56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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― 夜:赤騎士団執務室 ―
…俺、偵察に行ってくる。
[普段は任務以外の時には団長の傍を離れずいるが、今日ばかりはイアンとベネットが団長と副団長に任命されたばかりとあって。
ここに居ると煩わしそうだと、そっと部屋を抜け出した。]
[……ムパムピスに休息命令の知らせをもたらしたのは、
他でもないヤニクの心の声だった]
休眠命令……
[繰り返し述べた声は、茫然として響いたかも知れない]
わ、分かりました。知らせて下さってありがとうございます。
……いよいよなんですね。
[覚悟していたつもりだが、臆病な自分にはやはり怖いもの。
俄か緊張に喉を鳴らして、頷いた]
――あっ、オスカーさん。
[普段任務以外の時は、父親に……今はイアンの傍に着くオスカーだが、今晩ばかりはさすがに色々と煩わしそうだからか。
偵察にと部屋を抜け出すオスカーを直前に呼び止めて]
…気を付けて。
[特段理由も無かったが、その言葉だけ投げかけて]
[茫然としたような声の響きに、小さく息を吐く。
安心させるように、己自身に言い聞かせるように、呟いた。]
お前の役割は、仲間の不安を少しでも和らげることなんだろ。
不安がってたらダメだろうが。
お前の不安は俺たちが、射落としてやる。
その代わり、祈っていてくれ。俺たちの勝利を、さ。
[それは領主公女の願いとは逆のことだとは知らない。
ただ、純粋に勝利を望む。
それが、彼女たちを守ることだと信じているが為に。]
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[慌てる少年の言動が可愛くてくすりと笑う。>>187]
普段中々言えないからな。 私達騎士が存分に戦えるのもペラジーやフィリップ達がいるからこそなんだ。 これでも心から感謝しているんだぞ?
[感謝の言葉は青年だけではなく、友人にも向けられた言葉。 当たり前のようになってしまった個々の役割。 それでも女は忘れてはいなかった。自分達は様々な人が支えてくれるからこそ存分に戦えると言うことを。]
(198) 2011/06/30(Thu) 23時半頃
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[諭すような声に、はっとして]
そ、そうですよね。私がふらふらしていたらいけません。
……ありがとうございます。
[揺るぎない声に接することは気を落ち着かせた。
強張った肩を回して緊張を解く]
ええ、分かっていますよ。
ヤニクさんをはじめ、皆さんのご武運をお祈りします。
[言って、戦争を嘆いていた公女殿下の事を思い出した。
とうとう今にも開戦という状況になり、
彼女の心痛はいかばかりだろうかと]
[オスカーが席を立つのを見れば、何事かと目を向けるが
偵察に行くのだと分かれば]
…ちゃんと帰って来いよ。
[気をつけて、なんて言ってやらなかった。
彼女は自分の傍につくのが本来の役目であるはずだから、
それ以外の場所で何かあっては困る、とばかりに。]
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私は強くなどない。強い者はまだまだ沢山いるから… 私なんて大勢いる団員の一人でしかない。
[正直に答える自分の実力。女としては強いかもしれないが男の中に混じっては胸を張って強いと言える程の実力はなかった。]
苦笑いをするな。覚悟はしているんだから。
[友人は何かを察した表情で答えた。粗方なんでも話して来た彼女に取っては女の考えはお見通しなのだろう。]
(205) 2011/06/30(Thu) 23時半頃
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ペラジーの薬は染みる。ものすごく染みる。 おまけに飲み薬も出したくなるくらい苦い。 だが良薬は口に苦し…だ。
[からかうように言葉を並べた。だが最後は片眼を瞑り、人差し指立を自身の口に当て笑ってみせた。それは決して馬鹿にしているわけではなく、彼女の薬を褒めているから。]
(207) 2011/06/30(Thu) 23時半頃
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……見方解る?
[ヴェスパタインが部屋を辞した直後。
唸りながら書類と戦っているイアンを見兼ねて、彼の元まで歩み寄って書類を覗き込む]
………つまり砦の配備には常に両騎士団から二つの隊が付いてる。
後、この隊も予備兵力として砦に駐留。
実質動かせるのは残りの隊、て意味だね。
[しかし図も文字の羅列も多少読み辛く記されて居て。
他にも解らない所があれば、彼なりに丁寧に説明するか]
俺は大丈夫だ。
それよりもお前たちの方が頑張れだ。
[山積みになった書類をオスカーもまた、目にしていたから。]
…頑張れベネット。
[果たして書類相手にイアンが戦力になるのかどうか、怪しいもんだと思いきり思っていた。]
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なんだ…オスカーがここに来るなんて随分と珍しいな。
[正直な感想を述べるといつもの敬礼をして見せた。イアンとベネットの事を聞くと一瞬動きが止まり瞳を閉じると僅かに鼻で笑った]
あぁ…やはりそうなったか。
[想像していた通りだった。団長はイアン。覚悟をしていただけに衝撃は少ない。正式に決定をされれば自身は上官の命令に従うのみだった。]
(212) 2011/07/01(Fri) 00時頃
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[ベネットから声をかけられれば
眉間に皺をこれでもかと寄せた顔でそちらを向く。
説明を受ければ、あーあーと相槌なのか奇声なのか
分からないような声を上げて]
分かった、分かった、つまり
こっちはどーんと構えてるから、
こいつらがざーーっと行けば問題ないって事だな。
[人差し指でどんどん、と紙をつつきながら
ベネットの言葉を一つずつ理解していく。]
くっそ、簡潔に一枚にまとめてくれよな…
[今彼にとって倒すべきは、
敵国じゃなく、この山積みの書類なのだった。]
[オスカーが出ていく際に、何故自分への声援は無かったのか
疑問に思っていたが、彼がその意味を理解することはなかっただろう。
それからしばらくすれば、唸り声が執務室に響き渡っていた。]
…――― 俺にも後でその書類見せろ。
[風にのって届いてくる主の声を聞き、暫く沈黙…、いや、唖然として。
戦場においても、オスカーはイアンの傍につき従い伝令や偵察、場合によっては戦闘もこなさなくてはならない。
彼だけに任せておくのはあまりにも不安だった。]
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[友人と少年の言葉はありがたかった>>206>>209]
ありがとう。そういって貰えると嬉しいよ。 これから大変になるが…頑張ろうな。
[口元は緩んでいるが表情は真剣そのものだった。]
(218) 2011/07/01(Fri) 00時頃
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あ…いや…なんだ… ありがとう。
[友人の言葉は真っ直ぐに正直で女は頬を赤らめて照れた。普段言われることがないからどうして良いかわからなかった。>>215] ははっ。確かにペラジーの言うとおりだ。 でもな、我々も怪我をしたくてしているわけじゃないからそこは勘弁してくれな。
[尤もな意見に声を出して笑った。 だが同時に思う。この楽しい空間がいつまでも続けば良いと…]
(221) 2011/07/01(Fri) 00時頃
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[―― トントン、と顔を指を書類に突き入れる様に次第に僕も説明しだす]
……イアン! ここ三千六百って書いてる!
あぁもうまだ半分以上あるんだよ!?
[…何故僕だけに声援を送られたのか
イアンの唸り声を音楽に、その意味は嫌と言う程理解した。
―この戦が終わった後、どうなるんだろう、と]
ああ、お前が祈るのなら神様もきっと勝利を与えてくれるだろうな。
期待してる。
[彼が何を考えているのかまでは伝わってこないが、それでも空気を明るくする為にそう言って笑う。]
俺たちが前線に行っている間、お姫様のことも気にかけてくれ。
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[オスカーの話もわかる。>>216 この状況下では今、決めなければならないことは頭では理解していたが、心の何処かでやはり認めたくはなかった。]
まぁな。そんなもたもたしてられないのもわかるが…
[伝書鳩の話をされれば驚きの表情へと変わる。]
鳩…?あの噂は本当だったのか。 今から行くのか?
(224) 2011/07/01(Fri) 00時半頃
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[間違いを指摘されると、その顔を一層歪ませて]
…げっ。
無理無理無理、これ朝までとか死ぬ。
何だ、参謀室長殿は俺を決戦の前に殺す気なのか?
[へらへらと皮肉を言ってみるが、
そんなもので現実は変わらない。
しばらくは睨みあいをしていたが、痺れを切らせば]
…ちっと外、出てくる。
ベネット副団長、少しの間よろしくな!
[わざとらしく副団長なんて呼んでみたりして。
半ばベネットに押しつけるように、書類を渡すと
きっと彼の制止の声も聞かず、執務室を飛び出した。]
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[少年の声は明るく、無意識に心が軽くなった。>>226]
あぁ。皆、生きて帰ろう。 パーティーも良いな。その時は私が料理に腕を振るおう。 結構得意なんだ。
[誰にも言ったことはない料理の特技。振る舞える時が来れば良いなと心から願った。]
(231) 2011/07/01(Fri) 00時半頃
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…――― 居る、な。
[スゥ、と血の様な緋の眼を細めて。
自然と、口角が上がったのは、其の身体に流れる狼の血の所為か。]
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[オスカーが馬を連れて出て行けば女はしばらく考えて愛馬の手綱を持った]
すまない。私も行ってくる。
[二人に告げるとオスカーを追いかけるように足早に厩舎を後にした。]
(236) 2011/07/01(Fri) 00時半頃
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