檀
追伸:先輩は眼鏡がよく、お似合いになると思いますよ。
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[そして更に綴っていくのは、 一つ上の先輩方と、同級生の皆さんへ。 紺碧と空色のメッセージカードを取り出します。
彼らとはすぐに別れるわけではありませんから、きっと不思議に思うでしょうね。 ですがどうしても、書かずには居られませんでした。]
そのままの気持ちを。 私の、言葉で。
[冗長でどこか、浮世離れしているとも言われる言葉より 親しく、思うままに。]
(192) 2014/03/06(Thu) 20時半頃
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ジェレミー先輩
泣いてしまったお話し、ずっと忘れません。
これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
キャサリン先輩
華やかでしなやかな先輩が眩しくて、あこがれるばかりです。
これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
シーシャ先輩
先輩の褐色の眼差しは、どんな絵画より鮮やかで素敵です。
これからも、よろしくお願いいたします。
――――― 檀
[ハルカへ綴ったカードも、
他の皆と同じく紺碧の封筒に入れた。
言葉にすれば伝わってしまう今、少し気恥ずかしいけれど、
もしも未来が変えられたのなら彼女にはきっと伝わるだろう――]
マドカさん
あなたが空を飛ぶその姿を、眼に焼き付けさせてください。
これからも、共に頑張りましょう。
――――― 檀
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