126 生贄と救済の果てに〜雨尽きぬ廃村・ノア〜
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…………イアン…。
[知っているからこそ、一言だけ漏れた、名前]
…そりゃ、そうだけどさ。
[生きる場所が違うだけ、と言われれば、張りつめた声に苦笑が混じった。]
一人にしてしまったら、ごめん。
まだ魔法使いの人数のが多いのに。
[‘魔物’として案じるのは、同族のホレーショーのその後だ。
望んだ事が果たせなくなりそうなのは、悔しい。
けれどそれ以上に、あまり役に立てなかった事が悔しい。]
ごめ…なさ、い。
[雷に射抜かれた瞬間に零れた声は。
これから魔法使い達を一人で立ち向う事が予想される同族の彼に向ける言葉。]
馬鹿か。俺は元から1人だ。
[謝るイアンに返したのは冷徹な一言]
たまたま招集された中に魔物が二匹いた。
それだけだ。
仲間でもなんでもない。
[だから、心配するなとは言わなかった。
お前は意地張り過ぎるんだよ、と
頭を叩く魔法使いの事を思い出した。
顔は思い出せないのに、腕に刻まれた刺青が酷く目に痛い]
[あの棘の様だったと、ぼんやりヤニクの供物を思い出しながら]
じゃあな。
[何処までも冷たく短い別れの言葉]
はは、そうでしたー。
[彼の指摘には苦い笑み。
同族とはいえ、ホレーショーとは此処で初めて出会った。
ヴェラやヴェスパタインと比べれば、その関係は浅く。
…あんたの右手に宿りたい、な。
魔物として、魔法使いの力となるよりは、彼の力の根源にと望む。
けれど彼の声の調子を聞けば、自分などいなくとも彼はやっていける、とそう判じ。]
…うん、さよなら。
[別れの言葉は、彼と同じく短い。]
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