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【人】 奏者 セシル[心狂わす甘い声―― (158) 2010/06/23(Wed) 03時頃 |
[記者を連れ歩きながら
知人に先立たれ独り生き延びてきた過去を振り返る。
若いうち、未だ人と己の区別がつかなかった頃
幾度求めた手を振り解かれたか
幾度理由も無く虐げられたか
あまりに遠い昔の話は、霞がかってしまって
鮮明なのは、此処数年の出来事]
[未だ、城で宴を催す前の事だった。
食事の度に夜の街を彷徨い
月明かりの下、白薔薇の庭園でひとりの娘を見つける。
儚い夢のような娘だと感じた。
其の理由は直ぐに知れる。
警戒心も無い様子で、語りかける声
ならばと、正体を明かし
其の身に永遠をくれてやろうと誘いかけた。
美しい華が、枯れる前に散るのが惜しいと思う。
珍しいことだと自嘲した]
[喜ぶかと思った娘は、首を縦には振らなかった。
思い通りにならぬ歯痒さ。
彼女もまた私のものにはならぬと言う
拒絶した彼女に
気付けば牙を立てていた。
血を分け与える行為は、微妙な匙加減が必要なもの。
女の血を吸い尽くす手前で止め
命の散りかけた其の身を次は己の血で満たす。
人ならざるものへと変わっていく
其の身で受け止めきれぬほどの快楽が
彼女の記憶を何処かへ飛ばしてしまったのか]
[意識を飛ばした娘を連れて、城へと戻り
熱が出たのか毒を中和すれば良いのかと、
下僕に薬を買いに走らせる。
今思えば愚かなことだ]
……私のローズ。
永遠を生きるもの。
共に――…
[翡翠の瞳を再び見る事が出来た其の時から
刷り込みのように、幾度も繰り返す言葉。
ぴたりと止まった彼女の聲
城主は甘く優しく囁き続ける。
錯覚も永遠に続けば、其れが真実となるだろうから*]
【人】 奏者 セシル
(169) 2010/06/23(Wed) 03時半頃 |
――…うそつき。
[死を望んでいた白薔薇に対する聲は
震えの混じる情けないもの]
【人】 奏者 セシル[告げられた言葉―― (175) 2010/06/23(Wed) 04時頃 |
【人】 奏者 セシル――…ぁ、 ……、 (176) 2010/06/23(Wed) 04時頃 |
――……聲が、
聲が、震えておいでですよ、お嬢様――
[半覚醒のなかで囁きに応じる聲。
常の柔らかな響き、
けれど、どこか硬質な――]
[――新たな聲が聞こえた。
自らが招いた事だというのにそれが怖ろしく哀しい]
――……、
[逡巡するような間が生じた]
貴方の気のせいよ。
[沈む聲がそう答えた]
【人】 奏者 セシル[名を呼ぶ声に、 (180) 2010/06/23(Wed) 04時半頃 |
ああ……
[目覚めの吐息がひとつ]
――気のせい……
左様でございますか、ならば結構、
――お可愛らしいことですね?
[囁くそれは、砂糖菓子のような甘い聲]
[城主の甘く優しい囁き
幾度となく繰り返された言葉がじわと染みて]
やはりお兄様にお任せすれば良かった。
[求めた白薔薇の変貌に女の心は追いつかない]
お兄様――…
私はまた、間違えてしまったのでしょうか。
[甘い白薔薇の聲に心が震える]
可愛くなんて、ない……
偽りは、…やめて……
[これは違う。
違うのだと自らに言い聞かせながらも
途惑いは隠せず上擦る音色]
[ツキン、と、鈍い胸の痛みが女を苛む**]
[上ずる声音を聞けば、吐息に笑みが混ざる]
……ああ、ではどんなお言葉でしたら、
信じていただける?
あなたのお望みのままに、
謳って差し上げますよ、お嬢様――……
[その声は耳触りだけは、まろやかでやさしい**]
【人】 奏者 セシル[言葉を聞く眼差しは、どこか気だるげに] (183) 2010/06/23(Wed) 05時半頃 |
[ふと、
声が増える
増えた。]
――……セシル?
[声ならぬ聲が混じる。
よく知ったおと
瞼を閉じれば、其の先に
手元に置きたいと思った蒼天は色を変えて]
ふ……ふふ
[吐息の間で笑みを浮かべ、可笑しなことだと囁き零す]
私のローズ
お前の望みは叶っただろう?
……セシル……目覚めたか
[愛しい
そんな感情が魔物に存在するものか。
是は執着
朱に交わり染まる蒼がただ惜しいだけ
胸に渦巻く甘い痛みの説明を
誰も城主に授けてはくれぬ**]
【人】 奏者 セシル ―執事控室:白の部屋― (198) 2010/06/23(Wed) 12時半頃 |
[重なり響く己の名の音]
おはようございます、旦那様――…
嗚呼、心根のかろやかなこと、
―――…私は、今まで何に捕らわれていたのでしょう。
[失われたのは闇にあって尚、善美に焦がれる心
枷なき薔薇は、棘を恥らうこともない]
ふふ……
つまらぬひととしての未練に囚われていたのかどうか
私はお前で無い故に、わからぬが。
良い目覚めを迎えたようだな
私の――…白い薔薇。
[蒼天は地に堕ちた。
胸を鳴らすこれは、其れを惜しいと思う何か。
けれど淫猥に囁く声音に曇りは無く
新たな眷属を歓迎している]
[響く声、
そして、フロレスクは完全に落ちたか。
と、思えど、
それをもう何かいう資格はまるでない。]
――……
[声は出さぬが気配は伝わっただろう。]
はい、目覚めはとても心地よく、
感謝しております、旦那様――……、
[惜しまれたものを省みることはなく、
声はまどろむような甘えを滲ませて]
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