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[弓形の唇が、好いことを知りたいと囁く
ああ、それなら望むのは先程の――]
……ケイイチ
触れて、くれ
[耳朶を擽る指先はそのままに一度目を伏せ、後ろ手で帯を解いた。そのまま長着を押さえる腰紐も解いてしまえば、弾みで緩んだ長襦袢の襟元から鎖骨が覗く。指先を少々寄せただけで震えを見せる程意識が耳へ、音へと傾けられている
……触れられるのは好かった。温もりが胸の奥を掠めていく気がして]
[黒髪へ指を絡めるようにして右耳に掌を押しつけてやれば、己の内を巡る血流の速さまでも捉えられてしまうのだろうか]
─昨晩・回想─
そう、信じたいね…
[
自分たちの言葉なんて本当に
どれも真実でどれも嘘で。
食事の合間に囁かれた言葉
続きはいつ?と訪ねた答えは
ふふ、また邪魔が入るんじゃない?
いいよ、付き合う
どうせすることもないなら
手を動かすだけでも違うだろ
誰かれ構わず食いたいなんて
冗談をまとわせ言ずに済む
[相変わらず笑ったままそう告げ
彼と自分はどこか似ている気がした
冗談の様に、本気の言葉を
本気の様に嘘の言葉を囁く]
俺もその手はよく使うよ
絵を見て何を考えていたか
本当のことを言いたくなったらまた話を
[つまるところ自分は退屈で、誤魔化されたことが不満なだけ。クアトロの
[途切れて返される言葉。
にぃ、と笑みを浮かべ、ヘッドフォンを近くに置く。]
承知しましたよ、っと。
[息が乱れる様子を感じながら解かれる帯にふと見入るように抱えた手は止まる。襟元が崩れ、現する鎖骨にこく、と喉仏を動かした。
与えられる擽るような耳朶の感覚に欲が込み上げる。
とくり
己か、参休の鼓動か。どちらともつかない音を聞いて帯が解かれるのを待ち、その体を寝台へと横たえた。]
その袂、あまりはだけさせない方がいいね。
とても色っぽくなるから。
[襟に手を伸ばし、撫でるようにその飾りに手を掠め、細い身体に触れる。
自分は下位であるのに下に見る様子は心底不思議な感覚だった。]
……───。
[何もすることがないなら。
宙に手を浮かせて、何度か握っては広げてみる。
もちろん何が描けるわけでもない。
見透かすのは得意でも、見透かされるのは得意じゃない。
誰にも等しく、立場の弁えない口調で
何も考えていないように思えてその実。
誰にも等しく、距離を保って
何を考えているのかわからない【4】の瞳。
短い会話の中に感じた類似。
浅い息を吐いた。]
![]() | 【人】 負傷兵 ヒュー[その頼みを聞き入れたのは、ざっと区切って何区画目の廊下を履いていた時だったか。 (95) 2014/12/25(Thu) 00時頃 |
![]() | 【人】 負傷兵 ヒュー …… (96) 2014/12/25(Thu) 00時頃 |
![]() | 【人】 負傷兵 ヒュー[―――写真の不在に気付いたのは、主を探して屋敷を駆けまわった後だった。 (97) 2014/12/25(Thu) 00時頃 |
───傍、こん?
[下位の男に命令の力などない。
けれどもこれは『懇願』ではない。
渦巻く渇きを満たしたいが為。]
わしと暇潰し、……しょーや。
[一滴落とす、罠。]
──嫌よ。
貴方と暇潰しをすることに、何の意味があるのかしら?
[己が他者と交わろうとするのは己が目的の為だけ。
それ以上もそれ以下もない中で、彼の為に何かしようと思える何かがあるわけもなく。
声音は蔑む色を濃くして、口元は薄く歪めたまま。
もしかしたら、過去に何かあったかも知れないが、それも今の己には関係のないこと。*]**
暇潰しに意味なんかなかろ。
『オニーサマは幾分冷たくあられますこと。』
[髭面の糸目が、目の前の端正な男の口調を真似て揶揄する。
蔑む色には唇に弧を浮かべて、笑って見せる。
こんな風に揶揄するのは初めてか、過去にもあったのかもしれない。
思い出そうともしない『今』、そんなことはどうでもいいことなのはお互い様か。]
[袖机へ置かれるヘッドフォンを横目で追う。そのまま聴覚に重きを置くケイイチが音源を脇へやった意味へふと思いを巡らせてしまい――ひゅ、と喉が鳴った。
“意識を全てこちらへ振り向ける為ではないか”だなんて思考が過ぎってしまったなら、自ら言いつけた事であろうとも少々動揺するというものだ]
……ケイイチ。
[背を寝台に預けて低く囁く。耳元に当てていた手は下方へと滑らせて、時折上下する喉仏に親指の腹を当てた]
色香であれば……
其方の方が、ッ……余程。
[掌が此方の身体を滑る度に釣られて動く鎖骨であるとか、あるいはゆっくりと囁いてみせる口元であるとか、光源を負って濃く落ちた陰が個々の動作を際立たせていく。それらを眺める目元は随分と熱に浮かされ、ケイイチに向けて囁く声は時折喘鳴を間に挟んだ]
[肌を探られる度、身体の芯が熱を持っていく。指先などもうきっとケイイチのものより温度を上げているだろう。
縋るようにケイイチの襟元を掴み、もう一方の掌で腹の辺りに触れた]
……いいの、か
[“こちらばかりに与えていて”とまでは口にしなかった――長々と喋る余裕はもうあまりない。だからケイイチを引き寄せて、同じ温度を湛えた場所がないかと探りを入れる]
昨晩薬を飲んでいないね?
なにを。
ちゃんと飲むって、持っていったじゃろ?
[息をするように嘘を吐く。
まさかそんなこと有りはしないだろうとでも謂いたげに。]
しっかり飲んだよ。
[肩を竦めて、隠すのは微かに上がった息。
『吸血鬼』に隠しきれるとはあまり思ってはいないが。]
そう……
[クアトロの嘘に吸血鬼は糸のように目を細め、]
"今晩は必ず薬を飲め。"
[次の瞬間に見開いた双眸は紅く紅く血の色に染まっていた。]
[低く囁かれた声にふと静止の意かと考えを過る。まさか動揺しているとは知らず。だが喉元を猫のようになでられれば甘えるように笑う。]
さー?それはどうだろうね?
[さぁ?そう言われるなら、と上を脱ぎ、細いとはいい難い身体を露にする。
時折摘んだりくるりと輪を撫でたりする強い刺激に変えながら色を帯びる喘ぎにずっ、と中心な血が溜まる。]
でもね、凄くかわいいよ。
[クス、と男女の交わり最中のような甘い言葉を紡ぎながら暫し立場逆転を楽しむ事にする。]
[自分が温度を持ったのか、また彼の体温が低いのか。肌に触れる指先はヒンヤリとしていて心地いい。身体に触れる行為は何処か暖めているようで。
グイッと突如身体を引き寄せられればいいのか、と。]
うん?――――下位が上位を食べていいのかって?
いいよね、高い声が聞こえるんだし。
[先は予想できたけど敢えて誤魔化してみる。参休があまり上下を区別すると思わないが。コテり、と首を傾げて少しばかり煽ってみる。
ついでに反論を口にされる前に近くなった顔に唇を寄せ、口を吸う。
受け止められればそのキスは舌を交え、深い深いものに。]
今度の誘いは、
邪魔のないところで
[ふと思い出す
赤い子犬。彼は自分の命令を守ったのだろうか。]
朝は確認ができなかった
[次は見届けてやりたい。
上書きされるまでそのままなのか。
それとも時間で効力を失うのか。**]
────はい。
[くっくと喉の奥が揺れる。
薬を飲まなかったことは、簡単にばれていたらしいということよりも
余程あの『薬』が大事なものなのだろうという印象を抱く。
実に、飲みたくなくなってくるものだ。
抗いきれぬ命令に、口は嫌でもYESを吐くが。]
そうね、貴方には意味のないことかも知れない。
それでもアタシとって暇潰しは、アタシの未来のためのステップだわ。
[己の口調を真似されたのが癪なわけではない。
己の在り方を揶揄されたように感じて、未だ年若い彼に何が判るものかと、そう憤りを覚え──もっとも、己さえその根幹を忘れ掛けてしまっているだろうが──語気を強めて凛と言い返す。]
[こそり、耳元に唇を寄せて囁く。]
……なんもなかったわけと違うぞ?
[飲まないことで得られただろうことを。
無という有を囁き落とす。]
長く生きたら忘れっぽくなるんかのぉ。
そういうのを『御執心』っちゅーんじゃで。
羊飼いサン?
[唇の端を吊り上げて笑う**]
[クアトロの言葉に吸血鬼は何を言われたのか分からないといった風のきょとんとした表情になった。]
迷子になった子羊が例え君でも私は同じようにするよ?
[釣りあがった彼の唇の孤が描く意味を吸血鬼は知らない。]
我慢してたのに…
[下唇を指で押し開き、舌先をしのばせ、彼のそれを追う。頬も体もあつい彼の体温。
湯気で視界が隠れればいい
水音も湯の音で紛れるだろうか
彼の身を引き寄せ、濡れた体が触れる距離]
───俺のことは二度と助けるな。
[口から滑り出たのは訛りのない言葉。
写真に映っていたのと変わらない冷めた無表情。
見覚えがあるのは、主だけであろう。
男自身さえ忘れてしまったはずの、昔の自分。]
ん?
や、あ、すまん。
お前さんが気色の悪いこと謂うけぇよ、ふはは。
[頭が痛い、靄がまた少し薄くなる。
薬を飲まなかったのと引き換えに。
誤魔化すようにいつもの通りに笑って見せて、厨房へ向かう主の背を叩いた。]
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