22 共犯者
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−真昼の森>>127−
[「かれ」の小声が、耳の縁から穴へとこぼれ落ち、鼓膜を震わせる。]
………はい。
[小さな声で、短く応える。 まるでそれ以外の返答など持ち合わせていなかったかのように。]
(132) 2010/08/04(Wed) 23時半頃
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―夜の森―
[ 血濡れた顔を上げ、狂熱にうかされた月の瞳が同胞を誘う。
共に――と。
覆い被さっていた身体をずらし、同胞が充分にこの神饌を味わえるように招き寄せた。」
[くん、と突然濃い血の臭いが流れてくる。
同胞は「ホリー」を襲うと言った。
だがそれは、あの乙女の匂いでは無い。
人の子が、自ら人の子に手を下したか。]
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−真昼の森>>134−
[自分の身の上から、膚と熱が離れてゆく。 その感触の寂しさに、心の中で手を伸ばす。思念の渦は、まるで縋るような目の色になった。
月のような宵闇色の「かれ」の双眸に、己の顔が映る。欲望にまみれた己の表情を見せ付けられることになり、羞恥で全身がかあっと熱くなった。]
(138) 2010/08/04(Wed) 23時半頃
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−真昼の森>>137−
え……? 人として生きることを……すて、る?
[その言葉に、はっと目を見開く。 掠れるような声で、問いを投げかける。]
則ち貴方と同じものになれと……そうおっしゃるのですか?
(140) 2010/08/04(Wed) 23時半頃
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―夜の森―
ああ、共に……。
[抑えきれない衝動と共に、この供物を愛でる様に捕食し始める。]
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−真昼の森>>142−
血に、濡れ……
[「かれ」の口内で骨と骨がかちりと鳴るのを聞き、寝そべったままの上半身がびくりと踊った。先程までとは裏腹に、全身から一気に血の気が引いてゆく。]
……つまり…… ヒトの身でありながら、ヒトを裏切れ……と。 あなたはそうおっしゃるのですね。
(147) 2010/08/05(Thu) 00時頃
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−真昼の森−
[真昼だというのに森は昏くなり、大地の熱が冷える。]
あな……たは……
[人知を越えた越えたその圧倒的な力に、ただ息を飲むことしかできない。]
(ああ……「かれ」は本当に森の主なのかもしれない。恐ろしいくらいに強大で、私の想像など遥か越えるほどの力を持った……)
(148) 2010/08/05(Thu) 00時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 00時頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 00時頃
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―真昼の森>>150―
[答えは返らない。 その代わりにあるのは、真っ直ぐにこちらを見つめる目。]
………。
[天を仰いで、真昼の月を探す。 だが、天文学など専門外であるイアンは、それを見つけることができなかった。
脳裏には、村の人々の言葉や、故郷に残してきた婚約者の笑顔など、現世にまつわるものが様々に浮かぶ。
「何かを為したいのならば傍観者を気取らなければいい」と告げた、古風な雰囲気を纏う娘の声(>>96)や、「お節介が居てくれないと村は変わらない」と言ってくれたミッシェルの声が(>>100)
だからこそ、イアンは迷っていた。 このまま人の世界に戻るのか。 それとも、「かれ」を知ることを受け入れるのかを。]
(154) 2010/08/05(Thu) 00時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 00時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 00時半頃
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―真昼の森 >>159―
[イアンを拘束していた「かれ」の熱が解け、ゆっくりと自分の呼吸のペースを取り戻す。]
「ヒト」でありながら、「ヒト」でなくなる…… もしそうなるとしたら、私は何になるのだろう……
[昏い色を落としていた木陰が、何事も無かったかのように揺れる。その向こうにある太陽を暫し見つめた後、イアンはゆっくりと起き上がった。]
……夢、なのかな。或いは幻か。
[だがその独り言が間違いであるということを、イアンはその唇をもって知っていた。血の残り香が、牙の感触が、「かれ」が纏う生命の色が、全て混じり合ってひとつの芳香を創り出していることに、イアンは気づいていた。]
(162) 2010/08/05(Thu) 01時頃
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[森の中を、彷徨い歩く。 その表情には、迷いの色が浮かんでいた。
「ヒトの世界」に戻るか? 「ヒトならざる世界」へと飛び込むか?]
いずれにせよ……もう「傍観者」ではいられない。 私は「巡礼者」になった。
否。 私もまた……森の中を歩く列のひとり。 最初から、ずっとそうだった……
ああ、そうか…… 今年は、太陰暦で13の月がある年ということか……
[胸のポケットから2枚、柊の葉を取り出す。それをじっと見つめて、イアンは無言で*目を伏せた*]
(167) 2010/08/05(Thu) 01時頃
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人の手で同じ人の子の命を消す。
彼らは我らを探す。
昔はそれでも「名誉」を求めて、
人の子は我らに挑んだ。
我らも人の子らのその気高い志を称え、
爪と牙を持って応えたものだが……。
この巡礼者達は、何か違う。
この儀式は、何か違う。
感じるのはただの「殺意」。
そして単純な「敵意」。
――我らはもはや神ではなく、
怪物として堕とされてしまった…?
何故だ?
我らは生きながら、既に殺されてしまっているのか?
いつからこの様な事に―――。**
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―森の中:昼から夕方へ―
[しばらく呆然としたまま森を歩くイアンの視界に、泉の縁に座るオスカーの姿が見えた。イアンは彼の横に座り、何も言わずにただじっと泉を見つめて居た。沈黙が心地良くもあり、また悲しくもあった。
そしていくばくかの時間が過ぎた頃、意を決してオスカーに声を掛ける。]
……お辛いですか?オスカーさん。 昨晩は、とてつもなく重い責を背負った貴方に、「貴方は村役なのだから」と鞭打つようなことを言ってしまって、申し訳ありませんでした。
[それから再び、暫くの沈黙を味わうと、イアンはオスカーよりも先に広場の方へと向かうことにした。
夕焼けが背に当たる。 それはひどく熱く、ひどく甘い心地がした**]
(186) 2010/08/05(Thu) 12時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 12時半頃
――決心はついたか。
[ 昨日、ラトルの娘――マーゴを生贄に捧げることに躊躇いを見せた同胞に、彼は一日の猶予を認めた。
その決意が出来たか、と同胞に問うているのだ。]
お前がどうしても殺せぬと言うのならば、俺がやってもよい。
だが、もう待てぬ。
[ 声の底に冷たい刃を秘めて、同胞に選択を迫った。]
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―夕方:教会にて―
[青年記者は、ひとりで書物を読んでいた。 教会にある書庫から借りた、月の暦に関する本を。 取材ノートの横には、この村の伝承に関する本が置いてある。もう既にメモを取り終えたのか、その本の上には愛用の万年筆が置いてあった。]
……そう、か。
[何かを咀嚼するような口調で呟き、本を閉じる。 教会を去る頃、老司祭に礼をすると、]
「もし多くの資料が欲しければ、此処よりもアレクサンデル家に頼むといいだろう。あそこの家は、代々村長の遠縁だ。村の歴史に関する資料もあるだろう。」
はい……ありがとうございます。 ちょうど今日からアレクサンデル家にお世話になる予定でしたし、家主さんにお願いして、資料をお借りするつもりです。
それでは……また生きてお会いできましたら。
[小さく一礼すると、青年記者は広場へと向かった。]
(202) 2010/08/05(Thu) 18時半頃
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「森を歩くのは十二人 祠へ行くのは十一人 帰ってくるのは十人 次の夜には十人 柱を廻って九人 帰ってくる八人 又の夜に八人 泉を汲む七人 帰るのは六人 寂しい夜は六人で出かけ 門をくぐる五人の中から 帰っていく四人を選んだ 最後の夜は四人 満月近づく三人 終しまいは二人 二人はお別れを言い 一人は長い永い旅に 夜明けは誰もいない」
(203) 2010/08/05(Thu) 18時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 18時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 19時頃
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―夕刻の広場―
……ふう。
[久しぶりに紫煙を肺に入れる。 肺から心臓、そして血管を廻り、紫煙はゆるやかに身体中を走り回る。]
今宵は8人……柊の葉が戻れば、祭は終わる……
生贄は12人…… されど……巡礼者は……
[ブルーノから貰ったパンを配るトニーの様子と、パンを手にする「生贄」の様子を観察している。]
(216) 2010/08/05(Thu) 20時頃
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―夕刻:広場にて―
そうだったのですか、トニー。
[少しだけ申し訳なさそうな表情をして、トニー>>217の顔を見た。]
……いえ。 先ほど教会に行きまして、司祭様から資料をお借りしたのです。この村の伝承にまつわる本と、「月の暦」の本を。
司祭様に資料を出していただいたんです。 もしかしたら、司祭様に少々ご無理をお願いしたかもしれません。
残念ながら、この祭の伝承の発祥については、よく分かりませんでした。その代わり、この祭で亡くなった――…いえ、この村の言葉で言うならば「森に還った」方のお名前や職業などを拝見することができました。
(219) 2010/08/05(Thu) 20時半頃
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―巡礼二夜目・夜の森―
[憤りをホリーにぶつけるかの如く。
彼女が血族かどうかは彼にはわからない。
刺青と古傷に塗れた彼の背中は
繊細でしなやかな同胞のそれとは対照的だったかもしれない。
行為を終えると、鮮血で濡れた口を拭い、
同胞の方へ改めて寄る。
彼の力、彼の英知、彼の肉体、彼の香り。
彼の胸に付いた血液を舐めとり、彼に乞う。]
俺はアンタを護りたい―――。
[再び出会えた大切な同胞。
それ以上に。
彼は「神」で有り続けなければならない。]
………。
[やがて、一つの決意を固め、
同胞に向けて、問いへの答えを口にする。]
ラトルを―――生贄に。
ただ、俺に、やらせて欲しい。
[ 血を舐め取る同胞の舌が胸に触れる。
まだ狂熱の余韻に酔う彼は、僅かに開いた唇から艶を含んだ喘ぎを洩らした。
「護りたい」と言う言葉が同胞の口から零れた時に、その月色の瞳が少しだけ揺れた。
その揺らぎは瞬時に押し込められ、淡雪のように消える。
続く「ラトルの娘は自分がやる」と言う言葉も想定のうちではあったけれど。]
――そうか。
分かった。
[ 彼はただ、短く答え、
そして、もう一度祝福を与えるように同胞の額に口接けた。]
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―夕刻:広場にて―
――…少し気になったのは。
「森に還った」方々の中には、所謂「無職」というか……あまり社会になじめない方も何人かいらっしゃったようでして。
他の資料を読まないと詳しくは分からないのですが、どうも自ら立候補したり、くじを引いたわけではない――予め村の長によって強制的に参加することが決まっていた方もいたようなのです。
そして、もう一点。 これは以前、村長夫人からお聞きしたことなのですが、「祭」の参加者は決して12人というわけではなかったようです。
その年によっては、1人多い「13人」で構成されている年もあったのです。
祭の生贄達の列をうたった歌があったでしょう?>>2:493 歌詞の中で「六人」と「四人」と「数え直し」が垣間見られることから、12人では足りなかった可能性も示唆されます。
参加者が13人だった年は、村長夫人のお話と資料から、太陰暦でうるう月があった年だと言われています。
そして――…今年は、その「うるう月」の年にあたります。
(224) 2010/08/05(Thu) 21時頃
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―夕刻:広場にて―
現在では、うるう月を換算する方がおらず、「12人」が必ず祭に出るようにと決められています。そして、今年の祭は「12人」が集められた。
だから「うるう月のある年に歩く巡礼者」のルールが、今年の祭に適用されるかどうかは、私には分かりません。
……不思議ですよね。 私がこうして祭に惹き付けられて、「生贄」の皆さんと共に歩いているという事実が、まるで「13人目の生贄」が私であるような心地がするのです。
[森の闇に落ちる夕焼けの色を頬に受けながら、イアンは困ったように微笑んだ**]
(228) 2010/08/05(Thu) 21時頃
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>>260 えっ? 襟……ですか?
[ヴェスパタインが手を伸ばすのを、不思議そうに受け入れる。]
(263) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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―それより以前のこと/夕刻:広場にて―
[ミッシェルの呟き>>235に、首を傾げた。]
そうですね。その人数を御使い様が決めたのならば……ですけれども。
もしかしたら、村人の方が決めたことなのかもしれません。いずれにせよ、これ以上のことは、別の資料を見ないことには……。
12は「余分な程に完全」と言われる数であり、一方の13は不吉な数とされていますから、様々な文化と融合しているうちに、「12人」で固定されてしまったのではないでしょうかね。
[とそこで、>>233ヴェスパタインの言葉に頷く。]
ええ。亡き村長がこの村の伝承について記したものです。そちらを詳しく見ても、何かが分かるかもしれませんね。先日、流し読みをしただけなので、詳しくは覚えていないのですが。
後で読んだら皆さんにお伝えしますね。
(271) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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―それより以前のこと/夕刻:広場にて―
[マーゴの困ったような顔に、つられて苦笑する>>237]
……そう、ですね。 私が死んだら哀しむ人はいます。
ですが、この村の祭を取材することが私の「仕事」である以上、その様子を外側で眺めるだけというのは赦されません。
命を喪うのは怖いです。 けれど……何故か逃げてはいけないような、そんな気がするんです。
もちろんあなた方の事を悪く書くつもりはありません。それだけはどうか知って戴きたい。
[俯き、虚空に放った溜息の音は、鳴り響く鐘の音の下敷きとなって、消えた。]
(272) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/05(Thu) 22時半頃
[ 同胞の後姿を注意深く観察する視線。]
無理はするな。
[ ぽつりと一言だけを送る。]
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>>265 え……?
[ぱくりと口を開いて、小さく息を吐く。]
あ、ありがとうございます。
(285) 2010/08/05(Thu) 23時頃
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