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……情を強請って。
情を沸かせて。
それでも時が過ぎればあっさり忘れて捨てるのよ。
貴方はそういう人だわ。
……騙したのは……僕じゃないだろ?
[続けられた言葉には、自然と顔が強張って。
最後の言葉は今の己が吐き出したものではない。
色も輝きもを喪った蜂蜜色の瞳は、何処か虚ろな様でジェレミーを見て。
動きの止まった指先から、さらさらと流れ落ちる金の髪が、彼と己を繋ぐ視界を遮る。
瞬きをする一瞬前、彼を射抜くその目に、深い闇に似た熱が篭って。
それは写真からこちらを睨むのと似ていたが、目の前の彼に届くか。]
![]() | 【人】 許婚 ニコラス[瞬きは刹那。 (157) 2014/12/28(Sun) 10時頃 |
吸血鬼って… 嫌だね
[ぽつり]*
[自分を嫌う人間の声なんて聞こえない振り、見ない振り。
それが若い頃の記憶の全てだ。]
![]() | 【人】 許婚 ニコラス[現れた写真は、ここに居るものからクアトロだけが抜けた集合写真。 (195) 2014/12/28(Sun) 16時頃 |
たかだか数年でこうは成らないからな。
俺に流れた時間を知りたい。
[
死を望んだことはない。だが、先にある時間は有限なものであって欲しかった]
まだ死にたいのだったか?
[流れる金の髪を見つめる]
[じぇれみがもし囁きかけられる位置に居るのなら、こう囁いたろう。]
お前さんは「真実」って物に興味は有る類の人間かい?
さあ、あなたは知ってるの?
[知ったその真実が、不幸なら
どのみち忘れてしまうのだろうか?]
[そう、あっしの部屋で。
そこにあっしは真実を記している筈だ──]
……僕?
[口調と一人称の、の違い。
騙したのはお前だと、なじる言葉。
伏せていた視線を彼に向けた時
一瞬、あの写真でだけ知れた
繕わぬ表情の彼が居た]
ニコラス…
[自分は会話している相手のことを名前で呼ぶ事はほとんど無い。だけど、ついて出た彼の名前。]
そうだとしたら、俺はお前に、
「俺」を殺せって命令したのかもな…
俺の生き死にんなんて
どうでも良いと言ってなかった?
[まだ、死にたいのだったかと問われて、テーブルに頬杖をし、伺う様に笑い。]
そういや、あんたは俺と寝た事ある?
あはは、一度くらいは、
俺はあんたを口説いたかもしれないね
[ニコラスとの会話を思い出しそう笑い。]
![]() | 【人】 許婚 ニコラス─夢─ (261) 2014/12/29(Mon) 02時頃 |
![]() | 【人】 許婚 ニコラス[忘れたいと願ったのは己。 (262) 2014/12/29(Mon) 02時頃 |
![]() | 【人】 許婚 ニコラス
(264) 2014/12/29(Mon) 02時頃 |
―或る日―
[雲が途切れ、また陽が入り。
昏く翳っていたその場所を照らす。
男は足許に転がるものを見る。
揺れる金の髪。
蒼ざめた膚は、最早生者のものではない]
……ぁ……。
[目の前掲げた、痺れて色を失くした指先が、
小刻みに震えるを不思議そうに眺める。
『それで良い』耳を打つ、囁きの気配に振り返れど、
黒衣の魔女はもうどこにもいない]
[やがて遠く喧噪の声がする。
森を抜けた先に或る城には吸血鬼が棲むと謂う。
其処に城があったか、其れがいたか、真実は不明。
だが、まともな人間は誰もその場所に寄り着こうとはせず。
だから、其処へ逃れようと走り出した。
生き場所を願ってか、或は逝き場所を願って**]
ー或る日ー
[握り返した手は吸血鬼である私のそれよりも冷たかった。
私の記憶はあの日からでいいのだと思う。
それまでは孤独な死という日々を生きていた。
古城を訪れる影一つ。
この吸血鬼の城をわざわざ訪れるとは誰だろう。
迷い込んだ妖精か悪魔か。
吸血鬼である自分以外に幻想を体現する存在は
目にしたことはなかったけれど。
ともかく私のことを恐れもしなければ迫害もしない
彼が人間であるとはその時は思わなかった。
だから彼に手を差し出した。*]
[最初に自分が手を差し出したあの子。
あの子と出会ってから、それまでの孤独とは違う時間が流れるようになった。
あの子が人間だと知り、いつかその日々が終わりを告げてしまうことを知った時、私はそれに抗う術を考えた。
その結論が吸血鬼である自分の血を少しずつ取り込ませて彼を不老にすること。
ついでに彼の記憶を失くさせて吸血鬼だと思い込ませれば、
彼はきっと自分と永遠に一緒にいてくれるだろうと思った。
だからそうした。]
[それから、自分とあの子が安心して暮らせる場所を
探して世界中のありとあらゆる場所に行った。
途中訪れた島国は閉鎖的な所でとてもじゃないが
吸血鬼の隠れ住むような余地はなかったが、我が子が増えた。
いつしか身を落ち着ける場所を見つけ、
「クラン・ドゥ・サン」と名付け、
仕事を任せられる執事も見繕い、
平穏で安寧な日々を過ごし……………]
私を独りにしないでくれ……。
[見上げた姿は、想像していたものよりずっと優しいものだった。
差し出された手は、冷ややかなものではなかった。
ただただ、寂しげに見えて、その手を握り返した時。
孤独な紅い眸に、仄かに揺れる灯の見えた気がした]
『いい子だ』
[何百回、それとも何千回となく繰り返し耳にした、
何時もの声。
永い間、その声の届く場所が己の居場所だった]
[かつて、その本を読んだ時、似たような話もあるものだと思った。
だから、きっとありふれた事だったのだろう、下働きの者を酷く扱う事も。
物語と異なる点は、幾つもある。
例えば子供は奉公にでたのではなく、物心ついた時から既にその地位にあったこと。
追い出されたのではなく、酷く傷を負った夜、支え合うように“友人”と二人、月夜に駆け出したこと。
月夜の荒野で地を潤したのは、その一人の血液だということ。
抜け出した一人は、今も尚生き延びているということ。
酷く飢え、渇いた身体にその血液はよく沁みた。
美味だと、その時確かに思ったのだ。]
その後に、主と会って、吸血鬼という存在を知った。
……それで、その衝動が抑えられないならと思って、薬を飲んで、きて。
[けれど、自分が本当に怖かったのは、血を口にすることではなく、生き延びる為に友すらも利用する自分の浅ましさなのではないか。
掌で、顔を覆う。
不思議なもので、言葉にするとそれらは連鎖的に途切れずに連なっていく。
そこで一度、言葉を切る。]
[男は隣に座り、スケッチブックを開く。
彼の口から落とされていくのは、『怖い夢』の話だろうか。
まるで民話にでもありそうな物語。
赤い血を啜った、働き者の少年の行く末。
“友人”を糧にした、吸血鬼の話。
話を聞いている間、男は声を出さなかった。
真っ白なスケッチブックの中にペンを走らせていく。
ただ、時折隣に視線を向けては
彼がどんな顔をしているのかを、見つめて。]
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