64 色取月の神隠し
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まあ! トラツグミの音色……
奴延鳥さんやろか?
二条の宴でお会いして以来やろか?
少し離れてますし、
久しく聞いてませんでしたから
間違うてたらすんません。
[刻を同じくして加わる気を感じれば、その音色は少し高らかに綻ぶ]
音楽に縁の深い身だからなぁ。
わかりやすかったんだろう、お互い。
[志乃の弦の音に、低い笛の音が応える]
遠くからお疲れさん。
そうともさ、狐だよ。
九尾の……には、及びもしないけどね。
一応、化けちゃいられるみたいだ。バレやしないかと、びくびくしてるよ。
あんたも、九十九神の類かい?
辰次と似たようなもん、かねえ。
ありゃあ懐に入る大きさだから、まだマシなのかね。
ふうん……上方って言われても、ぴんとこないけど。
あたしは、この辺りから離れたことがないからね。
言葉が違うから、遠いんだろうねえ。
この日を逃しますとなぁ
…なかなか難儀やかね
せやなぁ…けど大禍時やなんて…
ヒトの都合で付けた言葉は
うち好きではありませんよぅ?
うちらはうちらの理の世界
忌まわれる道理もありませんやろ?
うちらにとっては禍でも
ましてや大禍でもありませんやん。
まぁ、瞬きが如きはヒトの命
うちらの理がヒトにとっては
どうかは知りませんけれど?
皆さん何かされますのん?
ん……。
[擦れたような、鳥の声。黒烟を纏う気配は、今までに感じたことのない――けれど、知っているもの]
ああ、あんた、
[声を掛けようとしたところへ、高い箏の音]
……知り合い、かい?
確かに己は、鵺なるあやかしだけれども……。
えと、そちらさんは。
……もしかして、前に都ででもお会いしたことが、ありましたっけか。
[奴延鳥――男を鵺と喝破した、喜色の滲む声音に首を傾ぐ]
九尾さんには会ぅたことありませんけど、
六尾さんやったら、伏見におりましたかなぁ…
ええ、遠い言うても、ヒトの足でやろか?
せやなぁ、龍の笛の方と同じやな。
琴古主とも呼ばれますけど、
九十九でおぅてますよ?
大勢の胞と介すのは久しぶりやからねぇ
どうぞよろしく
人にとっては禍に思えること。
…俺にとっちゃ、ちょっとした悪戯に過ぎんさ。
悪ガキってのは、悪戯ができる機会があれば実行に移すもんだ。
[樹の上で笛を吹きながらも、聞こえぬ声は飛ばす。
悪童のようなものだからこそ、雷門は己にとって「近所の雷親父」の如き厄介な存在である。]
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売れるもんだねえ。
[いくらか客をさばいた後に、中身の減った行李を覗き込む。 銭を入れた袋は、ずっしり重い]
せっかくだし、何か、買ってみようか。
[周りの屋台へ視線を向けて、鼻をひくひくさせる。 そこへふよふよと、白い小さな毛玉が飛んできた]
おや。 あきのしん、かい?
[へんじがない。べつのけだまのようだ]
生まれたてかね……気をつけなよ。料理の火に飛び込んだりしないようにね。
[ちょい、と指でつついて見送った]
(63) 2011/09/13(Tue) 22時半頃
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ろくび……。
[六尾、ということだろう。
思わず自分の尻尾を振り向いた。ふさふさとした尾は、一本]
世の中ってのは、広いねえ。
あやかしの世も、さ。
ああ、よろしく頼むよ。
[箏の音は弾む]
清涼殿で、大立ち回りしてましたやろ?
うち、その時おりましたんよ。
いぅても、その頃はこうやって爪弾くことも叶いませんでしたからなぁ。
お話するんははじめてですよぅ?
あの日の寂しげで憂いの声が綺麗でなぁ。
うちずっと覚えてましたんよ?
ヒトは不吉や言うて、騒いでましたけどなぁ
あらぁ……その気は確か…
うちが村に来たときに
お兄さんもあやかしやったんやね。
えらく可愛らしい気やったからなぁ。
[音亡き箏の音は愉快気を纏う]
ぴ、
[明之進の「つくね神」に、笛の音が少々乱れた]
祭りの決まりごとなんて…
“無粋な真似をしなきゃいい”以外には何もないさ。
[気ままなあやかしの言葉。
それは、余所からやってきた者にも向けられていたようだ。
やがて、演奏へと集中し始め、夜の間は、聞こえぬ声にもなかなか返事をしなくなっていただろう*]
[箏の音が聞こえると]
うん、けしゃらんぱしゃらん、だから。
[己の正体を伝える。
眠そうな囁きは上手く言葉を紡げていないがそれはさておき]
いっぱい集まって、あやかしも おまつり?
火を食べたり できるかな
龍の笛……んー龍っつぁんでええやろか?
元気があってええなぁ。
うちは、できひんのよねぇ……この身体(箏)やと
折角の逢魔時やから、愉しんで
愉しませたらええ思うんよ。
雷門さんも、なんや忙しのうみたいやし
あまりうちらを気にした風でもなかったからなぁ。
せやけど、ここは霊峰の麓やから
気ぃつけてな?
ヒトもヒトならざる力持ってるやもしれへんし
おう、好きに呼んでくれて構わないぞ。
ああ、そういや…むかーしも、遊びを邪魔されたことあったっけな…気をつけんと。ありがとう。
[志乃の忠告に、何かを思い出したようで。]
あぁ、それと…鵺の?
雉、少し貰った。うまかった。礼を言う。
[自分への贈り物ではなかったが、分けてもらった以上は告げておいた*]
清涼殿、ね。……あれはなぁ。
[女の口から零れる言葉に、
男の面に何とも言えない表情が浮かんだ。
寄って集って討伐され、残った欠片が人の態を為しているのが今の男だ。
落魄し、かつての大妖とは別の存在に成り果てていたから
箏の女の言葉には苦笑するばかり]
……あぁ、姉さんか。さっきはどうも。
[狐の女の声が聞こえれば振り向いて、
知り合いか、と言う問いには]
どうにも、己の昔のやんちゃを見られていたらしいなぁ。
[ばつが悪そうに、小さく肩を竦めた]
……なぁに、あれは狐の姉さんにあげたモンだ。
己が礼を言われる筋でもないが――、
まぁ、九十九の旦那も喜んでくれたんなら、何よりさ。
[思わぬところから出てきた雉の礼に、答える]
|
―屋台の並ぶ辺り―
[自分が商売をしていた場所の近辺から、見ていくことにする]
そりゃ、何だい?のりまき? のりで巻くから、のりまき?
こっちはかっぱまき?……かっぱで巻いてあるのかい? 何だい、違うのかい。
稲荷寿司は知ってるよ。たまに、知り合いからおこぼれが回ってくるからさ。
[寿司屋台の主人を困らせながら、海苔巻きを買った]
(85) 2011/09/13(Tue) 23時半頃
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まだまだ非力な子供。
こんな時間に独りでは危ないやもしれぬな。
[肩を叩くと同時に一平太の周りを本人には見えない霧が包む。
それはならず者達を惑わす幻覚の霧。
父親から受け継いだ僅かな能力。
故に"人間"相手にしか通用しないであろうが。]
――――気をつけてな。
[届かない声をもう一度押し掛け弟子に掛けて。
とぼとぼと帰っていく後姿を見守った**]
……そうかい。
[都の様子も、清涼殿とやらが何なのかもわからないから、
想像するのはただ暴れているあやかしの姿。
それでも、己が目にした傷跡を思えば、茶化すのは憚られた]
都で会ったのがこんなところでまた会うなんて、
世の中ってのは、狭いねえ。
[さっきと逆のことを言い]
ああそうそう、雉、ありがと。
人間に料理してもらってみたけど、旨かったよ。
[辰次に重ねて、礼を言う]
ん?
[何となく違和感を覚えて、その正体に思い当たる]
ああ、あたしはね、芙蓉ってんだ。
あんた……名はあるのかい。
[狐の姉さん、と己を呼ぶ男へ、問うた]
やんちゃやなんて、とても凛々しい立ち振る舞いに、うち心が震えましたんよ?
[離れ姿は見せずとも、鵺の方が複雑な思いを滲ませているのは、音色を聞けば理解も出来て]
え……えぇと……
お声を聞けてはしゃいでしまいましたわぁ。
[ごめんなさいをするように、しゅんとした音が届いたか]
広くて狭いんは、ヒトの世もあやかしの世も変わりませんよん。
芙蓉さんも、上方来たらええんよ。
稲荷山の宇迦之御魂様は、
気さくな方でねぇ…
嗚呼うちも雉戴きましたよぅ。
おおきに。
稲荷山の……ああ。
お名前だけは。
[親戚の友の親戚の、そんな狐付き合いを通じて、遠い主とも言える神の御名は、伝わっていた]
へええ。会ったことがあるんだ、ねえ。
[感心したような、羨ましそうな声が漏れた]
……あぁ、名前かい?
己は、今は藤之助って名乗ってんだ。
芙蓉ね、なかなか佳い名じゃないか。
藤に芙蓉に……夕顔。何とも雅な名が揃ったもんだ。
[狐の女――芙蓉に答え、ふと、夕顔のことを思い出した]
……清涼殿でのことは、何て言うのかなぁ。
絵巻物でも見るような感じなんだよなぁ。
[大妖の欠片でしかない今の男にとって
かつての立ち回りなど、どこか他人事のような記憶でしかない]
まぁ、昔の俺のしくじりだ。
あんたが気に病む必要はないさ。
[しゅんとする筝の女を慰めるように、軽い調子で]
[芙蓉に、そして箏の女にも
続けざまに雉の礼を言われれば]
……確かに世の中ってェのは
思ったよりも狭いのかも知れないね。
[意外な繋がりを知って、くつくつ笑った*]
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[自分の店の場所へと戻り、座って海苔巻きを食べていると、知った声が聞こえた>>104]
おや、おはよう。……眠気覚ましね、何かあったかな。
[ごそごそと行李を探る]
さや?じんえもんせんせ?
[雉に尻餅をついた娘のことは「あさいさや」だと思っているし、顔に何やらくっつけた男のことは「めがね」だと思っているので、ぴんとこない様子でいる]
寝るのが一番なんだけどねえ。 そうもいかないなら、これなんてどうだい。
[厳重に包んであった薬草を、一束出して差し出す]
(114) 2011/09/14(Wed) 00時頃
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