52 薔薇恋獄
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[夕輝が哲人と居ると聞けば、広間前での様子を思い起こして僅か、ほころんだ気持ちにもなったけれど。
湧き上がった熱さに、あっという間に掻き消え]
それで、お前はどうすんだよ。
士朗せんせを選ぶってか?!
[普段だったら、何も気づかずに居た頃なら、何時の間にそんな仲良くなったんだ、なんて茶化していただろう言葉。
けれど今は、それすら裏切りのように感じて。
士朗へ感じた八つ当たりの憤りと、蛍紫に対するもどかしさの混じった憤りを、叫んだ]
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[いや、そんな事はどうでも良い。 肝要なのは、あの時真しやかに流れていた噂――実の母親と関係を持っていることや、父の自殺もそれが因を発している等、まるで百済さない週刊誌のようなものだった――を、目の前の彼が知っているかと言う事だ]
……土橋。 お前、どこまで知っている?
[手で顔を覆い、気さくな先輩の仮面を外す。 指の間から覗く眸は、射抜くように相手を見据えた]
(503) 2011/05/19(Thu) 11時半頃
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何故、そこで鳴瀬先生がでてくるんだ?
[きょとんとした表情をしていただろう。
何を言っていると……。
少し息を吐いて、押し倒された格好のまま、手を伸ばす。
怒るとは思っていたけれど、ここまでとは思わなかったので、これ以上は言わない方がいいと、口を紡いで。宥めるように頭に伸ばす手。
触れたなら、それに何かを思い出す。]
……そうなったら、俺はお前を選ぶよ。
[けれど、何かを掴むことはなく、その代わり零れる飲みこんだ筈の言葉。はっと、それに気がついて、誤魔化すように]
お前が蘭香を。俺がお前を……そうしたら3人だろ。
[苦笑を浮かべた。]
[それだけ状況が悪いというのは、蛍紫自身が話したこと。
だから、たとえば、なんて仮定で済ませられるとは、感じられず]
……何で?
[きょとんとした表情に、問い返す声は、きっと眼差しに反して冷やか。
そんなつもりも無かったけれど、そうなってしまった。
だから、手が髪に触れたときも。
思わず、つよく振り払ってしまった手のちからだって、そんなつもりじゃなくて]
……っ、ごめ 、
[蛍紫より、自分のほうが驚いた。
まるく見開かれた瞳は、いま庭園で雫にうたれている薔薇の葉と、似た潤みを湛え]
…………それでも、オレは、蘭香だけを選ばない。
[苦笑に、きっぱりと答えた表情は。
おなじ場所で、意識を失う前、ごめんと告げた、泣き笑いに似たそれと同じだった]
[髪を撫でれば、首にかかる圧力に、思わずぐっと喉を鳴らすけれど。抵抗せぬまま、濡れた葉の色を見て、苦笑を深める。]
何もかも……と思っていると
そのうち抱えきれなくなって、全部取り落とすぞ?
[つっと眼を細めた段階で、眼鏡が飛んでいることに気がついた。
泣き笑いのような表情から逃げるように、指先が眼鏡を探った。]
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左右の……? いや、同中ならお前が入学した時にはもう……。
[孤立していたから、とは口に出せず。 ゆるり首を振った]
(513) 2011/05/19(Thu) 13時頃
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そうなったらなったで、……蘭香とお前には、迷惑かかんねーようにするさ。
[逸らされる視線には、気づいたから。
ちいさく苦く笑って、身を起こした]
俺は、別にお前に迷惑かけられても良いのだけどな。
今更だろう……。
[冗談を言えというから、冗談を言ってみたという声音で、重くならぬように言う。]
俺が言っているのは、そういうことではないよ。
お前が心配なだけだ。
[己の放った言葉に、またデジャビュを覚えながら、身を起こす際に揺れる相手の髪を見つけた。]
|
[成人の言葉を聞きながら、顔を覆っていた手を下ろし]
……寂しそうに見えるか?
[下ろした手を広げるように動かし、問いに問いを返す。 その口元は皮肉気に歪んだそれ]
(521) 2011/05/19(Thu) 13時半頃
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もう、十分掛けてるじゃんか。
[これ以上どうしろと、と肩をすくめて笑う。
今更といえば、今更でもあり]
オレだって、お前が心配だよ。
[甘えている自覚はある。
けれど甘えられた覚えは無い。
迷惑かけようとしないのはどちらだと、思う]
そうか……。
[珀の言葉に、ふっと唇の端を持ち上げた。
その言葉だけで十分だという思いと。
そうでない想いが混ざって。
その話題に関しては、それ以上言葉を紡げない。
まるで無意識に、百瀬の質問から逃げたように。]
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[成人の返事はどうだっただろうか。 ただ、気まずさに踵を返し、背中を向ける。
ばつが悪そうにちらりと肩越しに見た後]
……邪魔したな。
[ノブを回し、音楽室の外へ。 廊下に出れば、一度だけ深く息を吐いて。 昏い眸で自室へと戻るだろう**]
(538) 2011/05/19(Thu) 14時半頃
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そうか、世界は3人だけで閉じている訳ではないものな。
[ぼそっと呟いたのは、百瀬が去った後だろうか。]
決めつけられれば、怒る、か。
[判っていたけれど、実際の所、判っていなかった事実を百瀬につきつけられた形。
世界は3人だけでないということだけでなく、幼馴染達もそれぞれ恋愛をするだろうということも、実際に同性同士に芽生える恋愛感情があるということも。
……と知らされて、ん?と何か引っかかったように、眉間に皺を寄せる。自身については、まだ、判っていないという風。]
お前まで何言ってんだ。
[調音の言動だけでも分からないのに。
妙なことを言い出す幼馴染を、じとり]
うん、怒るな。……分かったなら良い。
[脈絡は分からなかったが、多分自分が怒った理由を納得してくれたのかと思って。
うんうん頷いている。
根本的な解決にはならないけれど、それだけで少し嬉しかった]
[じとりと睨む珀に向ける眼差しは……
こいつ判ってないのか?という疑惑の眼差し。]
……ああ。
[なんだか、疲れてしまって、頷く相手に合わせた。]
悪かった。
[ぼそっと接吻けてしまったことを含めて、謝罪した。]
何だよ?
[疑惑の眼差しに、怪訝げな碧いろを向け]
別に。
[気にすんな、というように笑ってみせたけれど。
やっぱり少し、寂しいような苦しいようなノイズが、混じってしまった]
[結局、疑惑の内容を告げるも、自信のない分野故にあれが精一杯。
後は自分で考えてくれと、さじなげて、けれど去り際に頭を撫でようとしながら]
……1人で無茶はするなよ?
[囁くのは、日向に関して。
暗に何かあったら呼ばないと怒ると告げて、よろよろ去って行く*]
こっちの台詞。
[にへらと笑って、むしろ心配な背を見送った*]
[花を輝かせる、想いの強さ。
ひとつひとつ、余す花無く感じられるすべてに。
誰かの遺した、想いの欠片がきらきらと眩く胸を刺す。
只中に居ると、今感じている痛みが、花々から感じるものか、雨によるものか、分からなくなる。
このまま、薔薇のいたみに埋もれて、千々に散っていきそうな感覚]
っ、
[ぶん、と頭を振った。
いけない。
今は、引き摺られかけたら声を掛けてくれる相棒は居ないのだ。
しっかりしなくては。
その相棒は、自室で蘭香にもふもふされて気分の良いとこを。
闖入してきた調音に、警戒真っ盛りなのだが、知る由は無い]
……なにか、
[ともかく、何か。
引き摺られないように、生きていることを実感できること、考えなくては。
いきて、そう雨の中呟くくちびるに、気づけば指先は引き寄せられて]
っ、
[ひた、と触れれば、はっと我に返る。
何してるのだか、こんな所で。
雨は酷いが、誰が見ているとも限らない。
意識を戻すには過ぎるほど強烈な思い出に。
慌てて指を引けば、一輪の棘に引っ掛かった]
[克希の失踪と、日向が無関係だとは思わない。
けれど、暁とやらが関係しているとして、彼女が悪意を持って彼をかどわかしたとも、思えない。
理由が断定できないうちは、何かを幽霊の悪意のせいじゃないと考えるのは、癖のようなものだけど。
怪談だけが彼女の全てでは無いだろうと。
すこしでも、話を聴いて何か、してあげられることがあるなら、してあげたいと。
今でもまだ、思っているから。
彼女の足取りを辿る何かが、それか克希の行方を探る何かが、ありはしないかと、雨の中、薔薇の砂漠に立ち尽くした]
―2階・耀と珀の部屋―
[鍵をかけてため息一つ。そこに声をかけられ、飛び上がりそうになった。羽根音に目が開き、腰を抜かしてへたりこんだ]
ぅ あ
き、こんにち…わ
―― 自室 ――
……?
[ゆるり、首を傾げて。
へたりこんでしまった後輩に近付き、手を差し伸べる]
大丈夫?
なんだか、逃げてきたみたいだったけど。
どうか、したの?
[焦って鍵までかけるほど。なにがあったのか、と]
[胸にかき抱いていた服は床に散り、手に残ったのは棒付きの飴だけ]
………な、んでも……
[言葉が続かず、強く唇を拭った]
本当に大丈夫……?
何かあったの?
体調、悪いなら。
しばらく休んでいったらいいよ。
[何があって、その胸中がどうかなんて全く知らないから。
本当にただ心配そうに]
[差し出される手に自分の手を重ねた。立ち上がれそうにはなかったから]
…お、れ
ばかな、こと
あ
い
[言葉がなかなか、でてこなかった]
キスを、あ、………
[ぽつと泪が溢れた]
ばかな、こと?
[上手く紡がれない言葉をなんとか拾おうとして。
手を取ったまま、自分もしゃがみこむ]
……きす?
[そうして聞こえた言葉に、目を丸くして]
先輩が…してて、なんか
いらっときて…俺…僕も、し、た
ば、かだよ、なん、で…
[ぎゅうと拳を握る]
気にするなって、それ、なかったって、なしに、
あ、
ぃや…もぅ、わかん…
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