276 ─五月、薔薇の木の下で。
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俺が手に入れたいのは、紫陽花じゃなくて。
紫陽花の隣だ。
[紫陽花の花は、一輪では咲かない。
小さな花が、己を飾って寄り添いあって、ようやく見知った姿で咲ける。
その、寄り添う隣を、手に入れる。
奪ってでも。多少、強引にでも。
ここにいると、こっちを見ろと、振り向かせて。
独白のように呟いた言葉。薔薇の精には届かなくても、いいつもりで。]
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[ 扉の隙間から流れる薔薇の空気が 紫煙の名残を消していく。 少しずつ満ちる花の気配>>151 手の物は咄嗟に机に置いていたけれど、 近づく彼の出した結論>>153に目を見開き それから唇を噛み締めた。 ]
…………分かってない。 君は何も分かってないよ、ベネット。
[ 襟元>>1:33に向かって腕を伸ばした。 哀しげに暮れていた瞳はどうしようもない 感情に波立つ。 ]
(160) 2018/05/20(Sun) 00時半頃
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誰がそんなことを、望んだ?
[ 存外、静かな声だった。 伸ばした腕は緩やかに降りる。 ]
(161) 2018/05/20(Sun) 00時半頃
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君も結局、姉さんと同じか。
[ 諦めたような声が落ちた。 しかしその中に罪悪感以外に芽を出すのは 薔薇の香りに充てられたせいなのか。 ]
自分がしんどいの間違いだろう? …………俺のせいに、しないでよ。
[ 吐き捨てたような声色。 普段なら口にしない筈の棘ある台詞。 口角を上げてそれから笑った。 眉尻は上がらないまま、諦めたように笑った。 ]
(162) 2018/05/20(Sun) 00時半頃
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君とは対等な友だちでいたかったよ、ベネット。 ……だから君にはこんな所、見せたくなかった。
[ 汚いエゴの塊の部分。 知られたくなかった秘密を打ち明ければ、 今度は手荷物を持って扉の外に 向かおうと体を壁から剥がした。 ]*
(163) 2018/05/20(Sun) 00時半頃
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[ 中庭の二人と、図らずしも同じ構図をとっていると思いもしない。
緑を踏んだ時に呟かれた言の葉()を
ただ、思い出していた。
手に入れたいのは、紫陽花の隣。
紫陽花そのものではなく、その隣の場所だと。
人はおかしなことを考える生き物だ。
それもまた人の──彼の
想う、心の、かたちなのだろう。
悩み、押し殺し、隠して生きれば生きるほど
彼らの中には美しいものが詰まっている。
俺はどうやら、空っぽだ。 ]
[ 独白めいた響きであったから
言葉を返すことなど、なかったけれど。
見せずにいた顔は確かに
笑っていた。
モリスが望むものを手に入れたなら。
いっちゃんが望む姿を見せられたなら。
それ以上の事が、あるはずもない。
その形がどうであれ。
風景の《薔薇》は彩りに変わるだけ。 ]*
[ 良い子にしていると呟いた()
あの幼子(おとこ)はどうしているだろう。
首筋に降った薔薇の花弁は
洗い流しても、そうそう落ちはしまいが。
罪も、水で洗い落とせるものじゃない。
彼に詰まったものも、中身は知らねど
ぎゅうぎゅうと美しいものが詰まっているんだろう。 ]
[ ひらり、夜風は凪いでいるのに
はらり、薔薇の花弁が舞う。
ふたつ、ひとつ。 ]
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俺にだって君が分からないよ。 何か言いたげに見えたから、 俺に何か伝えたい事でもあるのかと思ったけど。
[ 首を絞めたり、掴んで殴ったりなどしない。 一度引っ張った襟元。 隙間から覗く赤>>171に一瞬、目を伏せ。 変わらぬ表情>>172に顔を上げた。 ]
(173) 2018/05/20(Sun) 01時半頃
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謝らないで、ベネット。 君は、何も悪くはないよ。 君のお母さんに関しては…… 俺の母さんが、悪いから。
[ もらったパンを鞄に詰め、ケースを片手に持つ。 背中を向けながら語るのは彼の瞳の色を 見たくなかったから。 ]
君が、俺の弟だとするなら俺たち兄弟は、 せめて母さん達に縛られないよう自由であるべきだ。 音楽を止めること。それが君の意志なら ……俺には止められないよ。
(174) 2018/05/20(Sun) 01時半頃
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君から父さんと、母さんと、音楽を奪って、ごめん。
[ ひと息に言えば扉の外に向かった。 何となく花を見たくなくて 中庭を避けるよう迂回しながら寮へと向かう。 ポケットに手を突っ込めばかさりと紙の感覚>>0:272 ]*
(175) 2018/05/20(Sun) 01時半頃
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―廊下―
誰なら、俺を見てくれるんだろう。
[ ふと自分が投げかけた言葉>>1:299を思い出して笑う。 他人のように言うから、君は確かに 存在していて俺を見ているじゃないか、と。 そういった意味合いで伝えた言葉だ。 それが正しく伝わったかはさておき、 騒つく心は簡単に理性を掻き乱して。 ]
…………おいしい。
[ 遮断するようにパンに噛り付いた。 寮の廊下を歩きながら行儀悪く食べ歩き。 ]**
(176) 2018/05/20(Sun) 01時半頃
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フェルゼは、紙の内容>>1:272を頭の中で浮かべながら咀嚼する。**
2018/05/20(Sun) 01時半頃
[ そんなキラキラした記憶を思い返しながら。
平気で他者に口付けようとする、俺こそ。 ]
フェルゼは、イアンとモリスはそういえば何処にいるのだろう。とボンヤリ。
2018/05/20(Sun) 15時頃
フェルゼは、モリスの気遣い>>193は知らず、自室に戻ろうか何処か行こうか思案中。**
2018/05/20(Sun) 15時半頃
[ 薔薇と、紫陽花とは違う。
雨に濡れながらも、寄り添い咲くのが紫陽花とすれば
蔓を絡ませ棘で傷付けながら、一人咲くのが薔薇。
中庭にあるただの花(おれ)に
誰が愛を囁くというのか。
棘で傷付くだけの薔薇(おれ)に
誰が寄りそうというのか。
咲こうとしていた蕾をもぎ取り
迷いも無く握り潰した。
溺れるような花の中――― ]
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―自室―
[ 自室に戻った時、誰もそこにはいなかった。 モリスにしては珍しいなと思いながら モリスがいなければ誰に朝起こして 貰えば良いのだろう、なんて考えた。
真っ先に思い浮かんだのはかつての親友。 だがそれも難しいのだろう。 ぐしゃぐしゃになったノートの切れ端を ポケットに突っ込んだまま溜息を吐いた。
今日は眠ってしまおう。 そうして、目を閉じたのに――暗い夜。 灯りは窓から差し込む月明りのみ。 ]
(257) 2018/05/20(Sun) 19時頃
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どういう……こと……?
[ 今更気付いた違和感に眉を寄せながら 扉の外に向かった。 ]*
(258) 2018/05/20(Sun) 19時頃
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―中庭―
[ 人の多い所なら食堂か談話室だろうか。 考えたものの花の香りにつられるよう 訪れたのは中庭。
そういえば随分見ていなかったから、 今は無性に触れたくなったのだと思う。 辺りに充満する花の香り。 狂おしい程に一途に風に混じる気配に 一歩、二歩と足が進んで――…… ]
(259) 2018/05/20(Sun) 19時頃
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――せん、ぱい?
[ 寝転ぶ姿>>254に声をかけた。 間引かれた薔薇の花園>>252を前に 雨でも雪でも天変地異でも起きていないのに 何処か違和の感じた瞳を覗き込む。
その手はどうなっていただろう。 傷をついていたのならかつてのあの時 >>0:196を思い出しながら目を伏せて ]
(260) 2018/05/20(Sun) 19時頃
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悲しいことでも、ありました?
[ ぽつりとたった一言尋ねてみた。 彼の事はきっと誰かのように詳しくは知らない。 たまに中庭で花を育てる後ろ姿を見ていただけ。 だから詳しい事など分からなかったのだけど ]
花も指も、痛そうですよ。
[ その指と間引かれた花を見て零す。 静かな瞳だけが凪いだ色を示していた。 ]**
(261) 2018/05/20(Sun) 19時頃
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そんなに必死になるくらい、嬉しいこと?
[ 浮かぶ汗>>262に首を傾げる。 花でも見に来たのか。質問には首を振る。 ]
薔薇の香りにつられて、きたら、……此処に。 花を間引く事は必要なんだろうけど、 こうして見ると可哀想ですね。 綺麗に咲いてるのに。同じ、花なのに。 この花だって雫がなければ生きれないのに。
[ 言葉にしながら沈黙を。 ちらりと指を覗き見て ]
(264) 2018/05/20(Sun) 20時半頃
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…………せんぱいって、よく笑いますね。 痛い時にする顔じゃないのに。 痛みは慣れるものじゃないですよ。 怪我したなら、医務室に行かないと。
[ 花でも触れるように腕を伸ばした。 ]*
(265) 2018/05/20(Sun) 20時半頃
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……かも=H 随分と曖昧な言葉を使うんですね。
[ 自分の事なのにおかしなものだと瞬きを。 汗を拭う姿>>268を横目に見た。 ]
……間引いた花はその後どうするんです? 俺は花を育てても枯れさせてばかりだから、 よく知らなくて。
[ なんだか分からない。 言葉を重ねながらも朧気で主体性のない言葉の羅列。 ]
(272) 2018/05/20(Sun) 21時半頃
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まだせんぱいの親程生きてないのに 慣れた、だなんて。 親御さんが悲しみますよ。 たまに帰ってあげたらどうですか。
[ 言葉多くに語る色に無遠慮な気遣いが混ざる。 触れたのは休暇の度、残留を選んでいるらしい事>>1:244 軽薄な表情>>270を覗き見ながら手を見た。
余計なお世話をしながら薔薇の絨毯を覗き、 普段口にしないことが溢れた。 ]
(273) 2018/05/20(Sun) 21時半頃
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今のせんぱい、まるで此処の事、 花のこと好きじゃなさそうに見えるから。
[ 一度帰ってみたら、なんて無責任な。 ]
せんぱいこそ、棘ばかり触って。 そんなに傷を付けてどうしたいんですか。 見てるだけで、痛いったらない。
[ いつか伸びた腕>>0:198を思い出した。 ]
(274) 2018/05/20(Sun) 21時半頃
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ねぇ、せんぱい。 どうしてせんぱいは、こんなになるまで 花を育てているんですか?
[ あの時>>0:162と同じような言葉を問うた。 手を伸ばしてこちらに引き寄せて立たせようと思いながら。 ]*
(275) 2018/05/20(Sun) 21時半頃
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…………なんだろう。 色々と、ありました。らしくない事ばかり、してる。
[ 促されれば断らずそのまま腰掛ける。>>278 ]
花に、良いも悪いも……あるのかな。
[ 何となく神妙な面持ちになった。 元々そんなに好きじゃない花が咲く場所が 家みたいなもの>>280 ]
(282) 2018/05/20(Sun) 22時頃
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花が好きじゃないなら…… 何を想って育てているんですか。 せんぱいは一体何を、あいしているの。
[ 分からずして問いかけた。 薔薇の香りは相変わらず濃く。 背筋をピリッと空気が弾くが知らぬふりをして。 腕を差し出しても取らない今はよく 分からない先輩の言葉に耳を傾けていた。 ]*
(283) 2018/05/20(Sun) 22時頃
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