197 獣ノ國
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―回想・本屋―
[よければタイトルを。と言われれば>>6躊躇いながらも頷いて、ゆっくりとタイトルを口にした。
そうして束の間カウンターの傍に佇み店主と男性の会話>>7に耳を傾けた。 話すのはあまり得意ではないけれど、聴くことは嫌いではなかったので。]
物語を語るのですか? 吟遊詩人のようには語れないですけれど あらすじ程度ならば……
[聞かせておくれ>>8と言われれば、首を傾げて思案顔。
暗記するほどに読み込んだ、小説の中身を話すのは容易いけれど。ここで話すのは迷われて。
だから『送ってこうか』という誘いには戸惑うことなく頷いて。 隣を歩くのは気が引けたから、数歩後ろを歩いただろう。
たった一日、クリスマスの日だけ生き返る硝子で出来た少女と その日を待ち続ける男性の恋の噺を語りながら**]
(15) 2014/10/03(Fri) 02時頃
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―回想・大通り―
そうね、自信が無ければ、舞台になんか立っていないわ。
[少し間が空いたものだから、少し不安になったりもしたが、結局は受け取られた名刺>>0:392に、ジャニスはにこにこと満足そうな笑みを浮かべる。 そうして続けられた賛辞には、よりいっそう嬉し気に、けれど当然だと言う風に肯いてみせただろう]
ええ、そうしてもらえると嬉しいわ。 アタシ、自分の舞台を見てもらうのがとても好きなの。
一人で来てもらっても、構わないわよ。 ……沢山頑張るから、そうしたら、また褒めてちょうだいね。
[観客が増えるというのであれば、内心の事など吐露するつもりも無く。けれど最後にねだる様に付け足してしまったのは、先の賛辞が忘れられないからで。 仕舞われる名刺を見ながら、返ってきた紙切れには目を瞬かせた]
(16) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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あら、ありがとう。 ――ルーカス……、"V"?
[予想外のそれ>>0:393を、ジャニスは白い指先で受け取る。すらりと紳士の名前を撫で上げ、ぽつりと言葉を落とした。 恐らく姓の頭文字であろうそれを、口の中で繰り返しながら、ちらりと紳士に視線を向ける。 ……名刺にしては、何だか不完全な気がして。だからどうというわけでも、ないのだけれど]
(17) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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[――と。 唐突にかけられた声>>0:394に、ジャニスはちらりと視線だけそちらに向けた。何だか聞き覚えがある様な気はしたけれど、さて、誰だったか。小さく首を傾げていれば、紳士が彼の名前を口にして。 嗚呼、成程。いつだったか、公演に来ていた客の一人だ。二三、会話をした程度だったから、すっかり忘れてしまっていた。
会話を始める二人>>0:403>>12を、半ばぼうっと見詰める。そうしてはたと気付けば、何とも不機嫌そうに首を傾げた]
……アタシ、お邪魔かしら。
[けれど二人の話題が自分の事となれば、少しは機嫌も持ち直しただろうか。 人の注目が別に行くのは、嫌いなのだ。それがどうしようもなく幼稚な発想だと、ジャニスは気付いてはいない]
ええ、ルーカスとはついさっき、"お知り合い"になったわ。 錠、アナタのお友達だったのね。言ってくれれば良かったのに。
[二人とは違い、特に驚いた風でもなければ、にこりと笑みを浮かべる。教授に至っては、今の今まで名前すら忘れていたのに、ジャニスはまるで親しげにはなしかけてみせただろう。……演技は得意、だから]
(18) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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愛人 スージーは、メモを貼った。
2014/10/03(Fri) 02時半頃
□Re:集え獣人
20xx年10月2日 lu:ln
黒鹿
海イルカ
外出たらライオンが待ち構えていてパクリ、とか嫌じゃん
考えすぎだったみたいだけど。ありがとう
ものの見事に曇天だね。天気予報、こうだったっけ
涼しいのは過ごしやすいけど、あんまり続くと洗濯に困る
シェパード
食パンと缶詰とマーガリンはあるけど、他が無い
お気遣いありがとう。雨降る前に買い込んでくる
打ちながら歩いてたら、部屋の物ガッシャンした。不便**
[――プツン。
そんな音がしたかどうかは、果たして定かでは無いけれど。しかしそう聞こえた音と共に、瞼に映った朧げな姿は闇の中へと溶け行く。
嗚呼、残念。これは残念。折角、楽しい絵本が手に入ったと思うたのに。]*
[そんな事を考えながら、男はまた流れ込む文字に意識を傾ける。
仄暗い灯りの中で頬杖をつき、爪をカチリと鳴らしたのならその間から細い細い絹の糸が一本、きらり。]
――――
□集え獣人
20xx年10月2日 mm:ss
蜘蛛の糸
思ったよりもお仲間が居るようだな。
休暇を取っていて良かった、と言うべきか。
□集え獣人
20xx年10月2日 mm:ss
蜘蛛の糸
鶴
この國の何処かに。
シェパード
さぁ、そうかもしれないがね。
それでも私は、平穏を望むよ。他でも無い"私の"平穏を。
鹿
家の中で怯えながら暮らしても、何も楽しめやしないだろう。
それでも家に篭ると言うのなら、止めはしないがね。
イルカ
溺れたイルカとはまた面白い。
本当に、情報管理は基本だと思うんだがな。
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―回想・商店街―
[「たとえウソつきが綴った戯言でも」 「待っている人がいるから」 「その心を君は届けに行くのかい。」 「なんて素敵なこと–––––––」
だったら、いいわね。
俯いた顔を少しだけ上げる。彼>>368>>369のフードの向こう側に落ちた影を、何と無く悟った。 そこでは深く追及をしなかった、出来なかったけれど。
青いエプロンドレスを着た少女なんて、今時コスプレでくらいしか見ないわよ、と少しだけ笑った。
もしもの話。 彼が手紙を書いてくれたとしたら。 鳥の形をした文字の羅列は、不毛な問い掛けをしてくるけれど、送り手の頬を真綿で撫でるように優しいのだろう。
それを私に送ってくれると言う。ただの虚言かどうかまでは、分からない。 けれど、もしも、彼が鳥を空に放ったのならば]
(19) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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[相違がなければ>>9しばし考え事をした後に再び椅子から身体を離し、店内で咲く花を先客だった青年に作品を作った時と同様に厳選しながら声は彼女に向けて]
孔雀草の開花は8月〜11月なんです。 だから今頃ですね。
[知ってる知識を並べてお客様に説明を。 狭い店内。通常時の会話程度の音量で充分相手の耳に届く。何本か取り揃え、手に収められた花は先客の青年とは別の花。その花を別の作業台の上で一定のリズムを奏でて切断面を揃え始めるが、尚も説明は止まらない。]
白くて可愛い花が咲くんです。 鉢で育てるのが一番な花であっという間に大きくなるのですが…
(20) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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[私はそれを捕まえることなく、太陽を見るのと同じ気持ちで、黙ってそれを見るのでしょう。*]
(21) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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[次に奏でた音はパチリ、パチリと鋏の音。 長かった花の茎は次々に切られて短くなっていく。 そしてもたつくこともなく、花をまとめれば黄色のラッピングペーパーを用意して花を包み、視線を花から離したと思えばお客様である彼女に移り、トーンを僅かに下げた声でこう告げた。]
申し訳ないのですが、今は孔雀草は店には置いてないんです。
[そうなのだ。孔雀草は現在、この店にはおいていない。 花束や花籠を主に置くこの店には鉢で育てる孔雀草は今はない。]
せっかく来ていただいた上にお待たせすることになり申し訳ありません。 お取り寄せも出来ますが如何いたしましょう?
[この時間からなら注文をすれば翌日にはこの店に入荷はする。 いつも花の入荷を頼む店ならば取り扱いもしているだろう。 どうするのかは彼女に任せて、壁に掛けられた時計から鳩が飛び出し店仕舞の時を告げる。]
(22) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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[店内のお客様をお見送り。 挨拶もそこそこに彼女が店を出ようとするとき、注文された小さな花束を彼女に差し出す]
ご注文の品です。 勿忘草と向日葵は主張が強いと花束にした時にお互いの良さを損なわせると思いましたので、勿忘草は控えめにさせていただきました。
[先程から集めていた花は小さなブーケ姿に。 手渡すときに隆々とした手が触れたら、所々に鋏の傷跡が硬い皮膚になっていることがわかるかもしれない。 そして離れた手には一輪の花]
――…失礼します。
[向かって左側の彼女の髪の毛をそっと耳に掛け、手元にある向日葵の花を簪に見立てて添えた。そしてこちらは身長を屈めて露わになった耳元にこう囁くのだ。]
(23) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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またのお越しを"俺は"お待ちしております。 [目が合えば瞳を細めて「はやり向日葵が似合いますね」と笑って見せる。彼女はどんな仕草をしただろうか。だがこちらはそんなことも気にせずに深々と頭を下げてお見送りをしたのだった。]
(24) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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[ゆっくりと唇から紡がれるタイトル>>15に男は数度瞬きをした。 彼女の予想通り男が読んだことのない物語だったのだ。 喜色を隠すことなく男は「へえ」とただ一言。短い感嘆に滲み出る喜びのまま、自身の本来のお目当ても手にする。]
物語を語るに上手いも下手もないさ。
[彼女を誘いながら促すように言葉を重ねれば、何やら考える素振りを見せていた頭が動き、さらりとした髪が揺らぐ。
同意を得られた男は後ろから着いてくる少女と共に本屋を後にする。 そして秋風と共に紡がれる耳にしたことのない御伽噺に心地良さげに瞳を閉じて。]
――硝子、だなんて。愛なんて案外脆いみたいだね。
[彼女が滞在する建物か、その付近か。何処まで許してくれたのかは分からない。 けれども別れ際、男はそう零して笑み一つ。]
素敵な時間をありがとう。 たった一日とはいわずにまた、会えた時に名前を教えておくれよ。
[塞がれた両手の代わりに首を傾けて挨拶。そして男も自身の帰路に着いた。]*
(25) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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[店内から客がいなくなった。 仕事中は花籠を作れる程、暇だったのが終わった途端に3人の客。 疲れを吐き出すかの如く、大きく息を吐くと店主が使用している灰皿を人差し指に引っ掛けて机の上を移動させた。]
つっかれた。
[ねじ込まれた煙草の箱は更に変形されており、片手では素直に箱から出てきてくれない。]
…ったく。
[一筋縄では出てきてくれない煙草を諦めたのか、もう片方の手で一本取り出すと火を灯して紫煙を作る。無風の空間では紫煙は上空をしばし漂ってやがて姿を消した。この煙草を吸い終わったら友人から頼まれた物を作るために、花の発注作業を行うだろう。そして夜も更けた頃、職場からそう遠くないアパートに戻り、就寝をした**]
(26) 2014/10/03(Fri) 02時半頃
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□集え獣人
20xx年10月2日 ss:ft
シェパード
鶴、金糸雀、蜘蛛、鹿、海豚、犬
今のところ出てきたのはこれだけかな?
科学者が怖くて出て来れなくて震えている子もいるかもしれないね
猫がいそうな気もしたんだけど
……人間も動物って言えるのかな
黒鹿
大丈夫?気を付けて
料理できないならレシピとか教えるし
もしよければ拙い腕だけど作りに行くから
蜘蛛
自分の平穏、ねえ。
科学者に攫われて実験されないように注意、だな
そんなものは平穏とは程遠いだろうから
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―回想・自室―
[少し錆び付いた鍵を回せばカチリと音を立てて、解錠する。
ドアノブを回した先、少し埃が舞うけれども、必要な物以外置かれていない部屋に男はズカズカと足を踏み入れる。
飛び込んだ先は、余り皺も汚れも見当たらないシーツ。 必要最低限しか訪れない“住処”に。住処だというのに慣れぬ臭いに、鼻を鳴らす。
コロリと転がるのは紫色の液体。 とっくに炭酸が抜けたそれはきっと甘いのだろう。
手持ち無沙汰にまさぐった先、デニムのポケットから現れるのは一枚の紙切れ>>0:245と、いつの間にか共に突っ込んでいたのだろう僅か縒れた猫の顔>>0:335
交互に見比べては男は抜けるように息を吐きやがて身体を弛緩させ、微睡みに襲われるように意識を手放す。
頭部に、犬歯に、爪先に、言い知れぬ違和感を何処かで感じながら。]**
(27) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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―回想・商店街―
[あちらこちら。商店街の端から端へ。 進む秒針に従ってカバンの中身も軽くなる。 いつもより駆け足で配達を終えたせいか、少し息が切れている。 パタパタとブーツを鳴らして最後に訪れたのは花屋なのだが––––––]
し、閉まってる……!
[店の中を静物画のよろしく彩っている花に出会うことなく、その日の…の業務は終わりを告げた。 期限が明日までの注文票を握り締めて、芳香とアスファルトの匂いを隔離する店構えを視界に捉えて、1人慟哭しそうになる。 中ではまだ従業員が作業>>26をしているかもしれないが、恐らく視界に入らないだろう。]
あぁぁ…おっこられる、なぁ…
[バイクまでの道のりをトボトボ。 その道中、本屋への伝票も渡し損ねていることに気がつけば今度こそ小さく悲鳴をあげた。
だけど明日は、もっと不可思議で珍妙な事が起こるだなんて、少なくとも…には想像出来なかった。*]**
(28) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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□獣につゐて
20xx年10月2日 xx:xx
匿名さん
"獣人"と言うくらいだから元は"獣"なんだと思いますよ。
犬とかネコとかそんな感じの。
信じるかと言われたら信じないけど。
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[尾を隠す長いスカート、髪はバランスを失わない程度にボリュームを持たせ、獣耳を隠し(このときばかりはできそこないの半垂れ耳を感謝する)、後は自分を飾ってくれる服やアクセサリーを身に着けて。 けして忘れないのが、首に付ける革のチョーカー。飼い主がいないけれど、人に仕えるモノなのだと、自らに言い聞かせるように、パチンと留め金を止める]
よし、準備完了
[髪を後ろに流した時に触れた右耳に、ふと昨日囁かれた言葉がよぎる。冗談でも本気でも、あの言葉はたちが悪いと考えて]
………商売上手よね、あの人 個人的に待ってるなんて勘違いさせるようなこと言って。 どうせ女なら誰にでも言ってるんでしょう
[誰に聞かせるでもない批判。否、自分という聞き手はいるのだけれど、呟く彼女は自らへ語りかけると言うつもりは全くなく、女性特有の意味も無い独り言であると勝手に断定して]
ああいえばどんな女の子でも靡くと思ってるのよ、きっと
(29) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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[呟き終ってその不毛さに呆れて、とりあえず休校の間に勉強でもしておこうと本や筆記用具、昨日本屋でもらったメモを鞄に入れて]
カフェでも良いけど、図書館でもいいかな お昼は適当に買っていくか、午後からはどこかに出かけても良いし
[帰り道にでも、また花屋に寄ってもいいかもしれないなんて、あの店員の策略にはまってるとか思いつつ。 今日も今日とて、彼女は外へと出かけていく**]
(30) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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愛人 スージーは、メモを貼った。
2014/10/03(Fri) 03時頃
□獣につゐて
20xx年10月2日 xx:xx
めだちたがりな匿名さん
獣人なんて居るの
例えば獣と人間の間の子みたいな姿とか?
醜そうだし居るとしてもあまり見たいと思わないけど
ま、フランケンシュタインみたいに、何処かの研究所から逃げ出してきたとか考えると面白いかもだけどね
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[今日も今日とて今日が来る。学生は目前でご飯を貪る姉妹に、母に、父に嫌悪の瞳を向けました。まるでなって無いその姿、まるで温かみの無いご飯、そして一人だけ疎外されたような乖離に胃を痛め、しかしその痛みさえ前面に出さずに奥歯を噛み締め耐えました。
姉はちらりと学生を見ます。何も言いません。学生は舌を打ちました。妹はちらりと学生を見ることもしません。学生は視線を気だる気に、嫌味らしく斜めへ上げました。父は学生の存在を蔑ろに。母は冷たいご飯を暖かい笑顔で差し出すのです。]
…要らない。
[言えば父は憤慨してみせたでしょうか。母は悲しそうにしてみせたでしょうか。罪悪感が胸に咲けども、学生は踵を返し髪を揺らしました。父が箸を机に叩き付け、大きく足音を立て寄るのを耳に受け止めながら。学生は歳に合わない服とローファーを履き、そのつま先を地面に叩くのです。そしてがしりと掴まれた肩、強引に其方へ振り向かせられれば次は頬が叩かれるのです。
現実は甘くない。とても。とても。
学生は、振り続けようとする拳を必死に、まるで茨を掻き分け逃げるアリスのように必死に振り払えば、外への扉を開き、身体を滑り込ませました。*
(31) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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― 回想 パン屋の前 ―
…せんせい。
[寒いか>>0:351、と問われたなら、学生は何と答えたのだったでしょうか。きっとうんともすんとも付かないまた曖昧な言葉を返したに違いありません。 空を見上げれば矢張り煌めく陽の光は目を貫き、思わずに強くまぶたを抑えた覚えは確実に。その横目に見えた景色、扇子を開いたせんせいの姿には、ああやっぱり、和のものが似合うなあ、まるで何の役にも立たない感想を。
そして肩にかかるゆるい温もり>>0:352には、睫毛を揺らしてみせました。戸惑いと共にせんせいに向けた、せんせいを呼ぶ声は震えて居たかもしれません。学生は何年も自分に向けられることのなかったぬくもりに、酷く安心を、そして警戒を覚えてしまいました。身を固くしては恩も忘れ、うつむき加減に、しかし直ぐに感情を誤魔化すように顔を上げてはみせたでしょうけれど。]
(32) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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…せんせいが心理学のせんせいにならないのが、すごく不思議だわ、わたし。
[またも意表を突く発言>>0:353には呆れの視線さえ投げてはみせる。しかし後に続いた「心理学」が鼓膜を叩けば、学生は図星を突かれたように、一瞬息を呑みました。瞬きさえ忘れたその数秒を越え、漸くマトモに現実を見据えた脳は、震える唇に動けと命を下すのです。]
(33) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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……でも、現実は、御伽噺にはなれないから。
ねえせんせい、せんせいは、―――
[あくまで警戒を隠し軽快に、まるであの猫のように学生は、愉快さを滲ませた音を紡ぐのです。現実を莫迦にしたような発言が、自らをも莫迦にしているとは、考え至りはするけれど認めずに。強情とさえ言われる悪情は、ただ自分を守る為だけに。 学生はその後、何かと言葉を掛けようとは思いましたが、その前に遠くへ投げられた声>>0:364を認めると、あまりに人が多いのは怖いと、本音を隠しそろりそろりと踵を返しました。まるで先程まで居た人が消えていた、そんな夏に咲く怖い話に似た体験を、今日学生の図星を突ついたせんせいに訪れてしまえば良いと、悪趣味に身を任せる。*]
(34) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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― 回想 パン屋→ ―
…御伽噺に、入りたい、だとか。
王子様の迎え、だとか。
[学生は雑踏の中、人混みの中心で、ひどく情けなく顔を歪めました。悲痛に寄せられる眉は無自覚に、人々が無関心に学生を通り越していくものだから、自分の存在は如何程かなんて問うまでも無く現実を見せ付けるのです。だから、だからこそ。締まる胸を吐き出したいと、駆け足で人混みを走り抜けてはただ我武者羅に。母校であった学校の前へと葦を落ち着かせると、力の抜けた膝を支える為にその門へ手を預けました。 不恰好に、いやな現実の空気を吸っては吐き、肩で息を整え、震えた現実の機器を取り出し、その文面につよく瞼を閉じては開き、のろい動きで画面を叩く。]
―――――――――――― 差出人:皇マユミ 宛先:スージー ――――――――――― ごめん! 20xx年 10月1日 ――――――――――― お腹が空きすぎて適当につまみぐいしたら、お腹痛くなっちゃった。 休みたいから、会うのはまた今度でも良い? ほんとうにごめんね! ―――――――――――
(35) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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[嘘に嘘を重ね嘘を吐く。保身を守り過ぎ最早何を本来まもりたかったのかさえ忘れてしまった。
学生は自分の醜態を自覚し体を、肩を震わせると、怪訝そうに此方を見て来る生徒らを振り切り帰路へと着いたのでした。*]
――――回想 了
(36) 2014/10/03(Fri) 03時頃
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―自室―
――…はは。
[違和感。洗面台に備え付けられた自身の姿を見て男は鼻で笑ってやる。 鏡に映し出されたその姿。幾分か寝起きの跡を残しつつも、見慣れたその面に男は唾を吐きたくなる衝動を抑える。]
…なるほど、なるほど。 ――これは確かに、ウソつきには相応しいのかもしれない。
[浮かび上がる姿と、昨日までと異なる生えた、何か。 痛覚はあるらしい。夢だとばかりに引っ張ってみた結果、鋭い熱を起こしたから。
男は暫く唸る。 到底人のものとも言えない声で。 驚くのはつかの間。次の瞬間にはお馴染みの赤いパーカーを身に纏う。]
(37) 2014/10/03(Fri) 03時半頃
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……中途半端、か。何処まで皮肉なんだか。 獣でも人間でもないって? これなら一層尻尾もあれば面白かったのに。 ――声さえ聴けない耳よりはきっと、数十倍も価値があっただろうに。
[重く長い溜め息と共に男は椅子に腰掛ける。 備え付けの机には昨晩購入した一冊の本と、炭酸の抜けたジュースに、紙切れ二枚。その内シンプルな方に何と無く視線を向けた男は暫し思案。]
――…僕はどっちなのかな。これじゃあ泊りも約束も難しそうだ。
[アドレスに綴られた先。何故かログイン出来たその場所に首を傾げつつ男は、暫くの間何をするでもなくフードを押し上げる獣耳に狼は牙を向いた。]**
(38) 2014/10/03(Fri) 03時半頃
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