162 絶望と後悔と懺悔と
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私が呑んだ中でも上質のものだ。
大事にすると良い。
[また1つ、面白いものを見つけたと、
弧を描く口元を隠さずに零瑠が下がる際に背に声を掛けた。
あの涙は何処かに残ったままの人間の部分か。
人間の涙と吸血鬼の血潮。
混ざったその味に、機会があれば、
他の眷属達も試してみるかとほくそ笑んだ*]
[きょとりとした。
何か素朴なものを見たような印象だ。
永く生きているだろう純血の吸血鬼でも、
慣れない事というのはあるらしい]
そうですか。
[そして有言実行とばかり一人で出て行く背へ、
行ってらっしゃい、と静穏に頭を垂れる。
指示されれば従う以外の道はないから*]
− 襲撃の前 −
[血酒と穢れた肝を用意してきたホリーのピクニックには
僅かに苦笑を浮かべたまま、探る様な視線を投げる]
行って来ると良い。
愉しんで来い。
[贄を探しに行くわけではないだろう。
そこに何があるのか迄は図れないが、わざわざ出向くのだ。
それ相応の愉しみがあるのだろうと許す]
どんな遊びをするつもりか知っているか?
[肝を運んで来た家畜に訊いた所で、知る筈も無い。
震えながら存じませんと答える家畜に]
そうか。だが貴様でも私に教えられる事があるぞ?
この穢れた肝と、貴様の肝の味の違いもそうだ。
[意味を家畜が理解した時には、その腹は裂かれていた]
やはり女は処女が、男は穢れた味が美味い。
[味の劣る肝は、一度舐めだけで床に棄てられた*]
―書庫―
[探していた本は見つからなかった。
元々置かれていないのか、誰かが持って行ったのか。
どちらもありえるし、どちらもないようにも。
堆く積み上げられた本の森を諦めて去る]
―廊下でのこと―
もう、死んでいたかも知れないじゃないか。
忘れられなかったのは、同じ……
[リカルダの視線。何を言いたいのか、敢えて考えるのを止めた。]
ねぇ、リッキィ。
絢矢がこれを預けたってことは、さ。
………さよならって、ことだよね。
― 廊下にて ―
そう、おなじもののままだって思ってたからだよ。……でもさ。
僕が違うものになっても変わらないの。キャロライナにーさんも周にーさんも!
[それがただただ、最初は信じられなくて耐え難くてでも、……不思議と悪くはない気分も浮かんできてて。
―――じゃあ、絢矢は?
さっきの理依にーさんの、まるで“直にーさんを殺したのは絢矢だ”と言いたげな態度は]
そんな、……ちがう、
―廊下にて―
……キャロライナ、も?
そうか。彼にも会ったんだ……。
[逃げたの? 逃がしたの?
そう問う気力が、今はない。]
変わらない人達が居て。
でも、変わる人達だって、居るよ。
……ちがう? さぁ、どうだろう。
俺にはそう、思えない。
[廊下でちらりと、遠目に零瑠の部屋を窺う。
部屋の前にリカルダがいたことで、
ぴんと、周が目を覚ましたんだと思った。
涼平に知らせようと思って、足を急いだ。]
変わっても良いんだよ。
変わらないなんて、そんなもの……
[あるはずがない、とかぶりを振る。*]
……うん。
[僕は……キャロライナにーさんの武器だけ壊して退いた。
これじゃあ逃げたのと変わんないや。
“始祖様”に知られたらどうなるか――って実に今さらだよね。とりあえず何も言わないでおいた]
れ、零にーさんがそう思いたければそう思えばいいよ、僕は、思わない。
なんで、……なんでそんなこと、言うの。
[僕は零にーさんはただ“始祖様”の血に縛り付けられてるんだって、そう信じてる。
僕と零にーさんを隔てる違い――誰の牙を受け吸血鬼になったか。
信じてるのに、零にーさんがまるで“吸血鬼に変わってよかった”って言ってるみたいに聞こえて、―――寒気がする]
――…ごめん。
[僕はその場から走り去った*]
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[僕は零にーさんの部屋の前の廊下で色々とお話した後、色々と決心を固めるのに一日――二日――もっとたくさん時間が欲しかった。 けれどその日の夜には“始祖様”の呼び出しを受け、そして――
僕の世界は一変する]
(445) 2014/02/14(Fri) 00時頃
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