97 せかいがおわるひに。
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[いつの間にか涙も零れはじめている。
気持ち悪い。
手が震える。
こわい。
何でわたし、こんなことを。]
[それでも、カメラを見ると落ち着いた。
ああ。
最後を撮るんだ。
そう思えた。
カメラを持つことで己を保っているのだろうと。
スティーブンが思った事は、半分は正解で、半分は不正解。
カメラを持つことで。
己を崩壊させていっているのが、多分、正解。]
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[そこから、どれくらいの時間が経っただろう。
果物ナイフはとりあえず地面において。手は血まみれのまま、カメラはまわしたまま。携帯電話を取り出した。 またメールの着信があり、しかめ顔になる。無視した。
電話をかけようとする。 誰に?
またね、と言った相手の顔が、順番に並べられる。]
――…
[ピッ、 コールする相手は、結局、セレストにした。]
(57) 2012/07/21(Sat) 02時半頃
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[セレストの携帯がなるのはいつだろうか。 もう少し先かもしれない。
彼女がもし電話をとってくれたなら。 伝える言葉はきっと、一言だけ。]
…セレストぉ?
[いつもより少し、しんどそうな声色で。]
わたし ひと ころしちゃ、 った
[それだけ言うと。 ぷつりと音を立てて、*電話は途切れるだろう*]
(58) 2012/07/21(Sat) 02時半頃
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― 道端 ―
[交通事故現場のすぐ傍。 死体のすぐ傍にしゃがみこんでいる。
ここは人通りが少ない。 車のブレーキ跡もすぐ傍にあるだろうし、 それに電話は切ったものの、電源を切りはしていないから。こちらにかけたら繋がりはするだろう。]
――…
[カメラは未だ持っているし、撮影も続けているけれど、その先がどこに向けられているという事はなかった。]
(81) 2012/07/21(Sat) 15時頃
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[またメールが届く。暇な人だと思う。 だけどメールは見てやらない。
果物ナイフの代わりに握り締めている携帯電話は、触ったせいで血にぬれてしまっていた。]
――…
[従姉の顔を思い出す。 一緒に死んでいたら、こんな気持ちになることはなかったんだろうか。]
…
(82) 2012/07/21(Sat) 15時頃
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[電話越し、大丈夫?と聞こえたセレストの声。]
… わかん なぁい…
どうだろ、…
[死んだ相手を思い出す。]
ルーカスさんは、
どんなきもち…?
[電話の感じからは、おそらく事故なのだろう。
この状況において、事故死。
ああでも、隕石自体が事故みたいなものだから。
きっと、かわらないのかもしれない。
でも。
何も解らないままに死ねるのは、もしかして。
楽なのかもしれない。]
なんで、天文台のひとは、
回避できないってしってて、
発表したんだろ
なにもしらないまま、
しねてたら、
世界が、おわってたら
ねえ…
どうなってたのかなぁ…
[独り言を呟き続ける。
それは全て、カメラに収められ続ける。]
あは、…
映画のせりふみたい……
――…
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[ぴくっ]
いま、
[>>94よく知る声が届いた。]
あ
[こんな世界の終わりに。 どこにいるとも言わなかった、あんな不親切な電話ひとつで、自分を探しに来てくれるとは、思っていなくて、―――…、
いや。
セレストなら。あの友人なら探してくれるのは、きっとどこかで解っていたから。心配をしてくれるのを、きっと解っていたから、彼女に電話をかけたのだと思う。
一緒に死ぬ、と言った従姉はきっと、そんなに驚きもしなかったろう、とも。]
(101) 2012/07/21(Sat) 20時頃
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[ぼろっと、涙がこぼれた。]
――― せ … っ 、
せれすとぉお……
[泣き声交じりに友人の名前を呼ぶ。 自分は最低だ、最悪だ。 解りきっているけど、呼ばずにはいられなかった。 ゆらっと立ち上がる。彼女のもとに行かなくちゃ。ごめんねって、言わないと。
ふらりと歩き出す。声が聞こえたという事は、きっと遠い場所にはいないはず。
どこ。 ―― どこに。]
(104) 2012/07/21(Sat) 20時半頃
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[歩く。辺りを見回す。どこにいるかなんて解るはずがない。 どちらも動き回っているとしたなら、永遠に追いつけない気がする。]
……
[携帯電話を取り出した。またメールが増えている。 気にしないふりをして、発信履歴よりセレストへとまた電話をかけた。]
(111) 2012/07/21(Sat) 20時半頃
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せ
[コール音を聞く時間はとても短く。]
せれす、… ぐすっ せれすと お …っ
[泣き交じりの声は聞こえにくいかもしれない。]
いま さっき、 声が、 さがして くれてる の?
(113) 2012/07/21(Sat) 21時頃
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ん、
[頷いた。相手には届きにくいだろうけれど。 3丁目のクリーニング屋さん。この場所はその店の裏手だ。近い。けれどこちらには目印らしい目印はないから、]
じゃあ まってて いくから
いく から …
[ぐすっとまた鼻を鳴らした。通話はきらないまま、歩き出す。]
ごめんね ごめんねぇ、セレスト…
[歩く。ただ歩く。 角を曲がり、セレストの姿を認識すると、足は止まってしまうけれど。 自分の制服の一部も、携帯を持った手も、返り血で血まみれだ。それでも、片手にはカメラがある。撮影は続けられている。]
(116) 2012/07/21(Sat) 21時頃
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[姿が見えると駆け寄ってくる友人の姿。カメラは回り続けているけど、彼女には向いていないから。 収まるのは自分の視界の中にのみ。]
わたしは ないの 私に怪我は、ないの…
[縋るようにセレストの肩口に額を寄せる。]
どうしよう、どうしよ、 なんでわたし、あんなこと
セレスト、ごめん、わたし、ひとごろしなの 心配してもらう しかくも な …
(118) 2012/07/21(Sat) 21時半頃
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[支えてくれる様子に一度、ゆるりと首を振ったけれど。]
だいじょうぶ? … ほんと に ?
[人を殺しても大丈夫なんだろうか。 それを撮影しつづける事も、大丈夫なんだろうか。
わたしは だいじょうぶ?
カメラを握り締める手に、緩く力がはいる。 背中を撫でてくれる感触。落ち着く。ゆるく目を伏せた。涙がおさまってゆく。 ぐすっと鼻を鳴らしたけれど、呼吸は先程よりは落ち着いていた。]
(126) 2012/07/21(Sat) 21時半頃
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この星が、…かあ…… そーかも、そーだよね…
[目を伏せたまま、セレストの言葉をきく。 何が正しいのかわからない。むしろ、正しい、という事自体に意味があるのかすら解らなくなってきた。
目を伏せていると、他の五感が鋭くなるんだろうか。血のにおいを、先程より強く感じてしまう。]
…いみわかんない電話一つで、ともだち助けに来てくれるセレストが大丈夫じゃなかったら…いったい誰が大丈夫なのよぉ
[わかんないと言われると、思わず、小さく笑ってしまった。 そして、一呼吸をおいて、呟く。]
――… あのねえ セレスト
わたし
世界のおわりが とりたかったんだぁ…
(129) 2012/07/21(Sat) 22時頃
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[一ヶ月前だったら。それを想像して、笑った。]
そぉだねー うん、そっか、 …そうかも 私、人、殺したんだもんねぇ 警察いってー とりしらべうけてー ねんしょーはいってー? そこでこうせいのためにうんぬん… やだな、想像できないや
[笑い返してくれるセレストの声にどこか安心する]
…うん。大事だって思ってくれて、ありがと……
わかんない、くるってるのかもしれないねー じゃあよかった、仲間だぁ…
[どこかが壊れてる。同じだ。おんなじだ。]
うん、そぉなの 最後の… ……
セレスト… お願いがある かも
(135) 2012/07/21(Sat) 22時半頃
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クラリッサは、セレストと呼んだ声は、少し控えめな。
2012/07/21(Sat) 22時半頃
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まったくだぁ びしょうじょさつじんき、とかいう見出しになってしまう ……うん、…
[冗談交じりに言いながら、想像できないという言葉に、小さく、小さく頷いた。]
約束?
[あの、「またね」が約束である事に、最初はぴんとこなくて瞬いた。けれど、思い当たるとやはり、笑う。]
そっか、やくそく、 うん… うん。 それはこっちの、せりふぅ………
[無邪気に訊ねかえされると、なんでもないことのように続ける。]
あのねぇ さいごにねー
(139) 2012/07/21(Sat) 22時半頃
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私を、殺してくれないー?
でもってー このカメラでね、撮ってほしいなぁって…
…やならいいの…
(140) 2012/07/21(Sat) 22時半頃
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[「美少女」が半分自虐ネタである事は、誰にも言ってないけれど気付いている人はいるだろうか。 容姿に関するコンプレックスは、セレストときっと、ほぼ逆だ。 もう少し地味なら役者に抜擢される事もなかっただろうし、妙な勘違いもされなかっただろうし、悲しい思いをする事もなかっただろう。 でもこうやって。笑ってくれる友人がいるから、半分、なのだけれど。 ふふっと笑い声を返した。]
人生最後の約束? 確かに光栄かも
あー、もしかしたら
世界で最後の 約束かもしれないね…
[隕石が落ちてくる。終わる世界での果たされた約束。 そう思うと、日常を失いたくなかっただけのあの「またね」が、とても、とても、非日常的な言葉に思えたけれど。 最後の日常。果たされた約束は、とても、嬉しい気持ちになるものになった。]
(146) 2012/07/21(Sat) 23時頃
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… へへぇ…
[は?と、驚いた顔をした様子に、笑う。]
いったでしょぉ 最期が、とりたかったの…
[もたれていたセレストの肩からゆるりと離れる。 手に持っていただけのカメラを、軽く持ち上げた。カメラの先は、まだ定まっていない。 会話を録音しているだけだ。]
世界の最後
これはぁ、私の作品だから… 私の最期がはいってなくちゃ、意味がないの
(148) 2012/07/21(Sat) 23時頃
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ふふっ たしかにー。でもいいじゃない、友情もの 恋愛物のほうがよかったぁ?
[返された言葉に、小さく笑った。ここでようやく、彼女が来ているスーツのジャケットに気がついたけれど、それが誰のものかは解らない。 見覚えがあるような気はする。]
…、……
[生きなきゃ、と。 泣きそうな顔で、必死に言うセレストの姿。 思わず瞬いて。 そして、手が動いてしまった。 カメラの先を、セレストの表情へとあわせる。 何か言われてしまうだろうか。でも。
自分の笑顔も消えてしまうかと思いきや、それでも苦味交じりの笑顔を残せた。 カメラ越しに、セレストを見つめながら。]
…… 世界の終わりに。
生きなきゃって、言われるなんて、思わなかった ざぁんねん…
でも、…… ありがとう
[苦笑のまま。でも、目の端には、じわりと涙が浮かぶ。]
(153) 2012/07/21(Sat) 23時頃
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えっそうなの? なにぃ、セレストが裏切りものじゃないー ずるい
[笑う彼女に、軽くにらむような視線を送った。]
その、スーツの人…?
[思い当たりはしないまま。もし、思い当たったとしても、彼がもうこの世にいない事など、言えるはずはなかったけれど。]
ふふ
[止めないセレストに、笑みを浮かべたまま。]
今、すごく すごくねぇ セレスト優しい顔してる
… 残せないの、やだなあ 残したいなあ
[少しだけうつむいて、弱音を吐いた。]
(157) 2012/07/21(Sat) 23時半頃
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面倒見、よすぎじゃない? 一緒に…… うん、そーだね…
[残らない、何も残せない。 見届ける、の言葉に、カメラの先は上をむいた。遠く遠く。 世界の終わりは近付いてきている。 もう遠くないかもしれない。]
そうしようかなぁ 友情ものでおわるのも、悪くないよね…
[携帯がまた、メールの着信を告げた。]
…… ちょっと、ごめん
[開いて、新着のメールだけを開く。 かちかちかち、と。メールを送り返した後、携帯を閉じた。]
これで、私の恋愛ものも、 おーわり
(158) 2012/07/21(Sat) 23時半頃
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― 一ヶ月とちょっと前 ―
ねーぶちょぉお
あの脚本本気ー?
本気いー?
[ひたすら抗議をしていた。ひたすらだ。
だって馬鹿みたいな脚本で、馬鹿みたいな展開で、馬鹿みたいな ああもう、全てが馬鹿じゃないかと思える映画。
手はずは全て整って、クライマックスの天文台での撮影シーンも、既に許可は取ってあるという。 後輩女子からちょうおじょうさまな衣装の準備も整ってますといわれた。
こういう時の手際のよさはなんなの。まじでなんなの?毎度戦慄く。
映画研究部の部長も3年で、今年の夏休みで作るショートムービーを最後に引退する事になっていた。 それは私もだ。 あと少しだけだから、あんな馬鹿な脚本に修正依頼もださず(修正却下された事柄もかなり多いが)、おとなしく見事可憐で病弱な美少女を演りきってあげたんだけども。]
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