162 絶望と後悔と懺悔と
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お言葉ですが!僕は、牛も豚も鶏も魚も食べられませんので。
[主義というか、単なる偏食なのであるが。
言葉を返す様は、いささか申し訳なさそうだ。]
……どうせ、「選択」の自由が認められないのであれば、
「偉い方」の下につきたいものですよ…。
[彼の目には「諦め」の色が広がっている。]
[年少の者たちの方を振り返って、気の抜けた表情を見せた。
その眼差しが物語っている。
「もう抗えないよ。僕はもう 諦めたよ。」
…と。]
[口の中が干からびてしまいそうだ。
頷き、真弓の握る水差しを奪い取り、呷った。
唇を、喉を、水が潤してもそれは表面だけ。]
……ちが、う? どーし、て
[やはり違うのか。]
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隊長も、言ってたしなぁ…
[少し前、子どもらが目覚める前に、檜江に言われたことを思い出す。>>#1]
もし、守護部隊への入隊を希望する奴がいるなら、 …できるだけ傍で、支えてやりたいんだ。 一応、さ。…家族みたいな、もんだから。
[苦笑しながら頬を掻きつつ、]
聖水銀とかその辺、ジャニスの方が上手いこと説明できる気がするんだわ。 …そこ、任せても大丈夫か?
[だから早く回復しろ、と言外に込めて、頼み込む。]
(250) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
|
水?水ならここに……、
[ 明乃進の覗くものはここからは見えない。
だから、水がほしいのかと差し出そうとして、
――何故か言葉を失ったような明乃進に気をとられた]
明くん……?
[何度か見てきたから知っている。弱い息、目元が僅かに赤く見えるのは明之進に熱がある証拠だ。
表情を変えぬ彼の、その唇に濡れた牙を当てようと身を屈める。]
水で足りない身体になってしまっているようね。
おめでとう。
[そう、これで家畜から同じ吸血鬼への道を歩みだしたのだ。
これは祝福されてしかるべきだろう。]
あっ、……、
[いきなり水差しを奪われた、
零瑠のこんな乱暴な様子はみたことがなくて]
ちがう……?
[その言葉に水を求めたのに、
喉首をさしだした女性のことを思い出す]
っ、明くん……!
[その手を引いて、
咄嗟に零瑠から遠ざけようとして、
けれど自分の手はきっと届かない]
ほう。安心しろ。これからも牛も豚も鶏も魚も食べる必要は無い。
[問われた内容に喉を震わせた。
雛でありながら、難しい言葉を使い、
権謀の一端を齧ろうとさえするようで]
小賢しい。
だがお前は這い蹲って必死に縋ろうとする様が私を楽しませる。
そう簡単に傍に寄れると思うな。
[近寄りたくても近寄れずに足掻けば良い。
その小賢しい頭で失脚を謀ろうとするなら、
それも退屈しのぎになるだろう。
ちらり、ホリーに視線を投げれば、意図は伝わるだろうか]
[熱を持った背中が痛む。多分、無理に動いて傷に響いた。
自分では見えぬ傷口が開いて、血が滲む図を想像する。
水を干しても潤わないと言う零瑠。
諦観してこちらを振り返る直円。
柊は鬼を刺す木だという――]
……零瑠君、
痛く、ない?
[年長の零瑠には何度も看病されていた。
頭を撫でる手も、安心させる笑顔も知っている。
微かに首を傾げて尋ねた。]
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―そして、現在・病室:hands―
[安吾と面会したあと、少し仮眠を取るつもりが本格的に眠ってしまったらしい。
懐かしい夢を見ていた。
目を覚ませば陽は疾うに暮れ、病室にも夜の帳が降りていた。身体の痛みは残っているが、動けないほどではない。
目尻に涙が滲んでいることに気付き、ベッドに横たわったまま右手で擦ろうとして、リカルダはあのとき、自分の問いかけ>>248に何と答えたんだっけかと――そんなことが気になった]
――……。
[今、傷つき血の滲むこの手に、重なる小さな手はない。
ああ、寂しいな――ほたり、止められない涙が落ちた*]
(251) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
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[水で潤う事の無い渇きに苛まれ、
同じ巣の雛の唇に近付く同胞に目を細める]
水では渇きは癒えぬ。
[渇きの背を押す様に、ヒントを与える様に自らの中指に牙を立てた。
切裂かれた皮膚から溢れる血は、嘗て雛鳥の意識を奪う
切欠になるものだったかもしれない。
だが変化した今は。
血の色は、香りは、どう作用するのだろう]
〜〜〜〜!?めめめ、滅相もございません!
どど、どうかお許しを閣下!!
[ひっ、と怯えたような表情を浮かべた後、土下座を敢行する。
靴を舐めろといわれたら、もうそれは舐めにかかりそうな勢いで。
諦めの境地か、長いものに巻かれたのか。]
(……あぁ、どっちに進んでも「地獄」、なのか)
[土下座の姿勢で、零瑠と明之進の様子を見ている。
マユミのように止めに入ろうとはもはやしなかった。
その目からは、完全に「抗おう」という気骨は消えていたから。]
[零瑠から離れない明乃進に、
どうすればいいのか、助けを求めるように見やって、
けれど気づけば直円は――]
直くん……?!
[彼は一体何をしてるのだろう、
口をぽかんと開けて見つめてしまった]
[横合いから、真弓に呼ばれる声がした。
だがそちらを振り向けなかった。
零瑠が零瑠のままでいる、しるしを何処かに探している。
鬼でなければ痛くない。
革色の瞳も、あかく刺してしまわないで済む。
もし、彼が痛むそぶりを見せたなら、
自分はすぐに彼から離れないといけない。
そうしたら二度と触ってはいけない。
けれど、鬼じゃなかったら。
血を怖がる家族が自分にしてくれたように、
頭を撫でたって、大丈夫だと手を繋いであげたって]
……っ、ぅ。
[僕のいる場所からではレイにーさんの眼の色が変わっているのを見て取れない。
でもにーさんは「生きてる」って言った。
だいじょうぶ? 僕は「よかった」って言っていいの?
僕は何が起こっているのか理解が追い付かない。
だからにーさんやねーさんに助けを求める。
リーにーさん。マユミねーさん。それから直にーさんと順々に。
直にーさんはさっきから金髪のあいつと難しい話をしているけどもしかして……]
めっそうも、…?
[やっぱりなんのことか分からない。
地面に手をついてるにしては声の調子は元気そうだし]
[トルドヴィンの視線を受け。
目の前の相手を自分の方へと引き寄せるようにした。
そして口の端からは牙が覗いていたのだった。]
お父様の祝福ではなく。
このあたしが祝福を与えるとしましょうか。
土下座などおよしなさい?
貴方はこれから、搾取し喰らう側に回るのだから。
[土下座した相手を無理矢理引き起こして自分の近くに引き寄せる。]
それとも、見苦しいからってさっさと殺して欲しい?
[明之進の背に回した指先が、服に染みた何かを捉える。
僅かに紅色に染まった中指。
牙は痛くないわけではなかった。だから正直に]
……始めだけ
[と告げる。春風に乗って届く桜花よりも甘い香りがした。
唇が触れ合い、牙の先が僅かに刺さる。
息を吸う様に細管を通り口内に広がる味は――血で。
一層の渇きを招くだけ。]
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― サミュエル ― [多磨の川の向こう――今は多魔の川と呼ばれているけれど、 そこに住んでいた頃は世間知らずで、大人しい子供だった。
そもそもここには同じ年の女の子がいなかったのが原因だ。 小さい子たちは遠慮なくぶつかってくるし、 男の子たちも小さい子たちと似たようなものだった。 ――結果、本性が露になったのだろう。
一月違いの誕生日の男の子。 サミュエルは最初はあまり話さない子だった。 あまり聞きなれない言葉遣いに、 率直に何度も聞き返してしまったせいかもしれない。
話すようになった切欠はわからない。 真弓にとっての認識は本当にいつの間にか、だったのだ。 なんとなく隣にいて、なんとなく話してて、寒い日の洗濯物干しが大変とか、綺麗な包み紙で小さい子に折鶴を折ってあげたとか、どうでもいいことに相槌をうってくれた。
一緒にお使いに行って、荷物は半分ずつだった。 本当はサミュエルが半分より少し多く持っていてくれていたことを知らない]
(252) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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あとな、これ、ちょっと相談なんだが…
[ジャニスの顔色を窺うように、悩みながら告げる。]
…行方不明の奴らのこと。 連れ去られた後は、だいたい喰われるか、 ――下僕に、させられるか、だ。
でも、あいつらが無事だと信じてる奴が、それを救いたいって言うのが多くてさ。 だから、希望を持たせてやりたいんだ。
…その、つまり。まだ、伝えたくない。 俺は、甘いかな…?
[冷静な同輩は何を思うだろうか。
この事実を伝えれば、子どもらは少しでも早く家族を救いたいと言い出すだろう。 時間をかけて軍人に育て、万全の状態で次に臨もうとするのなら、 今これを伝えるべきでない、そう考えてくれるだろうか。]
(253) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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[見つめている先があることを、 気づかれてしまっていることを知らない。 小さな優しさや、小さな寂しさのあることを知らない。
ただ、何気ない日常が変わっていく寂しさは感じていた。 一緒にいられなくなっていく、同じことが出来なくなっていく。 それを強く感じさせるのがサミュエルだ。 半分ずつだったはずの荷物は、3分の1になってしまった。
身長だって今までほとんど変わらなかったのに、 いつの間にか少し、自分より大きくなっていた。
あの橋の向こうを見つめる回数が増えたのは、きっとそのせい*]
(254) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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[まだ幼さの残る自分の感情が、今これ以上彼らを傷つけたくないと、真実から目を背けている。
世の残酷さを知ってしまった大人の自分が、いつか掴む勝利の為に隠すのだと、打算的に囁いてくる。
…どちらも本音なのだ。 経験上、知っている。
知らなければ、悩むことも、傷付くこともない。 その後に、事実を知って手酷いしっぺ返しを喰らうことも。
あの日。 友が下僕吸血鬼に成り果ててしまったのだと、知らなかったからこそ。 ――自分は。斬ることに全く、躊躇がなかったのだから。]*
(255) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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―現在・守護部隊養成所―
[傷が癒えるのを待って、ようやく訓練に参加する許可が下りた。
腕っ節には自信があったが、実戦を潜りぬけてきた隊員達にしてみれば周の実戦経験など、ガキの喧嘩のそれでしかない。 さんざっぱら殴られ蹴られして鍛えられる日々の中、少しづつ戦い方を身に付けていった。
時間を見つけては養成所の寮の裏庭の片隅で、独り撃剣の稽古をするのが日課になっていた。 的打ちと、歩法の修練を、ただ丹念に繰り返す。
あのときと――孤児院が火に包まれたあの日とは違い、殺意も怒りも衝動は裡に秘めて。 金色の鬼を討つ為の剣を練り上げていく]
(256) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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[――平気だよ、と、優しい声が欲しかった。
部屋に降る雨はそこに有りて無き希望の]
――ッう!
[僅かだが、唇を噛み刺された。
傷という単純な刺激には、単純に生物としての苦痛を示す。
駄目だ。もう――駄目なんだ。
ようやく、手に拒むための力を、未練がましい弱さを込めた。
背に回った指が傷に圧を掛ける。]
[零瑠が明乃進を捕らえる、
漆黒の少女が直円を捕らえる。
何が起こるかは、わかってしまった。
しゃがみこんだままのリカルダと視線が合う]
リカちゃん……、
[彼女の傍に歩み寄る、
適うのなら抱きしめてその目にこれから映るものを、
どうにか見ずに済ませてあげたかった。]
ふふ、普通に殺してくれ、と言って。
それを素直に受け入れてくれる、そんな手合いには
どう転んでも。僕には見えない。
[引き起こされて、諦めのまなざしをホリーに向ける。
零瑠の様子を見てだ。完全に「屈服した」のだ。
もう抵抗も何もない。]
マユミくん……これはもう逆らえないよ。
無理だ。話せばわかる相手でも、僕たちの力が及ぶ相手でもないよ。
ごめんな、僕はもう「すべてを受け入れる」ことにするよ。
孤児院を襲ったこと、僕は決して許せないけれど。
まず 「死にたくない」 んだ。
[唖然としたように見るマユミに。]
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─ いつかの、庭園 ─
『屋敷の外に出てはいけないよ菖蒲。
外には人を喰らう鬼が──棲んでいるのだからね。』
[艶のある低い声のその人は、 着物よりも洋装を好む幼子を膝の上に座らせ、 皐月から文月に掛けての数ヶ月間 庭園のそちこちを彩る菖蒲を見ながら、 童女の髪を撫でてそんなことを言った。
物心つく前から言い聞かせられて来た文句は 考えるより先に身に沁みて。
故に──。 童女は生まれてこの方一歩も屋敷の外へ出たことはなく、 それを疑問に思うことさえなかった。]
(257) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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[実際──。 屋敷のあった場所は、その当時既に吸血鬼の支配下にあり 屋敷の外で、人はみな吸血鬼に怯えながら 家畜同然の暮らしに甘んじていた。
そんな区域にあって、広い庭園を抱えるお屋敷だけは、 まるでそこが異空間であるかのように、 主と、その妻と、使用人達だけを竹垣の内側に抱え、 外の惨状から彼らを遠く隔てて在った。
童女が産まれた時、お屋敷に他の児童は住んでおらず、 かつて住んでいた胡桃色の髪の少年の話は、 時折父の口から断片的に語られるのを聞くのみ。
童女にとって『兄』とは、 現実味の伴わないお話の中の存在であると同時に、 淡く──それでいて尽きることのない、 幼い憧憬の対象でもあった。*]
(258) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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ケガは治す、けれども。 寝ているだけなのも。
[安吾とて怪我をしている、ほかの隊員も然り。 生きていただけ良い方だったのだとも聞かされた、 だからこそ]
家族、な。 私もそれに、混ぜてもらっても良いだろうか。
[>>250子供達のケアの方が恐らく大変だろう、 それを任せたままにしているのも申し訳ない]
説明、なあ。私がして良いのなら。
[その為に治せと励まされた気がした。 本当にこいつは、と漸くこわばっていた物が解けてゆく]
(259) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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