17 吸血鬼の城
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[霧の中、此方に歩み寄る魔性の気配に押され、思わず後ずさる。 いつでも駆け出せるよう、足に力を溜め目を凝らせば 薄らと見えたのは白薔薇の影]
セシル、さん……?
[その瞳に輝くのは青。 けれど、かつての高い空のような見守るような優しさは失われて]
(172) 2010/06/25(Fri) 22時頃
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……貴方、本物のセシルさん、なの?
[弄るように距離を詰めてくる魔性の容は、 少女の知るセシルと変わらなかったけれど]
ううん。……違う。 本当に、魔物になっちゃったんだね。
[自分をネズミと呼び、蔑むような眼差しには ヘクターの埋葬を知ったときに浮かんだ和らぎなどはなく]
(……逃げなくちゃ)
[紋様のざわめきなど既に聞くまでもない。 目の前に立つの白薔薇は自分を殺しに来たのだと理解すれば、 青い瞳に心を射られ、恐怖に足が竦んだ]
(184) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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[遠く最上階にありながら、
届かぬはずの声を聞き、薄く囁きを零す]
優しくして欲しいのか?
――…此処に居れば、
本能に抗わずに生きてさえ居れば
私はお前を傍に置き、愛でよう。
立派な吸血鬼に育ててやろうぞ。
この闇の城で咲き誇るといい。
血縁を喰らった吸血鬼の、傍らで。
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[セシル――白薔薇の視線が不意に外される。 魔物の視線が切れたことで僅かに圧迫感が緩み、竦んだ足に力が戻るが、今度は背中側から黒薔薇の声が聞こえて]
(逃げなきゃ……。 逃げないと、殺される。でも、どうやって?)
[躊躇う内に痩せぎすな首筋に手が伸ばされ]
いやっ!!
[人狼の牙を握り締め、白い手袋目掛けて振り下ろした]
(191) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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……やっぱり筒抜けなんですか。
[むっとした声で囁き返す]
……。
[もう人間に戻れないことは分かっている。それでも、自分はどうするべきなのか――未だに答えを出せず]
お前は私と血を分かつもの。
何処で何をしていようと……手に取るようにわかるぞ?
[其れはドナルドが扉を開くタイミングにあわせて]
――…さあ。
何も悩むことなど、無いだろう
お前は最早人にあらず。
本能のままに、貪り喰らうが良い。
ひとの情など、捨ててしまえ。
[其の後で、あの薔薇のように苦しいと泣き叫び縋り付いて来るならば、其の記憶まで喰らってやっても良い。
思えども未だ口にはせず、揺れる心情を見つめている]
どうした……
お前まで私の命に背くのでは、あるまいな?
其れを我が眷族に。
お前が喰らわぬなら、私が――…
[ベネットへ
追い討ちをかける聲]
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[白薔薇の手から流れる血が、少女の顔に降りかかり、 視界の端を赤く染めた]
あ、あぁ……。っ……。
[恐怖にかたかたと身体を震わせながら、よろよろと二歩三歩後ずさり、転がるように闇雲に走り出した]
(203) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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ドナルドを、眷族に……?
[声に怯えと、恐怖の入り混じる。友人を、自分の手で吸血鬼にしろというのか。怒りがこみ上げてくる]
……嫌だ。誰が貴方なんかの言うことを聞くもんか。
お前がせぬのなら、私が直接手を下すまで。
彼の行く末はもう決まっている。
ならば、せめて
お前の手で生かせて遣るが良いだろう。
そのために、お前に血を分け与えたのだからな?
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[背後に黒薔薇の哂い声が高く響いた。 白薔薇が追いかけて来るのか否か、振り返り確かめることなど出来ない]
……やだ、こわい。……こわいよ。
[恐怖から逃れようと霧の中を駆け出した。 その道はかつて、魔物狩人がまだ幼かった頃、 城を出ようと懸命に走り抜けた道であることを少女は知らない]
(208) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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