308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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『やっと電波が入るところにこれたんだが ヨスガに電話する暇は、もう無さそうだ。』
[ (え、…………) 言葉を、失った。 兄貴に電話してから、僕に電話したんじゃないのか。 僕は大学に入ってから学部に馴染めなくて、 苛めにもあった挙句不登校の引きこもりになって。
たまに家で顔を合わせても父親は僕には文句ばかり。 僕も食卓で父親と会っても一言も会話せずに 二階に上がることが殆どだったっていうのに。]
(38) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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『……最後に、お前に言わせてくれ。』
[最後って何だよ。 僕は父さんに、まだ聞きたいことが、]
『俺も、母さんも。 お前のことを本当に大事に想ってた。 ヨスガだって、お前が居ないところで あいつは自慢の弟だって、いつも言ってた。 だから―――お前は、胸を張って、生きるんだ。』
待、っ…………!!!
[プツッ……ツー……ツー……ツー……]
(39) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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――――パリーン!ガッシャン!!
(40) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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[けたたましい音があたりに響いた。
3階の事務所の窓を体当たりで蹴破り そのまま路上へと転がり落ちる。
衝撃。胃が浮く嫌な感触。落下。
素人が香港映画のスターのように 受け身を取れるはずがない。 男は無様に肩を強打し、血反吐を吐いた]
(41) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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ち、くしょう。 死んで……たまるか、よぉ。
[落下の衝撃で、眼鏡のレンズが割れた。 よく前が見えない。
ぼやけた視界の中で、 コンクリートジャングルを歩き出す。
強打した全身が痛かった。 刺さった硝子の破片が痛かった。 痛くて、痛くて、ぐずぐずに涙が溢れた]
(42) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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なんで、こんな目に。 ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。
[情けなかった。 あんなに必死になって金を稼いでいたというのに。 結局のところ、金なんて何の意味も為さない]
(43) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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(オレは今まで、何をしてきたんだろう)
(44) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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[嗚咽した。 泣きながら走って、無様に転んで、立ち上がって。 無人のコンビニにやっとのことで辿り着いた。
眼鏡のレンズには蜘蛛の巣状の罅が入り、 無精髭は伸び放題。スーツはボロボロだ。
消費期限なんてとっくに過ぎた、 腐りかけのパンを齧る。 何日ぶりの、ちゃんとした食事だろう]
(45) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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……おいしい。
[乞食のように、貪る。 子供のように泣きじゃくりながら、 ただパンを齧り続けた]*
(46) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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[ ] [ ]
[電話が切れてから、どれだけ経ったのか。 僕は呆然と、画面がついたままのスマホを見ていた。
打開策を調べる気力ももう起きなくなっていて ここ数日、SNSを見る頻度は落ちていたけれど。 それでも、数日間充電をしていないスマホの電池は 後数%だと表示されている。
かりかりと、ドアを齧るような音を背にしながら いつもスマホを持ったらするように、 僕は無意識に、SNSを開く。]
(47) 2020/10/24(Sat) 22時頃
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[ぼんやりとSNSを眺めながら、
人探しの投稿をシェアした後に。
見えたのは、ある言葉だった。
ふざけたような本文だったけれど。
ついているタグに、はっとする。
『ゾンビに負けるな』
当たり前のことだった。
諦めた人ばかりじゃあ、ないんだ。
今もゾンビと戦っている人が居るのを見て、
この世の終わりのような気分だったところに、
少しだけだけど、勇気を貰った気がしたんだ。]
[そして僕も、
モンスターがかっこよく必殺技を放って、
勝利を収める一場面のイラストを何個か投稿する。]
ミドリ @fate824
諦めないで。皆、負けないでください。
生きて。また全部終わったら、ここで会いましょう。
#ゾンビに負けるな
ミドリ @fate824
頑張ってる人達を見て、勇気を貰いました。
僕も、……がんばってみます。
[そう投稿した瞬間。
ぽつりと、涙がスマホに落ちて……画面が、消えた。]
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[本当は、兄貴に噛まれてしまうのもいいと思ってた。 兄貴を殺す勇気なんてないし、 一人で生きていく自信もないから。 約束までした頼みを聞けないのは悪いけれど、 僕は、臆病で何もできないやつなんだと、思ってた。
でも。これが最後かもしれないっていうなら 託された想いに応えるのもいいかもしれない。 だって、今頑張らなかったら、もう。 僕は本当に、兄貴のただのお荷物になってしまう。
僕は生きていていいのかと そう思っていたのは間違いだった。 兄貴と、両親の言葉を、思い出す。]
(48) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[生きていていいか、じゃない。 がむしゃらに、生きないといけないんだ。
僕の大好きな兄貴の分まで。 父さんと、母さんの分まで。]*
(49) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[健司たちを迎えに行くべきかとも思ったが、 今どこにいるかわからず、行き違いになる 可能性がある以上、家で待っていることしか できなかった。]
くそ……、
[毎朝毎朝、仏壇の前に座って、 美奈子にあの子たちを守ってくれと祈った。
いや、あの子たちだけでなく、 俺の家族の健康を願ってくれた 心優しい少女やその家族も。 SNSを始めてほんの数日だが、 何かの縁で繋がって、知り合った人々が、 みんな無事で過ごしているといいと。]
(50) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[いくら情報が遅いとはいっても 世界がもう日常からかけ離れた場所に なってしまっていることは、 町中の人が理解していた。
八重ばあさんの家や沼太郎の家、 他にも応援にいった人々の家の方面には 行かないようにと通達が回ってきた。 親戚の子どものうちの一人が、既に感染していたのだと。
ああ、やっぱり。
その知らせを聞いた時に、 俺は間違っちゃいなかったんだと思った。 思わずにはいられなかった。 見殺しにしたのと同じようなものだと、 わかってはいても。]
(51) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[町長からの連絡だったが、 田舎だから、家と家との間には 数百mの距離がある。 そっち方面にさえ行かなければ、 いきなり襲われることはないはずだ、との考えらしい。
戸締りをしっかりして、家の外には でないようにと、ニュースと同じような 注意もされたけれど、 それでも毎日畑にいき、圃場管理はしていた。 毎日山ほど収穫しては出荷していた野菜たちが、 収穫しない分は少しずつ痛んでいったが、仕方ない。
7日目には、ごっそりと、 一部の区画の野菜がなくなっていた。]
(52) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[猪よけの柵はしているが、 触れてもわずかにビリっとくるだけのものだ。 畑の敷地に鍵なんてかけるわけもないから 人の出入りは止められるもんじゃない。]
……食うもんがなかったんだろうな。
[実際、SNSの向こう側でも、 そんな言葉があふれている。 見も知らぬ人たちだが、 この野菜たちを届けられたらどんなにいいか。
健司たちが来ても困らないだけの食料は すでに収穫して、 保存がきくように加工もし始めている。
このまま畑で腐っていくよりはずっといいかと、 いくらか収穫して、青いゲージにいれ 畑の前の道路の隅に置いておいた。]
(53) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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『好きなだけお取りください』
[そんな看板もそえた。]
(54) 2020/10/24(Sat) 22時半頃
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[コンビニのカウンターの奥から 商品の煙草を数箱拝借して、懐の中に入れた。
髪を掻き上げ、大きく溜息を吐く。 誰もいないコンビニの床に、ずるずると座り込む。 煙草に火を点し、男はのんびりと紫煙をくゆらせた]
……どーすっかな。
[あてもなく、コンビニの白い天井を見つめた]
(55) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[ それから、同じことの繰り返しだった。]
(56) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[このコンビニの出入口はひとつ。 逃げ場所も隠れ場所もない。
長居してはいけない、と 理性は警鐘を鳴らすのだが、 どうにも一向に足が動かない。
煙草片手にスマホを開き、SNSの投稿を追った。
ふ、と口元を微かに緩ませ返信を打つ。 スマホからの手動投稿だ。 スパム文はその発言から消えていた]
(57) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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■マル得情報■
ワットさん。
あなたは、純粋で良い人ですね。
わたしみたいな詐欺師に騙されずに、
生き残ってください。
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[投稿ボタンを押した瞬間、 スマホに影が差した。
見上げれば、口から涎を垂らし 瞳から理性を失くした女が こちらを見つめていた]
う、うわああああああああああああ!!!
[咄嗟にパンの入った戸棚を手で倒し、 女を下敷きにしようとする。 足がもつれ、うまく立ち上がれない]
(58) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[――――食料を。
床に転がった菓子パンを ひとつふたつ拾い上げてから ゾンビから逃れようと、出口へと駆けだす。
あまりにも必死すぎて、 男は周囲への警戒を怠っていた。 それが仇になった。
死角から、今度は老婆のゾンビが飛び出して 男へと飛び掛かったのだった]**
(59) 2020/10/24(Sat) 23時頃
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[ ビルの非常階段で、眠りに落ちかけては目覚めた。 せめてもの護身用にと抱えたモップの柄。 何度目だろう、がくりと体が揺れて、頭を振る。 ビルの隙間の空は白んできていた。
朝日の差す空をぼんやり眺めていると、 "何か"が非常階段の扉を突然叩いた。]
ひ───
[ ここにもこれ以上いられない。]
(60) 2020/10/24(Sat) 23時半頃
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[ モップを持ったまま、階段を駆け下りる。 路地を出ようとするとその先には"何か"の姿が ちらりと見えた。 こちらはダメだ。 踵を返し逆に走り、通りへまろび出る。 できるだけ安全なところへ。
でもそんな所どこにあるんだろう?]
(61) 2020/10/24(Sat) 23時半頃
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