40 おおかみさんが通る
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― 警察署前 ―
[通りの噂で、貴和子が警察に連れて行かれたと聞き、警察署前に来てみると、どうやらその噂は本当のようだった。 先日助けてくれた異国の血混じる軍人は襲われ、怪我をしたようだった。]
(貴和子さん……淋しがってるだろうな…
[貴和子は人狼には思えなかった。濡れ衣を着せられて牢に入れられているであろう貴和子を思うと、心が痛んだ。]
(いっそのこと、私が人狼だと名乗り出たらいいのかな…。
[ふと、そう思った。そうすれば、姿のはっきりとしない自分の主人を助けてあげられるかもしれない。 しかし、貴和子にどんな目でみられるのだろう…あの人には…? そう考えると、とても名乗り出られなかった。
逃げるように、彼女は警察署を後にした。 役立たずでごめんなさい、と主人に対して謝罪しながら。 どこへ行くでもなく、街中をさまよった。]
(22) 2011/01/05(Wed) 11時半頃
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親方 ダンは、メモを貼った。
2011/01/05(Wed) 18時頃
守備は如何でしたかしらん?
[夜明け頃、お大人が狩りをしていた頃かどうか。
毛玉のような狼が教会で寝そべっている。
人狼の姿よか獣のカタチの方が表面積が小さくてぬくぬく。
同族がやるというなら邪魔はしない。
くわぁ、とあくび一つ]
気分佳いものではあるまいよ。
[丁度狩りを終えた頃“狼の姿をした人”は一つ愚痴を毀した。
風に乗り、その声は同族へ届く。]
少しは人も懲りてくれようかな。
親方 ダンは、メモを貼った。
2011/01/05(Wed) 21時頃
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[ふらふらと歩いていると、気付けば駅前まできてしまっていた。 ここでも人々の噂は人狼のことばかり。 やはり彼女の見目は人目を引いて、視線を合わせないように俯きながら歩いた。]
ねぇねぇおねえちゃん。
[かわいい声に目線をあげれば、小綺麗な洋装を身につけ、手にフランス人形を抱えた女の子がひとり。]
(23) 2011/01/05(Wed) 21時頃
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[なぁに?
屈んで視線をあわせて問えば
おねえちゃん、異人さん?
と。
半分だけね
と答えると、女の子は、
でも、私のお人形さんみたい!
と目を輝かせて話した後に、
あのね、駅で違うおねえちゃんがずうっと寝てるの。
と、心配そうに女の子は駅を見る。つられて彼女もそちらを向いた。]
(24) 2011/01/05(Wed) 21時半頃
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― 七坂町駅 ―
[女の子の話を聞き駅に入ってみれば、椅子に横になっている女性の姿があった。 酷くぐったりし、肩で荒く息をしている。 額に手をあてて見れば熱発しているのがすぐにわかった。]
大丈夫ですか?
[肩をゆすって女性に声をかけるが、うっすらと目をあけ時折うわ言のように「ごめんなさい」と呟くくらいの反応しかなかった。]
(どうしよう…
[ここから病院はかなりの距離がある。教会までには長い坂があり、とても連れていけそうにない。 ふと、和彦が神社の近くで唐傘の店を出しているという話を思い出す。]
ごめんなさい、ちょっと辛いと思うんだけど…
[女性に一言そう声をかけると、彼女は女性を抱き起こし、肩で女性を担ぐようにして和彦のもとに向かった。]
(25) 2011/01/05(Wed) 21時半頃
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[女性は痩身であったが、やはり女の力一人で連れていくには荷が重くすぐに息があがる。 人々が奇異の目で彼女を見るが、誰も手伝おうと声をかけてくるものは無く。]
(……なんて冷たい人達なの…?
ちょっとは手伝いなさいよ、馬鹿っ!
[誰にも聞こえないように小さく呟きながら、彼女はゆっくりと歩みを進めた。]
(26) 2011/01/05(Wed) 21時半頃
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――七坂町駅――
……っ……っ
[翠の身体の熱は、これ以上上がりようがないと思える程に上昇していた。 冬の冷気は、その熱も喰らい尽くすかのように翠を覆う。 激しい呼吸に、口から漏れる吐息は白い。]
………っ
[起きなければと思うのに翠の身体は鉛のように動かない。 駅の雑踏がやたらに頭に響いて、耳を塞ぎたいのに自分の手すら動かすことが侭ならない状態だった。]
( 流石にもう、駄目、かな…… )
[自身の身体を他人事のように思いながら、翠は小さくわらった。]
(27) 2011/01/05(Wed) 22時半頃
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[ヨーランダが駅を訪れたのは、何時だったのか。
確かに意識を保っていた筈が、彼女から掛けられた言葉に翠は反応出来なかった。 無意識に口から漏れていたのは、謝罪の言葉で。
抱き起こそうとするヨーランダに、翠は意識の中では首を振るのだが、実際には彼女にされるが儘になっていた。
しかし、長身とはいえ折れてしまいそうな程に細いヨーランダが簡単に動けない翠を運べる訳はなく、少し歩いた所で直ぐに息があがっていた。]
……も、う、いいですか、ら……
[ヨーランダに掛ける翠の声は空気に溶けてしまうように幽かで、救助を手伝おうとしない周囲に憤りを見せていた彼女に聞こえたかどうか。]
(28) 2011/01/05(Wed) 22時半頃
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[肩越しに、弱々しく女性の声が聞こえて、彼女は歩みを止めて耳をすませた。 女性は「もういい」、と言っているようだった。]
放っておけるわけないでしょう!?
[女性に強い口調でそう言うと、再び歩みを進める。 ゆっくり、ゆっくり。時々ふらついて転びそうになりながらも、少しずつ前に進む。]
……あの角を曲がれば…大通りだから…っ もう…少し、頑張ってっ………
[肩越しに女性に話しかけながら、彼女はまた一歩足を出した。]
(29) 2011/01/05(Wed) 22時半頃
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…お気持ちだけ、で…十分で、す……
[はっと息を吐きながら、ヨーランダの強い口調に応える。 ふらつきながらも、前に進もうとするヨーランダの肩越しに見える景色はぐらぐら揺れていて、翠には今にも地面が崩壊しそうに感じられた。]
…ど、うか………お願、い……ま…す… 私を……助け、ようと…して、下さっているの、なら……
(30) 2011/01/05(Wed) 23時頃
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―三日 自宅・傘屋―
[店へと帰ったならば泣きそうな顔で弟子が出迎えてきた。 手には小粒金一つ、客がきたとの話を聞き一本見繕って欲しいとの言伝も聞いた。 この御時世に珍しい。 話に聞いたその男は弟子と歳も近い程か。 何やら朱い傘をよくよく見ていたと謂う。 ならば長さは、重さは、色はと幾つか合わせていたのは昨日の夜の話。 そしていつもの通り店をあけた朝、華族の娘と軍人の話を聞くのであった。
昨日の帰路考え念う事はあれど、矢張り店をあける事に変わりはなく。 しかし確実に芽生えた意志はある。]
(31) 2011/01/05(Wed) 23時頃
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[破れ傘をくるくるり。何やら楽しげに鼻歌歌いながらぶらぶらり。 何かこの雪に風情ある景色は見えないかとも思いつつ。
どうやら昨夜のことは噂になりつつあるようだ。 異人の軍人、事件に巻き込まれればそら目立つ。 殺しは流石にとどまったが、ざまぁみさらせとくつくつ笑い。 ケモノ如きに情けないとも嗤う笑う。 駅の向こう、何やらよたよた歩く人影? 何やら支え頼りつな姿も見えて]
…あんれま?天女様がご来駕されたのかしらん? それとも何か人助け?
(32) 2011/01/05(Wed) 23時頃
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ヤニクは、傘をくるり。二人へとのこのこ歩み寄り。
2011/01/05(Wed) 23時頃
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あらん?
[雪に溶けそうな娘が支えるのは如何にも調子悪そげな…どこかでみた顔]
あらまあらま。どうなすったののかしらん?お二人さん。 こんな街の中で遭難でもされましたかネ?
[もう一度、番傘くるり。つもった雪が、ぱらりと落ちる]
(33) 2011/01/05(Wed) 23時頃
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[さて肩とり合い進む女子が先か、風の知らせに傘求める客が先か。 其れは変わらず店の中、降る雪凌ぐ鮮やかな傘一本一本手を込めて。 作業の音は外にまで聞こえていようか、聞こえていまいか。]
(34) 2011/01/05(Wed) 23時頃
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ヨーランダは、子梨に声をかけられ、横目で彼を認めた。
2011/01/05(Wed) 23時頃
[ひょこり。髪に隠れた耳が揺れる。
音が聞こえるのはこないだの弟子のものじゃない]
…お大人、いらっしゃるのかしらん?
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……あ、貴方は………けほっ…
[頭上から振ってくる声に、翠は重い頭をなんとか上げる。 ぼんやり霞んで見えはするが、この強烈な個性は忘れてはいなかった。]
(35) 2011/01/05(Wed) 23時半頃
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親方 ダンは、メモを貼った。
2011/01/05(Wed) 23時半頃
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……この人が、駅で…、ひどい様子で横になっていたので… そこの傘屋さんまで…っ、お連れしようかと……
[横目でちら、と子梨を見たが、すぐに目線は真っ直ぐ前へと。 はぁ、はぁ、と肩で息をしながら話すが、足を止めることはせず、また一歩。]
(36) 2011/01/05(Wed) 23時半頃
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具合悪そうネ。なんで外なんてほっつきあるいてるンですかね、お針子さん?
[翠の前にぺたんとかがんで問い尋ね。 見た感じ、ヨーラは手を貸そうとしてるし、 翠はそれを拒んでるような]
物騒な世間なんだから、おうちにひっこんでりゃいいのに。 それとも何かしら?柴門さんだっけ?しょっぴかれたからって直訴にでも?
(37) 2011/01/05(Wed) 23時半頃
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ヤニクは、じ、と翠をみやりつつ、手は貸さない。貸すとしたらヨーラを支える為。
2011/01/05(Wed) 23時半頃
済まんな店に来ていたようで、手紙も読んだ。
あんな高価な…弟子が驚いて居った。
[応える声は同胞の、と謂うよりは傘屋のそれであったろう。]
気に入るものを拵えて、必ず一本渡してやろう。
好みは朱か、柄はなんぞと詳しく話も聞かねばならん。
此方は店に。
[心なしか、声は幽か喜ばしげに。]
高価なのかしらん?
[そういえば、獣の自分を見た人が、勝手に財布を落として逃げるから。それを集めて金とやらにかえただけ。
だから価値なぞ欠片も知らぬ]
そンでもそれで傘見つくろって頂けるなら嬉しい限り。
じゃ、今からお店に行きましょ。
なぁんか…変な娘が熱出してるらしいのよねン。
助ける気にはどうにもならんのですけどもサ。
親方 ダンは、メモを貼った。
2011/01/05(Wed) 23時半頃
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[翠の様子を見てわからぬ程、空気が読めぬ訳じゃない。 思い切り眉を顰めると、すっくと立ち上がって]
ま、お嬢さんは自分でこちらにいらっさるようだから、 俺は手を出すとこじゃないと思うンで。 ヨーラもこのお人はそっとしておいてあげた方がよろしいンとちゃいますかしら。
そぉんな強い御意志でいらっしゃるなら、 手前の手助けも邪魔なだけでしょう。
と、手前ちと用事がありましてナ。少し失礼。 お針子さん、貴女もあんまり人に夢見の悪い想いはさせなさんナよ
(38) 2011/01/05(Wed) 23時半頃
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[すれ違いざま、翠に…もしかしたらヨーラにも端々は聞こえるような声で呟いた]
あの軍人さんより、アナタを襲ってあげた方がよかったかもしれないネ。 運よく凍死しなけりゃ、お上ンとこで休めもしましたかもサ。
(39) 2011/01/06(Thu) 00時頃
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余りおいそれと他人に渡すものではないぞ?
[軽く驚いた表情をして見せたが、声に乗って届いたかどうか。]
熱?
これほど寒くある中で、熱も在るのに歩き回るとは。
叱る人は居らぬのかな。
[頭に浮かんだのは翠の事であったが、まさか同一人物とは念ってもいまい。
彼女は其れに、ごめんなさいと謂ったのだから。]
待っている。
[傘を造る手は止める事なく。]
さぁてネ。
人の好意を無駄にするようなンは知らんですヨ。
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[ヨーラは流石に心配だったけれど、 それ以上に]
…俺らもあぁもわが身を大事にしない人ばっか襲ってたら、 少しはありがたがってもらえるのかしらん?
難儀なものネ。こうも静かに生きたがってるのに捨て置いてくれない癖に、 死にそうな人はほっておくンですもんサ。 人ってぇのは…
くだらない。
[そうして下駄の音がなるのは番傘屋
(40) 2011/01/06(Thu) 00時頃
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………え?
[子梨とのすれ違い様に聞こえた、端々の言葉が彼女の頭を真っ白にした。
慌てて振り返るが、その口からは男にかける為の言葉は何も出てこず。
ただ、男の後ろ姿を目で追うことしかできなかった。]
(41) 2011/01/06(Thu) 00時頃
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親方 ダンは、メモを貼った。
2011/01/06(Thu) 00時頃
人の好意、厚意。
難しいものさ。
[翠に対するそれのようで居て、他に対するもののようで在る。
売れず時代に霞んだ傘達。
長い間紛れてそれでも倖せに暮らしたこの七坂町。
好意を、厚意を持ってしても。
感慨深くなるのは歳の為すか。
小さく、小さく呟いた。]
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―― 傘屋 ――
[見知らぬ人に会ってみようと思えど、 その人の名しか知らぬ自分は、何処に行けばいいか分からず。 見知りの壇の元へと、自然と足は赴いていた。]
こんちゃーす!
[明るい声で、傘屋の中へと声を掛ける。 弟子の青年もいつしか活動写真を見に来たことがあっただろうか。 兎角、不審者とは思われないはずで]
(42) 2011/01/06(Thu) 00時半頃
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お邪魔しますよ、と。 御主人は御戻りですかしらん?
[戸を潜って、いつぞやの御弟子に軽くご挨拶。 とても胡散臭い目で見られた]
お約束の傘、見つくろってくださいますかしらん
(43) 2011/01/06(Thu) 00時半頃
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