94 眠る村
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キミの大切なものを
沢山奪ってやったのに
沢山嘆かせてやったのに、
絶望しないんだ。
諦めないんだ。
キミなんて、
何もできない弱い女だってのにさ。
…、弱いくせに。
弱いくせに。
――― 人間の、くせに。
[望む死が与えられず、生き続けられる苦しみ]
[奥歯を噛む姿は誰かと重なる]
[それでも][エイトは、――― 宿主を演じ続ける]
[―――たとえ、どんな状況であろうとも 演じるのが]
[どこまでがエイトで]
[どこまでがローズか]
[解らなくなるほどに]
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―― 宿 ――
[老人がそう言って食堂の扉を開けば>>41 代わり映えのしない服を着替え、 綺麗に髭をそり落とした男がそこにいた]
…、…。
[男の姿は食堂の一枚隔てた壁の向こう。 力なく壁に背をもたせ、 赦さないと揺るぎなく言ったその双眸が、呆然と宙を漂う]
(44) 2012/06/19(Tue) 18時頃
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ケヴィンは、ティモシーの姿が視界に入っても、宙を見詰めたままの視線は動かず。
2012/06/19(Tue) 18時頃
ローズ、…ボクはねェ
ケヴィンを"人狼"と知っていて
それを護ろうとしているローズを"演じている"
それを完璧に、成り変わって最後までやりきるだけだよォ?
[その結末がどうであれ、と][エイトはくつりと小さく嗤う]
人は大切なものを護るために 嘘をつく。
だけど、ローズ。
…キミはそれが とっても下手だよねェ。
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[老人の哀願にゆっくりと顔を向ける男の焦点は合わず。 繰り返される言葉を耳に、男の脳裏で はじまりの日から、今までの記憶が廻る廻る]
なにを、信じる…
なにを――
[信じている。それらは、成り代わる者だと。 ブローリンが口にした御伽噺など、知ってはいても信じない。 現実は、めでたいところで幕を閉じても続く。
信じていた。刺青を触れ合った時に感じた、恋人の残滓。 クラリッサのように彼女もまた――そう、なのだと]
(48) 2012/06/19(Tue) 18時頃
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[けれど、
" わたしは、わたしなのに "
――けれど、本当に、信じるならば]
――――。
[半開きの扉から、聴こえる声に見開く目>>47]
…、ローズ…
[すれ違い様、老人の肩を撫で落ちる手は力なく 二人の前に姿を現した男の顔色は蒼白に。 戦慄く唇が、恋人の名を呻いた]
おまえは――…
(49) 2012/06/19(Tue) 18時半頃
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ケヴィンは、ローズマリーに話の続きを促した。
2012/06/19(Tue) 18時半頃
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…いやだ。
[揺れる恋人の瞳。長い睫に濡れた跡。 男は目を逸らさず見詰めて、はっきりと口にした]
(51) 2012/06/19(Tue) 19時頃
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おまえの…
[そばに、いると。開きかけた唇から漏れるのは]
――――…
[乾いた、音]
(54) 2012/06/19(Tue) 19時半頃
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[目の前が、暗くなる]
(55) 2012/06/19(Tue) 19時半頃
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[歩み寄ろうとしていた足が、ぐらりとたたらを踏んだ。 息ができない。周りの声も音もやけに遠い。 鼓動だけが、鼓膜を打ち続ける。
ちりちりと黒く狭まる視界に、恋人を見詰める瞳がひどく歪む]
――――…て、やる。
[腹の底から、低く、重く]
(56) 2012/06/19(Tue) 19時半頃
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――――殺してやる。
(57) 2012/06/19(Tue) 19時半頃
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ち、がう
違う、こんな はず。
[エイトは知らない]
[知らない故に]
ッ、 ――――――― ローズマリィッ、貴様 …
ちがう、全て筋書き通りだった、はずだ
いつだ、いつから狂った
ゼロが正体を暴かれたときか、
あの弱い魔女が喋ったときか、
いつから、いつから、
――― 一体、…いつから だ
ボクは、こんな甘い女に負けたっていうのか
ありえない、ありえない
人間ごときに、負けるなんて
殺すのはボクらの方だ
…、ありえない
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[憎しみに目を滾らせ]
…わかって いたのに
[一歩、ゆっくりと踏み出して喘ぐように呼吸をする。 潰れてしまいそうな喉を、左の手が締め付ける]
胸が――張り裂けそうだ
[また一歩踏み出し、右の手を彼女へと伸べる]
(58) 2012/06/19(Tue) 20時頃
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……、人間 ごときに ―――。
[言葉が消え入り始める]
ッ、 …
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ああ。
[庇わない。押さえた喉元、握りつぶしてしまいそうだ]
お前を残して、ひとりにはさせない。
[触れる前に拒まれる手を、握り締めて。 それでも男はもう一歩、距離をつめ女の瞳を間近で見詰める]
(61) 2012/06/19(Tue) 20時頃
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…、それでも ――――。
[歪む恋人の唇を見詰め、 免罪符のように紡げず噛み殺す言葉。 女の肩口へ額を落とせば、己の喉と女の手を握る手の力が抜ける]
…、…
なぜだ。
[ぽつりと、落ちる言葉]
(64) 2012/06/19(Tue) 20時半頃
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[恋人の肩に額を乗せたまま男はしばらく押し黙る。 脳裏を巡るうそとほんとうの狭間で、 きつく眉間に寄せた皺は布越し女にも伝わるか。
無理やり吐き出す吐息が熱い。 弛緩した男の手指はそれでも女の手から離れずに]
……、それで、これから、どうする?
[そっと指を絡め、男は顔を上げる]
(68) 2012/06/19(Tue) 21時頃
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[バァン、と跳ね除けられる感覚が身を襲った]
ッッぐ、… な、んだ。 何が、――。
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